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トントントントン。

「あの、そこに居るのはわかってます。
無駄な抵抗はやめて、鍵を閉めてないで出てきてください。」

その台詞は、さながら犯罪者の居場所を突き止めた自警団だ。

「大丈夫ですよ、何もしませんから。」

嘘付け。

「あのー、ジャックさん?穏便にいきましょう。」

危険危険。
あぁ、本当に鍵をかけておいて正解だったな。
請求者来襲はもう少し経ってからだと思ってたんだがなぁ。
それにしても、グランツとサラバンドがいつの間にか消えてる。
先に、逃げたのか?

ドンドンドン。

「単刀直入にいいます。いい加減にお金払ってください。」

気のせいか?
ドアを叩く音が次第に強くなってる気がする。
居留守、居留守。
貫き通せ、息を殺せ。気配を絶て。
そうすればきっと帰ってくる。
訪れるは平穏。

「無視、ですか。わかりました、もう知りません。どうなっても。」

なにやら覚悟を決めたようにそういい、足音から推測するに数歩離れたようだ。
そのまま帰ってくれるだろうと思い込み、実験の続きをしようとした。
瞬間―

バギバギバギ、メギャリッ

勢いよく、扉とともに壁がまきぞい食って破壊された。
それとともに甲高い人々の悲鳴。

「うげ…。」

予想もしない派手な住宅破壊。
思わず片手に持っていたフラスコを落として割ってしまった。
ていうかこんなことして大丈夫なのか?
悲鳴が聞こえてくるんだけど!?

「う、げほ…げほ。やりすぎた、これじゃまた自警団の人に怒られちゃう。」

巻き上がった砂埃と粉塵の中から現れたデストロイヤーの正体は…
見た目温厚そうな顔をした少女、ちなみにジョブは狂戦士。

「修理費は私が払いますから、そんな顔しないでください。」

どんな顔をしていたのか、おれ自身分からないが。
多分泣きそうな顔をしていたんだろう。
とにかく、修理費どうこうはともかく逃げなければ!
捕まったら何されるかわかったもんじゃない。
俺は、身近にある窓を開けそこから逃走を開始した。

「はっ、はっ…はぁ…はぁ。」

引き篭もりがちのアルケミストの体力は無いに等しい。

「こんなことになるんだったら、運動すりゃよかった…。」

呼吸を整えて、周りを見渡す。
あの子はいない。大丈夫。
しかし安堵の溜息をつくには、まだ早かった。

ドスッ

「へ?」

目の前には、戦斧が壁に突き刺さっている。

まさ、か―。

「警告です。これ以上逃げるなら容赦しませんよ。」

誰か、自警団を呼んでくれ…。
アルティア様、どうか俺を助けてください。
あ、ダメか。吸血鬼にアルティア像で対抗した時点で…もう見放されてるか。
あぁ、ごめんなさいごめんなさい。アルティア様。

目の前の少女がだんだんと、こめかみをピクピクさせて顔に血管を浮かび上がらせてニコニコ笑いながら怒るのを我慢しているアルティア様に見えてきた。
どうしよう。

「あ、あの…ジャックさん?大丈夫ですか!?顔色が悪いですよ!」
「ご、ごめんなさい。」
「はい?」

真っ青な顔で、座り込むジャック。

「ごめんなさい、ごめんなさい。アルティア様ごめんなさいごめんなさい
許してください、ゴメンナサイごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
反省してます、ごめんなさいごめんなさいごめ(以下略 」

周囲の人の目線が、少女に突き刺さる。
い、痛い。
このまま放置したら永遠とアルティア様に謝罪し続けるだろう。
何に謝ってるのかよくわからないんだけど。
精神崩壊しちゃったのかな…?

どうしたらいいのか、わからない。

「………お医者さん呼んでください。」

遠巻きに見てる人にそう伝えた。
数分後―
ジャックさんはお医者さんに引き取られた。

「・・・・・・。」
「精神崩壊まで起こさせるとはな。」
「びっくりだな。」
「ジャック、多分今週は壊れたままだろうな。」
「アルティア様の幻覚が見えてる時点で終わってる。」
「だよな。」

振り返ってみれば、そこにいたのはジャックさんに雇われた支援士二人組み。

「「あ…。」」

一人は箒に跨り、一人は脱兎の如く一目散に逃げていった。
多分、頑張れば箒を落とせるんじゃないかな…
そう思った。しかし街中での戦闘は厳禁。
破ってしまえば自警団がすっ飛んできて、牢屋に入れられ
原稿用紙100枚に反省文を永遠と書かなければならない。
地獄だ。

でも飛んでいった方向はフィールドだから、もう一人の人ともそこで落ち合うつもりなんだろう。

―――
――

「危険危険、棄権します。」
「えっとそれじゃあ。」
「わかってるよ。はい、おしまい。」

フィズの入った皮袋を、狂戦士の少女に放り投げる。
明日から何も変えないな。
一週間水で生きていくしかないか。

「はい、確認しました。」
「ご苦労様。」
「あの、後日またうかがいます。あ、いえ。ジャックさんの様子が気になりますから。」

―――ローン請求戦争、別名 クリムゾンの悲劇。―――

非戦闘員なジャックを抜いて、フィールドで2対1で戦ったのにも関わらず
フルボッコにされたという悲しい戦争だ。
一方的に、払わなかった自分達が悪いのだが…
今日の日のことを忘れないように、そう命名する。