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  それから、数時間


「なんだこれ…」

 目を覚ましたオレは、その目の前の情景に、呆れたというか、アホらしくなったというか、
 「どうしてこうなった」と言わんばかりに空笑いをしながら、つぶやいていた。

「ゴミ拾いの成果ですわ!」

 えっへん! と、その豊満な胸をさらに自信満々に張り、エリスは『それ』を自慢した。
 そんなエリスの隣には、なぜかゴミの山が出来上がっていたのだ。
 …一体、オレが気絶している間に何があったというのか。

「え、エリスお姉ちゃん…? 依頼は、ゴミ拾いじゃなくて、翠水晶石を探すことだよ…?」

 ミュールの至極当然なツッコミに、エリスはその細い目を困ったような表情にし、頬に指を添えて答えた。

「だって、見つからなかった場合、ミューちゃんの言う通り一人5000フィズぽっちですのよ?
 ですから、お姉ちゃんが個人的に依頼を受けたのですわ。『アプリ屋』さんから、燃料になりそうな物を持って来て貰えれば、買い取りします。って」
「あ…」
「これなら、石を探しながらでも出来ますもの♪ 相談したアプリ屋さんには感謝ですわね♪」

 【1日探せば、一人5千フィズ】。言うなれば見つからなければ一人5000フィズぽっち。
 エリスはそれを判ってた上で、更に稼ぐことが出来ないか、自らのツテから仕事を見つけていた。
 いつもぼーっとしているようで、その辺りしっかり考えていたのだ。

「だ、だったらお姉ちゃん、私達にも話してくれれば良かったのに」

 そんな話に、ミュールは思わず言葉が出てしまったのだろうが、
 そんな言葉に、エリスは首を小さく振って、

「だって、今日一日、ミューちゃんとライル君が頑張っていましたもの♪
 こちらはわたくし一人でも何とかなりそうでしたし、1万5000フィズだけじゃありませんのよ?って、ミューちゃんとライル君を驚かせたかったのですわ♪」
「ああ。そうだな。 ありがとう、エリス」

 ニッコリと微笑んで返した言葉がとてもエリスらしかった。
 行動理由がすごく子供っぽくて、オレは心のどこかで、安心しているのを感じたのだ。

「うん。エリスお姉ちゃん。ありがとうね。
 でも……エリスお姉ちゃん。依頼の掛け持ちって禁止されてなかったっけ…?」

 ミュールもエリスの言葉に頬を緩めたが、直後に【依頼の掛け持ち禁止】を思い出したのか、気まずそうに言葉を続けた。
 真面目なのは悪い事じゃないが……水臭いこと言わなくても良いと思うんだけどなぁ。本当に、生真面目である。
 確かに、酒場から紹介される依頼は基本的に1つずつしか紹介されないけれども。

「あら、それは正確には違いますのよ。正確には【酒場から提供される依頼の掛け持ちは基本的に禁止する】ですわ。
 かなりの長期依頼を受けている。とか、依頼遂行中にお金が入り用になってしまったりとか、そういった場合はマスターに相談することで、掛け持ちを許可されるのですわ
 基本的に、酒場から依頼を紹介されるのは一つだけ。そうしなければ、一人の支援士がおいしい依頼を全部ひとり占めしてしまいますもの。
 今回は、ミューちゃんが受けたのが酒場からの依頼ですけれど、わたくしの依頼は個人とのやり取りですので、何も問題はありませんわ♪」
「へぇぇ~、そうだったんだ」

 エリスの説明に、ミュールは深く頷いた。
 そうだったのか…オレも酒場から紹介される依頼くらいしかしてなかったから、初めて知ったぞ。

「さってと。じゃあ…」

 問題は何もない。ということで、オレはその大量のゴミと向き合って。
 ………
 …
 いや、明らかに多すぎるだろ。運ぶの大変すぎるぞオイ。

「…どうするよこれ」
「いや、わたしに聞かれても困る…」

 というか、どこからこんなにゴミが出てきたのか…いや、そういえば最近、リエステールを通じてミナルに「冒険者。支援士のマナー向上週刊!」とかいう標語が貼り出されていた気がする。
 内容としては、ゴミのポイ捨てが増えてきたから、捨てるような事を止めて、拾って帰ろうという事を推奨するものだが、
 ぶっちゃけ支援士をしている人間が、ゴミ捨てを止めたり、あるいは、落ちているゴミを拾って帰るなどという事をするはずもなく、
 有って無いようなものだった。
 そのため、オレとミュールが翠水晶石をかき集めている間、エリスが集めたごみは相当な量になっており、燃料としてまとめて持ち込むには十分な量になっていた。

「せめてもう一人男手が居ればなぁ…」

 と、そんな事を呟くと。

「よーう。ライルじゃねーか!」

 お気楽な声に、丁度良い人材が現れたとオレは顔を上げた。
 捨てる神あれば拾う神あり。 いや、捨てられてたのはゴミだけど

「グリッツ先輩!!」
「おう。ご機嫌のグリッツ先輩だぜ! いやぁ、今日運良く高額依頼を取ることが出来てなぁ!!」
「え、アリアが言ってた高額依頼受けたのって、グリッツさんだったんですか?」

 ミュールの言葉に、グリッツはぴくりと耳を動かし、
 気づいた時には、オレの目の前から瞬移のごとく消え失せ
 いつの間にか、ミュールの目の前に立っていた!

「ごきげんよう。ミュールちゃん。早起きは良いものだね。幸運の女神が二度もオレにキスをしてくれるなんて。
 一つは、高値の依頼に出会えた事。 そしてもう一つはもちろん、高嶺の愛らしい花。キミに出会えた事さ!」
「相変わらず息をするように口説こうとしますね…グリッツさん」

 もはやいつもの事なので、ミュールは「はいはい」と、片手を横に振って流しながら、呆れかえっていた。

「ライルとミュールちゃんが居る…と言う事は当然!!!」
「こんにちわ。グリッツ君。 あら、もうこんばんわ。かしら?」
「純白の鈴蘭エリスさん!!! 今日も笑顔がステキです!! ぎゅっと抱きしめたい抱きしめられたい!!
 高嶺の花が二輪もだと!! ああ!オレにはどっちか選ぶなんて真似は出来ないッ!!!
 いやむしろ二人ともオレの胸にカムヒアッ!!! さあ!! どうかオレとお付き合いください!!!」
「嫌です」
「グリッツ君は無いですわねぇ」
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」

 ばっさりと斬られ、灰となる先輩の背中を見つめ、この人がオレのセイクリッドの先輩という事に「なんだかなぁ」という気分を感じたまま、
 ふっと、明後日の方に目をそらした。


  グリッツ先輩がが回復するのに、また数分


「にしても羨ましいですね。グリッツ先輩。高額依頼取れるなんて」
「羨ましいだぁ…? お前がそのセリフを吐くかっ くそこのっ!!」

 あまりに放置するには可哀想なので、グリッツ先輩の本日良かった高額依頼を得られた事に話を戻して見る。
 すると、呪わし気な声を上げながら、ぐいっとグリッツ先輩はオレの首に手を回して軽く締めながら、

「可憐で可愛いツンデレ美少女ミュールちゃんと幼馴染で毎朝、起きてよーって起こされ…!」

 ぐぐっ

「ちょ、先輩! ちょ、待」
「さらに、トリプルやわらかいに、けしからんやわらかいを兼ね揃えて、優しく甘えさせてくれるお姉ちゃん。 純白の鈴蘭、エリスさんの家で、ギルドを立ち上げ3人でキャッキャウフフの同棲生活をしやがって……!!!」

 ぐぐぐぐいっ!!

「グリッ せんぱ し、しぬ」
「挙句の果てに、酒場のアリアちゃんとは、ミュールちゃんと同じく幼馴染で、仲良くお喋りしちゃったりなんかして!!
 アプリ屋のミルフィちゃんには実の兄のように懐かれ!! ミルフィちゃんの姉、ミントさんと姉妹丼だと!? 死ね!! 今すぐ死ね!!」

 ぐぐぐぐぐぐぐ!!!
 まて、待て。最後の一つ。身に覚えのない事まで言われている気がするぞ。

「あの…グリッツさん。さすがにシャレになりそうにない顔色になってきてます。ライルが」

 呆れたようなミュールの声に、グリッツ先輩から手を離されて、オレはそのまま地面に倒れこんだ。
 グリッツ先輩…かなりガチ締めだったぞオイ…
 当のグリッツ先輩は、肩を震わせながら、心の底からの言葉を、呻くような声で出していた。

「オレは…オレはなぁ…!! 100万回の高額依頼よりもだな…! ライル! お前の環境がとてもうらやましいんだぁぁぁぁぁ!!!」
「ゲフ…知りませんよ、そんなの」

 ふぅ。と一つ息をついて、グリッツ先輩は頭をポリポリと掻いて、振り返った。

「まあ、環境を呪ったってしゃーねーわな。それぐらいわきまえてるよオレも」
「いや、その割にはかなりがっちりと締めてましたよね」
「うっせーぞライル。で、こんなゴミ山前にして、人手が足りねぇんだろ? 手伝ってやるよ。持っていこうぜ」



 その一方。ライル達から少し離れた位置で

「むっ…あれは……」

 それを見つめる、一つの影があった。


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