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「あっ、ライトそっちいったぞー」

「はっ!こんなボール生物にオレがやられると―――ぐえっ!?」

「ら、ライトーーー!?」

「まったく、油断するからだ」

「椿が春華以外の人の心配をするなんてねー。・・・やっぱりホレ」

ガスゥッ!!

「ぁ痛たーーーっ!?」

「わー!?涼蘭さん!?」

「ぼ・・暴力反対・・・」

「お前が余計なことを言うからだ」

 

とかなんとか、その他にもティラが近付いてきた鬼小玉を追い払おうと振りかぶった杖が後ろにいたライトの後頭部に直撃したり、ティラの放ったアクアボルトの1発が外れて近くにいたライトの腹部に直撃したり、椿がぶっ飛ばした鬼小玉が飛ばした先で戦っていたライトの顔面に直撃したり、それをからかった涼蘭が椿にぶっ飛ばされたりと様々なドラマを展開させた後、ゴタゴタしつつも大量の子鬼の角を入手できたライト達はクロッセルへと戻ってきた。

 

「これだけあれば特別報酬もでるなー」

やけにボロッちくなったライトはボロボロの割にはご機嫌な様子だ。

終わり良ければ全てよし。ということなのだろうか。中々逞しい。

 

―――だが、クロッセルに帰ってきて、こちらが本当の戦いだったのかもしれない。

「がおーっ!!」

「いだだだだだだ!?リインやめろ噛むな!?」

「がーーおーーーっ!!」

「いたいいたいいたいごめんなさい私が悪かったですリーちゃんやめてーー!?」

見事に置いてきぼりを食らって大層ご機嫌の斜めなリインが、ライトとティラが帰ってくるのを見るなり2人に襲い掛かり、それぞれの頭にガジガジと噛みついてきたのだ。

 

もうそれが痛いのなんの。

 

その光景を見ていた涼蘭と椿と春華は思い切り顔が引きつっていたが、怒りの矛先を向けられたら堪ったものではないと思ったのか、3人とも仲裁には入ろうとしない。世界は無情である。

 

やがてひと通り怒りを発散できたリインの口から開放され、頭に歯形を付けて変死体のよーにぐったりと突っ伏す2人に、もうなんと声を掛ければいいのか分からないといった風にお互いに顔を見合わせる涼蘭達。

第三者がこれを見たら一体何事かと思ってしまうことだろう。

 

そして間の悪いことに、その第三者が部屋を訪れてしまった。

数回部屋の扉をノックした後、返事も待たずに部屋に飛び込んで来たのは1人の騎士だ。相当慌ててやって来たのか、息が上がり、疲労が色濃い。

 

だがそんな彼もまさかこんな光景と鉢合わせするとは思わなかったのだろう。なんと言えばいいのかと困惑した様子で硬直し、少しして自分の使命を思い出したように口を開くと、

「えー・・・、あ、そうだ大変ですライトさん!!変死体みたいになっていないで起きてください!!」

そう言って突っ伏しているライトの頭を数回軽く叩き、それでも起きなかったので腹部を蹴った。余程いい蹴りが入ったのか、蹴られたライトはまるで打ち上げられた魚よろしくのた打ち回る。

 

焦っている所為なのか中々大胆なことをする騎士である。

 

「・・・こ・・コノヤロウ一体だれだ・・・って、クローディアのところの奴じゃねぇか。一体どうした?そしてお前は話の後でぶん殴ってやる」

「く、詳しいことはあとで、とにかくこれを見てください」

言うが否や、プレスコット従騎士団の騎士はごそごそと懐から1枚の紙を取り出し、ライトに差し出した。というより押しつけた。

ぶぎゅーと頬に押しつけられた紙をライトは「?」と訝しげな顔をしながらも騎士の手から引ったくり、そこに書かれている内容に目を通した瞬間、ライトは目を見開いて騎士に詰め寄った。

 

「―――っ!?おいっ!これはどういうことだ!?」

 

ライトが放り投げた紙が宙を舞い、ティラの広げた手の平へと舞い落ちる。

後ろにいたティラ達5人は、ライトのこの取り乱しように思わず呆気に取られ、どうしたのかとティラの手に落ちてきた紙を覗きこむと、

 

「・・・ええっ!?」

「・・・これは・・・もしかして」

「あーあー・・・」

 

三者三様の驚きの声を上げ、その3人の気持ちを椿が代表して騎士に詰め寄るライトに言った。

「どういうことだ?貴様お尋ね者だったのか?」

 

その紙は指名手配の手配書で、そこには『指名手配<ライト・エバーデン>300000F』という文字と、まぎれもなくライト本人の顔写真がでかでかと載せてあったのだ。

 

 

「―――ええと、つまりですね?」

その後、椿の問いから始まった、違うに決まってるだろだがこれはなんだだから違うと言ってもーそんなに突っかかって椿ったらギャー!!とかなんとかひと通りのドタバタを終え、半ば忘れ去られていた騎士が事の説明を始めた。

 

「ことの始まりは昨日、突然街の各酒場や自警団、そして各騎士団などにこの手配者が送られてきたのです。送り主は不明。なんでも、昨日起こった強盗殺人の現場近くで、実行犯を見たと証言した人物の情報から製作されたとか。そして気が付けば証言者も行方が知れず、結局そのまま街中にこの手配書が広がってしまったのです」

「なかなか魅力的な懸賞金額だな」

「ええ。おかげで今じゃすっかりリエステールで話題の的ですよ」

そして事情を知っているクローディアが、この事態を重く見て内密にこの事を知らせるようにと命じ、騎士をここへと送ったらしい。

 

幸い、この手配書はまだリエステール内部にしか流布していないということだが、そんな状況がいつまで続くか。

つまり、この手配書がほかの地域に広がる前に決着を着けなければ、状況がどんどん悪化していくことになるのは予想に難しくない。

「やってくれたなあの野郎・・・」

色々無茶をしてくる連中だとは思ったが、まさかここまでとは。

ライトは内心、自分の考えの甘さにうんざりしていた。昔はこんなことはなかった筈だが、“裏”を退いてぬるま湯に浸かったらこの体たらくか。まったく自分が嫌になる。

どちらにしても一刻も早くリエステールに戻らなければならなくなってしまった。

 

ライトは子鬼の角を手配書の事を知らせにきた騎士に預け(ついでにその際、蹴られた仕返しに1発ぶん殴っておいた)、早速出発の準備に取り掛かった。横ではティラも同じように荷造りを始めている。しかし、それを見たライトは厳しい表情を浮かべた。

「・・・なにやってんだ?」

その言葉に、ティラも釣られて荷造りをする手を止め、至極同然といった風に首を傾げる。

なんだろう。なんだか無性に嫌な予感がするのだが。

「?何って荷造りですよ?」

予感的中。

「バカなことを言うな。リエステールに行くのはオレだけで十分だ。お前はリインとこっちに残れ」

「な、なんで!?」

「何でも何もないだろ。あいつ等の狙いはリインだ。オレが指名手配犯扱いされている今、リエステールの中は安全じゃない。守りきれるか分からない状況でお前らを一緒に連れて行くわけにはいかない。だからここで涼蘭達とオレが返ってくるまで待て」

 

確かにそれは理に適った意見だろう。そもそも300000フィズなどという大金が、わざわざ生死のやり取りをしてまで魔物と戦わずとも―――それも人間1人捕まえるだけで手に入るのなら、年中金欠の新米はおろか、熟練の支援士達でさえも見逃す筈がない。現状ライトは、ロザート達の集団と何の関係もないリエステールの支援士達全員を敵に回しているといっても過言ではないのだ。

300000フィズという大金も、恐らくそういう効果を狙って付けられた額なのだろう。

 

だが、

 

「・・・やだ」

ポツリと、ティラはライトの意見を拒否した。

「は?」とライトが言ったのとどちらが先か、ティラがライトに真剣な面持ちで向き直る。

「私も行く!!ここでなんかじっとしてられないもの!!」

「ばっ・・・!馬鹿かお前!?そんな我儘言ってる場合じゃないだろ!?」

「それでも!!」とティラはますます語気を強める。ティラには困ったことに、時折こうしたなにがなんでも譲らない頑固さが出るときがあり、こうなったらもう梃子でも動かないし物でも釣れないし、とにかく頑固一徹を貫き通してしまうのだ。こうなればもう相手が疲れ果てて屈服するまで説き伏せるかぶん殴って気絶でもさせなければ止められない。流石にそこまでする気のないライトはティラの勢いに押されつつも、咄嗟に脳裏によぎった疑問をぶつけてみた。

「そもそも、なんでそこまで来ることにこだわるんだ!?」

「・・・へ?」

その台詞に、今度はティラがきょとんとする。

 

なんで?なんでって・・・。

理由・・・?

・・・。

 

「・・・あれ?どうしてでしょう?」

「いや、オレに聞くなよ」

「と、とにかく!」

ビシィ!!とライトに人差し指を突きつける。いや、どうでもいいが人を指差すな。

「もしかしたらライトとリーちゃんを遠ざけるのが目的かもしれないじゃないですか!!」

「む、まぁそう言われればそうかもしれないが・・・」

なんだかそれっぽい事を言って誤魔化している感が強いが、言われてみれば的を得ているような気もする。

気が付けば、ティラのあまりの勢いにライトがやや押される形になっていた。

いまこそ攻め時と思ったのか、ティラはさらに言葉を畳み掛ける。

「っていうか、もしライトが置いて行ったら、私達勝手に後追っかけるよ!?」

「え゛!?!?」

 

まさかそんな言葉がでてくるとは思いもよらなかったのだろう、ライトが思いっきり顔を引き攣らせた。というか、ライトの驚き様に逆にティラが驚いた。

「な・・なんでそこでそんなに驚いたような声をだすんですか・・・?」

「い、いやだってお前、・・・本気か?」

「も、もーなんですか失礼な!!当然じゃないですか!!」

「いや、悪いことは言わないから、それだけは考え直せって」

な?と彼女の肩に手を置くと、なぜか彼女は俯いて顔を隠してしまい、やがて開かれた口から洩れる声は、どこか震えていた。これで丸く収まったかな。とも思ったりしてしまったのだが―――

 

「そうですか。よくわかりました。―――こうなったら意地でも後追っかけてやる!見てろこのやろー!!」

 

逆に火に油を注いでしまったようだ。あーそうかーそうきたかーと軽く現実から逃げたくなった。もうなんなんだ一体。

 

怒り過ぎて目頭に涙を浮かべて顔を真っ赤にさせたティラを若干投げやりになりかけながらも軽く睨むと、ティラも睨んでいるつもりのようだがどちらかというとジト目でライトを睨み返す。

睨みに力を込めてみても、自分の気持ちは変わらないと言うかのように、ティラの瞳の光と心は、屈しない。折れない。

 

はーっ、と頭をくしゃくしゃと掻きながら溜息を吐く。まったく、こんな連れを持つと苦労する。

「わかったよ。その変わりにリエステールでは争いに巻き込まれるかもしれないのと、オレが助けに入れるかどうか分からないってことだけは覚えておけよ」

 

自分が彼女に甘いことは分かっている。だが、こういうのも悪くはないと、ライトはらしくもないことを思ってしまったのだった。

 

 

―――ついでに、その傍らではというと、

「あ~・・・これは厄介なライバルができたねー椿?」

「・・・涼蘭、一体なんの話だ?」

「いやだからほら、恋のらいば」

 

グシャァ!!

 

「あぎゃー!!?い、いま絶対グシャっていったグシャって!!?」

「もう一度聞くぞ?一体なんの話だ?」

 

あくまで冷静に、しかしきっちりと拳を握り締めながら椿は詰め寄る。迫りくる威圧感に、涼蘭は少し引き気味だ。

 

「い、いやほらだから・・・好きな相手の」

 

それ以上は言わせなかった。

 

ゴシャァ!!!

 

「アーッ!」