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――それはささやかだけど、大きな願い事。
かつて家族のように暮らしていた人達と、また出会いたいというだけのこと。
でも彼女にとっては、ただ願っても、いくら努力しようと叶うことはない願い。
「たとえ“どんな願いでも叶うチャンス”だとしても、無茶だったかな……」

三日前に、突如として投げ掛けられた言葉。
それは、“一生に一度のチャンス”
ただ聞いただけでは信じられない、ただ願うだけで、どんな願いでも叶えられるというもの。
だったら、と考えた末に投げ掛けたのは、到底自分の力ではどうにもならない願い事。
しかしそれは、世界を隔てた先にあるもので……そんなチャンスをもってしても叶うかどうかは分からないもの。
それでも、それ以外に願うことは思い付かなかった。
――いや、それ以外を選んでしまったら、きっと後悔すると思ったから。

「……ふぅ」
“ナビ”を名乗った人は、“願い事”を実行した後は、さも何事も無かったように何処かに行ってしまった。
……いや、正確には“何事も無かった”のだろう。
このチャンスについての情報を見聞きし、そして記憶できのは、“ナビ”とその対象者のみだと“ナビ”であったその人が言っていた。
であれば、役割を終えた“ナビ”は“チャンス”については全て忘れてしまうようにできている事になる。
たとえ、書き置きや言葉を残しても、第三者にはその文字も言葉も認識できない。
それが“一生に一度のチャンス”と呼ばれる力の在り方だとも。
「さてと」
立ち上がる。
右手には愛用の槍と、左手には一冊の本。
この“一生に一度のチャンス”について説明された本なのだが、なんというか変なところで気が利いているなあ、と思わされた。
……とにかく、今は自分の役目を果たさなければならない。
そうしないと―――

「ま゛っ っ!!?」

――衝撃。
それも完全に死角をついた方向から、
全く身構えていなかったその瞬間に、
見事なくらいに身体の真芯を捉えた、
教科書にでも載せたくなるくらいに見事な不意討ちのタックルだった。
「ティール!? ティールだよねっ!!?」
流れるような動作で、グルリとその“誰か”と向かい合う方へと身体を向けさせれ、がしりと肩を掴まれてぶんぶんと前後に振り回される。
既に脳が状況についていっていない。
自分の名前を呼んでいるあたり、恐らく知り合いなのかもしれないが……
「ちょっ、待っ、止めっ!」
「はっ」
呼び掛けた事で向こうも我に返ったのか、思い出したかのようにパッと両手を離す。
それでもタックルからの見事な連携で視界がグラグラしていたが、なんとか頭の中だけでも落ちつけて、すぐ前にあるその姿を、視界の中に入れる。
「――――っ!!」
白に近い青紫色の、束ねられた長い髪。
対象的に、深い緋色に光を映す瞳。
――忘れるはずが無い、かつて共に在った、仲間にして、家族の一人――
「リオナ……っ!?」
北風《ボレアス》 南風《ノトス》 東風《エウロス》 西風《ゼピュロス》
かつて生まれ育った世界にいた、星風の英雄、アスト・ライオス。
そしてその風を操る類希な能力の高さから、四方の風の神の名を異名としていた、英雄の守護者の四人。
その一人、北風のリオナ。
「そうっ! よかったー、憶えててくれたんだっ!」
ちょっと子供っぽい性格は、”お姉さん”というよりは”お姉ちゃん”と呼びたくなる雰囲気で。
「あれからもう2年近くはなるのかなぁ……お互いうまく逃げられてよかったよ」
誰よりも前向きで元気なその姿は、ギルドのムードメーカーだった。
「ティールは元気だった? アタシはまぁ、色々あったけど、とりあえず元気にやってたよ。 ……ところで――」
もう会うことはない、会えないと思っていた人達。
その一人、私にとっての”お姉ちゃん”。
……ダメもとで選んだ願い事、ひとつ。





「ここどこ?」
――ムードクラッシャーも健在のようだった。





気持ちはわかるけど