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「ティールさん! リーチェさん! サレナさん! …それに皆さん!」
「へぇ、流石は"奇術師(マジシャン)"と呼ばれるだけの事はあるね。
 ジュデアの目と鼻の先まで気付かれないとは思いもしなかったよ。」
「ふむ…、全て噂の"心能力"による演出…か、中々に面白い能力だったぞ! 少女よ!!」
「聖アルティアよ、彼の者の命を奪う我々を願わくばお許しください…。 さあ、いきますわよ!」
「さぁて…死んだ親父のように上手くやれればいいんでやすが…。」
「皆様、少々お待ち頂きますの。 すぅ…ふぅ、ーーー『レ・ルーンティア』ッ!」

 リリーサレナが詠唱したレ・ルーンティアだが、一つだけ決定的に違う点がある。
 彼女は殆ど何の準備動作もなく詠唱破棄(ショートカット)をやったのだ。
 この中で聖術に関わるもの、エルナとリスティは唖然とした。
 それと対照的なのはラーヴァとリーチェ、それを知っている者として苦笑いを浮かべる姿があった。

「…奥義クラスの聖術を無準備で詠唱破棄するなんて、相変わらず無茶苦茶ですわねぇ…。」
「その代わりキャパシティの大半を回復聖術に費やしてますの。 リーチェの部下に一人、如何ですか?」
「ふぅん、貴方…うちの監査騎士団に興味でもあるのかしら?」
「いいえ、デストロイアナイトには全く興味が御座いませんの。 むしろリーチェ、貴方に少々興味が…。」
「…遠慮しておきますわ。」

 リリーサレナ、彼女がいくら凄くても特殊な趣向である事を忘れてはならない。

「それでは皆様、御苦労様でした。 ゆっくりとお休みになられてくださいませ。」
「ふっふっふ…、ディーラー! 申し訳ないなのですが、最後に一発仕掛けさせて貰うのです!!」
「…、仕方ありませんね…1、行ってきなさい。」
「はわっ! はいなのです!!」

 そう言うと1がジュデアに向かって走って行く。
 どう見ても何か出来る様な状態では無い為、ルーレット№sを除く全員が疑問を抱く。

「え、あんなボロボロの体で一体何を…。」
「ボロボロだからこそ、出来る事もありますわ。 それでは皆様、ルーレット№sの不死性をとくとご覧下さいませ。」
「…! ああ、1には"あれ"があったわね。」
「???」
「さあさあみなさまこ゛ちゅうもく~。」
「わあっ!? 7ちゃん、何時の間にですの?」
「いまもと゛ってきたところ~。 わんの"ゆうし"をこ゛らんあ~れ~。」

 一同が目を丸くする中、妙に気楽な彼女達が対照的、
 …一応言っておくが戦闘中にここまではっちゃけられるのは最早特技だと思われる。

「7! サポートを頼むのです!」
「おお~っと、りょうかい~。」

 7がジュデアに威嚇射撃をしながら猛接近し注意を引く、
 ジュデアが空へと飛び上がる素振りを見せた瞬間に閃光弾を撃ち、目を眩ませて地面に叩き落とす。

「ググゥ…」

 垂直落下したジュデアが体制を立て直そうともがいている隙を突き、1が口の中に飛び込んだ。

「弾け飛べ、想いの弾丸ッ!!!! 『ジェノサイドサクリファイス』!!!!」

 1がそう叫び引き金を引いた瞬間、激しい閃光を放ち、即座に大爆発を起こす。
 気絶したジュデアを見てリリーサレナが攻撃の指示を出した。

「! 今ですの、皆さん準備はよろしいでしょうか?」


「おうよ!! 眼鏡の可憐なお嬢さん!」
「ふはははははっ!! 自爆とはお見事っ!!! …本当に大丈夫なのだろうな?」
「心配はご無用です、私達ルーレット№sはこの程度では死んだりは致しませんので…。」
「ふぅん…、死んでないとしてわかってても自爆するのを見るのはあまり良い気分ではないけどね。」
「さて、先手は私が頂きますわ。 では…」

 リーチェがすぅ、と息を整え詠唱を始める。
 最初は聖術と同じ白い光、だがそれは少しづつ赤く、そして深紅色へとじわり、と染まっていく…。

「ーーー聖アルティアの想いに叛き、破戒より出でて破壊せし…、

 我が正義を阻む全てのものへ告ぐ、これに一片の慈悲等無き事を知れ。

 陽光の巫女 (ソラノヒメ)の加護を以て、影を飲み込む灼白(シャクビャク)の光矢、"サンオブジャスティス"ッ!!」

 放たれた聖光は始めは白く、そして根元からじわじわと深紅へと染まる。
 デストロイアナイト監査騎士団に所属するジャッジメントの聖印に書き足された追加術式による聖光。
 そして彼女は更に赤い液体の入った小瓶をそこへ投げ込み、更に追加で詠唱する。

「ーーーここに調和より出ずる彼の者の血を我が力に。」

 放たれた太陽の聖光は一気に深紅へと染まりきる。

「やれやれ…、お嬢さんだけにチャンスを取られる訳にはいかねぇなぁ!! ん、おおっとぉ、一緒しやすかぁ?」
「無論っ! 共に協力必殺技を決めようではではないかっ!!!」
「ふむ…、それはそれで面白そうでやんすねぇ…。 即興で合わせてくれよっ!!」
「ヌハハハハ!! 」

「すぅ…、ふぅ…、『狼牙貫通』っ!!! オラァッ!!!!」
「ムウウウゥゥゥゥン!ラアアアァァァイトッ!! キイイイイイイィィィィィックぅッ!!!!」


 二人はそう言うと瞬く間に気絶状態のジュデアの太い胴に接近し、
 主人は鋼の様に硬い鱗と分厚い皮膚を手刀で貫き、振り上げて肉を断つ。
 それに追撃する形で刻まれた傷口に飛び蹴りを捻り込ませた。

「!? ゴァァァッ!?!!!???」
「ふっ…、寝覚めはどうだい? …やれやれ、あっしの親父なら風穴は開けてたんですがねぇ…、修行不足だねぇ…。」
「お見事っ!! 謙遜は不要な腕前だと見受けられるっ!!!!」
「いえいえ、あっしはまだまだ未熟物…、おっとぉ…、第二打が来やすぜぇ?」

 そう言うと両名はワンステップで左右へ一気に距離を離し、直後に深紅の太陽が直撃する。
 
「グォ!? …オオオォォォォン!!!!」

「ふふ、追撃といきましょうか。 あんなに大きな蛇さんに動かれると不都合ですわ。」

 パチンッ!
 
 そう言うとルーレットディーラーはジュデアに向かって背を向けて指パッチンを打ち鳴らす。
 突如、雨の様に刃が降り注ぎ、直撃を食らった直後のジュデアの全身を貫いた。
 もがくジュデアだが降り注いだ刃の痕跡は既に消えていた。

 …五感操作による痛覚攻撃… 降り注いだ刃は全て幻覚、だがその激痛はジュデアの動きを止めるには十分だった。


 ところで自爆した1はどうなったのだろうか、それは…

 前線からちょっと離れた帰路…

「あの…、1さんのあの技…。」
「ああ、自爆技よ? あれ。」
「自爆技…、なのに無事ってどういう…?」
「んー。 なんというか…、あっ! 多分これでわかると思う。」

 ひゅるるるるぅぅぅ…、と意味不明な擬音を出しながら黒焦げの、掌に乗る程度の大きさの塊が降ってくる。
 21はそれを空中でぽにゅっ、という音と共に掴み取り、皆に見せる。

「っとキャッチ! うん、これでわかると思うよ?」
「…はわーっ!!」
「ん…? これって、もしかして…?」
「はわっ? どうしたなのです???」
「っー…、前から知ってたが"死の概念が無い"って本当だったんだな。」
「だからって自爆する奴はあんまりいないんだけど…こいつは特別よ。」
「はわわっ! だってカッコイイなのですっ!!! ううぅー…、でも全身痛いなのですー。」
「…あんたが自爆するからでしょ…? 自業自得よ、えいっ。」
「あうっ、はわぁー…。」

 21が手乗り二頭身サイズまで縮んだ1にデコピンを入れる。
 二頭身サイズになれるのは人間には出来ない芸当であると同時に可愛いかもしれない。

「…こんな場所で話すのも危険だ、そろそろ引き上げんか?」
「そうね、援護出来る余力はもうないし…、邪魔になるわ。」
「だな。 ふぃー、中々に疲れたぜ…。」
「さあ、戻って体を休めておくわよ!」
「何かあってサンドヴィレッジに突っ込んでいく可能性もあるからな。」


 再び、前線…

「っりゃああああぁぁぁ!!!!」

 少女の咆哮と共に全力の一突きがジュデアに突き刺さる。
 その次、その次へと流れるような連打が容赦なく龍の巨体を襲う。

「・・・~っ、『アルテナフレア』…ーーーここに調和より出ずる彼の者の血を我が力に。 鮮血に染まり散れっ!!」
「ヌフゥ…流石に疲れてきたな、だがっ! ここで屈する訳にもいかぬ!!!!
 天知る地知るッ!! シャアァァインィィィング、ナァックウウウゥゥゥラアアァァァゥッ!!!!」
「やれやれ…こんな時死んだ親父ならどうしてたか…、おっとあっしとした事がいけねぇなぁ…。
 ここは己の拳を信じるかぁ…うん。 ッドゥラァッ!!! ゥラァッ!!!!」
「ふぃにっしゅふ゛ろーのし゛かんー。 これか゛いまのせ゛んりょくせ゛んかいー。
 ふきすさへ゛ー、おもいのた゛んか゛んー。 …出力全開、『ジェノサイドエアロ』。」

 直撃する深紅の灼光、たて続けざまに拳のラッシュ、更に強烈な風圧破でジュデア若干後方にのけぞる…が
 長く続く戦いに多少は疲弊はしているものの龍の底無しの体力は未だ尽きる事を知らず…。
 そう、龍と呼ばれる種族の真の恐ろしさはその生命力にあるのだ。


「グオオオオォォオォォンッ!!!!」


 龍の怒号が上がる。
 ジュデアがブレスの準備動作に入った所でディーラーが言った。

「…そろそろですわ。」
「! …畏まりましたわ。 皆様、次のブレスに耐えれば終わりますの!!」


 その一言を聞いて一同は疲れながらもこう応えた。

「まったく…、無茶苦茶な事を言うね…。」
「フッ、その通りだ…。 だが嫌いではないっ!!!!」
「よぅし…、一丁仕上げと行くかねぇ…!!!」
「うふふふふ…、久々に全力を出し切りますわ!!!」
「…んー、もうひとか゛んは゛りなのかー…。」

 そうとなればもうひと頑張り、7がいくつかある傷口を狙ってメンタル弾を放ちながらジュデアの周囲を旋回し気をそらせようとする。

「む―…、もうふつうにうってもひ゛くともしないか―…。」
「嬢ちゃん、もう限界なんだろう? 後は任せなっ!!」
「ん、あとはまかせたー…。」

 既に7は消耗し切っていてメンタル弾自体の威力がかなり落ちている様子だった。
 宿屋の主人の労いにより7が離脱。 持ち前の移動能力で一瞬で見えなくなる。

「さぁて、どう引き付けて避けるかねぇ…。」
「あまり遠くにブレスを飛ばされて別にものに当たっても厄介だからね。」
「地面に当たると拡散する、というのも厄介な所ですわね…。」
「リリー殿、何か作戦は無いのか!?」

 それに対して一瞬だけリリーサレナが目を地面に落して大きな声で叫んだ。

「まずはティールちゃんと御主人さんとラシ…、ジャスティスムーンさんで何とか引きつけて下さい!
 リーチェ、貴方なら"あれ"が放たれる前に大きいの、一発は出来ますわよね?
 ディーラーちゃんは後に備えて待機願いますの。」


「では…、『竜のブレスに対抗すれば』いいだけなのですね? それなら…」

 リーチェが袖から無数の小瓶を取り出し地面に放り投げた。
 すると辺り一面が深紅に染まり血腥い臭いが漂い、その中で彼女が詠唱を開始し、
 それに乗じてティール、宿屋の主人、ジャスティスムーンがもうひと踏ん張り、と
 ブレスの準備段階途中のジュデアを妨害するように攻撃を加える。


 一つは猛火の塊となり、喉元を狙い焼き切らんとし

 また一つは一度しゃがみ込み、バネを利用して飛び蹴りを胸部に食い込ませる

 最後の一つは大きな掛け声と共に空高くまで飛び上がり、脳天に踵落しを喰らわせた。


 それぞれの一撃は同時に直撃し、ブレスまでの移行段階を鈍らせるには十分だった。

「お疲れ様でした皆様っ! 後は、残りの方にお任せ下さいますの!!!」

 その一言と共に三人は後方へ離脱、
 リリーサレナは自分の"レ・ルーンティア"の効力を増幅させる為に残りのメンタルを全て放出し、
 勝利を確信した不敵な笑みを浮かべたままその場で膝をついた。

 

「…すぅ…、ーーー聖アルティアの想いに叛き、破戒より出でて破壊せし…、

 我が正義を阻む全てのものへ告ぐ、これに一片の慈悲等無き事を知れ。

 遥か空へ、遠く、遠くの輝く星々が創造するは人々の希望となる聖十字、

 人々の祈りは星々の瞬き、天空より我に降りて地の愚者を裁け。

 正義の元に緋に染まり、滅びの十字を地に刻め。 "ブラッディクロス"!!!!」

 

 それは"グランドクロス"とは似て非なる深紅の十字だった。
 リーチェを中心に一気に巨大化すると放たれたブレスを一気に弾き返しジュデアへと直撃、頭を地面へ擦り付けさせた。
 それを狙ってディーラーがジュデアの頭部へと着地し手をやるとこう、一言。

「あれだけ暴れれば流石に疲れて来たでしょうか? では、おやすみなさいませ、永久に」

 パチンッ!


 指パッチンの音と共にジュデアは完全に沈黙した、いや、死んでいる訳ではない。
 それが持つ記憶を全て飛ばされたのだ、それは心臓を動かす事しか出来なかった。
 呼吸する事すら覚えていない、そして呼吸をしないと苦しい事すら理解できない。
 いや、それが苦しいという感情である事すらわからないかもしれない。

 『ジュデアマキシア』ただそれは何も考える事すら出来ずにひたすらに沈黙し、
 長大な生命力の前に死ぬ事すら困難となり、砂に埋もれただそこにあり続けるだろう。

「はぁ…、私も、もう限界です。」

 ディーラーは砂漠に降りて数歩は歩き、そう呟きながら仰向けに転がった。
 それと同じくしてリリーサレナ、ティール、宿屋の主人、リーチェ、ジャスティスムーンが砂漠に仰向けになった。

「少々…、アクシデントも御座いましたが、完璧に…『作戦通り』、ですの…。」
「そう言うけど…、割と、ギリギリな気も…、するけどね…。」
「まったく…、一歩間違えたら…、普通に死人が、出てましたわ…。」
「ヌフフ…、竜と戦うなどという…、貴重な経験をしたと思ってそれは考えない方で、おくがいい…。」
「…、はぁ~、死んだ親父はこんなバケモノを相手に…、してたのかぁ…、あっしもやはり…、まだまだでやんすねぇ…。」

「さて…、皆様…、お疲れの所ですが…、サンドヴィレッジに帰りますの…。」

 リリーサレナがそう言うと全員が頷き、疲れた身体でゆっくりと帰路に着いた。