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2:-riminiscence-



「ふーん、あの魔法がそんなことにねぇ」
ひとまずお互いに落ち着きを取り戻した後、二人で近くの適当な店に腰を落ち着けた。
話すことはと言えば、一つしかない。
かつてこの世界にたどり着いた時の事だ。
「何の魔法か知ってたの?」
リオナは多少驚いたような表情を見せたけど、その口ぶりからは逆に、何か心当たりがあるような印象も受ける。
と言うよりは、あの時の魔法がどういうものかはわかっていたような感じだろうか。
「アストがティールに使ったのは時空閉鎖のスクロール。
魔龍を時空の狭間に押し込んで、封印してやろうって作戦だったからね」
「時空の狭間って……」
何となく、納得はできた気がした。
想定した作用ではないのかもしれないが、時空干渉というのなら、こういうことがあっても不思議ではない。
「魔法国家クリエイスの十賢者達の力を結集したスクロールだったんだけどねぇ。 さすがにアレ相手じゃある程度弱らせてからでないと、捕らえるのは難しいって話だったわけよ」
「……でも、なんで私にそんなものを……」
そう、別世界への移動なんて効果、誤作動を誘発するにしても想定できるものじゃない。
閉鎖、ということは時空間においやって隔離する事――つまり、封印が目的のものだったとは言えるのだが。
「もとより、完全なものじゃなかったのよ。間に合わせで作った結界らしいし」
「間に合わせ?」
「要するに、対抗手段を開発するまでの時間稼ぎができればいいっていう発想。 何年になるかはわからないけど、いずれ解放されるのはわかりきってた封印だったのよ」
……あの巨体相手で、数年。
じゃあ、人間一人を相手にするために、範囲を絞ったら――
魔法に詳しいわけじゃないから何とも言えないけれど、百年は、下らない気がする。
「凍結した時間を使い、いつかくるだろう平和な時代まで眠れ――ね。 龍に使うチャンスは作れないと見るや否や、その発想が出るのには、我がマスターながら恐れ入るわ」
あははは、とリオナは最後に笑って締める。
「でもさすがに、この結果は想定外かもね。戦ってる最中にスクロールが破損してたとかなら考えられるけど」
まあ、現実的に考えてそんなところだろう。
ただ気に入らないのは、彼ら“英雄”のギルドが時間稼ぎの捨て駒のような扱いを受けていたことだが。
……今更知ったところで、どうにかなるようなものでもない。
「……戦争は終わったよ。あの時から数えて一年かけて、異界に押し返すことは出来た。ゲートも封じて、ひとまずは……だけどね」その一言は、私の考えていたことを察してのものなのだろうか。
一応の終結を見せたというのは、一つの救いかもしれない。
でなければ、あの時死んでいった仲間達も、他の戦いの中で倒れた人達も救われないだろうから。
「それで色々落ち着いたから、あの時くたばった皆の弔いも兼ねてロストアークに行ったんだけど、気が付いたらこの世界のさっきの場所にいたってわけ」
ロストアーク、というと、あの時邪竜と戦ったの地の名だ。
もしかしたら、私が此方に来る際に開かれた“門”と、同じ位置なのでは……
と、あまり意味の無い期待が沸き上がった。
それにしても、“くたばった”って言い方は……
まあ、ある意味リオナらしいけど。

「ランチセットお二つ、お待たせいたしましたー」

と、丁度そんなことを思った時、横から呼び掛ける声。
話に集中していて忘れていたが、席についた直後にリオナが『ランチセットふたつー』とかこっちの確認もナシに注文していたのを思い出す。
まあ時間が時間だからそろそろとは思っていたけど、相変わらず気が利いているんだが単にマイペースなだけなんだかよくわからない。
「えと……ご注文にお間違いは無いでしょうか?」
「うん、大丈夫」
「そうですか……ごゆっくりどうぞ」
コトリ、とセットのトレーを二つリオナの目の前に置くと、そう言ってお辞儀を一つ。
そのまま流れるような動作でこのテーブルから去っていった。
「……?」
なにかが、ひっかかる。
リオナの前に置かれたトレーの片方を引き寄せて、今のウェイトレスの様子を思い返す。
客は二人、ランチセットは二つ。
異常なことは何もない。
が、トレーを持ってきた時の彼女の様子は、何か違和感があった。
注文の確認……は普通するものだが、その瞬間の表情には、なにか別の意図も感じられた気もする。
そもそも、なぜ二つともリオナの前に置いたのか―――

「!!」

―――そこで、思い出した。
今の自分の立場を。
「ティール?」
“チャンス”の“ナビ”は、リレーのように対象者が引き継いでいく。
なら、“願い事を叶えた自分”は、今はどうなのだろうか。
……答えは、決まっている。
「……ブレイブハート」
「へ?」
力を抑えて、発火を手の先のみに集中させる。
現れるのは、立ち上ると言うには小さすぎる火。
しかし町の真ん中で周囲の注目を集めるには、十分なパフォーマンスになるはずのものだった。
が、周りの人達の行動は予測通り……
「ちょっとティール、いきなり何を…… なんで誰も無反応?」
反応したのは、目の前にいるリオナだけ。
町の真ん中、しかもカフェという人が集まるような場所でこんなことをすれば、普通は注目くらいされなければおかしい。
……と、いうことは。
「……リオナ……」
能力を解除して、改めてリオナの方へ顔を向ける。
いったいどんな偶然か問いただしたいが、それに答えられる人間はいない。
気が付きはしたものの、あまりの事態にうまく頭がまわらない。
そんな中で出てきた言葉は、たったひとつだった。



「……願い事ひとつ、なにかある?」