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     ・・・何時からだろう? 自分が、無力だと感じたのは。


 武器屋の片隅で、一人の少女と、一人の少年が会話をしている。
 それは、他の冒険者から見れば、滑稽な姿でしかない。拙く剣を上に掲げ
 だが、その声に迷いなど微塵も無く。



     何時からだろう? 力を求めて、駆け出したのは。


   ―――――約束だよ。
                 ああ。オレはこの剣でお前を護る―――――





     そして・・・何時からだろう。その気持ちすら、見えなくなってきたのは――――――








-リエステール宿屋区・ヴァイの部屋-


「・・・んっ・・」

 太陽が顔を覗いて直ぐの時。珍しく早く目が覚める。
 光は窓から入り、ベッドに入っていても嫌でも顔を照らされ、眩しさに呻くのだ。
 ・・・まあでも、それはそうだろう。
 昨日・・・疲れていたのか、あれから部屋に戻って直ぐにオレは落ちたのだから。

 ・・・そして、布団の中には、もう一つの温もりがあった。

「・・・」

 どうもオレの方が先に目覚めたらしく、
 その『温もり』の寝顔を見ながら、そっと頭を撫でた。

「・・・んっ・・・」

 ―――リスティである。
 ただし、『何かしちゃった』ワケではない。
 もしも『何かしちゃった』のならば、アリスであるが故に、リスティは教会より破門されてしまう。
 そこまでオレは求めては居無い。
 だから、ただ一緒に居てもらっただけだ。

「・・・」

 その顔を眺めてしばらく、リスティはゆっくりと目覚める。
 まず、目を開けてオレの顔を見たとたんに息を呑み、
 そして、火がついたように顔を真っ赤にさせるのだ。

「・・・おはよう御座います」
「・・・あ、ああ・・」

 ・・・昨日のこともあり、微笑まれながら見つめられると、どうにもドギマギしてしまう。
 そう。昨日・・・教会前の門でのやりとり――――


 ・・・
 ・・
 ・


『じゃあ、わたしはこれで・・・』

 オレが久し振りに泣いてからしばらく、
 落ち着いた頃にリスティはそう言って教会の方へ戻ろうとした。

『あ・・・』

 だが、オレは思わず手を伸ばし、そう声を上げていた。
 ・・・ただ、今は誰かが居て欲しかった。
 一人では、ノアへの罪に苛まれそうだったから。
 いや、『今まで耐え忍んできた』それを一人で背負う事を恐れたから。
 ・・・ブレイブマスターである前に、たかが一人の人間は一つの事象に対し、こんなにも脆く弱い。

『・・・』

 だが、オレは手を下ろした。
 少しのプライドだ。男が、少女に弱い姿など見せられはしない・・・少なくとも、これ以上は。
 だが、そのオレの様子を見て、リスティは言ったのだ。

『・・・無理はしないで下さい。わたしは、カーディアルト前のアリスキュアですけど、出来ることが人を癒す事には変わりありません。
 ヴァイさん。一人が苦しいなら、遠慮しないで・・・』
『・・・・ゴメン』


 ・・・
 ・・
 ・


 そうして、今に至ると言う訳だ。
 まあ、正直アリスが朝帰りなどと本当は良くないのだろう。
 だが、心の何処かで、エルナさんが手軽に誤魔化している姿は容易に想像できた。

「ヴァイさん・・・」

 そう思っていれば、リスティの心配そうな目に気付き、オレは苦笑いをして返した。

「・・・すまない。もう、大丈夫だ。・・・オレは、これから変わらなきゃいけないんだな」
「そうですか」

 ホッとリスティは胸をなでおろし、息を付いた。
 そう。あの時に・・・『ブレイザー』の時代に思っていた事。

 ―――――『強くなりたい』

 今までは、ノアを護れるくらい、強くなりたかった。
 ・・・そして今は、もう悔やまぬよう、強くなりたい。自分の為に、そして、心配してくれた皆の為にも、
 この壁を乗り越えなければならない。
 オレは、ノアへの未練は断ち切れないけれども・・・そう思った。
 ・・・故人に対して悔やみ、能力を使うより、生きる人に対して能力を使うべきなのだ。

「自分の弱さに立ち向かう事は怖い事だと思いますケド・・・でも、ヴァイさんなら大丈夫です。
 だから、わたしは待ってますから」

 それを思い返し、そして、リスティに励まされ。勇気付く。
 少しずつで良い。慣れなければならない。
 ・・・・・・・って、

「待ってる?」

 その、リスティの言葉に引っ掛かった。
 だけど、リスティは「はい♪」と微笑んで、

「神託の儀。わたしは・・・ヴァイさんに護衛をお願いしようと思います。・・・だから、ヴァイさんが護る事に慣れるまで、待ってます」
「・・・そっか」

 そうだ。彼女は、聖女の器なのである。
 出会って、付き合いを持ってからは、もう既に一ヶ月が過ぎようとしているが、その一ヶ月前のミナルで、フォーゲンと言う神父にそう言われたのだ。
 ・・・神託。そして、その儀式の時は近い。
 だが、聖女の器の意思によって、神託の儀は行える。
 それはそうだろう、聖女の器が『嫌だ』と言えば、儀式など行える筈も無い。
 だから、始めから儀式の日にちは聖女の器の意思が最優先される。
 ・・・まあ、もちろん前例に『即出発』以外のケースは無かったが。

「では、そろそろ帰ります。流石に、朝のお祈りに遅れたらエルナ先生でも朝帰りを誤魔化せないと思いますから」
「そうだな・・・一人で大丈夫か? ・・・って言うよりも、一人の方が良いんだよな」

 そう。下手にオレが付いていって、エルナ先生以外に見つかったりしたらマズイ。
 だから、オレは呆れ笑って、立ち上がろうとした行動を止めた。

「あ、あのっ!! ヴァイさん!!」
「ん?」

 そろそろ、彼女は出て行くんだろう。
 声を掛けられ、見送ろうと思いそっちを振り向けば、

「んっ・・!!(/////)」
「・・・っ~~!!!!(/////)」

 ふわりと、唇に柔らかな感触と、
 目の前に、瞳をギュッと閉じたリスティの顔。
 しっとりとして・・・そのまま抱き寄せ、貪りたくなる衝動に駆られる。
 だけど、それをしてしまえば歯止めが利かないだろう。
 少女の、教会での人生を一度の事象で壊すなど出来無い。
 だから、オレはその気持ちをグッと押さえ込んだ。
 その時間。約15秒の事かもしれない。
 だが、その時間は遥かに長く感じられた。

「わ、わたしだって・・・ノアさんに、負けませんから・・・っ!!」
「・・・・」
「で、では、失礼しますっ!!!」

 一方、硬直するオレと、
 そして、赤面して脱兎の勢いで走り去るリスティ。
 バタンと勢い良くドアが閉まるのを確認してから、

「・・・・」

 ・・・たぶん、針が15分回るまで、オレはその場で身動き一つ取らずに固まっていたのだろう・・・。





-リエステールセンター通り・酒場-

 昼。あれからしばらく手持ち沙汰になっていたが、昼と言うにはちょいと早めの時間にオレは家を出て、
 そろそろ新たな依頼が来ているだろうと酒場に足を向けた。

「よう。マスター」
「おうヴァイ!! ・・・ってどうした? 顔が妙に赤いが、熱でもあんのか?」
「・・・何でもネェヨ」

 ・・・まだ抜け切っていなかったとは・・・。
 まあ、これは仕方が無いとして、なんとか一言で丸め込む。
 マスターは「ふぅむ」と一つ声を上げるも、さして気に留めた様子は無い。

「というか、依頼を見せてくれ。今は何がある?」
「ん? おお!! そうだったそうだった」

 そう言って、彼は依頼帳簿を取り出し、
 それをめくり始め・・・

「・・・護衛依頼でも、構わない」
「なっ・・・!?」

 そのオレの言葉に、依頼帳簿のファイルを取り落とし、軽い音が酒場に鳴った。
 マスターは、そのファイルを拾い直し、オレの方へ向かって言った。
 ・・・そう、神妙な面向きで。

「・・・そうか。そろそろ、乗り越える気になりやがったか」
「ああ。・・・だが、たぶん今のオレは護衛に関してはDランク以下だろ。その辺も考慮してくれると助かる」

 そう言って、マスターからの嬉しそうな声を待った。
 たぶん、彼もきっとオレが護衛拒否の壁を乗り越えるのを待ってくれていると思っていたから。
 ・・・だが、帰ってきたのは妙に困った風な口調だった。

「あー・・・スマンヴァイ、気合入れているトコ悪いが、お前ぇには、『Aランク依頼』を受けて欲しいんでぃ」
「・・・あ、ああ・・そ、そうか・・・」

 出だしから、ガクッと肩が落ちる。
 勢いに乗りすぎたと言うのもあるが・・・コレはA・Sランク支援士の嫌な点である。
 だが、あからさまに気落ちしてしまったオレに対し、マスターは慌てて言葉を付け加える。

「い、いやいやいや!! ヴァイ、お前ぇさんが護衛に慣れようって気持ちは儂としちゃあ嬉しい!!
 だが・・・出だしからスマンな。Aランク依頼である以上、今手空きのグリッツに任せるワケにはいかねぇ」
「・・・だろうな」

 グリッツはランクB中程の支援士。テスト依頼に出来るかどうかも微妙な内容なら、任せるのは無理だ。
 ならば、既にAランクである手空きのオレが受けるのが道理だといえるだろう。

「それに・・・」

 マスターはそう言って、詳細まで書かれた依頼用紙をオレに見せた。
 ・・・そこで、オレはナットクした。何故、この依頼を他のAランク支援士ではなく、オレに任せたのかを。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 依頼:『カークリノラース』の討伐
 報酬:15万フィズ
 ランク:A

 教会より討伐依頼。
 クラウゼヴィッツ伯爵家を没落させるきっかけを作った魔物。
 それが、北のリックテールにて現れた。
 事態は民間の混乱を有する可能性がある為、密かに行って欲しい。
 教会からは支援として、聖光にシスターエルナ。治癒にケルト神父を派遣する

―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「じ・・十五万・・・!!!??」

 依頼の報酬云々より先に詳細に目を通すのはマスターからしつこく言われて来た事だ。
 それは、報酬金額が高ければ自分の能力を過信して、無理な依頼に食いついてしまう事を事前に防ぐ意味合いが多い。
 だから、詳細に書いてある『自体は民間の混乱を有する可能性がある為、密かに』という部分に目を通していたため、
 声を落として驚きの声を上げる。
 確かに貴族などは、自分の依頼を優先的に行わせる為に、軽い護衛依頼に馬鹿な金額を提示する事が有る。
 だが、こういった事は素早く他の支援士に取られてしまう為に、二桁万超えの依頼など、早々お目にかかれるモノではなかった。
 ・・・前にエルナさんが、25万の依頼に驚いていたのも、それが故である。
 そして、見るべき点はそこだけじゃない。

「エルナ先生にケルト神父を付けるなら、お前が一番気楽に出来るだろうとオレも思ってな。
 一応、Aランク依頼だから強制力も出ちまう。やってくれるよな?」
「・・・」

 本当は、マスターは『強制依頼』という事を好まない。
 出来る限りAランク依頼ならば、支援士の意思を汲み取ってくれる。
 だけど、もちろんオレはこの依頼を請けるつもりでいる。
 その方が自然だろう。いいや、言葉を変えよう。
 『此処まで条件が整って、断るほうが不自然』なのだ。
 エルナさんが居る。ケルトも居る。二人ともオレの馴染みの人物。
 断る要素が、微塵も無いのだ。

 ・・・・だが、そうじゃない。

「・・・」

 ・・・なにか、違和感がある。
 さっきも言ったが、エルナさんにケルト。この二人の組み合わせで上級魔物の討伐なら、間違いなく理に適っているだろう。
 近距離物理にオレ。遠距離魔術にエルナさん。回復とサポートにケルト。
 お互いがお互いを知り尽くしている為、パーティとしては間違いなく最高だ。
 でも・・・幾つか、違和感が残るのだ。なんだか、気味の悪さと言うモノを感じる。

「・・・判ったよ。この依頼を請ける」

 だが、だからと言ってオレは、マスターの厚意を無下にするのも嫌だった。
 きっと、マスターはオレの為にこの依頼を取って置いて暮れたのだろう。
 Aランク支援士なら、このようなオイシイ依頼、確実に食いつく筈である。
 ・・・マスターには、随分と世話になっている。
 強制依頼の拒否も容認してくれるが・・・しかし、その埋め合わせも辛いのだ。
 だから、多少の不安感など拭い捨て、特に何も考えずにオレはこの討伐依頼を請け負った。

「よし。もうエルナ先生とケルト神父には話が通ってると思うから、まずはヴァイの方から二人の方にコンタクトを取ってくれ」
「判った」

 そうマスターに言って、オレはこの『カークリノラース』討伐依頼を開始する。


 ・・・誰かが言っていた。『悪い予感ほど、当たるものだ』。
 だが、オレはその悪い予感を特に気にはしなかったのだ―――――――





-リエステール東街道~港町フローナ-

「いやぁ・・・それにしても、この三人で出かけることになるとはね」

 リエステール東門を出て既に何時間か歩き詰めただろう。
 もちろん、間に休憩も挟んではいるが、それでも精神的な疲労は拭えない。
 それに、筋肉にも疲労は徐々に蓄積される。
 だが、そんなオレ達を気遣ってか、ケルトはそう軽口にそう言いながら、のんびりとリエステール東街道を歩いていた。
 今は夜も更けそうな頃。唯一の励みといえば、もうそろそろフローナに付くだろうと言う事だ。

「・・・」

 だが、いつもならそのケルトの軽口に便乗して「フローナって言えばやっぱり魚よね! ついたらサッサとご飯にしましょっ!!」とでも一番騒ぎそうなエルナさんが、
 さっきから、黙りこくっているのだ。

「・・・エルナさん。疲れたか?」
「・・・あっ!? ううん、疲れてはいない・・ケド」

 そうして、また黙る。
 先ほどから、この調子なのだ。
 いや、出かける前はまだ明るかった。支援士の仕事・・・なにより、オレの仕事を手伝えるという事で、彼女ははしゃいでいたのだ。
 だが、大体四回目の休憩だろうか? その辺りから、ずっとこの調子なのである。
 動くペースが早いのか? とも危惧したが、エルナさんよりも軟弱なケルトでもまだ平気な速度なのだ。
 決して早いペースではないと言える。
 ただ、その様子を振り返って見たケルトは、「ふぅむ」と一つ声をあげ、

「先生・・無理は良く無いですよ。辛かったら遠慮なんてしないで下さい」
「・・・そうね」

 そのケルトの言葉に、エルナさんは一つため息をつき、
 今まで思いつめていた『何か』が取れたような表情をした後、こう切り出した。
 ―――きっと、エルナさんは気付いていたのだ。この話を切り出せば、オレ達が『どっちも決断出来なくなる』と言うことに。

「・・・ねぇ。二人とも。気のせいなら気のせいって言って」
「・・・」

 その開始の言葉に、オレとケルトは押し黙る。
 いつも以上に、真剣なエルナさんは、オレ達の顔を見ることが出来なかったのか、空を睨みつけながら言葉を続けたのだ。
 そう。それはエルナさんの『癖』の一つだ。叱る時や、相手から謝られた時。
 自分の『好き』な人たちの悲しい顔や泣き顔など、『嫌な顔』から目線を逸らしてしまう事は。

「今回の依頼。妙じゃない?」
「妙・・・?」

 その言葉に、ケルトは首をかしげる。
 だが、オレはその言葉にドキリとさせられた。

(・・・そう。そうなんだ)

 それは、オレも薄々感じていた。
 その、『妙な違和感』。
 だが、そうと決めつける核心は無い。
 あくまで、憶測に過ぎないのだ。

「先生。『妙』と言うのは、どの点からですか?」

 ケルトの問いに、エルナさんは一つ頷き考えを言って聞かせる。

「・・・『三つ』。あるわ。まず、この依頼、何故教会から出ているのに、友好関係にある『ナイト』に仕事を任せなかったか」
「それは・・・やはり、仰々しく自警団を動かせないからではないでしょうか? やはり、『ナイト』が動けば民間は不安になるかもしれません」

 その答えには、オレも頷いた。
 このケルトの考えは、筋が通っている。
 少数隊とは言え、教会と自警団のグループは動けば目に付く。
 その分、旅の先々で不安をばら撒く結果になる可能性もある。
 『何か有りました』と教えに歩くようなモノなのだ。
 それでは、今回の依頼。『民間を不安がらせずに』という事は不可能。

「じゃあ、『二つ目』。まるでこの三人になるように示し合わせたような依頼・・・これは、どうかしら?」

 その・・・次のエルナさんの問いに、ケルトは目を閉じて一つ考える。
 しかし数秒後。やはり、オレと同様の答えを導き出した。

「・・・やはり、剣・術・回復。戦闘における役割がハッキリとしたメンバーだから。だと思います」

 その通りだ。
 近距離の物理が有効なら、エルナさんは魔法で牽制しながらオレの連撃を見舞えば良い。
 もしも能力が有効なら、オレが囮になって、エルナさんの魔法で潰せば良い。
 さらに、回復サポートのケルトが居れば、多少の無茶も許される。
 ・・・だが、エルナさんはその問いに更に一歩進んだ疑問を持っていたのだ。

「そうかしら? だって、確かにわたしは攻撃呪文を使える。けど、『カーディアルト』なのよ? もっと尖鋭なジャッジメントは教会に居るわ。わたしである必要性は無いんじゃない?」
「それは・・・・・」

 そう。だけど、エルナさんの言う事は尤もだった。
 カーディアルトは回復・サポートの専門。その中で、エルナさんは『能力の上昇・下降』を犠牲にし、もっと『聖光』の呪文を求めたのだ。
 だが、その為に、『オールマイティ』止まり。攻撃のエキスパートには負けるのだ。
 ・・・ケルトの方は回復・サポート専門だ。その点に疑問はないが・・・なぜ、エルナさんが抜擢されたか。
 それが、疑問に残る。
 ただ一つ、オレの心に浮かんだ答えが、全てを肯定するような・・・

「・・・まるで、オレ達三人をリックテールに送りたいみたいに・・・?」
「・・・!!!?」

 そのオレの呟きに、ケルトはハッとなる。
 それを見てから、エルナさんは一つ頷いて、さらに『疑問』を続けた。

「・・・次に『三つ目』。カークリノラースは既にクラウゼヴィッツ氏が討伐に動いている。
 なんで、彼に報せず支援士の依頼として報せたのかしら?」
「!! ・・・僕の考えが浅かったな・・・!! そうか、カークリノラース・・・!! 何処かで聞いたと思えば、クラウゼヴィッツ氏の事件なのか!!」

 ケルトが、その柔和な顔を崩し、歯噛みする。
 エルナさんの三つ目の疑問は、オレの知り得るトコロではなかったが・・・既に、その魔物を狙う人物が居るなら、その人物に伝えるのが道理。
 極秘も何も無い。その人物が勝手にケリを付ける。
 つまり、『15万』の金額など払う必要は無い。むしろ、その情報をその人物に売れば、逆に報酬を得られただろう。
 それを、しなかった。

「それに北にはヴァジル君も居る。わざわざ『特秘』というだけでわたし達に名指しする理由は無い・・・これ、考えすぎだと思うかしら?」
「・・・」

 否定はし切れない。
 あまりにこの三人で出るには、『出来すぎている』。
 それは、酒場で抱いた疑問と全く同じなのだ。
 だが、肯定もし切れない。
 依頼主が、ケルトとエルナさんとオレの関係を知っていて、この三人なら確実に。という風に考えて依頼を申し込み、
 エルナさんの『深く考えすぎた』事まで頭が回らなかった。という可能性だって有る。
 そうすれば、今もどこかで『カークリノラース』は、被害を出している『可能性』が有るのだ。
 ・・・そう、進むも、戻るも、どちらも選べなくなっていた。
 この依頼に対する情報が無さ過ぎる。

「・・・」

 オレ達三人が、始めて黙って立ち止まっている。
 休憩中にも色々話をしていたと言うのに。気まずい空気に潰されそうになる。
 ・・・いや・・黙る位なら、動いたほうがいいのかも知れない。
 だが、下手に動けば・・・後悔しそうな気がした。
 ――――そんな風に立ち止まる事、数分だろう。
 オレ達は、今後どう動くか考えあぐね居ていると、今来た道より、軽快な馬車の音が聞こえてきたのだ。

「お? おーい!! ヴァイじゃねぇか!!」

 更に馬車の中から、この雰囲気をぶっ壊す馬鹿明るい声。
 リエステールの方からやって来た人影が声を掛けて来たのである。
 ・・・その影は、

「グリッツ?」

 そう。ツインエッジ・・・ではない。
 つい最近、セイクリッドに昇格した、グリッツ・ベルフレイン。
 そいつは、いつもの様に軽口で何か喋ってくるかと思ったのだが・・・

「・・・? なんかあったか?」

 その神妙な三人の空気に、流石にあのグリッツでも首をかしげた。
 いつもならば、聞きもしないのにこれから行う事を色々野望も含めて語るのだが、
 その雰囲気でも無い事を彼自身判っているのだろう。

「? それにしても、お前らこれから何するんだ? こんなトコで立ち往生して」
「いや・・・」

 変わりに・・・まあ、確実に疑問に持つだろう、現状に対し、問いをかけてきた。
 だが一応、この依頼内容は極秘任務だ。それを同じ支援士仲間とは言え、教えるワケには行かない。
 だから、思わず言葉を濁したが・・・流石はグリッツと言うか、自分でした質問など、さして興味なく自分の事を話し始めたのだ。

「まあいいけどよ。ひょっとして疲れたのか? まあ、聖職者さんに歩き詰めさせりゃツライと思うぜ。
 オレは運よく馬車を手に入れられたから、こうやってリエステールから此処までかっ飛ばして来れたんだけどよ」
「・・・生憎と、オレ達が出る時には馬車が無かったんだよ」

 ・・・が、オレはふと思いつく。
 こいつは・・・『リエステールの方から来たんだ。』

「!! グリッツ!!」
「な、なんだぁ? 急に大声上げて?」

 オレは、馬車の車に登って、グリッツを問い詰める。
 今頼れるのは、コイツの情報だけなのだ。

「お前が出る時、リエステールで何か無かったか!!? お前、教会のことなら妙に詳しいだろう!!」

 その問いに、グリッツはエルナさんの手前だからか多少赤面し、
 「なんで此処でそんな事言うんだよ・・・」という言葉から始め、

「そうだな・・・オレがリエステールを出るちょっと前だけどよ。聖女の器の『神託の儀』が行われてたぜ。
 なんか具合悪そうに見えたんだけど・・・どうしても聖女の器のアリスが望んだんだってよ。
 ・・・前回の時はあんな結果になっちまったけどよ。まあ、今回も同じ結果になるワケねぇよな。
 お前には悪く聞こえるかも知れねぇケド、あの時のヴァイは『ブレイザー』だった。
 だけど今回は、自警団の尖鋭ナイトを護衛にしたんだ。実力的には今のお前とドッコイ。
 その分、護るって事に関しては『ナイト』だからな。安心できるってモンだろ」
「っ!!!!!!!」

 その事を聴いた瞬間、オレはカッと焦りと、怒りが込みあがった。
 グリッツの胸倉をつかみ、正面から睨みつけ、怒鳴りつける。

「馬鹿な!! アイツは・・アイツは、オレが護衛に慣れるまで待つって言ったんだぞ!!!」
「おわっ!! ちょ・・落ち着けよヴァイ!!」

 グリッツになだめられ、オレは歯噛みし、グリッツを離す。
 確かに、今グリッツに当たっても仕方が無い。

「・・・スマン」
「いや。気にすんなよ。・・・で、一体何の話なんだ?」

 だが、既にグリッツの問いに答える気は無かった。・・いや、答える余裕すらも無かった。

(神託の儀式が行われた?)
「ちょっとヴァイ。お願い、その話を詳しく聞かせて」

 そのエルナさんの問いに、オレは一瞬何のことを聞いているのか判らなかった。
 だが、直ぐにさっきグリッツに向かって怒鳴った言葉を思い出し
 エルナさんとケルト、そしてグリッツに、オレとリスティの事を話した。
 夜にアイツに慰められた事は端折ったが、彼女の思いやりで、オレが護衛慣れするまで待つ。
 そういった約束を交わしたのだ。そういった、話をしていた事を。
 いつものグリッツならば、羨ましい等と言って、ふざけて突っかかってきただろうが、この空気ではそれを許しはしなかった。

「アイツ、神託の儀式はオレに任せたいって言ったんだ。護衛に慣れるまで待つって。
 エルナねーちゃんなら判るだろ? アイツがどんな事でも約束を破るヤツじゃ無いって」
「・・・ええ。続けて」
「ああ。だからオレはそれを請けた。そこからアイツと別れて・・・それで、オレは酒場でこの依頼を請けた」
「・・・なるほど、そう言うことかい!!」

 そこで、エルナさんの悔しそうな顔と、苛立ちを隠さないケルト。
 そして、オレは今現状に気付き、ギリッと歯噛みをする。
 情けなさ過ぎる。このあまりに出来すぎた話を、もっと疑うべきだったのだ。
 だが、仕方が無いとは言え、唯一グリッツは状況が飲み込めないらしく、「???」という顔をしている。
 その彼に対し、エルナさんは簡潔に説明をする。

「・・・つまり、謀られたわ。リックテールでカークリノラースの目撃があったなんて嘘っぱち。
 全て、わたしとケルトとヴァイ・・・聖女の器に対して近しい邪魔な奴等を居なくならせる為の依頼。
 15万ってお金を出せば支援士なら飛びつく。支援士って言うのを良く判ってない人物なら、ただ単純にそう考えたんでしょうね」
「じゃあ・・リスティは!!!」

 リエステールに向かい、駆け出そうとする。
 今から走れば、明け方にはリエステールに戻れる。

「お、オイ!! ちょっと待てって!!」

 だが、グリッツはオレの肩を掴んで呼び止めたのだ。
 それを振り払い、オレは怒気を隠さず声を荒げた。

「離せっ!!」
「ただ聖女の器の儀式に出かけたってだけじゃねぇか!! 何をそんな興奮する必要があるんだよ!!
 単にお前との約束を護る事が出来無い『理由』が出来ただけかも知れ無ぇじゃねぇか!!」
「・・・そう。例えば、『強請りゆすり』とか」

 そのエルナさんの言葉に、グリッツがハッと振り返った。
 それを確認してエルナさんは更に言葉を続けた。

「・・・きっと、ただ聖女の儀式に出すだけじゃなく、『その上で何かを行おうとする』。そうじゃない?」
「だろうね。じゃないと、僕たちまで排除する理由が掴めない」

 オレ達三人は顔を見合わせ頷き、馬車に乗り込み、先ほどから会話の流れを神妙な顔つきで聞いていた運転手に声を掛けた。

「直ぐにリエステールに戻ってくれ!!」
「緊急かい?」
「ああ・・・頼む!!」
「物凄く揺れますぞ。しっかり捕まってくだされ」

 そして直ぐに、走り出した。
 リエステールに向かって。

「ちょっ・・なんだってんだよー!! オレ、これから依頼に向かうトコだったんだぞー!!!!」

 そう騒ぐグリッツに、心の中で詫びながら。
 オレは、とにかく焦る気持ちを押さえつけていた。 






-リエステール-


 早朝。日が昇りそうな時間。リエステールに戻れば、なにやら南街道の門が騒がしい。
 その方へ走り行けば・・・そこには、ボロボロのナイトが、ガクリと倒れこむトコロだった。
 その場から、『誰か教会へ!!』『この場に聖術士は居無いのか!!』と、声が上がる。

「あれは・・・!!?」

 その場に突っ込み、人を掻き分け、オレ達は前面に出る。
 あまりに野次馬が多かったのだが、エルナさんの『カーディアルト』の僧服で人々は状況を理解し、
 人は直ぐに道を空けた為、想像以上にすんなりと前に出る事が出来た。
 ・・・エルナさんは直ぐに『ラリラル』を唱え、そのナイトの傷を癒す。

「うっ・・・」

 その聖術を受けた時、ナイトは苦しげに呻いた。
 痛みを感じるのは、回復呪文で感覚が戻ったからだ。これでこのナイトが死ぬ事は無い。
 ただ、傷が治ったとは言え、彼には疲労が残っていたのだろう。直ぐに意識を暗転させようとした
 ・・・が、エルナさんはそれを許さなかった。
 胸倉をつかみ、ナイトに向かって怒声を上げる。

「アンタ聖女の器の護衛だったんでしょ!! ウチの生徒は・・・リスティは、どうしたの!!」

 揺さぶられ、その衝撃で意識が戻ったナイトは一つ呻き声をあげ、
 そして、吐き捨てるように言ってきた。

「グノルの・・・地下封印・・・・魔物が・・・上に・・・」
「グノル地下?」

 そう。グノルの地下。その魔物―――――

「・・・・同じだ。あの時と」

 そう。魔物の強さの格は大きく違う。
 だが、ノアの時起こった事と、全く同じであった。
 自分の力量に合わない相手が、何匹も何匹も襲い掛かってくる。
 だが、そんな感傷に入っている暇など無いのだ。
 エルナさんに代わり、オレはナイトを支え、大声で本題を問いだした。

「おい!! お前、リスティは・・・護衛した聖女の器はどうしたんだ!!!」
「ば、馬鹿を言うな・・・あのレベル、俺一人逃げ出すだけでも・・・精一杯だった」
「・・・・っ!!」

 正直、このナイトの言葉には愕然とした。
 これが・・・緊急時に、少女一人護れないコレが、この街を防衛しているのかと思うと
 命を張ってまで、自分の使命を遂行するのがナイトなのではないのかと。
 ・・・思わず、殺してやろうかと思った。
 だが・・・確かにコイツの言い分も尤もなのだ。
 グノル地下。不浄なる者達を封ぜて来たあの場所は、その地下一角が封印区画として閉じられているのだ。
 A級支援士。まして、尖鋭のナイト一人ではどうこう出来る相手ではない。
 そのやり場の無い怒りを汲み取るよう、エルナさんはオレの肩を一つ叩いて、下がらせ
 そして、そのナイトの前に出た。

「・・・アンタは、前回の聖女の器を護衛したブレイザーの少年よりも結果が最悪ね。
 ううん。むしろ、前回の聖女の器を護衛した少年の方は、貴方なんかよりもはるかに立派だった」
「な、なんだと・・・!!!」

 だが、そのナイトの言い訳など一切耳に貸さず、エルナさんは冷たく言い放った。
 もちろん、『ブレイザーよりも悪い』などと言われて・・・プライドを崩され怒らぬナイトなど居ない。
 だが、そのナイトは無気力。怒れは出来ても、何をする事も出来無い。

「前回の聖女の器を護衛したブレイザーの少年は、自分より強い敵を相手でも、一切引かなかった。まさに、レンジャーナイトを目指す志はあったのよ。
 だけどアンタがした事は、尻尾を巻いて逃げただけの事。そんなので『ナイト』を語るなんてちゃんちゃら可笑しいわね」
「・・・くそっ・・・!!」

 そこでナイトの意識は崩れ、地面に倒れこむ。
 周りからはざわめきが起こったが、エルナさんは直ぐに「問題ない。意識を失っただけよ!!」と大声で伝えた。

「くそ・・・リスティ・・・・!!!」

 一方でオレも、自らの不甲斐なさに地面を一つ殴りつける。
 ノアも、リスティと同じ運命を辿ってしまった・・・彼女の傍に居てやれなかったが為に。
 最悪だ。今回は、『護るトコロ』にすら、入ってはいない。
 ・・・・・だが、

「まだ諦めるのは早いんじゃないか?」
「!? どういうことだ!!?」

 そう。そうオレに告げる声が、聞こえた。
 その縋りつきたくなるような台詞。それを言ったのは、
 一人の、月影剣士クレセント
 その肩にはかくも珍しい一匹のドラゴンが。
 彼は、顎に手を当てながら、この状況を瞬時に理解し、考えをまとめている。

「グノル地下の封印区の魔物を『使ってきた』のは一つの盲点だったろうな。
 あの封印を解けるのは、魔物では絶対無理だ。封印を解く手引きができるのは人間のみ。
 ともなれば、犯人は人でしかない。ならば後は検討が付くだろう。
 ・・・だれか思い当たる節は無いのか? 聖女の器に関するなら・・・そうだな、教会の人間で、怪しい奴が」

 そう言われ、彼は直視してきた。
 だが、その先にはリスティの無事を保障するものは無い。

「・・・・今更、犯人探しなどしても、リスティは」
「いえ!! ナイスな情報だわ!! アンタ、名前は?」

 そう、犯人探しなどしてもリスティはもう帰って来ない。
 ・・・だが、そう思っていたオレとは対照に、
 急に明るい声でエルナさんはそのクレセントの話しに飛びついていたのだ。

「え、ああ・・オレは」
「セオー!! そろそろ行こうよー!!」
「ああ! 判ったイル!! ・・・ってワケで、こっちも時間が無いみたいだ。すまないな」

 そうして走り去ったクレセント、セオ。
 彼の情報で、確かに次のステップを掴む事が出来た。
 ・・・だが、オレは未だにつかめない。
 エルナさんが、何故、明光が見えたかのようにそう言ったのか。

「エルナさん。一体どういうことなんだ?」
「・・・ヴァイ。まだ可能性はある。リスティは生きている可能性」
「なっ・・・!!?」

 そう。その言葉は願っても見無い事。
 たぶん、確証があるんだ。下手な慰めなどではないだろう。
 その証拠に、エルナさんはオレの顔から目を背けなどしなかった。

「グノルの神殿シュラインがまだ廃墟と化す前。不浄な魔物相手に封印を行う事は容易ではなかった。
 そこで使われたのは・・・魔物自体を操る能力。いえ、正確に言えば、『死者を操る能力』と言うほうが正しいわね。
 悪しき意思を縛り上げ、肉体だけを操り、その死んだ肉体に宿った悪霊を封印する。それが、凶悪な不浄の魔物を封印する手立てだった。
 ・・・グノル地下封印区画に封ぜられた魔物は、全て『アンデット』。つまり、一度死んでいるんだもの。それらを操る事は、出来る」
「死者を操る・・・?」

 それは、闇使いネクロマンサに近い術かも知れない。
 ネクロマンサが使うのは、闇の能力を使う事も然り、書物に封じられた『怪物』を具現し、自らの下僕して戦闘に使役させるジョブ。
 そのオレの言葉に一つ頷き、エルナさんはナイトを指差して言葉を続けた。

「ええ。さっき彼を治す際、ちょいと違和感を持ったのよ。
 もしも、本来の魔物の状態でコイツとリスティが襲われたなら、彼は逃げ切る事は出来無い。
 ・・・一瞬で餌食でしょうね。だって、操られてい無い魔物なんて、理性が切れている状態なんだから。
 しかし、彼・・・外傷が凄いけれど、いざ『ラリラル』で治してみれば、骨折とかの内傷は薄い。
 つまり・・・明らかに、手加減されている。
 でも、彼を追い返す意味なんて有るかしら? 邪魔ならその場で排除すれば良い。
 なら、もっと簡単に考えれば? ・・・その場に、殺さずに手に入れたい人物が居た。これが自然じゃないかしら?」
「そうか・・・!! だから、まだリスティが生きてる可能性も・・・!!」

 一つ頷き、エルナさんはリエステールセンター通りの方を向く。
 そこから、丁度良く彼は走ってきた。

「おーい!!」

 リエステールに入ってから直ぐに別れ、別の仕事を任せた親友が、

「酒場に行ってきたよ!!! 情報を掴んだ!!」
「ケルト!!」

 そう、彼が酒場に走った理由は、一つ。
 それは、

「・・・あの依頼を出した人物。それは―――――」

 陥れようとした人物の、尻尾を掴む為だ。





-リエステール大聖堂-


『ダンッ!!』

 ・・・と、大音を立て、エルナさんはその部屋へ入る。
 無駄に広く、豪華な装飾・・・教会の人間なのに、一体どれだけの金を持っているのか呆れたくなる。
 ・・・だから、もしもエルナさんが壊すようにドアを開けなかったならば、その役割はオレがしていた。
 今のオレ達は余裕が無い。それだけ、イライラとしていた。

「なっ・・・!!」

 その事で驚き振り向いた目の前の人物は、エルナさんの顔を見た瞬間に、目に見えて動揺をしていた。
 ・・・そう、『なぜ、ここに居るのか?』と。
 しばらく、パクパクを口を動かして声も出せないでいたが、やがて恐怖している自分の痴態に気付き、顔を歪ませ、声を荒げた。

「な、なんだね!! シスターエルナ!! 貴女もシスターならばもう少し慎ましい・・・」

『バンッ!!!』

 ・・・と、今度は思いっきり机を叩く。
 それだけで、目の前の人物は『ひっ!!』と声を上げ、半身後ずさりをして言葉を噤んだ。
 今、ゴタゴタと説教など聞く耳は無い。

「・・・副司祭殿。見損ないましたわ」

 静かに。そう、普段オレ達には使わない言葉遣いで、
 怒りながら、エルナさんは副司祭に詰め寄る。

「第一、依頼はどうした!! リエステールを出たのではなかったのか!!」

 だが、副司祭はその事で混乱し、全く見当違いな事を言い出した。

「五月蝿いッ!!!」

 ダンッ!! と、もう一つ机を叩く音。
 向こうのペースに嵌れば、時間を取られる。ある意味、剣を突きつけてでも聞き出さなければならないと考えていた。
 少なくとも相手はエルナさんより目上だが、一切そんな事を構ってなど居無い。
 腰に手を持って行き、抜刀の構えを取る。

「くぅ・・・!!」

 その様子と、エルナさんの後ろで『止水』の構えを取るオレを目視して副司祭はひるみ、
 そして、何を思ったか・・・・ニヤリと、一つ笑った。

(・・?)
「誰か!! 誰かおらぬか!!」

 そして、そう、声を上げだしたのだ。
 そう。ここは教会内部。そこに副司祭と言う立場の人間へ詰め寄るただのシスターと孤児成り上がり神父。
 それに、前回の聖女の器を見殺しにした支援士が居たとなれば、教会の人々はどちらへ味方に付くか。
 言うまでも無い。副司祭の方が被害者となる。

「ちょっと!! 今、人呼ばれれば・・・!!!」

 同じ考えなのか、ケルトも流石に焦った。
 だが、焦ってどうなるものでもない。向こうは、止める訳でもなく叫び続る。
 さらに、遠くから足音。確実に、こちらへ向かっている。
 ・・・もしも阻害されれば。こうやって乗り込んだ意味など無くなる。
 だが、肝が据わっているというか・・・相変わらず凄むエルナさんに対し、まだまだ声を上げる副司祭。
 そして、遂にオレ達の後ろからドタドタと教会の兵が駆け込んできた。

(ちっ・・・!!!)

 ・・・状況は、一気に芳しくなくなった。
 このまま黙っていれば、追い出される事は必須だろう。
 だが、ここで戦闘を行っても、聞き出すべき情報が有耶無耶にされてしまう。

「ちょっ・・!! エルナ先生!! 聖女の器の事なのです!! 流石に内乱してる暇は僕たちにないでしょう!!」
「助けてくれ!!!」
「副司祭殿!! 如何なされた!!」

 だが、機転を利かせ、『聖女の器の危機』を主張しようとしたケルトの叫びも、副司祭が気付き阻害される。
 その間に、駆け込んできた教会兵ジャッジメントの集団に囲まれてしまっていた。

「アルティア様の尖鋭兵達よ。良く来てくれた!! こいつ等をさっさと引っ張り出してくれ!!」

 その言葉で、オレ達は腕や服を掴まれる。
 抗っては見たが、聖術で強化されているのか、中々にしぶとい。
 ・・・このまま教会から放り出されるしか無いのかと諦めかけた。

「ちっ・・・」

 ・・・が、エルナさんは正直カーディアルトとは思いがたい舌打ちを一つした後、
 ポツリと、呟いた。

「・・・・ゴメンナサイ、おばあちゃん・・・。貴女の孫、エルナは悪い子です・・・掟を破り、私情で切り札カードを使わせて頂きます」
「何を呟いておるシスターエルナ!! 私の部屋での愚行・・・お前とケルトはしばらく謹慎とすr」

 顔を赤くして怒鳴る副司祭の声をさえぎり、
 エルナさんは、この場に居る副司祭、ケルト、そして、ジャッジメントに振り返り、声を発した。
 高らかに、宣言するかのように。

「聖フロリアの名に置いて命ずる!! 我が名は『エルナ・フロリア』。その命に逆らうならば、その身に聖アルティアの代理として神罰を下さん!!
 我が汝らに与える命は一つ!! この愚劣な男より『聖女の器』に関する情報を吐き出させよ!!」


 そう。その透き通るような声は、この場の全ての人の耳に届き。
 そして、彼等は硬直し、動揺した。

「・・・え?」
「ふ、フロリアだって!!?」
「ふ、フロリアだと・・・!!??」

 呆けた声をあげるオレに対し、ケルトと・・・それに、副司祭までもが、驚きの声を上げる。
 ・・・正直、エルナさんが何を言ったのかは良く判らない。
 しかし、コレだけはいえる。
 エルナさんの言った『フロリア』と言う言葉が飛び出した瞬間に、周りは爆発的な騒ぎに包まれた事。

「フロリア・・!?」「聖術の始祖・・・その家系!!??」「馬鹿な、その話は伝説だ!!」

 そういった、声。その声が、ザッと広がり、この場を更に混乱させる。

「ば、馬鹿を言うな!! あ、あんなものはアルティア様の話を正当化するための存在!! 伝説に過ぎぬ!! 嘘に決まっておる!!」

 そう声を上げ、この状況を再び自分の方へと整えようとする副司祭の叫びは、
 先ほどエルナさんが行った発言よりも印象が弱く、この混乱した場に置いてはなんら意味を持ちはしなかった。

「あら? 副司祭殿。それに、ジャッジメントの皆様。もしこの事が本当なら・・・最司教様より直々に処分を言い渡される栄光が御座いますわ。
 それでも構わないのであれば。どうぞこの『フロリア』の身体に傷を付けてみなさい」

 その一方、余裕な態度のエルナさんに、副司祭はうめき声をあげる。
 その態度、その言葉。それを目視した尖鋭のジャッジメント達は、オレ達を捕らえていた手を引く。
 風向きは、ただの一言で変わった。
 その事で、副司祭はガクリとうな垂れ、

「くそっ・・・!! 相手が・・・悪かったか・・・」

 そう呟いた。
 ・・・だが、ハッキリ言ってオレには疑問ばかりであった。

「なあ、ケルト・・・フロリアって何なんだ・・・?」

 とりあえず、ケルトにその事を問う。
 それに対して、ケルトは「ヴァイも孤児院に居た時に習ったじゃないか・・・」と、思いっきり呆れて返した。
 まあ、そうだとしても寝ていたか聞いていなかったかしていたのだろう。
 それを判っているケルトは、呆れながらもオレの問いに答えを返してくれた。

「フロリアっていうのは、僕たち教会の秘術・・・この『聖術』の始祖となった人の事さ。・・・名は、『エルナン・フロリア』」
「エルナン・・・? 男?」
「ああ。アルティア様の時代、彼はその『傷を癒す奇特な魔術』、彼が自称する『聖術』を使って、仲間をサポートし、
 また、その知識をもってアルティア様の指揮を補佐する役割を担っていたんだ。
 つまり、フロリア様は、アルティア様が聖術を使えるようになる為の先生でもあった人物なんだよ。
 この『アルティア教』も、崇高する対象はアルティア様だけど、設立した初代はフロリア家なんだ。
 だから、その名前は教会のどの人物の発言よりも強制力があり、
 それ故に、安易に『フロリアの血で無き者が』その名前を使えば、重い刑罰がある・・・。
 だけど、今までにフロリアの名前で動いた事件なんて無かったんだ。
 だから、教会の中ではフロリアの名前は伝説だとか言われていたんだけど・・・まさか・・・」
「・・・」

 その目の前に居るエルナさん。・・・エルナ・フロリア。
 思えば、聖術の始祖となった人物『エルナン』と、彼女の名は酷似している。
 絶対の自信。ハッタリに使うには危険すぎる名前。
 確実に。とは言い切れぬも、逆らう事を許さない彼女の姿勢は、その場の者達を動かしたと言うことだ。

「・・・副司祭殿。これは、どう言う事か?」
「さ、最司教様!!??」

 そして、この動乱を聞きつけたのか、さらに混乱を呼ぶ人物が、この場に現れる。
 ・・・最司教。つまり、現在このアルティア教に置いて、『表面上』一番偉い人物。
 ・・・そして、事実上はフロリアの次に偉い人物。と言うことか・・・。

「エルナよ・・・その名。使ってしまったのか・・・」

 先ほど着たばかりなのだろうが、最司教はこの場の状況を一目で見て判断し、エルナさんにそう声を掛けた。
 彼ほどの力を身に着ければ、『少々のあった事』。『物』からの思念を感じて、理解するのだという。
 ・・・まあ、本当かどうかは信じがたいことだが。

「はい。・・・わたしは、今は家系の事情がどうこうよりも一人の少女の命を尊厳します・・・『フロリアの名を私情で使ってはならない』。掟を破った罰はこの身に背負います」

 目をギュッと閉じて、エルナさんは最司教に頭を垂れる。
 それだけに威厳あり、そして、敬えるべき人物なのだ。
 ・・・それは、教会の人間ではないオレでも、理解が出来た。

「ふふっ・・・。お前は、昔からそう言った娘だったな。なんでも、自らの責任として荷物を背負う娘・・・。
 それ故に、自らの責任と重荷を背負うか・・・儂には、これ以上お前に荷物を背負って欲しくは無い。
 フィナの事も、自らが如何に辛くとも、決して彼女の傍を離れる事はなかった・・・だが、それも良し悪しだな」
「・・・恐縮です」

 そのやり取りで、周りは『フロリアかも知れない』という事象を『フロリアである』という事実として認識し、
 そして何より、エルナさんへそう声を掛けた最司教の目前、副司祭に味方など付きはしなかった。
 形勢は、コレで完全に逆転した。
 エルナさんから副司祭へ・・・柔らかな声から、今度は威厳ある声で、話しながら
 最司教は、副司祭へと歩み寄った。

「副司祭よ。何があった?」
「・・・それは」

 口ごもり、副司祭は最司教より目を背ける。
 だが、最司教はそれを見て直ぐに鋭い声で制した。

「あらかじめ言っておくが、如何に巧く嘘偽りを申して我が目を誤魔化せようとも・・・アルティア様の目を誤魔化す事は出来ぬぞ!!」
「・・・はっ!! 全てお話いたします・・・前回の、聖女の器事件を含め、全て・・・!!」

 その、思わず聞き流してしまいそうになった一言に、オレは驚愕した。

「前回だと・・・!!?」

 まさか、前の・・・ノアの時にまで、この男が加担しているとは思って居なかったのだ。
 憎悪に憤るオレにケルトがなだめ、押し留まる。
 喋る前に殺しては、それこそ此処まで上手く行った流れが水の泡になってしまう。
 ・・・そして、副司祭は語りだす。

「前回の聖女の器『神託の儀式』のその日。
 私は神託の儀式と言うモノをこの目で見たく、研究心と好奇心を抱え、グノルの地下でその様子を見ようと思ったのです・・・!!
 ですが、そこで私は足をくじいてしまったのです・・・。
 足が思うように動かない上に、動きの遅い人間など、魔物にとっては格好の獲物でしかなく、奴等は私に襲い掛かってきました・・・。
 それを、私は必死に逃げましたのです。研究心と好奇心も、恐怖心には勝てない・・・死にたくないと、懸命に走り逃げました。
 その助けを求めリエステールに走る途中で、見かけたのです。前回の聖女の器と、そして、その護衛であったブレイザーの少年を」
「っ・・・!!」
「私は悩みました。これ以上追われながら助けが来るかどうかも判らない事と、明らかに未熟な彼等にこの魔物を押し付けてしまうか。
 ・・・私は、聖光には少々自信がありました。そして、私は心を決めたのです。
 体力は削られたモノの、残ったメンタルを全て使い、魔物へ攻撃をしました。
 だってそうでしょう!! わたしは生き延びたかった!! 少しでも生き延びる可能性の高いほうを選びたかった!!
 聖光で少しでも私の方が強い事を証明できれば、魔物はもうひとつの獲物に向かうと思ったのです。
 私の思惑通り、魔物達はその二人の方に向かいました。
 私は、生きてリエステールの門を潜れたのです・・・ですが!! そこからが本当の地獄でした!!」
「・・・ヴァイ、今は抑えなさい」

 その話を聞いて、エルナさんはオレの拳を撫でる。
 オレが此処まで苦しんだのも・・・何より、ノアが死んでしまった事も、
 全て、この男の責任だと言うのだ。
 だが、エルナさんの言う事は判る。このまま殺しても、何も変わりはしない。
 ずっと、オレの拳を優しく撫でるエルナさん。
 ・・・その拳を見れば、気付かない内に、うっ血するかも知れないほど強く握り締められていた。

「私は一人の神父にその事を言われたのです!! 聖女の器を犠牲にして生き延びた聖職者にあるまじき者だと!!
 その事実を公開して、他の人物をこの地位に座らせるかどうかはその神父の手に委ねられていた!!
 私はこの地位から離れたくなかった!! だから私は大人しくそいつに従うしかなかった!!
 今回の魔物の討伐など全て嘘だ!! お前達をリックテールの方に行かせる指示を受けたから私はそうした!!
 計画書は全部机の上だ!! 今まで私がしてきた事は全部無駄だ!! 好きに見れば良い!!!
 ああ! 何が悪い!!? 私は生き延びたかっただけだ!! この地位を捨てたくなかっただけだ!!
 お前達もそうだろう!? 自分の死に際に立てば、相手の事など」

 そこまで言った刹那。ふっと一人が副司祭の前へと動き、そして、
 まるで、思いっきり手を打ったような、乾いた音が響いたのは、同時だった。
 そう。ガマン出来なかったのはオレだけじゃない。

「・・・いい加減になさいよ。この人間のクズが」

 彼女も・・・エルナさんも、ずっと耐えていたのだ。
 重要な事は吐かせた。
 だから、エルナさんは平手を思い切り副司祭の顔に叩き込んだ。
 ・・・彼女は、一度オレの方を見て、申し訳なさそうに顔を俯かせる・・・オレがするべき行動を取ってしまった事を詫びて。
 だけど、オレは首を横にゆっくりと振った。
 ・・・だって、それだけエルナさんも耐えられなかったのだろうから。
 それを確認してから、エルナさんは一つ頷き、副司祭の方に身体を向けなおした。

「・・・生き延びたい? そうでしょうよ。自分の命がヤバけりゃ生き延びたいって思うのは道理・・・
 だけどね・・・全く無関係の人に悲しい想いをさせて、責任まで押し付けて・・・・
 全部が全部、自分の世界だなんて思ってんじゃネェだろうなこの腐れた頭はっ!!!??
 その事で、一緒に帰ろうって護ろうとした人間が居んのよ!! テメェの価値観で知ったような口聞くんじゃねぇ!!!!!」
「・・・・・」

 胸倉をつかみ、揺さぶって叫んでから、エルナさんは突き放すように副司祭を離した。
 そして副司祭は身体を床に打ちつけ呻き、身体を起こしてからは、呆然と、殴られたところに手を当て、エルナさんの方を見ていた。
 ・・・そして、ありえないほど荒れた語気でモノを言った後で、エルナさんは一つ息を整え、皮肉を込めて言葉を続ける。

「・・・この事実は、直ぐに教会全部に広めてやるわ。『フロリア』の名を使うまでも無いわね。
 アンタは、その時のブレイザーの少年と同じ・・・いいえ。それ以上に苦しい思いをしながら惨めに生きていくのよ。
 今の地位だって、直ぐに他の副司祭候補者たちが、その話をネタにアンタを扱き下ろしてくれるでしょうから、わたしから面倒なマネはしないわ。
 それに、ジャッジメントの下す裁きによって、アンタの今あるお金はプラティア家に慰謝料として払われるでしょう。それに、教会を騙してきた事実。それも罰金が科せられると思うわ。
 どう? 権力も無い、お金も無い。アンタはこの教会にいる限り、一生底辺で這いつくばって生きるしかない。嫌なら教会を出れば良いわ。それを止める権利はフロリアにも無い。
 だけど、今まで甘い蜜しか吸ってなかったアンタに、一体何が出来るかしらね? 八方塞も良いところじゃない。でもこれも、全部アンタが蒔いた種よ」
「う・・・うぉぉぉぉおおお・・・・!!!!」

 そのエルナさんの責め苦に、副司祭は地に顔を伏せ、みっともなく泣き始める。
 オレは、怒りがどうとかは全部エルナさんが代わりにやってくれたから、もう、よかった。
 ただ、この副司祭を見てオレは、

(・・・哀れな奴だ)

 そう思った。
 ・・・そう。この場で一番怨みを持っているだろうオレが、この男に対してこの思いを持ったのだ。
 誰もが、この男に同じ感情を持ったに違いない。

「!! ヴァイ、コレを見てくれ!!」

 と、此処が終点ではないのだ。気を持ち直して、机の方を向いたとき。
 既にそこで、雑多な机の上から一つの書類を引っ張り出したケルトがオレを呼び、手招きをいていた。
 きっと、『計画書』の筈だ。

「・・・!! なんだと・・・!!!」

 それを読み、オレは驚いた。
 そこに書かれていた計画・・・リスティの、危機。

「っ!!!」

 居ても立っても居られなくなり、オレはその内容の重要な部分を頭に叩き込み、直ぐに駆け出した。

「ヴァイ!! どこに行くの!!??」
「決まってる!! リスティを・・・リスティの『存在』を護りに行かないと!!」
「ちょっ・・ヴァイ!! 待ちなさい!!」

 後ろ手のエルナさんの言葉に待てるはずも無い。
 オレは、直ぐに教会を飛び出し、リエステールの南門を駆けて出た。
 ・・・既に、フェルブレイズは鞘から抜かれていた。




-リエステール南街道~グノル神殿シュライン


「貴様ノ持ッテイル・・」
「邪魔だッ!!!」
「ガフッ!!」

 相手からは目視も出来無いだろう。止水から斬り抜きへの連携を剣闘士の速さを持って繋げ、胴から二つにゴボルトを斬り抜く。
 今のオレに、容赦などする余裕は無い。
 本当は馬車の一つでも捕まえてかっ飛ばせれば一番早かっただろうが、生憎と南門へちょっとする途中の目に付くトコロに馬車は無かった。
 走る。ただ、グノルに向かって走る。
 ケルトが副司祭の机から出した紙には書かれていた。
 ・・・『聖女の器を用いて』行われる儀式の内容。その計画。

「死にたくないなら・・・どけぇぇぇぇっ!! 襲破斬!!!

 剣旋風を巻き上げ、
 眼前の土ムカデワーム巨大蜂ビー闇烏シャドウクロウなどを斬り抜き、走り抜ける。
 ・・・とにかく、リスティの身体は無事だ。
 だが、肝心なのはリスティの『心』が危機だという事実なのだ。
 護らなければいけない。
 誰の為? ノアの為か?
 違う。彼女の為だ。
 ドコと無く放って置けなくて・・・出会ってから、しばらく。
 ノアの影を持っていたのは事実だ。だけど、オレと付き合いを持ち、慰め、励ましてくれたアイツ・・・
 それは、確かに彼女なのだから。

「着いた!!」

 グノル神殿。
 その地下の封印区画に入る直前。そこに、一つの隠し扉があるのだという。
 ・・・そこが、『ヤツ』の居場所。

「!!??」

 だが、やはり向こうも馬鹿じゃない。
 既に封印区画が開放されているのだろう。
 覗き込めば、大量の死霊がグノルの地下に溢れていた。
 ・・・コイツ等は、長い地下の生活により、日光には耐えられない。
 その熱と光だけで無力化されてしまうのだろう。
 だから、ヤツ等がフィールドで動き回れるのは夜の時間。
 そう。夜になればそこかしこに出歩くのだろうが、今は昼方。
 出てくることはない分、そこに魔物たちは溜まり、押し合い圧し合いの状態であるのだ。
 ・・・戦闘におけるメインは、此処となる。如何にダメージを少なく、隠し部屋に向かうかが重要であった。

「ちっ・・・!!」

 だが、下手に突っ込めば・・・いや、下手に突っ込ま無くとも、逆にやられる可能性が高い。
 相手は、集団だ。そして、集団で襲うことによって、オレと同等くらいのナイトを押し返したのだ。
 躊躇する・・・だが、

(だけど、オレは・・・護りたいんだ!!)

 ・・・だから、待つことは出来無い。

(行くしか無ぇだろ・・!!)

 覚悟を決める。
 この身が動かなくなるまで、彼女を助けるまで、
 オレは、剣を振るうと・・・

「待って」
「!!?」

 ・・・だが、それを制するような一つの声。
 気付けば、一人の子供が、オレの後ろに立っていた。
 その少女は、背にはハルバード・・・業物から考え、パラディンナイト・・・?
 いや、違う。彼女の身体はオレと同じ『速さ』を追求した作りだ。
 一見で図れる実力はBランク中ごろ。子供とは言え、油断の出来る相手ではない。
 ここは、敵陣なのだ。ヤツが、どんな手を用いて来るかも判らない。

「何用だ」

 フェルブレイズを抜刀の構えとし、少女に問う。

「キミが街を飛び出していくのが見えたから・・・。
 この先、一人で行くの? それでもしキミが死んでしまったら、キミが助けたい人を助けられない。
 ううん。きっと、キミが助けたい人は、自分を助けようとして死んだキミに対し、物凄く引け目を感じる。
 ・・・散々キミが経験した苦しみでしょ?」

 そして、その少女はオレの問いに、正論を返した。
 ・・・その目に、曇りは無い。彼女は、彼女の意思で動いている。

「・・・!! じゃあテメェはどうしろって言うんだ!! このままリスティを見捨てろって言うのか!!」

 だが、それとこれとは別だ。
 どうにもならない状況に対して、オレはいきり立ち、
 その叫びに、目の前の少女はふっと陰りのある微笑を浮かべ
 一つ目を閉じて言った。

「・・・だから、支援士があるんじゃないかな? その意味、もう一度考えてみれば、答えは直ぐに出てくると思うよ」
「・・・・言いたい事があるならさっさと言え」

 焦る今、含み有る言動が妙に、腹が立つ。
 時間が、少しでも惜しいのだ。本来なら、構っているヒマなど無いのだ。
 ・・・・・・・・・・だが、次の言葉は、オレの中へと深く突き刺さったのだ。

「ワカンネェか、ヴァイ。・・・お前は、何時まで一人で戦おうとしているんでぃ?」
「・・・!!?」

 そう、その少女の後ろ。馬車から出てきた人々。
 ・・・マスター。

「ったく、依頼断ってまで来てやったんだぜ。
 ・・・まあ、カワユイ子龍パピードラゴンちゃんの頼みだかんな。
 言っておくが!! 絶対にお前の為じゃネェからな!!」
「・・・テメェは一言余計だ」

 グリッツ。

「ヴァイ。このまま突っ走っても怪我をするだけだ。・・・それに、ノアの幼馴染だったのは、キミだけじゃない」

 ケルト。

「ま。封印された魔物は当時ほどの力は無いって言うし、聖光能力なら有る程度は消し飛ばせると思うけど」

 エルナさん。
 ・・・そして、

「・・・・兄貴」
「偶然コッチに来ていてな。・・・久し振りだな。それにしても、お前は相変わらず見たいだが」

 その落ち着き払った態度で居るのは、北リックテールAランクリーダー支援士。聖騎士パラディンナイトのヴァジル。
 そう。北に南に支援士に教会の人間。
 それだけの、人が・・・協力してくれる『仲間』が、揃っている。

「今は少しでも戦力が欲しいところだろうから、私も力を貸すよ」
「お前・・」

 そして、更に一番初めにオレを追ってきた少女。
 その娘が、人差し指を立て、オレの言葉を制し、不思議と落ち着いた微笑みを浮かべながら、

「ティールって呼べば良いよ」

 と、言ったのだ。
 それに対し、オレは一つ頷き答え返す。

「・・・ああ。ティール。それに、みんな。頼む・・・リスティを助けるのに、手伝ってくれ!」

 その場に居る皆が、一つ頷き返す。
 ふと、オレは気付いた。
 ―――――負ける気がしない。
 ずっと、護る事を恐れてきたが、皆で立ち向かうと、不思議にその気持ちが湧いて来ないのだ。
 ・・・行ける。いや、行かなければならない。

「―――行こう」

 ・・・そして、戦いの火蓋は切って落とされた。




-グノル地下-


「うおぉ!!? 思ったよりも数が多いじゃねぇか!!」

 先に様子を見に行ったマスターが、声を上げて驚く。
 ・・・だが、今思えば、

「つかマスター。その筋肉は飾りなんじゃ無ぇのか?」

 そのグリッツの言葉に、オレは頷く。
 そう。普段マスターは、ぶっちゃけ奥さんに弱い姿とか。
 昼間から酒を飲むような相手しか叱り飛ばさ無いが、奥のゴロツキは相手にしないとか。
 ぶっちゃけ、『戦える』という事を肯定するようなケースが見当たらないのだ。
 いや。むしろ『戦え無い事』を証明するケースの方が多い。
 例えば、酒場にケンカはつき物だが、仲裁するのはマスターではない。酒場の客である。
 しかし、その隆々たる筋肉の賜物か、馬鹿でかい・・・刃の部分だけで、人一人分の長さはあろう斧を持ち出してはいるのだ。
 ・・・だが、武器が良くとも本人が弱いのでは、話しにならないのだ。
 しかし、マスターはそんなオレ達の様子を見て、ふっと・・・まるで、ココではなく、遠くを見つめる・・・そんな表情をして、オレ達に言った。

「・・・お前ぇ達には冗談に聞こえたかも知れねぇが・・・儂は、支援士の時代、『狂気の獅子』と呼ばれていた。
 ・・・だが、今、その『狂気』は無ぇ。昔、儂の仲間が言っていた言葉があるんでぃ。
 ――――『頭を下げれば解決するなら、それも一つの“戦い方”だ』ってぇな。
 それを、当時儂は笑ったんでぃ。『なんて脆弱な考えだ』ってぇな
 当時の狂気の獅子は、それに自惚れて・・・自らの力を、名声を肯定する為に、リックテールで一匹のフロストファングを狩ったんでぃ。
 ・・・だが、儂が奪った命は、一匹のフロストファングの赤子を護る母だった・・・。
 そう。儂はそのフロストファングを倒してから気付いたんでぃ・・・儂は、とんでもない間違いをしていたんだと。
 ・・・自分の為にしか斧を振るえなかった狂気の獅子は、護れた者を護れなかったんでぃ。
 いいや。本当に『護る』って事の意味を履き違えていたんでぃ。
 確かに、一つ頭を下げれば解決するような事なら、それがどちらも傷付かぬ。弱い選択じゃねぇ・・・真に強いから、出来る選択。
 その日から、支援士の道を断ったつもりでいたが・・・・やはり、それも時と場合ってヤツだな。
 再び、戦の為に『グランヴァルディッシュ』を出す事になるとは・・・
 ヴァイ・・・儂は正直、仲間の為に剣を振れるお前ぇが羨ましいと思うぜ。
 だが、儂は自分の戦いたいように戦う戦法しか知らねぇ。道を空けて、敵を寄せるぐらいしか儂には出来ん。
 ・・・だから、今見せてやる。儂の力ってモノを――――――」
「え・・?」

 そう。マスターが語った過去。それを終えた刹那。
 ・・・気づいた時には、

「うぉおおおおおおおお!!!!!!」
「なっ・・!!??」

 見る間に、マスターは戦いの顔に・・・そう、まさに『狂気の獅子』と化していた。
 その様子に、オレとグリッツは呆気に取られる。
 いつも、冗談を言ったり、他の支援士に主導権を握られるようなマスターからは遠い、その戦顔に。

「邪魔だあああああ!!!!」

 まるで、大地が揺さぶれるかのような大音声。
 直後、その身体ごと巨大な死霊の固まりの懐に飛び込み、第一閃。

「どぅ・・・・せぁぁぁあ!!!!!」

    龍 牙 絶 断りゅうがぜつだん

 その斧は、“龍の牙を絶対に断つ”と言われるほどの切れ味を持つ。
 それに“喰われた”巨大な固まりは、一瞬にして真っ二つになり、拡散していく。
 ・・・その強さは、圧倒的だった。だが、先ほどのマスターの口ぶりには、この世にはまだまだ彼をも超える人物が居るという事を語っている。
 この実力を、今まで隠していたのか・・・思えば、オレはマスターの力量を読んだ事は無かった。
 だが、この実力は兄貴・・・いや、それ以上の力量。Sランク支援士のリーダーレベルだともいえる。
 ようは、量りきれなかった。
 死線を幾つも超えたが故に、この程度の事では恐れることなく狂った獅子の如く敵を蹂躙し、
 場慣れした技に、圧倒させられる。
 こういった『カタチ』の相手とも、何度も渡り合ってきたであろう。
 これが・・・『年季』と言うモノ。
 たかが20年生きた程度のオレでは、得ることの出来ぬマスターの『強さ』。
 いや。今ならわかる。彼は、この力を使わないんじゃない。
 ・・・この力を、使いたくなかったのだ。
 もし、酒場の荒くれどもにこの力を使えば、確実に相手を殺してしまう。
 それは、彼の望むところではない・・・きっと、何度も荒くれ達に頭を下げているんだ。
 ・・・それは、マスターの持つもう一つ、『力とは別の強さ』――――

「・・・さすがは、人々から狂気の獅子と呼ばれた男、か・・・これはオレも、負けてはられないな」

 槍を構える兄貴に、オレも頷いて愛刀フェルブレイズを抜く。
 マスターが、一気に数を減らし、そこに隙間が生じた。
 ・・・封印区の奥からはまだまだ出てくるだろう。だから、この隙を殺すわけには行かない。

「兄貴、左側のそっちは任せた!! ケルトは兄貴とマスターの支援を!!」
「判った!! ヴァジルさん、援護します!!」

 兄貴は、左方。オレは、右方に走り、封印区の中心を目指すように走る。
 さらに、防御型聖騎士パラディンナイトと攻撃型狂戦士ベルセルクだけではいささか不安だ。
 あの二人が如何に強いと言っても、攻撃を受ければ傷も付く。毒を受ける可能性もある。
 だから、純回復サポート型の神父ビジョップのケルトを送り、戦力を分散させる。

「道を作るよ!!」
「スマン! ティール!!」

 さらにオレは、右方の敵を切り倒し、ティールに左方を任せながら二人で真っ直ぐに突き進んでいく。
 彼女のハルバード捌きは大した物で、彼女がレンジを与える隙が無ければ、オレは彼女に勝つ事も怪しいかもしれなかった。
 それだけに、心強い味方なのである。
 ・・・だが、まだまだ敵は減らない。前方には、軽く三桁は行きそうな『不浄なる者』が居る。
 オレは死霊の爪を弾き返し、攻撃の気配を読んだ。
 ・・・次に来るのは、ティールの右後ろからである!!

「っ!! ティール、後ろに飛べ!!」
「!! っ・・はっ!!」

 そこに居たのは、またしても、色々と混ぜあった巨大な死霊の固まり。
 そこから腕が伸び、ティールを捕らえようとしていたのだ。
 その指示に、彼女は的確に避けた。
 ・・・流石だと思った。速度にやや難のあるハルバード使いが、良く指示に間に合い、避ける事が出来たと思う。

「しかし、デカイな」
「・・・」

 先ほど、ティールに奇襲をかけた魔物を見ながら、オレは思わず呟いた。
 ・・・もちろん、デカイだけあって、硬いだろう。
 マスターはさっき、両断をしていたが・・・それをブレイブマスターに要求するのは酷だ。
 あくまでブレイブマスターの戦い方は、『速さ重視』なのだから。
 また、ティールも業物は『ハルバード』。力にペナルティを背負って早さを上げているのだろう。
 オレの読みでは、彼女に両断するほどの力量は要求出来無い。
 だからと言って、兄貴やマスターは遠い。あっちはあっちで、死霊たちを引き寄せ戦っているのだ。
 ・・・そう攻め倦ねいている間に、横合いから一つの影が通り、巨大な死霊に斬撃を見舞ったのだ!!

「はっ!! ・・・へっ。ただ硬ぇだけで、避けられりゃ攻撃も当てれねぇデカ物のクセによ!! ちっとは痩せねぇとモテねぇぜ!!」

 そう。グリッツである。
 彼がソードブレイカーを用いて、こまめな攻撃を繰り出し、気を引いている。
 その策謀的に相手を挑発し、囮になりながら戦闘を行うのが聖剣士セイクリッドの戦闘方。
 その考えには、彼なりに既に一つの『策』があったのである。

(・・・回りこんで先を急いで)
(エルナさん・・)

 後ろから肩を叩かれ、そうエルナさんから指示を受ける。
 今では死霊はグリッツの方に気を取られ、こちらへ来る死霊も数がそう多くない。
 オレは一つ頷き、ティールと共に駆ける。

「聖フロリアの聖法なる裁きの左手よ・・・正義の太陽サン オブ ジャスティス!!!」

 そして駆け出してから直ぐ、後方よりエルナさんの術式。さらに、轟音。
 だが、その威力は『たった一言』で片付けられる力ではない。少なくとも、魔力を収束させる為の時間が必要となる。
 ・・・だが、これは前のときと同様だ。第五節能力を、ただ一言で片付けてしまった。
 いつもエルナさんが唱えたり、ケルトが使う『聖術』の詠唱とは違う。・・・『フロリア』という名前が詠唱に入る事。
 たぶんこれは、聖術の祖である『フロリア』が一家相伝の術として伝えてきたのだろう。
 ・・・そして、この力は、フロリアの力だということ。

「後は私が道を作るから、ヴァイはそのまま駆けて」
「判った」

 だが、オレにはオレのやる事がある。
 死霊たちの間を縫うように走りながらティールと二、三言、会話を行い、
 オレはそのままティールに背中を預け、駆け抜ける。
 背中からは、死霊たちが攻撃してくる気配。
 本来のオレなら、立ち止まって迎え撃っていた。
 だが、それを気にせず走り抜ける。
 ・・・・それは、仲間が居るという事。

「―滾るは心――燃えるは魂――我が力、内なる灯火と共に―――――」

 そして、背後から一気に力の収束!!

「ブレイブソード!!!」

 ティールは、そのハルバードを振るって、彼女の全面一帯。オレの背後の敵を葬り去った。
 斬撃は来ない。魔物たちは、その一撃に動揺している。
 ・・・エルナさんのフロリアの術式とはまた違う。しかし、彼女は膨大な力を放出させた。
 ――――それは、まるで“覚醒”の類。
 しかし、それを気にする余裕は無い。後ろから前からまだまだ死霊は迫ってくる。
 その隙間を巧く駆け抜け、封印門の右方の壁に貼り付く。
 死霊達は、“何故かそこだけに、妙な『間』を作っていた”
 ・・・こいつ等も、操られているとは言え元々は魔物だ。
 魔物は人間以上に『事象』というモノに敏感で、そこが彼等にとって『近付くべきではないところ』であると
 操られる以上に本能が理解し、そこから距離を置いているのだ。
 ――――その近くに有るのは、『隠し扉』。その場所は、定期的に取引を行っていたのか、副司祭の持っていた『計画書』にも書かれていた。
 ・・・確かに、表面上の見た目は変わらない。
 だが、元々この辺りに冒険者が来ても、封印門を潜って地下封印区に入るのが目的だ。
 つまり、遠目で見ても何も無いこのような場所に、人が来る事などまず無い。
 少々大雑把に作られていても、気付かれはしないと判断したのだろう。

(!! 見つけた!!)

 探り当てた壁・・・どうやら、ノブのようになっているらしい・・・を開き、中に飛び込んだ。
 ――――全てに、決着をつけるため。




-グノル地下封印区前・・・隠し部屋-

「!! リスティ!!」
「? ・・・ほう。お客様とは珍しいですね。この儀式の見学者ですか?」

 部屋に入り、まず目に入ったのは『逆十字』・・・確か、反アルティアや、アルティア教の教えに反する人たちの象徴である。
 そして、それに吊るされるように・・・腕が、十字の端に鎖で絡められ張り付けられた、リスティの姿。
 気を失っているのか、随分とぐったりとしていた。
 ――――そして、その間に立つのは・・・

「――――フォーゲン・・・っ!!!」
「おやおや・・・近い未来、アルティアより上に立つ者の名。『様』ぐらいはつけるべきでしょう」
巫山戯るなっ!! リスティをこんな目にあわせて・・・・それだけじゃ無ぇ!! ノアの・・・テメェは、ノアの仇だ!!」
「仇・・・ですか。それは少々指す言葉として違う気もしますが。まあいいでしょう」
「・・・御託などどうでも良い・・・」

 そう。数年前の事件。それは、あの『計画書』に書かれていたこと。
 本来はあの時、ノアの身体を用いて、この『儀式』を行う予定だった。
 だが、副司祭の寄せ集めてしまった魔物に殺されてしまったノアでは、この『儀式』を行う事は出来なかったのだ。
 ――――必要になるのは、生きた聖女の器。
 だからフォーゲンは、副司祭をアゴで使いながら、時を待ったのだ。再び、聖女の器が現れる時を。
 そしてそれは、予想を遥かに早まり現れた。
 ・・・それが、リスティ。
 神託を受けた聖女の器を用いて、この『儀式』を行う為、効率を考えるなら、神託の儀の当日に実行するのが良い。
 リスティが目覚めた時、神託の儀は終わる。そこで、彼は『儀式』を実行するのだ。


 ―――――聖女、アルティアを甦らせる儀式を。


「前回はあの愚かな男のせいで失敗してしまいましたからね・・・ですが、今回はそうも行きません。
 しかしヴァイ。キミもつくづく聖女の器に縁のある人間だ。有る意味、天命とも言えるほどに」
「三度は言わん。御託はどうでも良い・・・リスティを返せ。さもなくば、斬る」
「おやおや。考えが単調というか・・・もう少し語り合う気は無いものか」
「・・・」

 フェルブレイズを抜き、正眼に剣を構える。
 もはや、聞く耳などは無い。
 ・・・フォーゲンの服飾は、教会のジャッジメントのモノである。それは彼のジョブを表している。
 ショートレンジに持ち込めば、十分に勝機が有るのだ。
 ――――だが、

「・・・・・・・え・・?」

 オレは、目を疑った。
 ・・・同時に、思わず声を洩らしていた。

「いや。私は儀式を行う為にキミを相手にする暇など無いのだよ。君の相手は、『その娘』がしてくれる」
「う、うそ・・・だろ・・・・・っ!??」

 いや。彼女は『死んだ筈』なのだ。
 正確に言えば、骨は既に教会の墓所に埋められている。
 この場に居る訳が無い。そう、死体でも何でも、ココに居るはずが無いのだ。

「・・・彼女は優秀なジャッジメント志望だよ。ふふっ、死体の入れ替えを行っておいて正解だったな。
 ・・・本来は、邪魔者が来た時に、少女を相手に。という事で油断させる目的だったのだが・・・まさか、その邪魔者がキミだとは思わなかったな。
 効果は抜群。というトコロかな?」
「・・・ノ、ア・・・?」
「・・・・」

 そう。目の前に居たのは、前聖女の器。ノア・アゼット・プラティア。
 オレの幼馴染で、16歳の聖女の器の儀式の際に死んだ・・・少女。
 その彼女が、錫杖を構え、ふらりと危なっかしい足取りで前に出てくる。
 ・・・その身体は白磁のようで、死体とは思えないほど綺麗なモノだった。
 だが、それに対して、そこから生気など微塵も感じない。

『そこで使われたのは・・・魔物自体を操る能力。いえ、正確に言えば、『死者を操る能力』と言うほうが正しいわね。』

「・・・くそっ!!!」
「ははっ!! どうした? 今度は君の手で彼女をもう一度殺してはどうだ?
 と言うよりも、彼女を殺さなければ、この娘を救う事など出来無いぞ? ・・・そうだ。良い考えがある。
 ノア君、キミの成長振りを彼に見せてあげなさい。彼はきっとキミの成長を泣いて喜んでくれるハズだよ。
 ふふ・・くくくっ・・・くはははははははははっ!!!!!」
「・・・」
「この悪魔っ!!」

 オレがフォーゲンに対し悪態を付くか付かないかの刹那。
 サッと、ノアが手を伸ばし、放たれる聖光・・・『アルティレイ』。
 光の粒子が螺旋を描きながら飛ぶ。それを回避し、

(アイツは死体だ。ノアじゃない。ノアの死体だ。彼女を動かなくすれば、リスティが助け・・・)

 オレは、一気にレンジを詰めた。
 四点を捉え、『死点突』・・・その一撃目を狙い放つ!!!!
 
(・・・っ!!)

 ・・・だが、反撃など・・・オレに出来はしなかった。
 いくら彼女が死体でも、その身体に刃を突き通すマネなど・・・

「・・っ!!」
「がっ・・!!」

 一瞬、その行動に彼女は首をかしげた。
 オレの剣が首筋まで来ても、目を虚ろに、震えもせず微動だにしない。
 だが、その首をかしげた状態で、無気力に錫杖を振るう。
 そのまま、錫杖の先で腹部を突かれ、オレの身体は後方に飛んだ。
 ・・・想像以上の力であった。たぶん。操られているが故に、力も限界値まで引き伸ばされているのだ。
 床に這い、腕の力で起き上がる。

「くくっ・・・くははははは!!!! どうした? こんな年端も行かない少女に吹き飛ばされる支援士では格好が付かぬだろう!!?」
「っ・・冒涜者が・・・!!」
「冒涜者、か・・・そうかも知れないな。だが、その言葉など直ぐに誰も言わなくなる。アルティア教は、本日よりフォーゲン教と変わるのだから」

 彼の計画は、アルティアを目覚めさせる事ではない。むしろ、それは計画の一部に過ぎない。
 アルティアを甦らせ、それを妻として召し、その上でアルティアを従属させ、教会を掌握しようというのが狙いであった。
 ・・・教会に置いて信仰対象であるアルティア自らが、自分よりも格上の存在を認めれば、教会はその人物を対象に崇めるだろう。
 中枢となるアルティアの存在は、それだけ教会に置いても大きい。
 ・・・そして教会は、自警団と協力してこの大陸の治安を維持しているほど力の有る場所だ。
 そこを掌握し、自由に出来る。絶対神として存在し、且つ、自分を崇めている信者を働かせれば良い。
 逆らうなら皆殺しだ。
 ・・・そういった考えが、計画書には書き綴られていた。

「余所見、している暇があるのかな?」
「っ!!」

 悔しいが、フォーゲンのその言葉で気付き、オレは地面を転がる。
 直後、耳の横で「ぶんっ!!」と空気の切る音。
 その僅差で目の前が吹き飛び、ノアの錫杖が地面を抉る。
 ・・・回避出来た。だが、警戒を解く事は出来無い。
 オレは距離を取り、ノアの出方を待った。
 避けるには、『止水』の状態で待機すれば良いだけだ。
 相手の動きと流れ・・・それを見切る『静』の精神で身構えていれば、攻撃を避けるなど容易い。
 だがこの『止水』。反撃技とセットになる『止水演舞』や『止水天翔』などの技がある。
 ・・・近くに居れば、つい反射的に攻撃をしてしまうかもしれない。
 馬鹿らしいと言われても仕方が無い。
 だけどオレは、ノアを傷つけたくなかった。
 ・・・たとえ、死体だとしても。考えは同じだ。その身体がノアのモノである以上、オレは護りたいのだ。
 だが、無情にもノアは聖光を放ち、オレはそれを避けるという命のやり取りを行っている。
 ・・・彼女は、オレを殺す気で居る。
 ――――そして事態は更に最悪なほうに傾いたのである。

「・・・ん」
「!!!」

 そのポツリと漏れた声に、オレはそっちを振り向いた。
 そう。それは現状で一番あって欲しくない状況。
 ・・・リスティが、目覚めたのだ。
 つまり、フォーゲンの計画が確信に動く状況

「・・・あれ・・ここ・・・・」
「お目覚めかな? 我妻よ」

 呆然とするリスティの顔が一気に目覚め、驚きに見開かれる。
 自分が宙に浮かび・・・いや、正確に言えば、両腕が鎖に繋がれているのだが・・・逆十字に貼り付けられている事に気付いたのだ。
 混乱し、そしてその目がオレの姿を捉え、

「ヴァイさん!! 助けてっ!!!」

 そう叫んだ。
 だが、オレはノアの聖光を避ける事で精一杯で、リスティへ助けに行ける余裕などなかったのだ。
 ・・・そして、更に続くリスティのその喚きに対し、フォーゲンは不快そうな顔をしてリスティの頬を叩いた。
 乾いた音が響き、リスティはしゃくり上げながらも、黙る。

「第一声にあの男の名を呼ぶとは・・・キミは、妻としての自覚が足りないようだ」
「妻って・・・・・?」

 フォーゲンの戯言に、リスティは理解していない気の抜けた声を反芻した。
 そんなフォーゲンとリスティのやり取りの間も、オレは横目で見ることしか出来ず、ノアからの攻撃を防いでいた。
 その為に、オレは助けに向かう事が出来ず。傍観する事となってしまう。

「ふん・・・まあいい。さて、始めるとしようか・・・その器に宿りし聖女の灯火よ
「あ・・怖・・怖い・・!! やめて、止めてぇ!!!!」

 本能的に何か悟ったのか、リスティは自らの身体が発光しだしたことで喚き、暴れる。
 だが、腕の鎖はしっかりと絡めてあるのか、リスティが抜けることは無かった。

「リスティ!! ・・・くっ!!」

 捨て身で助けに行こうかと足を踏み出したが、直後に反射的に身体を回避に動かす。
 ――――エンシェントブライト。第三節呪文が真横を通り過ぎる。
 フォーゲンの詠唱が始まってから、本格的にノアは妨害をして来て、あまり向こうを見ている余裕も無い。
 ノアは、無気力ながらも確かにオレを殺そうとしているのだから。
 ・・・攻防を行い、数分か。
 第何節の呪文なのかはわからない。だが、確実にフォーゲンの術式は完成に向かっていた。

・・・その身体に聖女の魂を今再び甦らさん!!!
「っぁぁぁぁあああ!!!!」
「リスティィィィィ!!!!」

 その、最後の小一節の後に、まばゆい光にリスティが包まれ、
 そして、再びリスティは、ぐったりと意識を落としていた。

「・・・リスティ?」

 呆然と、オレは呟く。
 ・・・また、間に合わなかった?
 術式は完成し、フォーゲンの計画は進んだのか・・・?

「いいや、違う」

 フォーゲンは、一つそう言って、リスティの頬に手を添える。

「彼女は・・・」

 それに反応してか、リスティは目蓋をピクリと動かし、目をゆっくりと開く。
 ・・・雰囲気が、リスティのモノではない。
 どこか落ち着き、大人びた印象を持っているのだ。

「アルティアだ」
「っ!!」

 この状況を、リスティ・・・いや、アルティアは見回し、息を呑む。
 そう―――『オレの方を、真っ直ぐに見て』。

「貴方は・・・ヴェイル? でも、此処は・・・」
「・・・ヴェイ、ル・・・?」

 聞いた事のある名前だった。
 それは、孤児の時、教会の授業で聞いた、『聖十字騎士団』のリーダー格であった、『ヴェイル・リンクルード』の名。
 彼の物語は『魔物と対峙する冒険譚』から『アルティアとの恋物語』まで存在し、男の子にも女の子にも名が知られる、部隊騎士レンジャーナイトから昇格した『聖女騎士クルセイド』であった。
 まったく疑問なオレとは反対に、その言葉で何を悟ったか、フォーゲンは面白おかしく笑い出し、語り始めた。

「はは・・ははは!! 面白い!! なるほど、キミが何故こんなに聖女の器に縁があったのか疑問に思っていたが、やっと謎が解けたよ。
 そうか、キミはヴェイル・リンクルードの生まれ変わりなのか!! 運命とはまさにこの事だろうな!!!」
「え・・・? 生まれ変わり・・・? でも、わたくしは・・・・生きているのですか?」

 その、アルティアは信じられないようにフォーゲンを見て、問う。
 その目を、得意げに見返したフォーゲンは一つ鼻をならし、

「ええ。私が貴女をこの現世に呼び戻したのです。素敵な事でしょう?
 聖女の器に貴女の魂を宿らせ、その身体を貴女に与えたのです
 言うなれば、『形見』と似た構造なのですよ
 ・・・聖女の器を形見にして、貴方の魂を物質に宿らせる。上出来の理論でしょう」

 だが、黙ってその言葉を聴いた後、アルティアは一気に気色ばんだ。
 そのまま慌て、言葉を返す

「馬鹿な真似は止めて!! 直ぐにわたくしの魂を昇華しなさい!! でなければ、貴方は・・・!!!」

 そう。その『忠告』の意味を持った叫び。
 その叫びに、フォーゲンは気に食わないようにため息を付いた。
 その暗い表情・・・態度に、アルティアは言葉を呑む。

「・・・何が、気に食わない」
「貴方も教会の人間ならわかるでしょう!! エルナンの理論。『輪廻の均衡』を!!!」

 だが、アルティアは直ぐにフォーゲンへ言葉を返した。・・・『輪廻の均衡』と。
 しかし、その言葉にフォーゲンは「ああ・・・」というつまらなそうな返事を返し、

「私はこれより教会の最高峰・・・今まで貴女が居た同じ場所に立つのです。
 エルナン・フロリア如きの理論など、関係は無い」
「・・・・愚かな人。例え、わたくしでもエルナンの理論には対立出来無いと言うのに・・・」

 二人の会話内容だが・・・正直、着いて行く事が難しい。
 第一、『エルナン』の立てた理論『輪廻の均衡』というモノをオレは知らない。
 だが、確実にいえることは、フォーゲンがアルティアを丸め込むという計画の第一段階は穏便に進まないという事であった。
 それゆえか、アルティアと会話をしていたフォーゲンは徐々に余裕が無くなっていき、ついにはイライラとし始めた。
 そして、最後にフォーゲンは「もう説教などはいいっ!!」と叫び、アルティアの言葉・・・彼曰く、『説教』を黙らせた。

「ならば良いでしょう。・・・貴女が私の言う事を聞かないと言うのであれば、貴女が愛して愛して止まないヴェイル・リンクルードの転生体を消して差し上げます」

 そう告げ、詠唱を始める。
 話の内容は理解していない・・・だが、コレだけはハッキリしている。
 会話の流れからして、狙われているのは――――オレのハズだ!!

「!! 止めて・・・ダメ・・・!!」

 それに対し、アルティアは今までの落ち着いた雰囲気から一変し、今まで見せなかった動揺が激しく、ひどく慌て始めた。

「助けたいでしょう? その身を投げ打ってまで。くくくっ・・・!! 歴史の繰り返しですね。
 確か歴史では、貴女が彼の身代わりに死んだのでしたね。・・・ですが、今回はそうも行きませんよ?」
「ちっ・・!!」

 フォーゲンの詠唱を阻止しようと動けば、先ほどまで様子見をしていたノアが、一気に妨害に量り始めた。
 詠唱が長い。理使いマージナルであれば、十分に平気な魔術かもしれないが、
 能力魔法に耐性の無い剣闘士ブレイブマスターでは、防ぎきれるものではない。
 判ってはいても、ノアが邪魔をして、防ぐ事などは出来なかった。

「砕け散れ!! カオス・ジハード!!!!
「っ!!!」

 眼前が白光に覆われ、熱に包まれる。
 直後に、巨大な爆発音。
 フォーゲンの放った魔力が、オレの居た一辺を焼き尽くしたのだ。

「ヴァイ!!!」




-グノル隠し部屋-

「ヴァイ!!!」

 轟音と共に、シスターエルナが隠し部屋に飛び込み、息を呑む。
 逆十字に吊るされ、涙するリスティ・・・アルティア。
 狂喜に笑うフォーゲンの姿。
 そして、能力が発動された傍で、苦しむように崩れているノア。
 その一帯が、焼けた瓦礫で崩れている情景。
 ―――だが、それを確認した直後、シスターエルナ・・・いや、エルナさんは言った。

「なーんだ・・・間に合ったみたいね」

 そう言って安堵し、エルナさんはゆっくりと息を吐いた。
 その言葉に、フォーゲンは笑いを止める。

「ふんっ。何が間に合ったと言うのだ? ジャッジメントである私の能力であの男は死んだ。あの聖光で無事な訳が無かろう?
 それとも何か、シスターエルナよ? お前はこの少女が無事であれば、あの男が死んでも構わないと言うのか?」
「勝手に殺すんじゃねぇ」

 そうゴチャゴチャと喋るフォーゲンを尻目に、オレはそう言って瓦礫をどかして出てくる。
 そのオレの様子を見て、フォーゲンは驚愕に息を呑んだ。
 ―――――当然と言えば当然だろう。・・・だって、

「ば・・馬鹿な!!?? 貴様、ブレイブマスターだろう!!? 聖光に耐性など無い!! あの能力に耐えたというのか!!! 無理に決まっている!!!」
「馬鹿はアンタよ。アンタの大好きな『聖女の器』の事なのに、情報を手に入れてないとは笑える話よね」

 だが、そんなフォーゲンの語りを無視して、オレは崩れ落ちているノアの傍に寄った。
 ・・・銀十字のロザリオを取り出し、苦しむ彼女に渡す。
 そのロザリオは、先ほどから光り輝いており、暖かい加護でオレを包み込んでくれていた。
 これが有ったから、オレはあの聖光に耐えることが出来た。・・・ノアが、ノアの『こころ』が、形見の力を介して、オレを護ったのだ。
 ・・・いや、本当は気付けなかっただけだ。
 オレは、知っていた。いつでも、この加護に『護られていた』事。

「・・・オレが護る筈だったのに・・・お前は、危なっかしいオレをずっと護ってくれてたんだな」
「・・・」
「お前の事・・・護るって言ったのに。結局、攻撃に巻き込んじまった・・・・ゴメン、ゴメンな」

 喋る事は無い。だが、オレの言葉に、ノアはゆっくりと首をふった。
 その彼女を抱きしめる・・・身体は冷たい。だけど、先ほどの『操られていた』それとは違い、今の彼女は、何処か『暖かさ』が有った。
 ・・・それはきっと、『心』なのかも知れない。
 オレは、くたりと動かなくなったノアをゆっくりと床に寝かす。
 ・・・聖光のダメージは、ノアの身体にも十分な被害を与えていた。もう、彼女が動く事も無いだろう。
 その一方で、エルナさんはフォーゲンに向かって言葉を発していた。

「貴方も知っているとは思うけど・・・形見って言うのは『想いの力』なの。正の感情でノアはヴァイを護った。死体を幾ら操っても、想いまでは操れないわ。
 ・・・残念ね、フォーゲン。貴方の計画、もう直ぐ終わるわ。既にわたしの力で自警団と教会の戦闘部隊がコッチに向かっている」

 腕を組み、ふっと笑いながらエルナさんはフォーゲンへと忠告をする。
 きっとそれは、本当の事だ。エルナさんは、ココに来る前に既に手を打っていたのだろう。
 一方、先ほどのエルナさんの言葉に対して、フォーゲンは一つ鼻を鳴らした。・・・まるで、小馬鹿にするかのように、

「ふんっ。馬鹿を言うな・・・たかが一介の下級シスター如きに何が出来る」
「・・・エルナン? いえ、貴女は・・・・?」

 ――――だが、その一言・・・アルティアの放った言葉で、フォーゲンの顔は驚きに変わった。
 そう。彼がアルティアだと認める彼女自らが、その名で呼んだのだ。
 『エルナン』と。教会に居る者である以上、彼もその名前が指す人物が一人しか居無い事を知っている。

「なっ・・!! アルティア・・・!! 貴様、コイツがエルナン・フロリアの生まれ変わりとでも言うのか!!??」

 アルティアに詰め寄り、フォーゲンは息を荒く問い詰める。
 アルティアの生まれ変わりに、ヴェイルの生まれ変わり、更にエルナンと言う名前が来れば、彼もそう思いたくはなるだろう。
 だが、それは違う。その真実は、エルナさんが自ら語った。

「わたしはエルナン・フロリアの子孫。フロリアの長女“エルナ・フロリア”。教会の人間であれば、『フロリア』の名の意味は理解できるでしょう?」
「くっ・・・!!!」

 その言葉で、フォーゲンはいよいよハッタリではないと理解し始めたようだ。
 焦りに、気色ばむ。
 今度は、時間を掛けて不利になるのはフォーゲンの方だ。それはきっと、ヤツも理解している。

「・・・終わりだフォーゲン。お前に、後は無い」

 剣を構え、オレはフォーゲンを睨む。
 どちらとも動かない。
 だが・・・その中で、フォーゲンは遂に怒りを爆発させた。

「くそぉ!! くそぉ!! くそぉぉぉお!!!! 今更、計画などはどうでも良い・・・!! 貴様等、散々我を愚弄しやがって・・・!!
 許さん!! 絶対にだ!! 貴様等全員此処で殺してやる!! ジャッジメントによる処刑の開始だ!!!」

 メンタルを放出させ、詠唱をせずに一気に魔力を収束させる。
 きっと、周りのメンタルだけではなく、自らのメンタルも注ぎ込んでいるに違いない。
 ・・・確かにその魔力は、この部屋を焼き壊すには十分な力と言えた。

「!! 止めなさい!!」

 アルティアは叫び、腕を引けば、鎖が腕に食い込んで顔を苦痛に変える。
 それを見たエルナは駆け寄り、『ラリラ』を唱え、癒し、アルティアへと声を掛けた。

「・・・アルティア様。止めても無駄でしょう」

 ゆっくりと首を振り、エルナさんはアルティアへと笑いかける。
 そのエルナさんの言葉に対して、アルティアは一つ微笑み、懐かしむような声を出した。

「やはり、エルナンの子なのですね・・・ですが、わたくしは罪人とは言え無下に投げたく無いのです」
「・・・そうかも知れませんね。『全ての人を包む心を持つ』。それは、例え罪人に対しても――――ですが、わたしはフロリアの娘ですから。
 きっと、一家相伝でこの考えが伝わっちゃったんだと思います。
 ・・・それに、もう時間です。私達では・・・もう、止める事は出来ません」
「でしたら、祈りましょう。『彼』に冥福があるように」


 直後、グノルの地下から巨大な爆発音が聞こえ。
 その爆発は、少々リエステールの地を揺らした。




-グノル地下-

「!!??」

 巨大な揺れに、ティールは身を伏せ、飛ばされないように力を込めた。

「うおっ!!! な、なんでぇ!?」

 その背を預けるマスターも、この揺れには驚きの声をあげ、キョロキョロと周りを見回す。
 既に魔物をあらかた片付け終え、封印区の門を再び閉めた後。
 残るは、そこかしこへと残っている封印区レベルの魔物を退治するだけになった状態である。
 そんな中で、この揺れ。流石に皆は、不安を持った。

「爆発・・・? マスター。ヴァイ達の方からのようです」
「おう、ヴァジル。そうか・・・それにしても、その丁寧な敬語は止めてくれ。儂には堅苦しくていかん」
「ははっ。生憎ですが、パラディン“ナイト”ですからね。この癖は抜けません」
「ったく・・・いつまでも悪ガキじゃあねぇってか。じゃあ、スマネェがちょっくらヴァイの様子を見てきてくれ。オレはケルト神父とグリッツを連れて来るぜ」
「はい」

 マスターは、ティールに声を掛けてから、二人でグリッツとケルトを探しに行く。
 ・・・二人がはぐれている。と言うことは無いだろう。グリッツ一人では傷が持たないだろうし、ケルトだけでは身を護れない。
 たぶん、二人で協力をしながら何処かで戦っている筈である。
 それを見送った後で、ヴァジルは封印区の右方へ駆け、開けっ放しの隠し扉の中を覗き込んだ。




-Aerial World-

     ・・・・輪廻の均衡を崩した存在に、その力を与える事などなかったのだ。

 まるで、魂すらも消滅するような光が、フォーゲンのトコロで発せられ、彼の身体を焼いたのである。
 そう。『この隠し部屋を焼き尽くせるほどの魔力』が、『一気にフォーゲンのみに働いた』のだ。幾ら彼とは言え、無事で済むワケが無い。
 もちろん彼は、本来このようなミスをする者ではない。それなりに、ジャッジメントの修練を積んでいるのだから、その力を行使するなど、息をする位当たり前に用いていた。
 ・・・なのに、今回のミスを引き起こしてしまった原因。
 それがあるとなれば、彼は『輪廻の均衡』を乱した存在であるが故の『何らかの力』による断罪である。
 ・・・もちろん、予想の範疇を出ることは無い。だが、この結果に終わる事を、アルティアもエルナさんも、まるで判っているかのように、当然な顔をしていた。
 そういえば、こんな話も聞いたことがある。

 ――――昔、砂上墓所の王も、『永遠の命を求める』という『輪廻の均衡』を犯し、その上でまともな死に方などしなかった。

「ぐっ・・ぅぅっ・・・!!!」

 さらに悲劇なのは、彼は・・・一瞬で死ねずに居ると言う事だろう。
 『ジャッジメント』であるが故に、能力に対して多少の耐性は持っていた。
 それ故に、今も苦しみに呻いている。

「・・・これで、教会を掌握される事は無くなったわね」

 エルナさんはそうポツリと呟き、そして、アルティアの願いより、昇華の儀式を行い始めた。
 理論自体は形見の昇華儀式となんら変わりは無い為に、大した手間ではないらしい。
 ・・・その間、オレはフォーゲンの傍に寄り、彼を見下す。欲に溺れた哀れな男の死に様を。

「貴様ぁ・・!! 私の企てを阻止して教会を護り、英雄でも気取る気かぁ・・!!!
 だがなぁ・・・・・・教会の中には、私のような野心を持つ者など幾らでもいる・・・ただ、そいつらにはその能力が無いだけだ!!
 貴様は、そいつ等を全員潰せるのか? はは・・ははは!! 不可能だろう!!? 私など、行動を起こした人物の一人に過ぎん!!」

 先ほどのエルナさんの言葉からだろうか。
 そう憎々しげにオレを睨むその目に対し、オレは言葉を返す。

「・・・何バカなこと言ってやがる」
「・・・な、に・・?」

 そのオレの言葉に、フォーゲンは本当に不思議そうな顔をして、オレを見上げた。

「・・・教会を護る? 英雄? ・・・そんなものに、興味は無い」

 最期まで、このような考えしか浮かばない事で証明される。
 この男の中には『欲望』しか無かった。
 その哀れな男に対し、オレは一つの慈悲を下す。

「オレがただ護りたかったのは――――――」


  ――――――約束だよ。

       ああ。オレはこの剣でお前を護る―――――


「――――たった一つの・・・約束だ!!」

 フェルブレイズを下に向け、逆手に握り、

「がぁっ!!!」

 刺した。死点突の内の一つ。心臓を。突き抜く。
 一撃である。痙攣をして、徐々に感覚が薄れていくだろう。
 ・・・だが、これで彼が長く苦しみ悶える事は無い。
 しかし、エルナさんの言うには『輪廻の均衡を崩した存在だから、魂自体が消去されるかもしれない』という。
 だが、オレにとってそんな物はどうでもよかった。
 絶命したフォーゲンから離れ、ノアの傍に行き、身体を持ち上げる。
 ・・・軽い。昔から、彼女は軽かった。
 思わず、涙が流れそうになる。

「・・・エルナさん。ノアの事、頼むよ」
「ヴァイはどうするの?」
「・・・リスティの方を、オレが連れて帰る」
「そっか・・・そうよね」

 そうして、ノアの遺体を背負い、エルナさんは隠し部屋から出て行く。
 そのすれ違い様に、「もう、終わったわ」と話しかける声。
 振り向けば、そこには―――――

「兄貴?」

 ――――そう、兄の、ヴァジル・リュークベル。
 いや、それだけじゃない。マスター。ティール。グリッツ。ケルト・・・皆が、この事件に協力してくれた皆が、オレの元に集まってくれていた。
 その中から、兄貴が前に出て、すれ違い様にオレの肩に片手を置いて言った。

「・・・終わったんだな。この事件・・・それに、お前の葛藤も」
「・・・今まで心配かけたな」

 オレは、リスティを背負いながら、兄貴に、そう言って返した。
 そう、終わった。だけど―――――

「・・・でも、ノアは帰って来ない」

 約束を護る事は出来なかった。
 結局、オレは何も出来ていなかったのだ。
 ノアを護る事も出来ず、リスティを危険な目にあわせ、その上、オレはノアに護られていたのである。
 ・・・だが、その言葉に対し、兄貴はオレへ返した。

「だが、再び護るべき者を得たのだろう? しかも、聖女の器と言う事はつまり、ノアの生まれ変わりに近いという事じゃないか。
 ・・・お前がノアに出来なかった事、してあげられなかった事。全部、彼女にしてあげると良い」
「・・・ああ」

 背中で眠るリスティを抱えなおして、
 オレは、皆と共にグノルの地下を後にした。


  ――――こうして、今回の聖女の器の神託の儀は幕を下ろしたのであった




-リエステール-

 ・・・・まず、いきなり事後処理が待っていた。

 エルナさんの『フロリア』という名・・・『安易に『フロリアの血で無き者が』その『名前』を使えば、重い刑罰がある』と言う言葉はつまり、そのままの意味で、
 エルナさんが『フロリア』だと知ってしまっても、その『言葉』がある為に、噂話として広める事が出来無いのである。
 だから、事態はそこまで大きくは広がらなかったが、それでも、万一の為に教会のジャッジメントへ口止めを行ったり、
 今回、グノルの地下で起こった事件を処理する為に働いたりと、忙しかったようである。
 ただ、その中でも、ノアの遺体はしっかりと埋葬され、オレ達はノアの最期を看取ったのだ。
 マスターは、慣れぬ酒場での仕事を奥さんに任せたばかりに、処理や愚痴の相手など、あの『狂気の獅子』の姿は再び影も無く、
 兄貴は、こっちでの仕事をさっさと終えて、リックテールに帰っていった。
 グリッツは、何だかんだ言いながら相変わらずだ。
 ・・・それと、あの時共に戦ったティール。いつの間にかふっと居なくなってしまっていたが、もしかしたら、どこかで旅を続けているのかも知れない。

 ――――で、肝心のリスティとは面会謝絶。
 これは、必殺『駄々捏ねワガママ攻撃』すらも教会側には通用しなかったと、エルナさんが言っていた・・・いや、普通に考えて通じないと思うが。
 ・・・というか、隠し続ける事実とは言え、教会の最高峰の必殺技が『駄々捏ねワガママ攻撃』というのもどうかと思うが・・・・・。
 ああそうそう。それに、あの副司祭は逃げるように教会を後にして、それ以後、今では別の人物がその席についている。
 今回の副司祭は、エルナさんが最司教様を通して信頼できる人物に任命させた為に、再び過ちが起こることは無いだろう。となっていた。
 ・・・フォーゲンは、『野望を持っているヤツはまだまだいる』と言っていたが、そんなのはごく一部でしかない。ただ、確かに存在する其れが目立ってしまうから、多く存在するという『観念』に捕らわれてしまうのだ。
 それと同時に、オレは前聖女の器・・・ノアを殺したと言うレッテルは剥がされ、まだ教会内の一部では葛藤が残れども、オレを敵視するような目線は消えつつあった。
 ・・・とにかく、事後処理に追われて、その中でリスティとも会えず、オレは近場で済む仕事を続けるしかなかった。
 マスターも、オレの意図を汲んでくれてか、そういった依頼を極力回すようにしてくれていた。

 ―――――それから一週間。エルナさんから、遂にリスティと面会が許された事を受けて、教会へと駆けて行った。



-リエステール聖堂離れ・・・医務室-

「はい。それから、旧グノル神殿の記述ですが・・・」
「リスティ!!」

 飛び込んでから、ハッとなった。
 てっきり誰も居無いと思っていたのだが、そこには既に教会の人物がリスティと面会を行い、なにやら話をしていたのである。
 沈黙が気まずく、オレは「コホンッ!」と、誤魔化すように一つ咳払いをする。
 すると、彼等は興味が一気に失せたかのようにオレから目線を外し、リスティへと顔を戻していたのだ。
 ・・・まあ、確かに街から教会に来たオレよりも、教会に在住しているこの人たちの方が早く面会できるのは理解できる。
 しかし、理解できても、納得は出来無い。
 そう、なんとなく・・・面白く無い。

「あの・・・話の続きをお願いできますか?」

 オレが割り込んだ事で途絶えた彼等とリスティの会話の続きを促そうと、面会者の一人がそう言った。
 きっと、まだ話は続くのだろう。そんな雰囲気である。
 ・・・が、リスティは彼等に対しゆっくりと首を横に振り、

「ゴメンナサイ。今日は此処までにします」
「そ、そんな!! まだ三十分しか話を聞いてないんですよ!!」
「先輩方の噂話を聞いて朝から並んでいたって言うのに!! 隣の待合室も一杯なんですよ!!」
(は・・・・?)

 その話を聞いてから気付いたが・・・この部屋の隣から、たくさんの人の話し声が聞こえる。
 談笑もあれば、雑談。それに、教会の勉強の話し。聖職員同士の愚痴・・・たぶん、生徒達や司祭ランクの人が居るのかもしれない。
 だが、オレはリスティがこんなに人気だったという事を知らない。かなり意外な一面だった。
 いや、と言うよりも・・・少女一人に対して、あまりに見舞い者が多すぎるだろう。
 ・・・そんなオレの考えを余所に、リスティは彼等にゆったりと微笑んで、彼等にハッキリと言ってのけたのであった。

「はい。でもアルティア様は、どんな仕事や約束よりも、ヴェイルさんと一緒に居る時間を大切にした一人の乙女なんですよ」

 そう告げて、ベッドから飛び降り、オレの腕を掴んで、

「行こっ!! ヴァイさん」
「お、オイ・・・」

 羨望と嫉妬のまなざしを背に受け、
 そのまま、オレはリスティにズルズルと連行されてしまったのだ。

 ・・・
 ・・
 ・

「・・・なるほど。アルティアの記憶と一部の能力。か・・・」
「はい・・・能力が一部なのは、まだまだわたしが未熟だからなんです。アルティア様の記憶と能力を透写トレースした身体になってしまって」

 そう。歩きながらリスティから話を聞けば、
 あのフォーゲンの行った儀式の後、あまりに長い時間アルティアがリスティの身体に留まっていた為。
 その間に、その記憶も能力も、リスティの頭に書き加えられてしまったのだろう。
 ・・・と、いう話をエルナさんから聞いたという。
 つまりは、あの事件によって発生してしまった『副作用』であった。

「それってつまり、あいつ等はリスティの心配よりもアルティアの知識を授かりたいって来た訳か?」
「はい・・・わたしを心配して来てくれるのは、たぶんクラスの友達が数人くらいだと思います」

 ・・・それはそれで、失礼な話である。
 幾らアルティアの知識を持っているとは言え、その人格はリスティのモノなのだ。
 一人の少女の身体の心配一つせず、ズケズケと自分の知識的欲求を満たす彼等の態度が、少々気に喰わなかった。

「ヴァイさんは・・・・」
「ん?」

 その会話をしながら歩いていたのだが、
 ふいにリスティは立ち止まり、俯いたリスティはそう言って。
 オレは、振り替えって彼女の言葉を待った。

「わたしがアルティアだからって話を聞いて来たんですか?」

 その、不安そうな声に対し、オレは一つため息を、
 思いっきり呆れたようにため息を一つ吐いた。

「あー!! 何ですかその態度はー!!!」
「・・・ばぁか。今更そんな事聞いてんじゃねぇよ」

 その小馬鹿にしてやったオレの態度に、リスティはぷっと頬を膨らませた。
 そして、何を思ったかニコリと笑って、

「ふーん・・・そうですか。ヴァイさんもわたしなんかどうでもいいんですよね」

 と、そう言ってきたのだ。

「オイ。今の話の流れでなんでそうなるんだ」
「(つーん)」

 参った・・・何だか、リスティに近くなった事は嬉しいが、いきなりいじけられるとは思っても見なかった。
 オレは頭を掻き、ため息を付いてリスティに言葉を返した。

「あのな。アルティアの事なんて知らなかったんだぜ? いや、むしろ面会謝絶が開放されてから直ぐ来たんだ。知れるわけ無ぇだろ」
「・・・そーですか。ヴァイさんは面会謝絶が開放されたなら会いに行くんですね。わたしじゃなくてもオンナノコなら誰でも良いんですね。だって、ノアさんからわたしに簡単に乗り換えちゃう人ですモンね」
「ぐっ・・・テメェ、アルティアの知識が加わってから随分物言うようになってねぇか・・・」

 以前のリスティは、もっと柔らかだった気もするが・・・
 ・・・いいや。認めてしまおう。
 物凄く恥ずかしい。きっと、顔も赤くなっているかもしれないが、彼女の機嫌を取り戻すには、素直になるのが一番のようだ。

「リスティだから・・・」
「・・・」

 その言葉に、リスティは不機嫌そうな顔を解き、驚いた顔をした。

「お前だから、オレはこういう風にされるのが嫌だ。・・・まるで、リスティを心配してくれてないっていうのがさ。
 だけど、オレはずっとお前と会えなかったんだ・・・心配で心配で。支援士の仕事も、ずっと近場でやってたんだぜ。
 面会謝絶が解けたら、直ぐにでも会いにいけるように、マスターに頼んでさ。
 ・・・リスティはアルティアじゃ無ぇよ。ただ、アルティアの記憶を持ってるってだけじゃねぇか
 オレは、会いに来たんだ。お前に―――――リスティに」
「・・・じゃあ、もしノアさんだったら、どうなんですか・・・?」
「ノアの場合でも心配で行くさ。あいつだって、大切なヤツだからな。でも、それはイフの話でしか無いだろ? ・・・オレは、イフの話は好きじゃない」
「・・・えへへ。やっぱり、まだノアさんには勝てないんだなぁ」

 その言葉で、リスティはやんわりと微笑み、オレへと飛びついてきた。
 彼女の身体もノアと同じで軽かった。
 ――――きっと、何十年も何百年も。もしかしたら、何千年も昔かもしれない。
 きっと、ヴェイルとアルティアも、こんなやりとりをしていたのかもしれない。
 ・・・だけど、オレはまだ先に進まなければならない。
 だから、オレは『断ち切らなければ』ならないのだ。
 そして、オレは彼女を見ながら言う。

「なあ、リスティ。頼みがあるんだ」
「頼み・・・ですか?」
「ああ。オレ、今度は本当に『護る』立場に立ちたいと思っている。・・・だから――――――」



 TOV 第三話 END







  あとがき

 とまあ、これでエリワーのヴァイの話は残りエンディングとなります。
 まあ、書き始めから完成まで随分時間を掛けてしまいましたが(そして、わたしより遅く始めた龍獅さんがわたしより早く終わるというショッキング!!)
 兎にも角にも終わり!! 終わりなのー!!

 そんなワケで今回は(謎)、どうにもヴァイやリスティは絡ませやすいクセに、何故、中々使い難いのか理由を検証。
 そらあつまり、『特徴が無い』でしょうな・・・(遠い目
 まあ、それじゃあカワイソスぎるので、とりあえずどんな外見してるかご紹介。ご使用してくださる場合の参考にドウゾー


<ヴァイ>
 髪の色はグレイ。目は切れ長。身長は177と少々高め?
 剣闘士として軽装備。剣は特徴ある『柄がロングソードの片刃剣』
 喋りは少々荒めのちょいと暗い感じ。まあ、ユグドラ・ユニオンのミラノが常にテンション低いという感じです(ェェェ
 力量はAランク初中。つまり、成り立てって程でも無いケド、まだ中堅に行くには弱いというレベル。

<リスティ>
 髪の色は栗色。つまり茶髪。肩まで伸ばしている。雰囲気はほんわりした感じで、身長が145。低い。
 制服ではアリスorカーディの服飾。ただし、そんな堅っ苦しい場面でもない時には、ちゃんと普通の服。
 喋り方は、「です」「ます」の丁寧語に、ちょいと気弱な感じ。且つ、興奮しやすく、テンパる。

<ノア>
 今更か(汗)。髪の色はピンク。腰まで伸ばしている。雰囲気はリスティと同様。身長は154。
 服飾もリスティと同じく。ただし、16歳(死んだ年齢)である為、多少はリスティよりおねえさん。その内追いつくけど
 喋り方も同じ。と言うか、アルティアが基盤になってます(ォィ
 でも、既に死んでいる。

<エルナ>
 髪の色は青っぽい色。相談室のフォントカラー参考。お尻辺りまで伸ばしている。長い。雰囲気は明るい。馬鹿明るい。
 と言うよりも、子供っぽい部分を持っていたり、ふとした時に大人っぽい二面性を持つ人物。
 とにかく、この人は作中に置いて思いっきりクセがある為、ここで紹介する必要も無い気がする。

<グリッツ>
 髪の色は金髪。ハネッ毛。雰囲気は・・・orz

<ヴァジル>
 ちょろっとしか出てきてませんが(汗)
 髪の色はグレイ。目は普通。身長は183。
 パラディンナイトである為、防具は重装備。盾タイプ。
 喋り方は兄弟揃って相変わらずテンション低いが、喋りは丁寧で、どちらかといえば『落ち着いている』と言う感じ。
 力量はAランクリーダー。もう少しでSランク突入。

<ケルト>
 髪色は茶色。雰囲気はのんびり。身長はヴァイとほぼ同じ。
 喋り方は、基本他人に対しては丁寧語。だけども、友人に対しては「~~だね」「~~じゃないか?」というような喋り。






 とまあ、やっぱり自分でコレ書いても、判り難いことこの上無ぇな。と思ってしまいます。
 ついでに、裏話を幾つか。


<衝撃!!??? 裏話というより、消えて行った設定!!!??>

>>実を言うと・・・当初。ノアとリスティは立場が逆だった!!

 当初、ノアとリスティは立場が逆でした。
 外見の云々はノアはノアのままですし、リスティはリスティのままでした。
 ですが、ノアが現聖女の器で、リスティが死んだ聖女の器だったのです(汗
 しかし、なぜノアとリスティの立場を逆にしたかと言えば、
 あからさまに『ピンクろりろり』なキャラをメインヒロインにするよりも、『茶髪ろりろり』の方が需要があるかと思ったからです(ェ
 だったら名前だけはそのままで行けばいいじゃないかとお思いでしょうが、ファイアーエムブレム-封印の剣-に置いて、ノアと言う男キャラが居たので、
 もう名前書くたびにソイツの顔が浮かぶので、エンジェリックセレナーデのラスティと名前が似ちまった事に引け目を感じていたのを殴り捨て、
 リスティがメインヒロの立場に立ったのです。
 思えば、性格的にメガネっ娘にするのもアリだったような気がする。


>>なんとTOVのラスボス、フォーゲンは途中から作られたキャラであり、当初予定のラスボスはケルトだったのだ!!

 マジです(汗。TOV第一話のヴァイの酒場での対応を見れば不信点(※)に気付くかと思われます。

※ケルト神父から依頼が来た。と言ったマスターの後に、ヴァイは少々冷たい反応をしているのだ

 もちろん、幼馴染でも無ければ一緒な孤児院出でもありません。
 まあ、最初はノアとリスティ。主人公のヴァイ。ラスボスのケルト(笑)だけだったんですが、なんだか話が作り辛くなりまして、
 ケルトは英雄伝説の赤紅い雫のマイルを参考にキャラ作りをしました。つか、ほとんどそのまんまな気が・・・(汗
 更にケルトの扱いは酷い事に、流れ的には

 ラスボス→副司祭の立場(フォーゲンを出す事を決めてから)→幼馴染

 という、始めとその次は悪役の立場だったのです(涙
 しかし、何をどう転がったのか、こんなにも良い子キャラ。
 きっと、苦労人気質なのは、物語前はラスボスというレッテルだった事からの現われのような気がしなくも無い。


>>愕然!! エルナ先生は、始めの設定では『おばあさん』だった!!!!

「聖エルナン・フロリアの聖光なる裁きの左手と、執行の右手よ・・・」

 だー!!! ストップストップ!!! 今は「ないすばでー」なオネーサンキャラである事を否定しておらぬでしょう!!!

 コホン。当初、エルナ先生は、60過ぎの優しいおばあちゃんで行こうと考えていたんです。
 んで、第一話に出ていた良く木登りをしていた木も、本当は既に切り落とされている設定だったんです。
 ですが、ええ!! わたしの欲望ですとも!! カーディアルト(参考:プリースト)がきょぬーで青髪でお気楽な性格をしているっていうのは!!!(ォィ
 まあ、それもそうなんですが、エルナさんを老衰させてしまうと、既に幼馴染キャラで決定していたケルトがノアの事件についてヴァイから聞く事になりますし、
 それでは、『ケルト』という、相手を責めないキャラが崩れそうになったので、エルナさんを急遽年齢不詳オネーサンキャラにして、
 その元々あった設定の『おばあちゃんキャラ』は、同名『エルナ』という名で存在させる事にしたのです。
 そこから、第二話書き始めの頃には、過去の『聖十字騎士団』と『今回の事件』の関係。
 それに、『エルナさんは教会の中では実を言うとスッゴイ人物にしよう』というお気に入りキャラへのヒイキ(酷
 そこから、パッと思いついた『フロリア』と言う名前と、『エルナン』という名前。
 それを発展させて、エルナン・フロリアの立ち位置と像を作り上げ、エルナさんに繋げたのです。
 因みに、エルナさんのお父さん、エルナンは既に死去。母は中途半端な状態で次女のフィナを生み、この世を去った。
 その為、エルナさんの親と言えば、おばあちゃんの『エルナ』であり、そして、肉親は妹の『フィナ』のみとなった。
 更に、中途半端な状態で生まれたフィナは、病弱でロクに出歩く事も出来無い寝たきり生活となっていた。

 ・・・まあ、その辺の話は、エルナ先生のおまけお話で参りましょう。




-最終的なキャラ紹介-


 名前:エルナ・フロリア  性別:女  年齢:??歳
 ジョブ:聖術始祖セントフロリア(聖術の始祖である歴代の血を持つ称号。アルティアの補佐。聖術師ビショップの聖エルナンの血を引く。あくまで称号の為、能力の変動は無し)
 能力:青・黄・紫 → 生命・天聖 
 武器:オリシスカード(フルーカードと呼ばれる特殊な武器の中で、カードセット自体に『冥』と言う意味が込められた物)
 形見:フィナのペンダント(幼い頃に病死した妹にプレゼントしたペンダント。結晶石『翠水晶石』が先端に付けられている。妹の魂は既に昇華済み)

>>所持能力

 リラ(傷を癒す) → ラリラ(傷を大きく癒す) → ラリラル(傷を完全に癒す)
 レ・ラリラ(能力で傷を大きく癒す方陣を作る) → レ・ラリラル(能力で傷を完全に癒す方陣を作る)
 ノーマライズ(異常状態。敵から受けた能力減少を治す)
 アルティレイ(光の粒を飛ばす)
 エンシェントブライト(輝く光群。本来カーディアルトでは覚えられないが、『ステータスを降昇する能力』を犠牲にして、この聖光を覚えた)
 アルテナフレア(聖なる炎。本来カーディアルトでは覚えられないが、『ステータスを降昇する能力』を犠牲にして、この聖光を覚えた)
 ルナライト(月夜の聖光。本来カーディアルトでは覚えられないが、『ステータスを降昇する能力』を犠牲にして、この聖光を覚えた)
 サンオブジャスティス(正義の太陽。本来カーディアルトでは覚えられないが、『ステータスを降昇する能力』を犠牲にして、この聖光を覚えた)
 リジェネーションサンクチュアリ(究極と言われる治癒能力。ただし、まだ未熟であるが故、フロリアの名を用いた上に七節以上の詠唱で集束したメンタルが必要となる)

>>パッシブスキル

 フロリアの術式(詠唱を『聖(エルナン・)フロリアの~~』という第一節[一言]に簡省略出来る。ただし、本来と同様のメンタルを用いるも威力は正式な術式より落ちる)


 聖十字騎士団の指揮『聖女アルティア』を補佐していたビショップ『エルナン・フロリア』の血を引いた乙女。
 代々、長男長女が生まれた時、男には『エルナン』、女には『エルナ』という名をつけて来た、古くからアルティア教を布教してきた家系。
 ある種、エルナンと彼が編み出した聖術が居なければ、アルティアは負け戦を幾つも持っただろうと言われるほどの銘であり、
 教会の立ち位置は『アルティアの次』辺りに来る。
 その為『フロリア』の名と言葉は、教会の最司教個人以上の強制力を持つ為、緊急時でもない限り、フロリアの家系はその危険性より『フロリア』の名は隠して来た。
 因みに、教会に置いてフロリアの名を知るのは『最司教』のみであり、それ以下の人たちは知る由もない。
 もちろん、ケルトも知らなかった。




 名前:ヴァイ・リュークベル  性別:男  年齢:18歳
 ジョブ:聖女の守フォルセイナル(聖女の加護より巣立ち、新たな『聖女』を守る意思を持つ者)
 能力:氷・紫 → 氷牙・雷・速
 武器:片刃剣『フェルブレイズ』(不変得る剣。“折れぬ”“曲がらぬ”“毀れぬ”と豪語する銘師の打った剣)
 形見:-

>>所持能力

 散空斬(空破を飛ばす)
 散空斬双剣(空破を二連で飛ばす)
 双葉(二連撃)
 双葉弐葬撃(二連撃後、空中での二連撃)
 死点突(眉間。首[気道]。心臓。腸をその素早さでその四点を同時に突く)
 襲破死点突(剣旋風で敵を巻き上げた後に、死点突を放つ。敵を吹き飛ばす効果付き)
 襲破斬(剣旋風で敵を巻き上げ、大上段から叩き斬る)
 止水(剣を鞘に仕舞い、抜刀の構えで止まる。動けば揺れる『気』の動きを読んで敵の技を絶対回避する)
 氷牙止水(止水の回避後、氷メンタルを付加させた剣で反撃する)
 止水剛牙(止水の回避後、大上斬で叩き切る)
 止水天翔(止水の回避後、隙無き連撃を見舞う)
 翔天脚天駆(斬り抜き、斬り返す際に蹴りから空中へと繋ぐ演舞コンボ。覚醒時のみ使用可)
 多段斬り(目に見えぬ速さの連続攻撃。現在のヴァイの多段回数は『八』。つまり、八段斬りとなる。覚醒時『十二』段)

>>パッシブスキル

 誓いの剣(覚醒。特定の人物を護る際の強化・・・というより、底力。速さ・攻撃力がアップ)


 再び・・・今度は、離さないように。失わないように。
 今まで封じていた真の力を覚醒させるヴァイの本当の強さ。
 ヴァイが聖女の器と関係が深かった理由は、アルティアと恋仲関係に在ったといわれる『ヴェイル・リンクルート』の転生であるため。
 因みに、ヴェイルは聖女騎士クルセイドと呼ばれる、レンジャーナイトの派生ジョブであった。




 名前:クリスティ・ローゼン・ティサイア  性別:女  年齢:14歳
 ジョブ:聖女アルティア(副作用により目覚めたアルティアの知識と一部の能力を使える者)
 能力:水・黄 → 聖・生命
 武器:ホーリィカード(フルーカードと呼ばれる特殊な武器の中で、カードセット自体に『聖』と言う意味が込められた物)
 形見:ノアのロザリオ(銀十字のロザリオ)

>>所持能力

 リラ(傷を癒す) → ラリラ(傷を大きく癒す)
 レ・ラリラ(能力で傷を大きく癒す方陣を作る)
 ノーマライズ(異常状態。敵から受けた能力減少を治す)
 エンジェルフェザー(全能力値を大きく上げる天使の奇跡)
 クイック(速さの能力を上げる事が出来る)
 クイックリィ(味方全ての速さの能力を上げる事が出来る)
 アルティレイ(光の粒を飛ばす)
 リジェネーションサンクチュアリ(アルティアの知識を手に入れたとは言え、追いつかぬメンタルに常は使えぬ者の、その精神を犠牲にし、全ての瀕死の者達でも一度に癒す膨大な治癒能力。ただし、本人はメンタルが体内に戻るまでの間、意識を失う事となる。自分の意思で使えるわけではない)


>>パッシブスキル

 アルティアの英知(聖女アルティアの知識。あとは能力さえ追いつけば、語り継がれなかった多くの聖術を用いる事が出来るようになる)


 今回の『アルティア教を乗っ取る為にアルティアを自分のモノにする』としたフォーゲンの計画により、
 その身に憑依されたアルティアの意識をトーレスしてしまった事でアルティアの能力が覚醒。
 リスティでありながら、アルティアである。という微妙な存在になってしまう。
 ただし、リスティ自身の能力が追いつかないため、未だに使えない能力が多々。


 名前:グリッツ・ベルフレイン  性別:男  年齢:17歳
 ジョブ:セイクリッド
 能力:炎・風
 武器:ツインソードブレイカー(ソードブレイカーという特殊な構造の剣。酒場のマスターが昔の仲間が使っていた武器として渡した)
 形見:-

>>所持能力

 クロスラッシュ(十字斬り)
 ツインクロスラッシュ(十字二閃)
 ミラージュスロー(幻影の刃を敵に投げつける。幻影と言えどダメージを与えることは可能)
 ミラージュタップ(幻影の刃を敵に投げつけ、怯ませてから一気に距離を詰め、二撃与える。幻影と言えどダメージを与えることは可能)
 メンタルソード(武器に能力を付加。炎の能力を付加させる事が多い)
 行くぜっ!!!(グリッツの気合を入れる掛け声。自分の攻撃力を増加する)
 本気で行くぜっ!!(グリッツの気合を入れる掛け声。自分の攻撃力と速さを上げる)

 詳細は第一話の後で書いているのと変動なし。
 セイクリッドになった事で、その速さを生かした策謀戦に切り替わるものの、
 元の性格が熱い為に、直ぐに挑発に乗ってしまうのが傷。



 名前:フォーゲン  性別:男  年齢:32歳(故)
 ジョブ:不浄なる正義アンジャスティス(己の慢心した心に溺れしジャッジメント。その攻撃意思は極めて高い)
 能力:赤・黒 → 聖・炎・黒
 武器:ネクロノミコン(俗に『不死の書』。と呼ばれる書物。だが、その内容は己の一方的な憶測を書いているだけに過ぎない自筆本)
 形見:-

>>所持能力

 アルティレイ(光の粒を飛ばす)
 クロス・レジェンド(十字に切る光。ただし、その光は純粋なものではない)
 カオス・ジハード(混沌なる戦。その悪しき身勝手な聖戦。という意)


 アルティアを自分の者にしようとし、アルティアをリスティの身体に憑依させる事に成功。
 他にも、不完全な状態とは言え、ノアを甦らせた。
 だが、その二つの『輪廻を乱す行為』から、『管理下』の手により、その身を消滅させられてしまった哀れな存在。

 今回は副司祭を脅したて、無理やり今回の計画に参加させた。
 その為、副司祭は作中の事情より、教会から逃げるように消え去ったと言う。