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僕は最近便秘気味である。そして、同時に下痢気味でもある。
高校男児、青春の時期を下痢に振り回されるとはなんとも情けない。
(もっとも、青春を謳歌することに対しても反吐が出るが)
びちびちのウンコが腸の中で発酵し、ガスが僕の体を隈なく
汚していっていると思うと恐ろしく思える。
――などと余裕ぶって独白している間も、僕は必死に内股だ。
秋のはじめに感じる風はいつもより一層冷たく感じられ、
そのくせに汗はとめどなく垂れ続ける。
体に充満する下痢ガスが溶け込んだような、ひたすら不快な汗。
周りでは、昇りゆく朝日の下、僕と同じ制服を着た奴等が
爽やかで清々しい朝の挨拶を交わしている。
僕の腹の中のウンコさえあれば、そいつ等の朝を破壊するに充分事足りるだろう。
そう考えると、何一つとりえのない僕でもそいつ等に勝ったような気がするが、
それよりもまず、自分に勝たなければいけない。校舎へ駆け込む。

尻が緩まないように、かつ、できるだけ素早く階段を駆け上る。
校舎の中は外よりも冷えていて、体が震えるが、
窓枠の向こうから見える朝日、投げかけられる日光は
いつもよりも僕を温かくさせた。
廊下の真ん中でだべる生徒をかき分け、三階まで上った。
同時に僕は咄嗟に時間を止めた。――限界がすぐそこまで来たのだ。
(ちなみに下痢止めのためだけに、時間を止めたわけではない)
僕の肛門に与えられる30秒だけの猶予。僕は限界を迎えつつも、トイレへすがりつく。
耐え切れずに穴は広がる。しかし流れ出る土石流は、身をのり出した瞬間時間を止める。
それゆえに漏らし続けている間も、その事実は保留されたままだ。
僕はトイレへ駆け込む。
30秒が経つ前に便器に座り込み、多少の苦痛に脂汗を浮かべる。

30秒の間流れ出続ける僕のウンコは、重力に影響されることはない。
僕の尻にぶら下がり、その質量を増していく。まるで黒い゛まりも゛のように見える。
腸が締められていく度に、表面上にあるウンコは放射線状に押し広げられていき、
黒い゛まりも゛は加速的に膨張していく。
音は全て゛まりも゛に吸収されている。「ブリブリイィ」という音は聞こえない。
さらには、僕のもっていた焦りとか苦痛とか興奮だとか、そういった感情さえも
゛まりも゛が成長していくと、薄まり、やがて消えた。

黒い゛まりも゛は物質・音・感情までも吸収していった。
だがそれも30秒が経つと、落ちて消える。便器に水に叩きつけられて崩れ去る。
僕はそれを見る度に、小宇宙を連想する。まるで小宇宙のようではないか、と。
さらにはそうやって、便器に腰掛け尻を拭く間にも、
個室の薄っぺらな壁一つ隔てた向こうでは、新しい小宇宙が誕生している。
純朴な娘が、不純な娘が、可愛らしいあの娘が、もしくは不細工なあの女が、
人前で見せる出来合いの顔からは想像もつかないほど、
顔を歪め、あるいは恍惚とした表情仕草で小宇宙を誕生させているのだ。
再び僕の頭には感情が湧き出す。悦びの感情が僕を支配する。
なんという極上! この世の至高! 真理!
僕はいつも宇宙を感じ、気だるい授業を乗り切るのだ。

時間を止めてトイレへ駆け込み――――――――そして、時間を止めて女子トイレから出る。
一種のライフスタイル。もちろん水は流さない。
小宇宙の残骸は、僕の証だから。