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Side Felicia

 〈カラン カララン…〉
「いらっしゃいませ!」
幾つものパン屋やお菓子屋が建ち並ぶリエステールの「ベーカリー街」は、この時節柄
華やかな看板や装飾で彩られていた。
そんなお菓子屋の一軒に入ってゆくは、女マージナル・フェリシア。
「お客さま、チョコレートをお探しでしょうか?」
「えぇ。…ちょっと品揃え、見せてもらうわね。」
声を掛ける店員をやんわりと制し、棚に並んだチョコレートをひとつひとつ覗き込む。
「……………。」
店内にいる他の女の子たちの口から漏れる、楽しげな笑い声。
特に聞き耳を立てているわけではないのだが、ふと耳に届き思わずクスリとしてしまう。
「いいかしら、こちらをふたつ下さらない?」
「ありがとうございます、包装はどうなさいますか?」
彼女が店員に手渡したのは、中に入った果実酒の薫りが大人びたムードを醸し出す
チョコレート・ボンボンの詰め合わせを2セット。
「そうねぇ…。
ひとつは緑の包装紙に、赤のリボンを掛けて。
もうひとつは…、
…白の包装紙に、黒のリボンで。」
「?」
「あら、ないのかしら!?」
「い、いいえ! ございますので、少しお待ち下さいませ…。」
バレンタイン・デーのプレゼントは、「華やかに 可愛らしく」飾るのが常套。
白と黒のモノトーン調では地味ではないかと首を傾げた店員であったが、それが
お客さまの要望とあっては仕方がない。
「ありがとうございました!」
〈カラン カララン…〉
店員の挨拶を背中で聞き、店を後にするフェリシア。
「ラファエル。
あなたが旅立ってから、もう5年になるのね?
…お姉ちゃん、今でもあなたのこと大好きよ。
いつものように明日このチョコレートあげるから、楽しみに待っててね。
…それから、あなたによく似たあの娘にもおんなじチョコレートあげるけど、
妬いたりしちゃダメダメよん♪」
ふたつのチョコレートを交互に見比べながら、つい独り言が出てしまうのだった。