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「ねぇ、そこのおにーさん。 貴方がヴァイ・リュークベルさん?」

 唐突に背後から話しかけてきた少女のものだと思われる声。
 ふりかえると黒服を着た首に赤いリボンを巻き、ピンク色の髪をサイドテールでまとめたおとなしそうな印象を感じさせる少女と
 同じく黒服で、首に緑色のリボンを巻いた栗色の髪をしたツインテールの幼い少女の二人組。
 その中からピンク色の髪の方の少女が近づいて来る。 声の主は彼女と見て間違いないだろう。

「…? ああ、そうだが…」

 ヴァイが誰なのかを問おうとしたが、その前に彼女の方から自己紹介が始まった。
 ピンク髪の少女の方は右手の甲にコインとルーレットをモチーフにした円形状の紋章の中央に「21」、
 栗色髪の幼女の方は左手の甲に同じ紋章で中央に「0」とそれぞれ描かれた刺青を見せながら言った。

「あっ、初めまして。 私の仲間が今回、貴方のお世話になるみたいで…。
 私はルーレット21(トゥエンティワン)です、よろしくおねがいします。」
「るーれっと0(ぜろ)だよっ! よろしくおねがいしまぁ~すっ!」
「ルーレット…? どこかで聞いたような…、まあ、よろしく。」

 自己紹介を終えると少し困ったような顔をしてこう続ける。

「大変申し訳ないのですが、少し遅れるみたいです。 少々お待ちいただけませんでしょうか…?」
「ああ、別にこれから用事があるってわけでもないしな。」
「そうだっ! じゃあ21おねえちゃん、ヴァイおにいちゃん、一緒に遊んで~。」
「ふふ、お願いできますか? おにーさん。」
「別に断る理由もないしな。 さて、何をして遊ぶんだ?」
「えっとね、えっとね! …」

 そんな流れで30分程度経過した後…

「あ~っ、いました~。 21さ~ん、0ちゃ~ん。」
「あっ、30(さーてぃ)おねえちゃんっ!」
「ん? 来たの…!!?」
「ごめんね~。 ちょっと手こずっちゃって~♪」
「申し訳御座いません…。」
「るーれっとわんのせいー。」
「はわわっ、私ですかぁ~!?」

 二人の少女と同じく黒服を着た5人の少女達がやってきた。
 中でも印象的なのは巨乳で桃髪ゆるふわヘアーの…いや、むしろそれ以上に印象的なのは数mを超える巨大イノシシを軽々と片手で持ちあげているからだろう。

「…なるほど。 大方、馬車で移動中に"それ"に遭遇して戦っていたという事か。」
「はい~、その通りです~。 馬車が壊れちゃって大変でした~♪」
「それでオレに用があるってやつは…?」

「あっ私です!」

 ツンツンした茶色の短髪に額に大きなゴーグルをつけ背中にリュックサックを背負った美少年、
 といった印象をどこか受ける首に赤いリボンを巻いた黒服の少女が駆け寄ってきた。
 彼女もまた、今度は「3」と描かれている右手の甲の紋章を見せながら自己紹介を始めた。

「初めまして、ルーレット3(スリー)と申します。 普段は支援士の傍ら、ウグイス様の元で身の回りのお世話をさせて頂いております。
 今回は例の戦闘訓練の依頼の方で参りました。 あっ、私以外の方々は唯の付き添いですので気にしないで下さい。」
「ああ、あの依頼か…。」
「たた゛のつきそいとはなんた゛ー。」

 いきなり機械的で抑揚の無い声が少女達の中から発せられる。
 ふとヴァイが目を向けるとそこに居たのは紫色のショートカット、同じく黒服の少女。
 ルーレット…、どこかで聞いたような響きだと先から思っていたが彼女の得物と姿を見て唐突に浮かび上がる。
 ルーレット7(セブン)。 メンタル式のスナイパーライフルなる謎の機械兵器を操る、正体不明のSランククラス支援士…。
 実力は確かだが奇行が多く、重要な仕事を回したくない支援士の筆頭。 いったい何故彼女がここに…。

「…。」

 なぜかこっちに完全無表情かつ、無言でVサインをしている。 いったい何を考えているのか誰にもよくわからない。

「あ、すいません。 7はいつもこんな調子ですので…。」
「あ、ああ…。」
「お仕事の方は酒場のマスターさんから伺っております。 では他にご用事が無ければ参りましょうか。」

 …

「3おねえちゃん、がんばれーっ!」
「すりー、ふぁいとぉー。」
「えっと…、3さん、頑張ってください!」
「怪我をなされたら仰って下さいね、回復の心得がありますので…。」
「うふふ~、どっちが勝つかしら~♪」

 草原に黒服の少女達の声が響く、どう考えてもヴァイにとっての完全アウェーな雰囲気である。
 その中…。

「あ、あのっ。 …ヴァイおにーさんも頑張ってくださいね。」

 一人だけルーレット21だけがヴァイの応援をした。
 流石にギャラリーが全員相手側の応援をしてるのではまずいと思ったからであろうか。

「ではっ、7さんの銃声でスタートしましょうか。」
「ああ」

 そう言うとルーレット7が胸元からカチャリ、とメンタル式ハンドガンを取りだして上空に向ける。
 その次にルーレット3がハンドガンを取り出し、構えを取ると背中のリュックサックから
 ガチャリガチャリと無数の砲身のようなものが展開される。

「! (機械技師…か?)」
「"ハイドラ"のテストを兼ねて…、よろしくお願いします!」

 それに合わせてヴァイも構えを取り…

「いちについてー、よーい…」

 それは徒競走の合図である。 勿論、彼女なりのボケだろう。

「あっ、ちょっと待って下さい!」

 そう言って飛び出してくる人影、ルーレット21がルーレット3の背後に向かって…片刃剣で斬りかかる。
 その一刃が狙ったものはーーー…


  リュックサック型の機械。


 その機械は一刀両断され、爆発を起こす。

「え…?」
「なに!?」

 爆風で吹き飛ばされたルーレット3はすぐさま立ち上がりリュックサックであった機械の残骸を見ながら叫ぶ。 

「うわあああぁぁぁぁぁん!!、私の"ハイドラ"が~!!!!」

 ルーレット3ががっくりと項垂れる中、ルーレット21が片刃剣を模造剣に持ち替え、刃を向ける。

「いったい何を…?」

 状況を理解しかねるヴァイがそう聞くと彼女はこう答えた。

「ルーレット3の機械が壊れちゃいました。 これではルーレット3は戦えませんね、ですから私が代わりにお相手します。」

 そう言って彼女はにこっと笑う。 恐らく彼女は途中からこうするつもりだったのだろう。
 片刃剣を構える辺り、ブレイブマスターとして同じジョブの者として手合わせしたい…そういう意味だと思われる。

「俺は構わないが…いいのか?」
「ああ、大丈夫ですよ。 ルーレット3のポンコツ兵器を相手にするよりかは…、私の方がすっと為になりますよ?」
「うう~…、機械が壊されちゃマシンナリーは戦えないし…。 21に任せるよ…、…私の"ハイドラ"ぁ~…」
「このしょうふ゛、と゛ういとみてよろしいて゛すね?」

 唐突にルーレット7が相変わらずの無感情的な声で問う。
 最早、言うまでもない。 二人の剣闘士の刃が太陽に照らされ、反射してキラリと輝く。

「れて゛ぃー…、こ゛ー。」

 ひゅぅぅぅぅ、ぱーん! …銃声と思わしくない音が響く、花火でも仕込んであったようだ。
 そんなシリアスな雰囲気をぶち壊そうとする大ボケをかます彼女をよそに闘いは始まった。

 まず始めにヴァイが先制を取る、それを左手持ちの刀で受け流すルーレット21、受け流されたが彼女よりもヴァイの方が体制を立て直すのが早い。
 もう一撃入れようとするが間一髪でまた受け流される。
 腕力的にもヴァイの方が上、速さに関しては完全に上回っている。
 なのにその後も数度打ち合うがその度に受け流される、…力と速さを捨て、相当技術面を極めたタイプであるとヴァイはそこで気付く。

「なるほど…、それならっ!」

 この手のタイプは力押しに弱い、と確信したヴァイはいつもよりも力を込めた一撃を振りおろそうとした、だが…

「…クスッ。 引っ掛かったね、おにーさん♪」
「!?」

 何故彼女が左手だけで剣を持っていたのか、気付くべきだった。 次の瞬間、突如として胸に衝撃が三発突き刺さる。
 いつの間にか彼女の服、胸のボタンが空いている…、そして右手の甲の紋章がうっすらと光りその手には…
 ルーレット7が持っているものと同じ形状のハンドガン。

「ああ、大丈夫だよおにーさん。 出力は落としてあるから…」
「うっ…、それがお前のスタイルって事か。」
「そう、これが私のスタイル…、一刀一銃の二刀流スタイルだよっ!!!!」

 そう言うと彼女の動きがガラリと変わる。
 時にハンドガンで牽制して片刃剣でを的確に隙を狙って一撃を入れようとし、
 逆に片刃剣で攻撃を受け流し、その隙にハンドガンを撃ち込もうともする。
 更に彼女自身は流石技巧派タイプの剣闘士、パワーもスピードも大した事無いが隙が恐ろしく少ない。

「…そこかっ!」
「あっ。」

 やっと見つけた隙に一撃を入れようとしたが間一髪のところで避けられる。
 だがその一撃で彼女のサイドテールを結んでいたリボンが解けた。
 その直後、彼女がハンドガンで威嚇射撃を行いお互いに少し距離を取る。

「…」
「…? どうした?」
「ふ、ふふふ…あはははははははははっ!!!! 凄い、凄いよおにーさん!!!!
 私こんな気持ち初めてだよっ!!!! もっと…もっと強く、激しく攻めてよ!!!!」

 彼女が笑いながらうっとりとした狂気の瞳でヴァイを見つめる。
 その異様な雰囲気にヴァイもおもわず少したじろぐ。
 そして次の瞬間にはヴァイの懐に入り一閃を振るう、間一髪でかわすが次の銃撃を数発食らった。
 死点突の要領で精密射撃しているらしく、持ち前のスピードで体位を少し反らせたが出力を抑えているとはいえかなり堪える。
 先程まで押していたが今度は逆に押され始めていた。

「あははっ、楽しいよおにーさんっ!!!!」
「くっ…(今は何とかスピードでごまかしてはいるが…、止水…駄目か。あれだと逆の方が確実に刺さる。 かといって…)」
「おにーさんっ!! もっと、もっと私を愉しませてよっ!!!!」

 そしてふとヴァイが気付く、彼女が興奮する度にパワーとスピードが加速的に増しているような…?
 いや、むしろ確信した。 感情が昂れば昂る程に能力が確実に上がっている。
 このまま続けば何れにせよ負けるのは目に見えている。

「おにーさんっ! まだまだ行くよっ!!!!」
「…はっ!」
「おおっと、足払い…? 甘いよおにーさんっ!! …ってあれ?」
「…感情が昂れば昂るほど強くなる…か、生憎その手のタイプにはある程度慣れててな…。 一気に決めさせてもらうぞ?」

 足払いを避け、跳ねあがりながら距離を取り、着地した彼女に足元には…「氷」

「しまっ…!」
「さんざん手こずったが…、これで最後だっ!」
「…まだだよっ! 焼き払えっ想いの弾丸っ『ジェノサイドブレイズッ』!!!!」

 そう言うと足元に向かって銃を構えた彼女の右手の紋章が輝き、メンタル式のハンドガンが共鳴を始めた。
 それに気づいたヴァイは奥儀を中断し、急いで距離を取る。 次の瞬間、彼女を中心として巨大な爆炎が広がる。
 距離を取っていなければそのまま巻き込まれていただろう。
 続けて炎の中から彼女が飛び出してきてヴァイに一撃入れようとしたが…、妙に遅い。
 回避されて隙だらけの背後を晒し、そこに止めの一撃を入れようとした…が。

「!?」

 …背後からカチャリと銃を押し当てられる感覚を感じる。
 急いで後ろを振り返ると居たのはハンドガンを片手で構えたルーレット7。 次の瞬間、彼女は引き金を引いていた。


 放たれたのはメンタルの弾丸…ではなくポンっと出た白旗と紙吹雪。


「とぅえんてぃわんちゃんか゛もうたたかえないとおもうのて゛こうさんて゛ーす。」

 毎度の如く棒読みとしか言いようの無い口調で彼女が言う。
 …全く気が付かなかった。 というよりも銃口を突き付けられるまで一切気配が無かった…?
 ギャラリーとはかなりの距離が取られていたはず、あの距離を一瞬で移動できるのか…?
 それにあの重そうな機械兵器、"スナイパーライフル"を片手に持ちながら…?
 様々な疑問が渦めくがそれ以上に気になる事がある。

「もしかして…お前達も"魂"能力を…?」
「んーん、それまちか゛いー、わたしたちにたましいなんてものはもとよりないー。」
「!? …どういうことだ?」
「わたしたち、うく゛いすさまののうりょくのはんいないー、で゛もこころはあるしし゛ゆうにこうと゛うできるー。けと゛たましいはないー。」

 魂が元より無い? いったいどういう事なのかヴァイには理解が出来なかった。

「…ご説明いたしましょうか…?」

 聖光とはまた違う不思議な色の光を手からはなってルーレット21の治療をしている清楚な感じの黒髪長髪の少女が話す。

「…申し遅れました。 わたくし、ルーレット6(シックス)と申します…。 私達について知りたいご様子で…?」
「…ああ、よろしく頼む。」
「私達についてですが…、ウグイス様の『夢』能力…"カジノH$H"の一部分に過ぎません。
 それと私達には確かに魂はありませんが、その代わりに心、つまりメンタルが魂の代わりに機能して居る存在なのです。」
「心が魂の代わり…?」

 にわかに信じがたい話ではあるが、実際彼女達を含め、身元不明のルーレットを冠す支援士が何十人もいる事は知られている。
 それに今回戦ったルーレット21…彼女がメンタルを主体として居る存在であるならば二点、合点が行く部分がある。

「そうです。 貴方も途中、21のパワーやスピードが加速していったのがわかったでしょう? つまり…そういう事なのです。」

 そう、感情の昂りにより能力が左右される点、その考え方で行けば強気になれば強くなり、弱気になれば弱くなるという意味なのだろう。

「それとメンタルの消費がそのまま身体機能の低下に直結する点、最後のジェノサイドブレイズを撃った直後、先程よりとても弱く感じませんでしたか?」

 これも同意できる、確かにあの後の彼女は疲弊しているとはいえヴァイの速度についていけていなかった。 だが魂が無い、それはつまり…。

「最後に、私達には魂に関係する攻撃が一切通用せず、死の概念そのものがありません。」
「!!!? …それは本当なのか…?」
「正確には、魂が無い故に魂に関する攻撃をした所で体からすり抜けてしまう、
 それと私達にとっての死とは精神の死、心が死なない限り肉体の死は大した問題ではないのです。
 そうですね…、悪く言えば私達は人間から見れば圧倒的な超再生能力を持ったアンデットモンスターと大差ありません。」

 薄々感づいては居たが、魂が無い事は、つまり生命の輪廻から外れた存在である事。
 そう言った彼女はとても悲しそうな眼をしていた…。

「そうか…世界にはまだオレ達には理解できない存在がいくらでも居るってことか。」
「…ええ、その通りです。」

 

「…今回は負けた事にしてあげるわ、でも次は絶対勝つから。」

 火傷の治療が終わり、先程まで黙っていたルーレット21が口を開く。

「いや、オレも何度も負けていたかも知れないと思った瞬間があった。 できれば次は味方として居てほしいものだな。」

 ヴァイが右手を差し出したのでルーレット21も右手を差し出すが…
 その場でバランスを崩す、先程のメンタル消費が響いたのだろう。
 そして…

「おい…、大丈夫か?」
「あっ…」

 ちょうど抱きつくような形になってしまった。
 驚いたような表情でヴァイを見るが、その表情は次第に嫌悪へと変わっていく。

「う…」
「うん?」
「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」

 バーン!バーン、バーン!ガンッ!ガンッ!バーン!ガンッ…

 30分後…ギルド『Little Legend』

「た…ただいま…」
「おかえりなさー…ヴァイさん!? ど、どうしたんですか!?」

 いきなりあわてふためくリスティ、それもそのはずである。
 特別何も危険な依頼が無いはずのヴァイが見るも悲惨な大怪我をして帰ってきたからである。

「あのガキ…、覚えてろよ…。」


 所変わって数日後のフローナの魂占いの館、窓辺でぼーっとするルーレット21の姿があった。
 リボンはあの時解けたが新しいリボンでサイドテールに結い直していた。

「21おねーちゃん、なにしてるの~?」
「うん?00かー…、なんとなく、潮風に当たりたくなってね。」
「ふーん、そうなんだ。」

 そうルーレット00は言うとウグイスの部屋へと向かって行った。

「…。」

「ヴァイおにーさん…か。」

 黒地に氷の結晶の柄が入ったリボンを付けた黒服少女のピンク髪のサイドテールが潮風になびいていた。

…彼女がその後、フローナのウグイスの元に殆ど帰らず、『Little Legend』に入り浸るようになるのはそう遠くない話…。

※※※ システムメッセージ:ルーレット21が"恋心の炎刃(ラヴィアンブレード)"を習得しました! ※※※


戦績 2戦 1勝 1敗 0引き分け


過去対戦者

タキア・ノックス:冥氷剣を十枚符・魂縛術で暴発され、敗北してしまった。
ルーレット21:冥氷剣に対抗しジェノサイドブレイズを自分に撃ち、自爆特攻を狙うが失敗し勝利。