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烈心「あ? 何だって? 護衛依頼?」


 俺は十六夜の酒場で焼いた干し魚をくわえながら女将から貰った依頼書に目を通した。
その内容は、『リックテールからリエステールまでとある物品の護衛をしてくれたし。報酬は100000フィズにて。』と書いてある。
聞いたところによると、通常護衛依頼はだいたい10000~15000フィズ辺りらしい。しかし、今回の依頼は破格の報酬だ。
よほど大切なものかとんでもない危険物の護衛なんだろうと思える。


烈心「で、こいつを俺に依頼したいってか?」
女将「ええ、これだけの額が付く依頼だと、並大抵の支援士や冒険者には務まらない依頼なのよね。」
烈心「で、俺に白羽の矢を立てたって事かい。」
女将「そうゆう事。」


 女将が微笑みながら俺を見る。どうやら女将は俺の能力を評価し、俺にこの仕事を斡旋したらしい。
評価してくれるのは嬉しい話だが、俺はここ最近採取依頼しか請け負っていないのでそれだけで俺を評価するってのは些か変な話だ。
しかし、これほどの額の依頼を放っておくのは勿体無い。俺はこの依頼を受ける事にした。


女将「依頼開始日は今日から5日後だから、それまでにはリックテールの中央酒場に滞在していてね。これがリックテールに向かう経路を示した地図だから。」


 そう言いながら女将は俺に地図を渡した。俺はその地図を持って酒場を出て、一路リックテールへと赴いた。
雪深い雪原を越えて漸く麓に到着し、中継地点の北港街クロッセルという町に到着した時は、もう辺りは真っ暗闇に染まっており、見えるのは街の灯りだけになっていた。
ここからリックテールに向かうには移動用の荷馬車を使うのがいいと女将は言っていたが、こんな夜中では出ているはずも無く、今日はこの街で一泊せざるを得なかった。
山間の街ではないとはいえ、クロッセルは北部氷原の入り口でもあり気候は寒い部類に入る。しかも冷える時間帯でもあるので、街中で燻っていると体調を崩しかねない。


烈心「さぁて、とりあえず宿か酒場でも探すかねぇ。」


 俺はどこか宿か酒場がないものかと街をうろつく事数十分、ようやく酒場兼宿屋の建物を発見した。
宿屋と酒場を兼ねているだけあって、店の規模は比較的大きいようだ。おそらくクロッセルの中でも大きい部類の酒場と見える。


烈心「これだけ大きけりゃあ部屋と飯の心配は無いな。ってぶえっくしょい!! ううう、まずは部屋を確保してから冷えた体を暖めないとな・・・。」


 俺は今日泊まる部屋を確保するのと、凍えた体を暖めるために酒場に入った。中は外見に違わずかなり繁盛しており、至る所で笑い声や怒号が飛び回っている。
俺はまず宿屋のカウンターで泊まれる部屋を確保し、腹ごしらえの為に酒場のカウンターに腰掛けようとした時、いきなり後ろの方で怒号が飛び交った。


????「おうおうおう!! 兄ちゃんよ!! オレの女に手ぇ出すとはふてぇヤロウだ!!」
????「そ、そうでぇ!! オレのアニキのオンに手ぇ出すたぁいい度胸だ!!」


 どうやらよく見ると支援者崩れのような二人組が同じテーブルに座っている黒い色眼鏡を掛けている男に因縁を付けている。
どうも自分達が口説いていた店番の女性を横取り・・・というか襲っているところを邪魔されて頭にきているようだ。



????「頭の悪い話は止してもらいたいねぇ。彼女は嫌がっているじゃあないか? ボカァただ助けただけなのよね。」


 黒眼鏡の男は詰め寄ってる2人に動じる事も無く不敵な笑みを浮かべている。見た感じ優男っぽいが、なかなかどうして肝が据わっているようだ。


黒眼鏡の優男風の男「それに、こんな美しい女性にナマズとイボイノシシの様な面構えのおたくらにゃあ勿体無いしねぇ。」
ナマズ面の男「にゃ、にゃにおーーーーーーん!?」
イボイノシシ面の男「お、オレっちの自慢の面がイ、イボイノシシだとぉぉぉぉぉぉぅ!!」


 二人組は自分の顔の事を黒眼鏡の男に馬鹿にされて怒り狂っている。そらそうだ。誰だって自慢の顔を馬鹿にされれば怒るものだ。もっとも自慢できるほどの面でもないが。


黒眼鏡の男「まあまあ、そんなに怒りなさんな。僕はナマズとイボイノシシみたいな面したヤツが好きなんでねぇ。仲良くしましょうや。」
ナマズ面の男「て、てめぇぇぇぇぇぇ!!」
イボイノシシ面の男「き、切り刻まれてぇかコノヤロウゥゥゥ!!」
黒眼鏡の男「おおっと悪い悪い、気を悪くしないでくれたまえ。僕は別におたくらがナマズとイボイノシシに似ているなんて云ったつもりはないんだ。ナマズとイボイノシシがおたくらに似ているだけさ。」


 黒眼鏡の男は更にナマズとイボイノシシをおちょくっている。二人は顔を赤く青く変えながら今にも飛び掛りそうなほどいきり立っている。


イボイノシシ面の男「ヤ、ヤローーーーーーーー!!!」
ナマズ面の男「ケッ!! テメーのオフクロでも見分けがつかねーように切り刻んでやるぜ!!」


 怒り狂った二人組は遂に光り物を抜いて黒眼鏡の男目掛けて斬りかかってきた。しかし次の瞬間・・・。


黒眼鏡の男「あらよっと」
ナマズ面の男「のわっち! アウァ!?」


 黒眼鏡の男は座ったままナマズ面の男の短剣をヒラリとかわし、逆に脚払いを放ちナマズ面の男を横転させた。そして手から離れた短剣は宙を舞い、ものの見事にナマズ面の男の脳天に突き刺さった。


ナマズ面の男「○×△□#☆$@*¥!!??」
イボイノシシ面の男「あ、アニキィィィ!?」


 ナマズ面の男は頭に短剣が突き刺さり情けない姿でもがいている。それを見てイボイノシシ面の男は慌てふためいている。
その滑稽な風景を黒眼鏡の男は不敵な笑みを浮かべて見つめていた。そして次の瞬間黒眼鏡の男の目つきがガラリと変わった。
顔だけは相変わらずニヤニヤ笑ってはいるが、目だけは先ほどとはうって変わって殺意の篭った目だ。


黒眼鏡の男「さぁて、おたくも来るのかい? ん?」
イボイノシシの男「なっ・・・! テ、テメェ覚えていやがれ!!」
ナマズ面の男「√±∂∀∵≠И∃Ь⇔!!??」


 その目つきに震え上がったイボイノシシの男はもがいているナマズ面の男を抱えて逃げるように酒場を出て行った。
この騒動で一時酒場内は静まり返っていたが、二人組が出て行くとまた元の賑やかな風景に戻った。


烈心「あの野郎、見た目と違ってドえらいとんでもねぇ野郎だな・・・。ん?」


 俺はこの一部始終を見てあの黒眼鏡の男が見た目とは違う相当の人物だと感じた。それだけの気迫が奴に感じられたという事だ。
そして、ふと黒眼鏡の男と目が合った。俺の存在を感じた黒眼鏡の男はこちらを見て不意に微笑を浮かべ次の瞬間先程助けた店番の女性を口説こうとしていた。




   -続く-