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 サンドヴィレッジに到着した黒服の少女達、どこか物々しい雰囲気が村全体を包み込んでいた。
 それもそのはず、この村にジュデアマキシアが迫ってきているらしい。
 Sランク依頼が連続して重なり人員不足に至った現在、ランク以下の者だからと言って構ってられない現状らしい。
 彼女達が呼ばれたのもその理由である。

「果~てに~、わ~れら~♪ 約束の~、場所へ~♪ おおっと~♪ 到着?」

 複翼竜対策本部と掲げられた大きな仮設施設、彼女達が用事があるのはこの建物である。
 入るや否やピンク髪サイドテールの彼女達と同じ黒服の少女がテーブルに両手をついて待っていた。

「あら、早かったじゃない。 馬車がもう通って無いって聞いたから結構遅れると思ってたわ。」
「おー、とぅえんてぃわんー、すうかけ゛つふ゛りー。」
「やっぱり7(セヴン)と13(サーティーン)とディーラーの三人が来たみたいね、
 他は…1(ワン)と2(ツー)と…、えっと…ウグイス様は?」
「ケーッケッケッケ! ウグイス様なら暑いのが嫌だとさ。」
「うっ…35(サーティファイブ)…、2が居ると思ったらあんたも来てたのね…。」
「はわ? ところでLittle Legendの方々はどこへ?」
「ああ、あいつらなら…」

 サンドヴィレッジ近郊、温泉宿…

 時にサンドヴィレッジには一軒だけだが温泉宿がある。
 何でもかつて一攫千金を狙って北方から来た温泉宿の一人息子が古代遺産の発掘をしようと下へ掘り進んでいる内に
 温泉に繋がってしまいそのまま温泉宿の主人となったという逸話がある何とも不思議な因果を持った宿屋だ。
 十六夜の温泉好きがわざわざ温泉につかりにだけ足繁く通う名店でもあり、評判も上々。
 内装は十六夜に準拠された純和風の建物で、初見では作法等の微妙な違いから戸惑うかもしれないが
 泊りにだけ来るほどの価値ある旅館だろう。

 かぽーん
 
「んー、暑い場所で熱いお風呂というのも中々におつじゃのう…。」
「そうですね、暑さで疲れた身体が癒されていく気がします。」
「…それにしてもティール、離れてないでこっちに来なさいよ。」
「…ん? いや、その、えっとこれは…」
「…何か隠し事~? エルナお姉さんにちょっと見せて…」

 その時、風呂場の扉がガラッと開き先程の少女達が温泉へと足を踏み込む。

「はわー、広いですねー!? 私"オンセン"って初めてです!」
「ふふ、ゆっくりと浸かって英気を養おうじゃないか。」
「ケッ、オレは一人でゆっくりつかるのが好きなんだがな…」
「みんなて゛~、はいったほうか゛たのしい~。」
「わーい、ひっろーい♪ ねえねえ、泳いでもいい?」
「皆、他の方もいらっしゃるのですから落ち着きなさい。」
「まったく、温泉ごときで何はしゃいでるのよ…。」
「…お? …ケッケッケ…良い事思いついた…、おい、ルーレット1!」
「はわ?」

 そう言って灰色ボサボサ長髪の少女が石鹸をルーレット1と呼ばれた少女の足元に投げる。
 すると見事に滑って宙返りし、一回転してまた石鹸に乗り、その勢いでつつーっと滑って湯船に直進していく。

「はわ!? はわわわわ~!?」

 ドボーン!!!!!!!

「ケーッケッケッケッケッ! ケェーッケッケッケッケッ! ヒィーッ、ヒィーッ…、ケーッケッケッケッケ…あー、面白。」
「…何やってるのよあんた…。 ごめんなさい、うちの馬鹿共が迷惑かけて…。」
「フフッ。いや、聞いた通りの愉快な連中じゃのう、安心したわ。」
「あ、あはははは…」

 それに適応した蒼髪の少女に対し…苦笑いしている栗色の髪の少女。
 そしてエルナお姉さんと名乗った青髪の女性は…

「いたたたた、はわ~…35! 何をするのです!?」
「…ん、ということは貴方がルーティちゃんが言ってたルーレット№sちゃん達?」
「はわ? ルーティちゃん???」
「ルーレット21ちゃんの事よ、それよりあなた…怪我してない? 大丈夫?」
「はわ! ルーレット1は忍者なので大丈夫です!」
「あら、そう、…それにしても中々いいモノ持ってるじゃない♪」
「はわわわわ~!?」

 …お楽しみの様です、ほおって置きましょう。

「~♪ いい湯加減ね、気に入ったよ。」
「ふぅ…、ウグイス様に温泉饅頭をお土産に持って帰らないといけませんね。」
「あ~! 私もおんせんまんじゅう食べたい~!!」
「おー、わたしもたへ゛たいー。」
「そう? じゃあ一緒に後で食べにいこー!」
「…あんた達…、仕事で来たんでしょ?」
「まあいいではありませんか、まだジュデアマキシア来襲までかなり時間はあるそうです。
 それにその件(くだん)はこちらもLittle Legend方も同じ事では無いでしょうか、それまでゆっくりすればいいでしょう。」
「そっちの金髪の言う通りじゃ、まだ時間があるならゆっくりすればよいではないか。
 おっと、自己紹介を忘れておったな、私はエミリア・エルクリオ、エミィと呼んでくれればいい。 そっちが…」
「リスティです、今回はよろしくお願いします。」
「エルナよ。 今回は教会からの助っ人という形で参加させて貰うわ。 後あっちで離れているのが…」

 湯煙で見えにくくになっているがエルナの指をさした方に人影が二つ、片方が近づいてくる。
 近づいてきた人影が少しづつ銀髪の少女の姿を現し始めた。

「ティール・エインフィード。 Little Legendのリーダーをやっているよ。 よろしく。」

 そう言ってティールはディーラーに右手を差し出す、それに対応して彼女は握手を交わした。

「ルーレットディーラーです、21がそちらでお世話になっているようで…、この度は宜しくお願い致しますね。」
「はわっ! ルーレット1なのです! 忍者なのでそこの所、よろしくお願いします!」
「はーい、わたし! 私はルーレット2だよ! よろしくね!」
「るーれっとせふ゛んー、よろしくー。」
「私はルーレット13、よろしく頼む。」
「お~い! 35もこっち来て自己紹介しよ~!!」

 湯煙の奥からルーレット2が少女の人影に手を振る、すると彼女がかなり不機嫌そうにこう応える。

「るっせーっ!! オレは風呂はゆっくり浸かりたいタイプなんだ!!!!」

「…何よあの娘、感じ悪いわね。」
「いやー、あいつはー、あいつなりのー、すなおし゛ゃないー、そういうやつー。」
「7の言うとおりだね、あの娘、さっき少し話したけど口が悪いだけでそんなに悪い娘ではないと思うよ?」
「ふぅむ…、人付き合いが苦手なのかの?」
「いえ、そういう訳ではありません。 ただ…あの子は自分から人を避ける節がありまして…。
 ですが、稀に自分から話しかけていく方も居るみたいですね。 ティール様は恐らくそっちのタイプなのでしょう。
 後、21から聞いていると思われますが…、私達は人間のようで人間ではありません。
 あの子は自分の"カジノH$Hの能力範囲内の存在"という立場をコンプレックスに思ってまして…。
 人間の姿をしていながら人間じゃない、心が有っても生きものじゃない。
 結局、自分は魂の無いバケモノだ。 だったらバケモノならバケモノらしく生きてしまえ。
 人間らしく振舞う必要なんか無い、人間と慣れ合う必要なんか無い。 そんな風にあの子は考えてるのです…。」
「…、どうにか出来ないんでしょうか…? だって、35さんにもちゃんと心が有るんですよね…?
 私…ただ、自分の立場のせいで自棄になってるだけなんじゃないかなって思います…。
 カーディアルトとして…、いえ、一人の人間としてどうにか彼女の助けになる事は出来ないのでしょうか…。」
「止めた方が良いと思うぞ? 35の心はあいつにしか分からない、あいつ自身が心を閉ざしてる限りはどうにもならんよ。
 それに…だ、あいつも玉~にだが心を開いてるような節もあるんだ。私達はそれを見守る事が最善手だと思うがな。」
「あはははは! その最大の被害者がルーレット1だったりするのよね!」
「はわ~…」

「るっせえ…ってんだろ!! さっきから丸聞こえだぞ!!!! 殺されてぇのか!? あぁん!!?
 あー、ムカつくっ!! もうオレは上がるっ!!!!」

「…気にしないで下さいね、本当に。 35には35なりの考えってあると思うから…。
 皆さんが気にする様な事じゃないですよ。」

 何とかその場を収めようとする21に対し、風呂場を後にする35。
 浴衣に着替えた彼女は普段の灰色ボサボサの長髪が纏まり、
 不機嫌そうに口を閉じた事であの鋭いギザ歯が見えなくなっている。
 帽子を外した彼女の眼は相変わらずギロリとしているが、大きく黒目がちで実は顔立ちがかなり整った美人顔だった。

「ふぅ…気晴らしに街の風景でも見に散歩でも行くか。」

 そう言うと彼女は宿の周辺を風景を見ながら散歩する、村の周囲には一面の砂漠、そんな中ポツリとある村。
 
「ケッケッケ…、砂漠の中の温泉宿…か。 …悪くないな。」

 そうして色々と露店を見て回っている内にふとある物に目が止まる。
 
「…金細工? 宝石がいっぱいついてて…綺麗…。」

 その瞬間、彼女の雰囲気が一気に変わる。
 そこにいたのはただ、綺麗な装飾品に見とれる普通の女の子としての彼女がそこには居た。
 
「そこの浴衣が似合っていて可愛らしいお嬢さん。」
「…ん?」

 不意に声をかけられる、見上げた眼の先には金髪のセイクリッドらしき人物。
 35は何者だと思ったがそんな事お構いなしにこう続ける。

「その大きくて黒い眼、俺の心は哀れにもその瞳の中に吸い込まれてしまった!
 そして灰色の長髪がその瞳の美しさをより一層引き立てる!
 だが少しだけその瞳に濁りを感じるのは俺だけだろうか、
 俺としては君のその瞳が濁る理由を取り払ってあげたい! その為にも…」

「どうか俺と付き合って下さい!!!!」

「…あ゛? 誰に口きいてんだ? てめぇ…っ!! てめぇごときにオレの問題がどうこう出来ると思ってんのか!?
 そうか、殺されてえのか? 殺されたいなら仕方ねぇなぁオイ!!!? 村のド真ん中で脳漿曝け出せやオラァッ!!!!」
「む、むが~!?」

 いきなり告白してきて頭を下げた妙な男に対し、35は完全に切れた。
 男の頭を鷲掴みにし、その口に護身用に袖に入れておいたメンタル式のハンドガンを突っ込む。
 そこまでやるとふと我に返る。
 こんな事をした所で自分の現状が変わる訳でもない、そう考えたら彼女の怒りはすーっと冷めていった。

「…ケッ、興醒めだ。 命拾いしたなてめぇ…。 あーあ、風呂にでも入り直すか…。」

 完全に落ち着いた35はその場を去る、後に残ったのは唖然としている金髪のセイクリッドだけがただそこで硬直していた。