パラパパー♪ パラパ、パラパパー♪ パラパーラー、パーラパラパッパパー♪ パラパーラー、パーラパッパッパー♪
タカタカタカタカタカタカタカタカ…、 ド―――ン!!!!
2のビューグルの音、13の太鼓とどこからか取り出された十六夜仕様の大鼓が鳴り響く、
宿屋の主人の計らいで最初から戦いが終わったら宴会をしようじゃないかと計画が練られていたらしい。
その直後、まだ二頭身手乗りサイズのままな1がおもむろに7に掴み上げられメンタル式スナイパーライフルの銃身に突っ込まれる。
「はわ? むぐっ!? むぐぐ~っ!!!?」
「ちょうと゛いいところにいた~。 …ふれあしょっと~。」
「むぐぐ~~~~!!!!?」
フレアショットの火球と共に涙目で打ち出された1はそのまま上空で爆発四散。
何故か彼女の笑顔の形の花火となり人々をおお、と感心された。
それを無表情のままどこか自慢げにピシッとVサインするのは7、彼女はいつも通りの通常運航。
「ケェーッ、ケッケッケ! 見たか? あの1の泣きっ面。」
「もぅ…、あんまり笑っちゃ駄目だよ? 35。」
「ケッ、わーったよ。 …あ、そうだ。 2! あっちの売店でわたあめ一緒に喰おうぜ!」
「うん! わたし、わたあめ大好きっ!」
「…♪」
「35はいつもそういう顔してればすっごく可愛いのに…。」
「…うっさい馬鹿、蜂の巣にされてぇのか…。」
「えへへ~。」
35と2がわたあめを一緒のベンチで食べるのを横に13も、また
遊び心を擽られたようで大鼓の撥を置いて丁度通りがかった宿屋の主人に一声かける。
「宿屋のおっちゃ~ん! 私もちょっと遊んで来るわ、大鼓頼む。」
「おうよっ! 任せときな!! 嬢ちゃんも遊んできなぁっ!!」
「ふむ…、どうしようかねぇ。 ふ~んふ、ふ~んふ、ふ~ん♪ …おや?」
13が歩いていると目に深紅の甲冑と血濡れ色の聖衣が目に止まった。
「…では、名残惜しい所ですが私は先に本部への報告がありますので、皆様はお楽しみくださいませ。」
「リーチェ、前々から思っておりましたがそちらの騎士団は真面目過ぎだと思いますの。 もう少し楽しんでは如何ですの?」
「そうは参りませんわ。 これも仕事ですので…、さ、行きますわよ。 ラーヴァ、ヴェスペ、カーマ。」
「仕事となると相も変わらずですのね…。
一応、言っておきますがデストロイアナイト監査騎士団もアルティア教会の一部ではないんですの?」
「ええ、ですが我々と貴方方は、同じアルティアを信仰するものでは有れど相容れるものではありませんわ。
…ーっ、『穢れ無き白は少しでも、血染めの、修羅の決意に触れたなら』…一瞬にして真っ赤に汚れてしまいますわよ?」
そう言ってリーチェ達は颯爽とサンドヴィレッジを後にする。
それを送るリリーサレナに13はなんとなく声をかける事にした。
「…正義の中の悪を刈り取る血濡れの正義、ねぇ…。 その心はどうなんだい?」
「さあ、私には判りかねますの。 でも…。」
「お?」
「結局の所、彼等のような汚れ役を黙認せざるおえないのがアルティア教会の現状ですの。」
「グレーゾーンも白として見なきゃならないってのも大変だねぇ…。」
「かと言ってそれを認めないのも、本当の正義としてはどうかと思いますの。」
「難しいねぇ…。 …何かしんみりしちまったな、酒でも奢るよ。」
「タダ酒と聞いて即参上、お金に自重しない聖職者(笑)フィーちゃんです!」
し ー ん
「…仕方ない、こうなったら纏めて奢ろうじゃないか! 今宵は無礼講で結構っ!!!!」
13がそう叫ぶとフィーから歓声が上がり、二人の頭を腋に抱えて酒場へと向かう、酒場の中は既に賑っており
たまたま何も知らずにサンドヴィレッジに来た冒険者が混ざって宴会が始まっている。
「聖職者二人抱えて何をなさってるのですか、13…。」
「何って…、酒飲みに来たに決まってるだろう?」
酒場のテーブル席で一人、ルーレットディーラーが呆れた顔で13を見た。
テーブルの上にはサンドヴィレッジの観光土産がうず高く積まれている。
「あんたもあんただろ…? これ、全部ウグイス様へのお土産かい?」
「ええ、勿論。 後で他の№sに運ぶように伝えて頂けますか?」
「まあ、それは構わない…。 だが…ディーラー様? 今宵は祭りだ、この意味、御理解頂けるか?」
「はい? 何でしょう?」
「よーし、決まったっ! 皆の衆っ!! これからこの4人で酒の呑み比べをやろうと思うっ!!!!」
「 「 「 えっ 」 」 」
酒場に居る人間達から「うおおおおぉっ!」とか「頑張れよ、姉ちゃん!」とか
「俺は聖職者の子に賭けるぜっ!」とか「じゃ、俺は黒づくめの金髪の姉ちゃんに一票」とか
「いやいや、俺的にはこの中じゃ眼鏡の姉ちゃんが一番可愛いっ!」という訳のわからない意見まで飛び交い。
引くに引けない空気が酒場を満たし、自信満々の13に残りの三人が半ば自棄になって酒を煽り始める。
…負けられないもう一つの戦いがそこにあった。
「何やってるんだか…、ディーラー様まで…。」
21も酒場に居合わせていたようである。
彼女から見たルーレットディーラーはいつも冷静かつ冷酷な従者なイメージがあるらしく
(ただし、超がつくほどの御主人様バカという一面も持ち合わせている事も承知の上で)
ノリでヤケクソになっている姿が珍しいらしく唖然としながらつい眺めてしまっていた。
「思うんだけどぉ…、聖職者…、なんだよね? あの二人…。 私、間違ってないよね…?」
「言わないで、私も人の事言えないけど…。 私だってあそこまで行かないわよ? ねぇ」
ーーー 一瞬の静寂 ーーー
「そ、そうですね。」
「他の皆はまだいいとして、りーりんまで…今の間お姉さん傷ついたわ~っ! よよよよよ…(棒)」
「あ、えっ、えー…っと…。」
エルナが大げさに泣き崩れる様な大根芝居を始め、
それにどう対応すればいいかリスティは困り果ててしまった。
「何やってるんですかエルナさん…。 あまりリスティを困らせないで下さいよ。」
「あっ、おかえり~ヴァイおにーさんっ♪ エミリアさんとディンおにーさんもおかえり~。」
「何じゃ? 料理を取りに行っている間に一体何が…?」
「ってあれ? グリッツおにーさんが居ないような…?」
「ん? そういえば途中から見かけないな。」
現在、酒場は満杯で料理を運ぶ暇すら無いので人をかき分けて取りに行くしかない状態になっている。
そんな最中、グリッツがちょっとだけ落ち込みながら席に戻ってきた。
「よっと、とりあえず人数分、砂狐のテイルステーキ取ってきたぜ、ただいま。」
「(平静を装ってるけど、大方料理持って来る途中で見かけた女の子にでもナンパして振られたんだろうね。)」
「(これは、振られたんだろうな…)」
「(振られたんじゃな)」
「(振られたのね)」
「(振られたな)」
「(やっぱり女の子に振られたのかな…?)」
「あれ? 皆どうしたの? せっかく料理が来たんだから冷める前に食べようよ!」
全員が妙な沈黙に包まれる中、あまり状況を理解していないらしい21が最初に口を開いた。
「21ちゃん、今この瞬間の君は天使だ…。」
「ありがとうございます♪ グリッツおにーさん。」
「あー…、ルートゥワちゃん…、ちょっと耳貸して」
「はい?」
「もしかして…、本当に何もわかってないの…?」
「えっ、何がですか?」
「ぁー…、やっぱりいいわ、気にしないで」
「???」
「21ちゃん! そんな君の天然な所も素敵だっ!!
俺と付き合ってくれっ!!!! 」
「あはは、グリッツおにーさんとですかぁ? 正直、何か微妙…」
「…、そういう事正直に言っちゃう君の言葉が今度は痛い…」
「でも、グリッツおにーさんみたいな人、私は嫌いじゃないですよ?」
「えっ」
「…? 私、何かおかしなこと言いましたか?」
「えっ」
「…(21、君はきっと暗い過去というか、そういう陰りを知らないから純粋なんだろうね。)」
満天の星空が見え始めた頃、あちらこちらでぎゃーぎゃー、がやがやと祭りがまだまだ続く。
何やら祭りに乗じた窃盗犯が正義の味方に懲らしめられている姿やら、
酒場ではたまたま居合わせた冒険者と聖職者が入り乱れての大宴会が開かれ、
綿菓子やら飴を始めとして奇妙な珍品まで並ぶ露店が様々な人々で賑う。
そんな最中、一発の大きな花火が上がり、人々の歓声で砂漠の街は包まれる。
その光景を見ている人間が、ある場所にもう一人いる事を知らずに…。
「…恋心の具現は誰かを強く想う想いに惹かれる、少しづつあの娘も自分の性質を理解し始めたのかしら…?
ふぅ、中々面白いものが見れたわ。 ふわぁ…、久々に長い時間起きてたら眠くなっちゃった…。」
"五感転写" ウグイス・カラミティレイドの能力であり
ルーレット№s総勢39名のありとあらゆる感覚を自身に転写する能力である。
これにより彼女は常に40人分の光景、音、臭い、感触等を持っている。
そして彼女はそそくさと大きなリボンのついた魔法使い帽を台に引っ掛けてゆったりとまどろみ眠りにつく…。