※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「いきなりですまなかったな。それと、ハズレとか言っちまって。
 きっと聞こえてないだろうって思ったんだ」
「はぁ・・・」

 公園の長椅子に座り、その男剣士と話をする。
 なんだかぶっきらぼうな口調の割には少し丁寧さが入っていて
 自慢じゃないけど、まるっと自信の無い田舎の人間付き合い(通称:おばちゃん達の談話)5年の私の人間見解からして
 最初は不良みたいな感じだったけど、人間付き合いを通して最近丸くなり始めた。という感じの人だと見た。
 うん。完全に私の想像もとい妄想だけど

「私も無視するつもりは無かったのですけど・・・私、北の人間ですから
 南側に知り合いは居ませんし、きっと私じゃないだろう。って思ったんです」
「ま、それも無理ないかもな」

 男剣士は特に反論する事もなく私の言葉を受けて、
 そして、少し何か考えるそぶりをした後で、
 少し躊躇ったような口調で、私に言ったのだ。

「で、アンタに用っていうかな・・・つまりだ。オレは今、お前以外の誰からも存在を把握されない状態にあるんだ」
「はぁ・・・」

 二度目の相槌。しかし、一回目の相槌とは違い
 今の私は、その男剣士の言葉に思いっきり不信がっている。

(新手の電波?)

 大体、存在を把握されない状態。って何だろうか。
 私がさっぱり理解していない・・・というか、半ば引いてる事に、
 男剣士は「やれやれ」という顔をして、立ち上がった。

「ふん・・じゃあ、例えばだ」

 少し恥ずかしかったのか、男剣士は立ち上がって、スラッと公園の真ん中で腰の剣を抜いた。

「きゃ!!」

 危ないなもう。と、私は思った。
 でも次の時には、そんな不満は消し飛んでいた。
 その刃は、目を見張るほどの・・・こんな私ですらも判るほど、ただ美しい片刃剣。
 それだけの業物に目を奪われていると、ふと気づいた事があった。

「あれ?」
「そう。たぶんお前の思った事とオレの言いたかった事は同じだろう」

 男剣士は剣を仕舞い、その美しい刃をこれ以上見る事は出来なかった
 が、

(なんであれだけの業物。『みんな注目してないの』? それに・・・・)

 そう。それ以前に、普通、街中でいきなり剣を抜いた人を見れば危険視するはず。
 なのに、男剣士のことを意識するような人物は誰一人としていなかったのだ。

「更に。だ」
「え・・・え!!?ちょっと!!! おばあちゃん危ない!!」

 仕舞った剣を抜刀し、男剣士は一人のおばあちゃんに斬りかかる!!
 その動作に声を出しても間に合わない!! それほど鋭くてただ速い!!

「あ・・あぁ・・・そ、そんな・・・・!!」

 信じられない。あまりに酷い。いきなり、剣で・・・こ、こ・・殺すなんて・・・!!
 なんで、そんな事が出来るの・・・・・え?

「おやまぁ。こんな所にバナナの皮が。お若いの、気づかせてくれてありがとねぇ」
「あれ・・・?」

 そのまま、地面に落ちていたバナナの皮をつまんでゴミ箱に捨て、
 ゆっくりと歩いて去っていくおばあちゃんを呆然と見送りながら・・・

「斬れねぇって初めから判ってたよ。
 ま、ショックは大きかったと思うが、これで認めざるを得まい。
 ・・・こんな風に、オレは干渉したりされたりする事が極端に『出来ない』状態にあるんだ」

 確かにおばあちゃんは斬られた。でも、斬られてない。
 彼の言う言葉を取れば、『干渉出来ない』状態であると、認めるしかなかった。
 だって、目の前で見せ付けられちゃ・・・ねぇ? 

「これで判ったか?」
「え、えっと・・・うーん・・・つまり、私以外の方からは透明人間になってるんですか?」
「いや。それも違うな」

 まだショックの抜けきってない私の呆然と出た言葉に、彼は小さく首を振って答えた。
 彼の説明によれば、自分と私以外の第三者に一切干渉出来ない事を前提にした上で、
 例えるなら、『きわめて存在感の薄い状態』にある。というだけであり、
 つまり、今こうして私と彼が話をしていても、他の人からは、『私が一人で話している変人』という風に映る事は無いという。
 とにかく、見えているけど相手にしない。意識もされないのだというのだ。

「でも、なんで私だけ貴方を認識できるんですか?」

 その上で、私のこの疑問は当然のものだと思う。
 それに、彼の言った「アタリ」という言葉。
 『特別な存在』。きっと、私が支援士に求めていた所は少なからずその部分があったんだと思う。
 その意味に、私は高まる好奇心を表していると、男剣士はため息をついて頭を抱えた。
 それは、ものすごいサマになるため息だった。
 自慢じゃないけど、まるっと自信の無い田舎の人間付き合い(通称:おばちゃん達の談話)5年の私の人間見解からして
 きっといつもため息をついているんだろう。などとくだらない事を思う。

「良いか。信じないならそれでも構わん。信じさせる手立てもある。
 オレだって何も知らずに聞いたら馬鹿馬鹿しく思える。という常識がある人間である事も理解してくれ。
 だから決して引いたりしないで現実的を捉えてくれ」

 そんな意味不明の前置きから、彼は私に言うのだった。

「『一生に一度のチャンス』。それが貴様に回ってきて、オレはナビゲーターという役割になったんだ」
「は、はぁ・・・」

 三度目の相槌。
 しかし、その私の心境は思いっきり不信がって、
 やはり、

(新手の電波?)

 と思うのだった・・・。