※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

…その頃大部屋の中では、

「…ルイン分かっているわね、だから止められないのよ」
彼女もまた、こちら側で納得できないルインに説明を終えていた。
「でも…!」
「くどい! 行かないなら私から行くわよ!」
納得出来ないルインに、ついに焦れてシローネが先手をとる。
彼女の武器は双剣『ジェミナイ』その剣を構え、狼狽から立ち直っていないルインに向けて斬りかかる。
立ち直ってはいないものの、ルインは一先ずその攻撃を大槍でガードする。
(う…殺気が…シロ姉…本気ね…)
刃にその気迫も直接乗せられ感じざるをえなかった。
初撃の後も一方的にシローネが攻め、ルインがガードするという構図は暫く変わらず数分が経過。

「シロ姉! こんな無益な戦い、止めるべきよ!」
と再度、ルインは最初に言ったことを再び言う。
「例え無益であろうと…」
そのように言うシローネの目を漸く間近で見てルインは確信した。
「姉…さん…そうか、何かに操られているのね…」
「…」
その言葉を聞き、シローネの手がぴたりと止まった。
(やっぱり、か)
最初から変だと思っていたが漸く確信に至った。
「…」
再び攻撃は再開される。
不意にシローネはルインの背後をとるべく、攻撃の反応が間に合わない速度で横をすり抜ける。
(え…)
確かにシローネが横をすり抜けたその時に聞こえた。


わたしを つらぬ


確かにそう言った気がした。
聞こえたのはそこまでで、背後からの強襲を緊急防御で威力を和らげる。
斬撃の威力は顔に風圧で傷を付ける程の高い威力だった。
本来の力以上を彼女は出している。
(薬…か…姉さん…)
彼女の記憶に確かに残っていた知識。
その中にはこの力を発揮させる薬のこともしっかりとあった。
(でも…そうしたら…)
この薬の効果はあれだけでは無く、反動は肉体に多大な被害を与える。
この戦いがどうなっても彼女はどちらにしろ…

だが、どうしてもルインは躊躇わざるを得なかった。
彼女はそう長くは無かったが、共に生活をしていた友だ。
その仲間の…則ち命をこの手で奪うことなど彼女にはできなかった。

そうこうしている間にシローネは構えを変えて、攻撃に移る。
(あの構えは…!)
その構えはシローネが得意とする多段攻撃を仕掛ける前の型とは違い、剣闘士の一部が使う『刀』の技によく似た構え。
そこから繰り出されるのは彼女にも知っていた。
居合からの一閃。
そして、あの技を見切ったことは今まで一度も無かった。


一瞬の静寂。


「ルイン…覚悟…を…決め…て」
「シロ…姉?」
「私が…正気…を…保て…るのは…僅か…だから…」
最後に一呼吸おく。
息遣いも最初と比べ、かなり荒くなってきている。
彼女の言葉通り時間は無いのだろう。
「きれ…いな…内…に…」
「シロ姉!」

そう言い終わる間も無く、文字通り最期の一撃が放たれる。

しかし、この場に及んでも彼女は決心はつかなかった。
しかし、それは直ぐに撤回される。

「撃て! ルイン!」

悲痛とも取れるその叫びを聞き、そして。




時間にして、数秒の出来事だった。
しかし、永遠にも感じられた数秒。

その場に立っていたのは、
ルイン、ただ一人だけだった。




決着はつき、すぐにアインは中の彼女達へと駆ける。
対象的にシャマルとカリフは悠々と本部である指令室へと向かった。

「シロ姉! しっかり! …そうだ、今癒しの…」
「ルイ…ン…」
「姉さん…喋ったら駄目、今…!」
「…」
決着はつき、ルインが今も大槍が抜かれたその腹部からなお夥しい血流しているシローネを介抱していた。
しかし、彼女の思いに反するように命の炎は徐々に小さくなっていく。
「もう…いいわよ…ルイン…」
「姉さん! 駄目! じっとしていて!」
シローネは力無く首を横に振り、
「私は…ここで…終わり…みたいね…」
「姉さん!」
彼女の悲痛な叫びもまた届かなかった。
「あとは…仲良く…やって…行くのよ…」
「何言ってるの姉さん…そんな…最後の別れみたいな言葉はよして!」
「大丈夫…きっと…あなたたちなら…やって…行ける…」
「嫌だ嫌だ嫌だ! いったら絶対駄目だ!」
彼女は普段の性格からは考えられない素のさらに素も曝け出して、ただ駄駄を捏ねる子供のように振る舞っていたが、気にする余裕も何もかも無かった。

「我儘は…ダメ…よ…」
「うぅ…だって…」
「そうだ…アイン…」
「…」
今もなおルインは手を握り続けているが、それがあと僅かで尽きることは分かっていた。
最期は近い。
分かっていたからこそ、アインへと頼むしか無かった。

「皆の…面倒も…見てあげて…あと…」
そこから力も無くなってきて、言葉は唇の動きだけを読み取りアインは判断した。
「…分かった」
その言うべき最小限の事を読み取り、頷き了承する。
「良かった…最後に…」
「最後なんて…言わないでよぉ…」
その手を握る力が強くなる、それは二人ともがだ。



「自由に…生き…」



その言葉は最後まで言いきることは無かった。

そして、握られていた手に、もはや力は無い。

体温も急激に失われて行く。

彼女は、二度と、
動くことは、




無かった。




「うあぁぁぁぁぁぁ! 嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



彼女のその叫びは虚しく、ただ艦内にただ響き渡るだけであった。



…それから、少し前の黒船の反乱へと結び付く。
反乱はアイン率いる数人の人々が行った。



もしかすると、彼女の願いも叶えるためだったのかもしれなかった…