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  • Shiny White-


煌めき 夢幻に舞う雪の中で この手に 輝く奇跡つかむよ


青い空はね 大好きだけど 白に包まれた 町を夢見る
風にゆらめく 気まぐれな雲 こんな日くらい 願いを聞いて!
街中 虹彩(なないろ)に染める イルミネイションさえ アナタにはかなわない
きっと ずっと待っていた プレゼント
銀の鐘 鳴る夜に 包み込んで 私を


煌めき 夢幻に舞う雪の中で この手に 輝く奇跡つかむよ
たとえ まばたきする間に消えていても 想い残るよ胸(ココ)に
抱きしめていて


覚えているよ たくさんの想い出 二人で笑った それだけだけど
髪についてた 粉雪たちを はらってくれた 何気ないフリで
夢見た ホワイトクリスマス きらめきに包まれて アナタと歩きたいよ
どこまでも 続くよ白い カーペット
聞こえてる? この鼓動 なにもかもが 嬉しい


奏でて 白銀に光る空の下で ふたりの……ふたりだけの詩を紡ぐよ
この手を そっと握ってつれて行ってよ 私それだけでいい
ふたりの時を


世界中 包む純白の奇跡は 世界中 すべての想い叶える
信じて 胸の中で弾む鼓動を 素直に受け止めて

煌めき 夢幻に舞う雪の中で この手に 輝く奇跡つかむよ
たとえ まばたきする間に消えていても 想い残るよ胸(ココ)に
抱きしめていて









セイレーンやボエルジに限らずとも、歌や踊りで生計を立てている者はこの世界にも少なからず点在している。
それはいわゆる大道芸の域は出ない世界なのだが、中には『アイドル』などと称され、時に舞台を揃えてまで歌を依頼されることがある者たちもいることは、誰もが知ることだろう。


――セントラル・クリスマス・ライブ

略称、CCL。
それは、年の終わりの祭典。
首都の中央広場には盛大な舞台を設置され、大陸各地にいる歌い手達が一同に集う歌唱大会である。




「『Shiny White』、雪をモチーフにした歌にしてはアップテンポで騒がしい感じかもしれないけど、強く弾ける想いは、静かになんかしてらんない!
キミたちの恋模様はケーキのように甘いもの? それとも雪すらも溶かす炎かな?
どんな恋でも、ボクはこの歌で応援するよ!
―――『Jewelry Heaven』!!」





プレリー・クレストリア。
歌と踊り、という条件に限定した『アイドル』の中では比較的上位の人気をもつセイレーン。
幻想魔法を歌に乗せ、どこでも構わず舞台効果を作り出すという、ステージを問わない演出でも有名である。
また、やや幼い可愛さを見せる外見に反して、自らベースをかき鳴らして歌う姿にはカッコイイという評判もあり、男女問わず人気を集めているのはわりと知られた事。
やや男の子のような空気を纏っているのも、その一部として溶け込んでいる。


「お疲れさまです」
そんな一言と共に、コトリ、とホットココアの入ったカップが目の前に置かれる。
――ライブ参加者の休憩場所として設置されたプレハブ小屋。
中には異常なレベルの人気を誇る歌い手もいるだけに、こういった隔離場所は必要なのだ。
「ありがと、ノク」
プレリーは一言そう答え、ノクが置いたココアに口をつけた。
自分好みの甘さに調節されたそれは、付き合いの長いメンバーの一人だからこその気遣いだろう。
「あとは、フィナーレまで出番無しだったかな?」
「うん」
基本的に一組が歌う曲数は多くても三つまで。
それ以上時間を一つのバンドに与えていてはは全体のプログラムにまで影響をあたえかねず、主催側から禁止を促されていた。
何を歌うかは自由な分、そういったところはしっかり管理されているらしい。
「……ところで、それ、手紙? ファンレター?」
「ん? うん、そんなとこかな」
プレリーが机に広げていた数枚の紙に目をやり、その中に書かれている文章に目を通すノク。
どれも『ロイヤルコメット』へのファン根性というかそういったものが書きつづられていて、中には若干引くような勢いを感じさせるものがあったりすることもある。
……が、こういった手紙は嬉しいもので、プレリーも含めてロイヤルコメットのメンバーはすべて大切に保管しているという。
「さて、と、少し街を散策してこようかなー」
そう口にしながら、がさがさと手紙の束を纏めて、荷物の中にしまうプレリー。
そして同時に、着替えを取り出してそのへんの椅子に置いて行く。
「あ、でもスケジュールの細かいところまでは分からないし、場繋ぎにトークとか呼ばれるかも……」
「そーゆーのはラピスにでもやらせとけばいーよ」
ひらひらとやる気無さげに手をふりながら、そんな事を口にする。
どうやら気持ちは会場の外に向いているらしく、既に今まで着ていた舞台衣装を脱ぎ始めていた。
「プレリー……細かいこと気にしないのは分かるけど、更衣室使おうよ」
「んー? ここ女子控え室なんだし、気にすることないない」
「……誰か男の人が呼びに来るくらいはあると思うけど」
はあ、とノクはため息をつく。
表裏がなく、舞台の上ですらフリーダムな態度をほとんど崩さないのがプレリーなのだが、女の子の恥じらいはもう少し持ってほしい気は、ずっと以前からしていたことだ。
「それじゃ、あとよろしく♪」
帽子をかぶり、伊達眼鏡をかけ、全身を男物の衣装で包む。
既に変装の準備をしていたことから察するに、最初から出番が終わり次第抜け出す気満々だったようだ。
最後に愛用のベースをケースに入れて担ぐと、またひらひらと手を振りつつ、控え室を後にした。

「やれやれ……」
彼女は、フリーダムな人間である。
ものの分別はわきまえているが、自分の時間の中では何者にも囚われることはない。
しかしそれこそがプレリーという少女の魅力であり、美点。
ノクは相変わらずのバンドリーダーの態度にため息をつきつつも、どこか安心したような様子で自分用に用意していたココアを口にしていた。






「いつのまにか過ぎ去った、春・夏・秋・冬~♪」

鼻歌混じりに、クリスマスに浮かれた街の中を歩く。
ホワイト・クリスマスとはよく言ったものだけれども、今年は丁度いい具合に雪が舞う、理想的なロケーションだと言える天候だった。
ロマンスを夢見る乙女たちや、シチュエーションを気にする男たちにとっては、最高のクリスマスだろう。
「職人通りもクリスマスカラー一色だなぁ」
宝石細工や木彫り細工、料理店まで、この日のために用意していたであろう、季節ものの商品を全面に押し出している。
専門職クリエイターが多く店を構えていることからその名のついた通りだが、こうしてみると、どの職人も考えることはやはり一緒であるようにしか見えない。
「ま、その方が好都合だけど」
というか、この時期に売れるから同じモチーフのものがあちこちで売られているのは、想像しなくても分かることであるのだが。
プレリーは、花屋に立ち寄って小さめのリースを一つ、また別の店では、テーブルに飾れるような小型のイミテーションツリー―イルミネーションが一体型のもの―を買った。
「よし、あまりかさばっても迷惑だしね」
少し変装しただけでも、案外人には気付かれないものである。
それは人気がそれなりに出てから覚えたことで、人の認識というのは案外甘いものなのだ。
……まあベースを持ち歩いている点では目立っていたかも知れないのだが。
「さて、そろそろ……」
時計塔を見上げると、予定していた時間が近づいていた。
プログラムの調整をして出番に穴を開けないよう気を使い、かつフィナーレにも間に合うように。
結構シビアなスケジュールを組んだものだ、と思いながら、プレリーは周辺を歩く人達に目を向け――

「おーい、こっちこっちー」

探していた人物の顔が目に入ると、高く上げた右手をブンブンと振り回していた







「メリークリスマース♪ お手紙ありがとー」
クリスマスだからといって、外を出歩かないといけないということはない。
むしろ、出歩きたくてもそれが許されない立場の人も確かに存在している。
……例を上げるならば、病気だろうか。
「プレリーさん、セレナさん、シアさん……まさか本当に来てくださるなんて……」
突如自分の部屋に現われた3人の女性に、その少女――フィオナは最初の一瞬は驚いた顔を見せたものの、少し会話を交わすうちにだんだんと落ち着いてきたのか、数分後には彼女らしい穏やかな笑みがその顔に浮かんでいた。
身体が生まれつき弱く、こんな日でも外に出ることができない彼女だが……
「いいのいいの、ボクはいろんな人に歌を聞いてもらえればいいんだから」
交友関係は意外と広く、中にはこういった有名人が訪ねてくることもあったりするのは、隠れた事実である。
プレリーは笑いながらその手に持っていたリースとミニツリーを傍にあったテーブルの上に飾り、続けて背負っていたベースをケースから取り出すと、軽くチューニングを済ませていつもの弾き語りの態勢に入る。
「それにしても、こうして私達がそろうのも久しぶりですね」
「……去年のCCLでは、シアはいなかった」
その様子を見ながら、ぽつりとそう呟くシアとセレナ。
二人もそれぞれが得意とする楽器――ハープとバイオリンを取り出して、演奏の姿勢に入った。
……軽快な歌とダンス、そしてかわいげのあるビジュアルで高い人気を持つプレリー。
優しく包み込むような歌声で、多くの者を癒す才を持つシア。
物静かだが、どこまでも透き通り、洗練された歌声で隠れた人気を誇るセレナ。
すべての歌い手の上に立つ……などということはないが、とある年のCCLにて”三歌聖”などと言われた過去は確かに存在している。
「セレナ、たしかCCLでの出番はラスト付近だったっけ?」
「ええ。 だからまだ時間はとれる」
「シアの予定は?」
「ケーキコンテストに友人が出てますので……後で応援に行こうと思っています」
「そっか。 コンテストまではまだ少しあるね」
基本的に、CCLはその参加人数の多さから、朝から夜にかけてしていたりする。
ケーキコンテストは、例年通りであれば午後を回ってからだ。
……おそらく、参加している選手たちは、コンテスト本番に向けての下準備をしている頃だろう。
「……それにしても、よく考えたら弦楽器だけでよくやるよねボクたちも」
「音は合わせ方次第で、旋律にも不協和音にもなります。 種類なんて気にする必要はありませんよ」
「うん。 ……聞いてくれる人に、喜んでもらえればいい」
などと特に他愛のないことを口にしつつ、3人はプレリーを中心にして、フィオナの座る椅子の前に並んだ。
彼女たちのファンから見れば、これほど贅沢な光景などないかもしれない。
「……ありがとうございます、皆さん。 最高の、クリスマスプレゼントです」
「ふふっ、全部プレリーの企画ですよ」
「では……お客様、ご静聴ください」
「そんじゃ、ユニット”セレスティアル”。本日のTOPは、『天上の果実《クラウン・ベリィ》』!」
プレリーが高らかに曲名を宣言すると、ぱちぱちぱち……とたった一つの拍手がその部屋の中に鳴り始めた。
大陸でも指折りの歌姫が3人……たった一人のための、シークレット・ライブ。
誰もが注目する歌の祭典の裏で行われた、小さな舞台。
その光景が後に語られることはなかったが……それは、重要なことではない。

今日この日、一人の少女に笑ってもらえた。
それだけが、すべてなのだから。