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護衛の姿も見えず、フィールドを駆けるには余りにも不用心すぎる一台の幌馬車

ガタガタゴトゴトと揺れる荷車の中
様々な荷物と共に10歳前半の奴隷が鎖に繋がれて縮こまっていた。

「………。」

奴隷にはあちこちに打撲や浅い切り傷が体中にあり
疲れた顔をして、多少破れた幌から見ることの出来る空を眺めていた。
その奴隷には、空を行く鳥が何よりも自由に見えた。

“よく、あんな子供が手に入りましたね。
なかなか高く売れるんじゃないですか?”

“商品を売りに行った時に連中、全額払いきれなかったんだ。
残額分ってことであの奴隷を俺に売ったんだ
元々孤児だったらしいからな、まぁていのいい厄介払いだ。
この先を少し行ったところの盗賊たちに高く買ってもらうつもりだ。”

その会話は、荷車の中の奴隷にも不鮮明ながらも聞こえていた。
だが彼女は何の反応も示さず、空を見上げていた。

「おい、当人。わずかばかりの代価で売られたお前はどう思っている?」

話しかけられた奴隷は、男達に顔も向けず

「………。」

黙ったまま、無視し続けました。

「無視かよ、いい度胸だ。」

馬車を止めると、奴隷を繋いでいた鎖を乱暴に引っ張り
馬車から強引に降ろすと、蹴る殴るの暴行を何度も繰り返した。

「おい、その辺にしておけ。
そいつはそこに転がしておいて、飯でも食おう。」

「これで終わりだと思うなよ。」

御者はそういうと、もう一人の男のほうへと歩いていった。

奴隷は呻きながら体を起こすと低く低く呟いた。

「くそ……、いつか殺してやる。」


―――

「…ん、何だ?あんた。」
「それ以上馬車に近寄らないでくれるか?」

昼食を終え、談笑していた男達は警戒の目線を来訪者に向けた。

「あぁ、失礼。護衛のいない馬車が珍しくてな。
ところで聞くが、人身売買をしてはいないだろうな?」

「は?なんだって?」

二人の男は立ち上がり、馬車の前に立ちはだかり剣を抜いた。
来訪者はそれが答えか。と小さく呟き剣を引き抜き構えた。

いきなりだ。

間の計りあいも何も無く、いきなり来訪者が飛び込んできた。

「何度でも言うぞ。」

来訪者はそういうと、男を力任せに弾き飛ばす

「くっ、何なんだお前は!!」
「通りすがりの支援士だ。」
「このっ!!」
「悪くない、がまだまだだな。」

まるで、稽古をつけているような口ぶり
完全に玩ばれていた。

「く、そぉ!!」
「おっと。」
「そこだぁっ!!」
「なっ!!」

来訪者の表情が変わった。
殺った!!

ズブリ。

「あ…?」

ジワリと広がる熱。
熱から痛みへと変わる。

自分の剣は相手を貫いていない。
相手の剣もまた自分を貫いてなどいない。
なら、この痛みはなんだ…?

まずい、

破れた衣服があっという間に赤く染まり感覚が少しずつ麻痺していく。

「なぁる…てめぇかクソがき。最後までむかつく、野郎だ…。」

意識に靄がかかり、そのまま血に倒れこんだ。

「あの、餓鬼っ!!」
「おっと、滑った。」

鞘で男の後頭部を殴打する来訪者。

「おい、お前。」
「は、はい…。」
「手伝え。」
「…はい。」

来訪者の男は、清潔な布を馬車の中から取り出し圧迫し始めた。

「酷い面してるな。」
「人に言えた面かよ…。」

応急処置を終えた男は、顔をきょとんとさせて

「く、ははっ、違いない!」

けたけたと笑い始める。
数分たって笑い終えると真剣な顔をしていった。

「さて、何時までも無力な奴隷は嫌だろう?
刃を取る勇気があるのなら、支援士にならないか。
どうする?―お嬢さん。」