※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

リックテールで開かれている2月14日のヴァレンタインデーコンテストの
スイーツコンテストについて、皆様はご存知だろうか?

そも、今でこそ2月14日は喜ばしいイベント時期となっているが、
その馴れ初めは非常にシビアな話になる。

かつて、アルティアが聖十字騎士軍を率いてた時代。
国王は兵達が妻を、彼女を、残して死んでしまうと嘆いていた事に困っていた。
その事で、大臣が提案した横暴な案。『兵とその女を完全に別離させる』という
決まりが出来てしまったのだ。
肯定の意思をみせる対魔物急戦の大臣派閥。
反対の意思をみせる防衛・説得を推進するアルティアを始めとする聖十字騎士軍エルナン派閥。
しかし、法を握るのは国王。
国王の威を借りた大臣に対し、国王は強く反対意思を見せることが出来ず、
その法は対立した派閥を残しながら立案された。

しかし、それで黙っているだけでは無い男が居た。
名をニコラ・ヴァレンタイン。後に2月14日がヴァレンタインデーと呼ばれる所以となった男であり
彼のエルナン・フロリアの親友と呼ばれた男だ
彼は秘密裏に、兵達に・・・そして、残される女に、何かしてやれる事は無いか。
リュートを奏で歌う一方で、その法に反する行動、案を考えていた。

直接会うことが出来ないならば、手紙などの文章を伝える手段を考えた。
暗号などを作る事も考えたが、これでは正しく伝達出来ない可能性もある等。
また、手紙だけで女達は満足するだろうか?
可能な限りしてやれる事。それを毎日のように考え続けた。

話は変わるが、彼は自称とは言え食通であった。
そんな彼が、一つのモノと出会う。
それは、チョコレートという食べ物。
誰が発明したのかは判らないが、一欠けら食すだけで満たされる食べ物に、『これだ!』と閃いた。

ニコラの行動は素早かった。
兵として居る自らの彼・夫に話す事すら出来ず涙していた女達に声を掛け
国王・大臣の一派に気付かれぬよう、女達にチョコレートと共に手紙を受け渡すというモノ。
手紙だけではない。兵をどこまでも気遣った贈り物をする事で、彼女達が救われることを信じて。

だが、そのやり取りも長くは続かなかった。
事に気付いた大臣の一派は、この主犯となった人物を探し、
ものの一週間足らずでニコラを裁判の場に立たせることが出来たのだ。
大臣一派に着いていた部下は、優秀だったのだ。

友人の窮地に弁護を必死に行うエルナン。しかし、法として決まっていた以上
いかに彼でも無罪にする事は出来なかった。
兵に未練を作り苦しめた重罪は万死に値する。という頑なな大臣の言い分が裁判で通ってしまった。
判決は死刑。方法は撲殺と決まった。

その処刑日・・・2月14日

だが、ニコラの行動は正しかった。死後に証明された事が悔やまれるが・・・
結果としてこの法は半年足らずで兵の士気を極限まで下げ
聖十字騎士軍の必死の事後処理が無ければ、首都は魔物に没とされていたと言われている。

後に、彼のニコラを讃え、敬う行事として、
アルティア教に2月14日。ヴァレンタインデーが設立された。
それは、ニコラの魂を慈しみ、この平和がある事が彼のおかげである事を感謝し
彼の命日、魂が救われるよう。
また、兵と女の魂に代わり、男性がお世話になっている女性に感謝を込めて
チョコレートを送る。というのが本来の行事であった。

だが、とあるクリエイターの教会への皮肉か。
このヴァレンタインデーをメジャーにするべく、乙女心をくすぐる内容に仕立て上げたのだ。
それは、好きな男の人にチョコレートを送る事で想いを届ける。と言うもの。
その件は世間に爆発的にウケた。
この驚異的なチョコレートの売り上げにクリエイターは書き入れを喜んだ。

今ではニコラの行い・歴史も、あまりにダークな内容で、喜びの日にはイメージが程遠く
その為一般的には広まらず、こうして作られたクリエイターの
ヴァレンタインデーが『面白い』という所から普及され
様々なお祭りとして残っている。


――――教会歴史書記・及び特別日の考察書より



「っとまあ、これがヴァレンタインデーの馴れ初めだけど。
 まあ、オネーサンとしては面白ければそれで良いんじゃないかなっと」
「・・・で、その話をボクにして何の意味があるの?」

 相変わらずインスタントのお茶をエルナは目の前の少女・・・リーゼ・エルヴィオンに差し出して
 そのヴァレンタインデーの由来について話をしていた。
 ただ、リーゼは『この話を自分にする意味が判らない』と呆れた顔を
 目の前の破天荒カーディアルトに向けていたの・・・だが、

「あら? 自分が関わったイベント行事の由来くらいは勉強して置いて損は無いわよ。
 中には「ヴァレンタインの元となった人の誕生日なんだよー♪」とかクリエイターの策略を妄信してる子も居るんだけど
 『作り手としては』、そんな痛い子で居たくは無いでしょ?」
「!?!!? な、なんの事かなぁ」

 含みあるエルナの言葉にリーゼは内心ビクついた。
 ありえない。だって、アレは、ティールとイリス程度にしかバレてないハズだし
 あの二人が気軽に話すワケが無い事くらいリーゼは判っていた。
 だが、次のエルナの言葉がリーゼの眉間を矢のように貫いた。

「あらー。貴女自身がわかってるんじゃないかしら? リ・ゼ・ル・ちゃん♪」
「な、なななななぁ!!!?!? なんでそれを!!!??」

 もはやどうトボけても無駄だろう。
 どこで知ったか云々はこの人には通じないような気がしてきた。
 なぜなら、そのリーゼの反応に、シスターエルナは「うふふふふふふf」と黒い笑いを浮かべていたのだから。

「で、まさかそんなつまんない事でボクを呼び出したワケじゃないでしょ?」
「そうそう。“リゼル”ちゃん宛てに、フラワリングから参加申込書来てたっしょ?」
「あー・・・」

 そう。思えばもう12月
 12月といえば、アルティアの聖誕祭。
 そんな自分の誕生日にわざわざ、恵まれない子供に贈り物をした伝承も残っている。
 その仲介役を買って出た『セント・クルス』という男性の名前からひねって『クリスマス』と呼ばれるようになったのだ。
 まあ、もっともこのセント・クルスも聖十字騎士団の誰かの変装だったという説が一番有力だがそれはどうでも良い話。

 このクリスマスの書き入れ時。調子が良いと思うが、教会に対して肉薄的なクリエイターも流石に頭が上がらない日である。
 ヴァレンタインデーのような薄ら暗い話を、もっと夢のある話に変えて、クリエイターが書き入れ時に変えたモノに関しては
 彼等の多くは元となった話を知らない為に、特に教会に対して敬意を見せる必要も無いと思っているが、
 今回のクリスマスは、その教会の主要である“聖女アルティア”の“誕生日”であり、流石にクリエイターがヴァレンタインの時のように
 夢のある話に作り上げる。などは出来るはずも無かった。
 故に、珍しい話だとは思うが、元々教会とクリエイター協会は製薬の面々でそれぞれの役割を協定されているつながりもある為
 こうした教会とクリエイターが協力した企画が上がったのだ。

 と、話をあまりトリップさせるワケにはいかない。エルナは首を振ってリーゼに向き直った。

「あの内容に不備があったから、ちょいと聞いておこうと思ってネ」
「ふび? 別にボクはちゃんと全部記入して送ったけど・・・リゼルとして、だけど」
「あー、うん。フラワリングの方の不備で“申込用紙が一枚しか入ってなかった”のよー」
「・・・はい?」

 エルナの差し出した用紙は、“リゼル”が記入したのとほぼ同じ用紙。
 ただ一つ違うのは、『参加申込用紙』ではなく、『参加パートナー申込用紙』である事

「今回は向こうさん趣向を変えて、ペア戦で行こう。って話になって、協力者を見つけないとねー」
「・・・はぁ!!?? だって、もうコンテストまで日が無いのに!!?!?」

 焦り抗議するリーゼに、エルナは溜め息をついて返事をした。

「だって、放浪支援士の貴方達捕まえるのがどれだけ大変だと思ってんのよ」
「うっ・・・」
「まあ、フラワリングの方の不備だったし、万一パートナー見つからなかった場合はあっちで探してくれるらしいけど・・・・」

 続くエルナの言葉は想定できた。
 パートナーと言う事は、何より『チームワーク』が大切となる。
 即席のソレでは、チームワークが形成されてるのと比べ圧倒的に不利になるだろう。
 また、チームワークだけで言うなら、リーゼにはカノンが居る
 だけど・・・

(ねーちゃん、作れる事は作れるけど、コンテストとかのレベルじゃ無いしなぁ・・・)

 なので、パートナーとするには、些か不安が残る。

「まあ、コンテストまで日が殆ど無いけど、せめて見つかったのが幸いね。
 それでも、まだ練習くらいは出来るハズだから」
「うん・・・判った。ボクの方で出来る限り何とかしてみせるよ」

 そう言って、リーゼはパートナー申込用紙を受け取り、
 難しい顔をしながらエルナの部屋を後にする・・・

「あ、言い忘れてたけど。参加者全員仮装・・平たく言えば、コスプレする義務あるわよー」

「・・・はい?」




「しかし、お祭り事となれば騒がしいのぅ。本来はもっと厳かな行事ではなかったのか?」
「アハハ・・一応、その名残として夜は教会の大聖堂で晩餐会がありますけど・・・」

 喧騒の中、エミリアとリスティ、ディンは教会の方に向かっていった。
 教会付近でも祭りで賑わい、もともと人の多い首都でも、更に人が溢れかえっていた。

「しかし、ヴァイはどこに行ったんだ? リスティまで俺達にまかせっきりにして」
「そうじゃな・・・仕事とは言っていたが、ちょっと関心出来んのぅ」

 その二人の言葉に、少し後ろを歩いていたリスティは「ふふっ」と可笑しそうに笑い、
 一つのブースを指差した。

「あっちでクリスマスケーキのコンテストやってますし、見に行きましょう!」
「そうじゃな。今なら一般部門の参加者は作っているところじゃろう。行くぞ、ディン」

 人ごみを掻き分け、三人は前に出ると、
 そこで、数十名の腕に自信のある参加者が腕を振るっていた。
 ある者は生地を舞うように混ぜ
 またある者はフルーツを瞬く間にさばいて行く
 そんな中

「ぶっ!!!」

 多くの参加者が赤服白髭。また、女性の参加者ならば赤い帽子に可愛らしくデフォルメされた服を着て参加しているなか
 異様に大きい黄色の物体が目に入る。
 エミリアはそれを見て思わず吹き出したが、その黄色の物体は
 ・・・ひよこの着ぐるみ。
 どう考えても動くのに制限が出そうなソレは、赤いリボンを首(?)に巻き、平然と調理を行っていた。

「こちら放送席(?)。放送席!我々フラワリング主催のヴァレンタインデーコンテストでの若きホープ。リゼル・エリオンさんのパートナーの謎のひよこですが。
 リゼルさんとのコンビネーションもさる事ながら、類稀なる包丁捌き!! 一体、あのひよこは何者なんだー!!!」

 その大声で実況を行う放送席(?)の言葉を聴いた後、
 いつの間にかエミリアの横に居たのか、ティールが表情を変えず、顎に手を当てて言う。

「あのひよこ・・・包丁を振るう速度が丁寧な上に速い。きっとAランクの支援士・・・!!」
「いや、ティール。真面目にそんな解説をされても困るのじゃが・・・」

 しかし、その二人の言葉に相変わらずくすくすと楽しそうに笑うリスティが
 三人の間に入って話を始めた。

「あのひよこ。中身ヴァイさんですよ」
「・・・・はぃ?」
「実はですね・・・」

 リスティの言う事は、
 “リゼル”から頼まれたことと、
 そして、『何故かリゼルの姉が持っていた』着ぐるみの事。
 それを二つ返事で了承したヴァイ。である。

「いや、ヴァイ・・お主それで良いのか・・・」

 なんともいえない気持ちでひよこを眺めるメンバーだが、
 後の結果、そのインパクトもさることながら、リゼルとペアで作り上げたケーキはまたしても一般部門優勝という伝説を作り
 謎の製菓職人。リゼル・エリオンに、『謎のひよこ』の伝説が追加されるのは後に知る話だった・・・・









おまけ



「シアァ~;; 服返してよぉぉ・・・」
「ダメですよ。あれだけリーゼさんの事をからかっておきながら、自分を棚に上げるのはフェアではありませんでしょう?」

 ドレス姿で教会の晩餐会に参加するエルナとシア。
 だが、一方のエルナは乗り気ではないのか、シアの影に隠れるように大聖堂を歩く。

「だって、私にこんな正装似合ってないって・・」
「そんな事ありませんよ。エルナ、すごく綺麗ですよ」
「ぅぅぅ~・・やっぱ服返してよ~!!」

 そういうエルナは自分の事で手一杯なのか気付いては居ないが、
 その姿にちらほらと男性参加者が目を奪われたのは
 シアの言う事を肯定しているのだろう。
 エルナの泣き言に、シアは意に関さず。指をさして一つの場所に向かった。

「ホラホラ。コンテストのケーキがいただけるそうですよ。リーゼさんのはクリスマスフルーツタルトでしたよね♪」
「もうっ・・・」

 小さな談話の入り混じる中。二人はコンテストのケーキが配られている場所に向かう。
 そこに

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・(サッ」

 黄色いひよこが、エルナにケーキの皿を黙って差し出す。

「・・・ヴァイ?何やってんの・・・? つか、そのひよこ何・・・?」
「・・・・リスティが『可愛い』と喜んだ。ならばオレはそれ以上何も望まん」

 小声だが、着ぐるみの中からくぐもった声が聞こえる。
 微妙な心境のまま、妙に納得しつつ、エルナは困った顔で笑うシアと共に、
 晩餐会のテーブルに向かった。