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????「やっぱり此処に居たんですね空也さん。もう、探しましたよ!!」
空也「おわっ!! ほ、ほたる殿!!」


 誰かが入ってきた気配がしたので振り向いてみると、そこには桃色の髪をした可愛らしいお下げの少女が居た。
服装から推測するに何処かの職人っぽい感じがする。多分鋳物師(いもじ)かなんかの類だろう。
しかし、こんな少女が鋳物師をやっているなんて驚きだ。俺の居た世界でもいない訳ではなかったが、殆どが手伝いとかで従事しているだけに過ぎない。
だがこの少女の風貌からすると専門でやっているように伺える。


ほたる「忘れたんですか空也さん! 今日は私の打った作品を見てもらう約束だったじゃありませんか!!」
空也「あ・・・。しまった・・・、すっかり忘れてた・・・!!」
ほたる「もう!! 空也さんったら酷いです!!」


 ほたるという少女はどうやら手に持ってる刀を空也に鑑定してもらう予定だったらしい。
しかし当の本人がその約束をうっかり忘れていており、業を煮やした・・・と言うのは大袈裟かもしれんが、
約束をすっぽかされたほたるは空也のいる詰所まで押し寄せたらしい。


烈心「あらまぁ・・・。プッ、尻に敷かれてるねぇおたく。」
空也「むっ!? い、いらん事を云うんじゃない烈心!! それに笑うんじゃない!!」


 空也が柄にも似ず顔を真っ赤にして怒鳴る。堅物とは思ってはいたが中々面白い奴じゃない。


ほたる「あら? そちらの方は空也さんの客人さんですか?」
烈心「む?」


 ほたるが不意に俺の方を見る。どうやら空也の件で俺に気付いていなかったらしい。目の前に座っていたんだがな俺は。


烈心「ああ、俺の事ね。俺の名は磐野烈心って言う名だ、よろしくな。まあ、客人といったら客人なのかねぇ・・・俺は?」
ほたる「あ、此方もご紹介が遅れましたね・・・!! 私は天乃ほたる。此処十六夜で刀鍛冶をしております。此方こそ宜しくお願いします。」


 ほたるは俺に向かって深々とお辞儀をした。中々可愛い子じゃないの。


ほたる「それで、烈心さんはどうして此方に? ひょっとして・・・、空也さんの道場に入門とか道場破りとか・・・ですか?」
烈心「・・・。入門はまだ解るが、どうして道場破りって出てくるんだ・・・。」
ほたる「あっ! ご、ごめんなさい・・・。お気を悪くなされましたか・・・?」
烈心「いや、別に構わんのだがな・・・。」


 ほたるがまたも深々と頭を下げる。この子、天然か・・・? その時頭を上げたほたるが俺の持ってる太刀に気付き目を輝かせて駆け寄ってきた。


ほたる「こ、この太刀って・・・!! 私たち十六夜の太刀とはちょっと違うものですね・・・!!」


 ほたるが更に目を輝かせて俺の太刀を見る。そんなに珍しいものかこれは?


烈心「ほう、俺の太刀がそんなに珍しいものかね? そんじょそこらへんにある太刀とあんまし変わらんものなんだがな。」
空也「いや、私もさっきから気になってはいたのだが、君の持ってる太刀は私たちが使っている太刀とは何処か違うようだ・・・。」


 空也も俺の太刀が気に掛かっていたようだ。俺は2人の反応は酔狂なものしか感じなかった。


ほたる「烈心さん、よろしければ手にとって見てもよろしいですか?」
烈心「別に構わんが・・・重いぞ?」
ほたる「私だって刀鍛冶の端くれです。少しの重さなんてなんのそ・・・きゃあっ!?」
空也「ほ、ほたる殿!?」


 ほたるが俺の太刀を手にとって見ようとした時、彼女は想像だにしていなかった重さに思わず声を上げて驚いた。
それを見た空也が驚いて飛び上がり、ほたるの元へ駆け寄った。


ほたる「こ、この太刀・・・。普通の太刀よりずんと重い・・・。」
空也「むう・・・、確かにこれは私の使っている太刀より重さがあるな・・・。」


 2人は俺の太刀を珍しげに見ている。そんなに厚重ねの剛刀が珍しいものかね?


ほたる「烈心さん・・・。この太刀って一体・・・。」
烈心「ああ、そいつは厚重ねの剛刀っちゅうやつでな。俺のお師さんが俺にくれたものだ。」
ほたる「厚重ね・・・。そういう技術があっただなんて・・・。」


 ほたるは珍しいものを見るみたいに俺の太刀を観察する。どうやらこの十六夜には厚重ねという技術は無いらしい。


空也「しかし、これほどの剛刀だと切れ味が犠牲になり、斬るというより叩くという代物だが・・・、この刀身を見る限り切れ味の方も相当のものと思えるな・・・。」
ほたる「ええ、これは凄い業物ですね・・・。」


 2人は飽きもせず俺の太刀を観察し続けている。未だ見ぬ初めての技術らしかったので感激と驚嘆が合わさったような表情を浮かべている。


ほたる「烈心さん、この太刀はいったいどの様な銘柄なんですか?」


 ほたるが太刀を膝元に置いて太刀の銘柄の事を問いかける。


烈心「こいつの銘柄・・・? そんなもんありゃせんぜ。こいつはただの名無しの無銘だ。」
ほたる「えっ・・・!? この太刀が・・・、無銘・・・!?」


 ほたるが俺の太刀に銘がない事に驚きの表情を上げた。たかが刀の銘柄ぐらいでそんなに驚くものなのかね。


ほたる「信じられない・・・。これほどの太刀に銘柄が無いなんて・・・。」
空也「うむ・・・、本当に驚き尽くしな逸品だなこれは・・・。」


 2人は更に驚きの表情を隠せないでいる。というか、さっきからこのパターンが多いわな・・・。


烈心「さて、もういいだろう。俺はこの辺でお暇させてもらうぜ。」
ほたる「あっ、は、はい!!」


 俺は太刀を掴み、腰元にぶら下げて外に出ようとした・・・が、空也の言っていたように山の天気は非常に変わりやすく、
さっきまで止んでいた吹雪がまたも吹き荒れている状況になっていた。


烈心「・・・。」
空也「・・・。」
ほたる「・・・?」


 俺と空也はその状況を見て呆然しており、状況が掴めないほたるは不思議げに俺を見ている。


烈心「色々していたら・・・、また吹雪いてきなすったねぇ・・・。」
空也「そのようだな・・・。すまない烈心・・・。」
ほたる「あのー? 一体どうしたんですか?」



 仕方なく、俺は今日一日詰所で一夜を明かす事になった・・・。








八雲「なぁ士郎・・・。私たち全然出番無かったな・・・。」
士郎「みたいですね・・・。」



 -続く-