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-次の日。

学校に着き、自分の席でカフカの変身を読みながら考える。

能力を学校で使うようになってまだ3日しか経っていない。
まさか3日でこんな事態になるとは思いもしなかった・・・。

だが、探し方&殺し方は簡単だ。
Aが時を止めた時に俺が動き、Aを見つけだす。
次に俺が時を止め、そのへんの野球部のバットで手足を2・3回ぶん殴ればKOだ。


そう思っていると早速周りの動きが無くなる、朝からお盛んな野郎だ。
まずはAを探さないと・・・。

そう考えているとガラッと言う音と共に誰かがクラスに入ってきた。
教室の前の扉からだ。
ナイスだ神様。
Aを始末しろということですね。

それにしてもこれが犯人は犯行現場に戻る法則というやつか。
甘い!甘すぎるよ小沢さん。

俺は後の事を考え、目以外はピクリとも動かさずにAを確認する。

      • 女・・・・だ。
明らかにDQNだな・・化粧臭そうだ。

    • 結構な速度で走って・・・・・。
気のせいか俺の方に走ってきている。
何をするつもりだ?
殴ったりするのか・・?

と、とりあえず動かなければいいんだ、顔は確認できた。

そう思っていると、謎の女ことAは俺の机の中に紙を入れて出ていった。
妙に急いでいるし、やることが少なすぎるが、Aは10秒しか止めれないから当然か。

Aが走り去った事を確認し、手紙を確認する。

『全略
名前は知りませんが、あなたに少し話があります
昼体みに体育館哀に来てください』

        • こんな短い文章で何をどう間違えればここまで誤字が出るのか不思議だ・・・。
「休」を「体」と書く高校生がいるとは思いもしなかった。
まぁ、要するに放課後に体育館裏に行けばいいのだろう。
頭の悪い女は嫌いだ・・・。

だが、女だったら尚更ヤバい。
群れて何かをしている事必至だ。
Aは最低でも2・3人いると考えておこう。
そのほうが融通の利く対策が練れるからな。

それにしても、まさかこんな展開になるとは思っていなかった。
本来の予定では、今頃Aをこの世から排除して、また俺の無敵ングライフをエンジョイしているはずだったのに・・。

トボトボと体育館裏へと足を運ぶ。

念のためポケットの中では、いつでもメールを送れるように送信ボタンに指をかけている。
内ポケットには昨日から入れっぱなしにしてあるカッターもある。

いざとなれば一瞬でAを消す事も出来る。
けど、相手は女。
全く魅力的ではなかったが、もしかしたら何かに使える可能性もある。


学校の裏口から出て体育館裏に着く。
誰もいない・・・。
それにしても、暗くて静かな場所だ。
俺の高校の裏はすぐに山になっている。
静かというより不気味だな。
携帯も学校の敷地内だというのに圏外だし。

-待つこと10分

誰も来ない。どういうつもりだ?
人を呼びだしておいて10分も待たせるなんて・・。

-5分後

遅すぎる。
      • なんか猛烈に腹が立ってきた。
まさか自分から呼び出して忘れてるなんて事はないだろうな。
昼休みは30分しかないってのに。

-更に10分後

もう休み時間は5分も残ってないぞ・・?
いくらAを始末するためだといえ我慢の限界だ。教室に帰ろう。
そう思い、立ち上がると
「へぇ~、ちゃんと待ってるじゃん」という声が聞こた。
Aだ。

「人を待たせておいて謝りもしないんだ。
 で、あんたが俺を呼び出したの?」
相手が嫌いなタイプだとちゃんと喋れる俺、どうも情けない気がするがまあいい。

「そ、何で呼び出されたかはわかる?」

あんたが知ってるわけないでしょうがね、とでもいうような顔で聞いてくる。
あぁ胸くそ悪い。顔を見るだけで吐き気をもよおしそうだ。

「知らないよ。どうでもいいけど早くしてくれない?もうすぐ授業始まるし・・。」
「あんた見た目によらず感じ悪いんだ。」
出来る限り感じ悪くしたんだ、そう感じない方が悪い。

「じゃあ、ヒント!あんたが持ってる力についての話!」
思った通りAはアホだ。それはヒントじゃなくて答えだろう。

「あんた時間止めれるでしょ!」
おれが何も言わずに黙っていると、気まずいと思ったのかAの方から話し始めた。
忍耐力もないのか・・・使えなさそうだ。
「あんたも止めれるんだろ?
しかも俺の携帯から勝手にアドレス盗み出して、力を手に入れた」

「なんで知ってんの?」
「そんなことどうでもいいよ」
そう、俺が知っていることなどどうでもいい。
一呼吸おいてまた話を続ける。

「一番大切なのは、お前が誰かにこのことを言ってしまったかどうかだよ」
「あんまり偉そうに喋らないでよ!」
「どうせ『私も時間止められるからあんたと対等』とか言いたいんだろ?」
「そうよ!わかってるじゃん」

あぁ俺はわかってるとも、わかってないのはお前の方だ。
一瞬言おうかどうか躊躇したが、また俺はAに向かい話をする。

「今朝、いや昨日もだな。お前が時間を止めている間、10秒くらいか、俺も普通に動けるんだよ」
「でも今朝動けてなかったじゃん!」

ジャンジャン五月蠅い奴だ。しかも脊髄反射でモノを喋るからなかなか会話が成り立たない。

「少し考えればわからない?もしお前が時を止めている時に俺も止まってたらこんな話できないよ」
Aはかなり驚いたような顔で俺を見る。
「そういえば・・・。」
      • 本当に気付いてなかったようだ。なんか俺の頭が痛くなってきた・・。
「で、お前は誰かに俺の能力の事言った?
それともお前が誰かから聞いたのか・・。」
「あんたのすぐ後ろの席の・・。」

この質問にはAは答えないと思っていたが、案外あっさり答えた。
俺の動きは止められないとわかったからか?
でも、俺の後ろの席か・・1人しかいないな・・。安岡か?

「安岡から最近あんたがたまに授業中に右ポケットに手を入れたら
次の瞬間ブレて見えるとか聞いたから
あんたのクラスが体育の時に私があんたのズボン調べたの」

おいおい、それは立派な犯罪じゃないか?

「で、安岡はこのことを知ってるの?」と聞くと、Aは「言えない」と答えた。
どうやら知っているようだな・・・。
厄介なことになってきた・・。

昼休み終了のチャイムが鳴る。
安岡がどこまで知っているかが問題だ。
正直なところ、このAはどうでもいい。

「そろそろ教室に戻らないと」と俺が言うとAは
「真面目なんだね~」と小馬鹿にするような口調で言ってきた。

カッチーンと来たぜ、このクソアマめ。

「とりあえずお前にもう少し聞きたい事があるから
俺のクラスの前くらいまで一緒に行ってもらうよ
お前が少しずつ時間を止めながら行けばそんなに時間はかからないし」
「べつにいいけどさぁ~、その『お前』っていう呼び方やめてくれない?」

名前知らないからそう呼んでるんだよ・・・そんなこともわかんねーのか・・。

「名前教えてよ」
「川口響子っていうんだ」
「ふーん、じゃあ川口さんでいい?」

Aこと川口響子は「まぁそれでいいよー」とか言っているが
俺はそんな事よりも校舎裏口(教員昇降口)の横にあるゴミ捨て場に来ているゴミ収集車に目がいった。

川口響子はさっきから早口で下らない事について喋りっぱなし。
教室前までついて来いと言った事を信じ切っているようだ。

裏口まで来たところで携帯のメール送信ボタンを押す。

つい今までのガァーという音をさせていた収集車の動きも止まり、
こちら側に大口を開けて待ちかまえている。
距離にして14・5mといったところか。

俺は川口響子を抱きかかえ、収集車に向かって走る。
かなり重い気がするが、所詮は女子、知れている。
とはいえ、収集車まで10秒ほどかかった。

俺は収集車の後ろに川口を放り込み出来るだけ急いで校舎の中に入った。

携帯にメールが入る。
残り5秒か・・・、本当に短い・・・そう・・10分ほどの付き合いではあったが楽しかったよ
さようなら、川口響子・・。

時が動き出し、外から声にならないような、しかし甲高い断末魔の叫びが聞こえる。

      • 次は安岡だ。
俺の秘密を知るものを生かしておくわけにはいかない。

川口を今回こそは文字通り始末して教室に戻り、考える。
安岡か・・・。

安岡の席は俺のすぐ後ろだ。
クラスが同じだが、無口な奴で(俺も人の事は言えないが)よくわからない。
名前は竜一、男だ。
一見真面目で大人しそうに見えるが、
恐喝や喧嘩など、結構いろいろしでかしているらしい。

だが、それは私生活であって、学校内ではいたって真面目。
成績優秀、部活はしていないがスポーツ万能。
まるで漫画に出てきそうなキャラだ。
そして、もし出てきていたらボス的存在だ。

川口響子とはどういう関係なんだ?
まさか彼女・・?そんなワケは無いと思うが・・。

川口響子の一件はあっという間に学校中に知れ渡っていた。
一瞬だったとはいえ、あれほどの叫び声だ。
俺も元々バレずに始末する方法など考えていなかったから特に問題ではない・・。
とはいえ、生徒達は川口響子の身に何が起こったかほとんどわかっていない。
先生も決まって「女生徒が1人事故に遭った」という程度の事しか口にしない。

そうなると、やはり問題は安岡だ。

言いたくないが、俺より頭がキレる野郎だ。
ひょっとしたら・・・いや、能力の事を知っていたらの話だが、
十中八九俺が川口を始末したと確信しているだろう。

そして、川口の事だ。
たったの10分間の感想だが、少なくとも口が堅いようには思えなかった。
つまり、俺とさっきの昼休みに会う事を前もって誰かに言っている可能性もある。
ここでの「誰か」は安岡だ。
当然、川口は自分が始末されるなどと考えていたとは思えないが、
あいつのせいで俺は安岡を始末しにくくなってしまった。


しまったな・・・順番は安岡を先にすべきだったか・・・。


俺が初めて異変に気付いたのは圭吾(最初の犠牲者小島の本名)が事故で入院した日だった。

そいつは珍しく遅刻してきた。

名前は喪木武司。
俺のすぐ前の席だ。

俺から言わせてもらうとかなり頭にくる野郎だ。
成績はまぁまぁ良い方だが中途半端。
スポーツは卓球になると妙に張り切るが、他はてんで駄目。
俺の前の席でカフカの「変身」をここ数ヶ月何度も何度も、
ボロボロになるほど読みかえしている変な奴。

たまに教師と話しているが口調が気持ち悪い。

生理的に腹が立つ。


まぁ俺の感情など今はどうでもいい、そう、今は。
これは後になって知った情報だが
喪木が遅刻してきた理由は、圭吾が事故に遭って救急車を呼んでいた、らしい。

その日の一限目は古典だった。
なぜ覚えているか・・・。
それは、そこで初めて喪木が俺の前で動きを見せたからだ。

こいつがポケットの中に手を入れ、何やらモゾモゾしていると思った次の瞬間。
喪木の手何事もなかったように元の姿勢で座っていた。
ワケがわからなかった。
この時は見間違えかと思った。

どんなに手の動きが早くてもこの距離だ、目で追えないわけがない。

ふと気付くと周りが静まりかえっていた。
何事だ?と思う間もなく、
雑談をしていた古典の担当の村田が口から何かを吐き出し、
前方の生徒に教室から連れ出されていった。

その日は、その後5回ほど教室で不可解な出来事が起こった。
そしてその5回のうち俺が気付いただけだけでも3回は
喪木がポケットに手を入れて何かを触った直後に起こった出来事だった。



その日の帰り、川口響子が
「今日は部活ないから一緒に帰ろー」と声をかけてきた。

響子とのつきあいは幼稚園から始まって、
小中と9年間同じ学校、同じクラスで高校も同じになり、去年までは同じクラスだった。
つまり、今年初めてクラスが別になったわけだ。
つきあいと言っても、恋人のそれとはほど遠い、所謂腐れ縁だ。
流石に9年も一緒にいると、腐れ縁とはいえ仲良くなるわけで、嫌でも性格もわかってくる。


一緒に帰ろ、か。
過去に一度拒否した事があったが、無視してついてきた。
だからそれ以来イエスもノーも言わない。

「相変わらず無口だなー!
今日何か変わった事あった?私の方はね」・・

この自分勝手なお喋りにも慣れたし、この後の展開もいつもと同じ・・・のはずだった。
今までなら。

「・・・・変わった事あったぞ」
「お!喋った!ナニナニ?」

俺は響子に喪木という奴の存在、今日あったことを話した。
その間、4回くらい「今日はよく喋るじゃん」と言われた。
俺が話し終わると響子は
「なんかアヤシーじゃん、そのなんて言ったっけ、モキ?
ぜったい何か超能力じゃん。私が暴いてやるよ」
といい、その後響子の喪木の能力の想像を家に着くまで延々と聞かされた。

喪木の異変はあの日以来、といってもまだ3日目だが、続いている。

喪木はあいかわらずポケットに手を入れたるたびにブレたり、
手や足の位置が微妙にズレたりしている。
だが、それ以外特に変わった出来事はなかったが・・・。
何かが起こっているはずだ・・・、どんな些細な事でも・・。

そういえば・・小村の様子がこの2日ほど変だな。
あいつとは去年も同じクラスだったけど、今まで授業中に体調不良も含め
退室した事はなかったが、今日はいきなり体調を崩してしまった・・・。
あれも喪木の仕業?


今は昼休み。

俺はいつも通り自分の席で昼飯を食っていた。
喪木は珍しくどこかへ行っている。

そして、これまた案外珍しい。来訪者だ。
「竜一!大ニュース大ニュース!」
と比較的大きめの声を出して響子が近づいてきた。
そして今度はかなり小さな声で
「モッキーの超能力がわかったぞ!」と言った
響子の言うモッキーとは喪木のことだ。

「喪木の超能力?」
やっぱり何かしら変な力があったのか。
「そ、前竜一が あいつが右ポケットに手を入れるとどうのこうのっていってたじゃん?
だから昨日、このクラスが体育の時にちょっと漁らせてもらったってわけよ」
明らかにアレな気もするが響子らしいと言えば響子らしい。
「で。何が出てきたと思う?」
全く想像ができずに黙っていると響子が自慢げに喋りだした。
「携帯電話!それもかなり古い型の。でね、これがえらい代物だったのよ!」
携帯がえらい代物?古すぎるからか?
すると響子は更に声を窄めて言った。
「あいつ携帯で時間を止めれるんだ」
「時間を?」
時間を止める?そんな奴がいたら人間を超えている。
「そ、時間を。 しかも止め方は至って簡単!あるアドレスにメールを一通送るだけ」
随分・・・能力のわりにショボイ止め方だ・・・。
「こんなことばだけじゃあんたの事だし、絶対信じないと思ったから証拠見せてあげる」
そういうと響子は携帯を取り出し、メールを送信・・・。
響子の姿が消えた。
「どう?信じた?」
声が背後から聞こえた。
俺は驚いて後ろを見る・・・がいない。
「これがあいつのチカラだよ」
今度は前からの声だ。
前を向くとちゃんと響子がいた。

「・・・まるで夢みたいな能力だ」

俺がそういうと響子は黙って頷いた。

それから暫く響子が喪木の携帯から仕入れた時を止めるアドレスと
喪木の携帯のアドレス。
それと能力を使用するにあたっての『掟』というものを教えてもらった。

「モッキーのチカラの説明には『30秒止められる』ってあったけど
私は10秒程度しか止められないんだ。なんでだろ?」
そういい、響子は俺にもそのアドレスに送ってみて欲しいと言ったので送ったが
俺は1秒も止めることは出来なかった。

たしかに不思議だ。

「でね、この昼休みにモッキーと会う予定なんだ」
「喪木と?」
「おうよ!ビックリした?体育館裏に呼び出したんだよ。
私は10秒も止めれるからそれを使って机の中に手紙を入れたんだ」
「・・・・でも・・響子・・昼休み残り10分もないぞ?」

喋るのに熱中しすぎて時間を忘れるのは響子の悪い癖だ。
「やっばぁ~!モッキー待たせっぱなしじゃん!怒ってるかな?
とりあえず、残りの報告は放課後ね!今日は部活サボるから」

それが俺の聞いた響子の最期の言葉だった。

2時間前学校が終わった。
残りの報告は放課後・・・響子のその言葉を信じて教室で待っていた。
しかし、響子は来ない。
来るわけがない。
響子は死・・・いや殺された。

喪木にだ。
クソ教師共は事故だといっているが、俺は確信している。
喪木が響子を・・・・。

時を止める事が出来ると言ったな、30秒も。
それなら証拠を突き止める事など難しいだろう。
アリバイなどもいくらでも作れるから他者が犯人を喪木だと特定するのは不可能だ。

待っていては・・この事件は始まらないし終わらない。
俺が喪木を・・・・。

~喪木宅~

今日は学校では安岡を始末出来なかった・・・。

そんなことよりも川口響子を始末したせいで安岡とコンタクトを取りにくくなってしまった。

クソ・・・やべぇ、マジやべぇ。
俺の能力についてこれ以上人に知られたら、小村さんとの淡い日々が一転、ムショ生活だ。
留置所の鉄格子を見ながらのトムクルーズ風な監守の前で公開オナニーなんてまっぴらだ。
第一それだとウホになってしまう。

そのためには何が何でも安岡で俺の力の存在を止めないと・・・。
だが、俺は電車通学で奴は徒歩。
方向で言うと正反対といってもいい。
だから俺が帰り道で成敗、というのも考えたが他の誰かに見られたら怪しまれる
よって無理だ。

やるなら学校しかないな。
明日明後日は休みだからその間は安岡が誰かに話さない事を祈るだけだ・・・。

物音一つしない自室のベットの上でそんなことを考えていると机の上に置いてある携帯が鳴った。
鳴ったといってもバイブレーションだが。
一体誰だ?俺のメアドを知っているのはママンくらいだ。
でもママンは下の階で夕飯を作っているから俺にメールを送ってくるワケがない。

俺がメールを開けるとまさかまさかな内容が書かれていた。

『明後日 日曜日 高校の校門前に来い
響子を殺したその能力について話がある』

名前は書いてないが十中八九安岡だ。
能力のことを知っているかどうか自体が今まで確信できなかったが、これで決定だ。
奴は全て知っている。
俺のメールアドレスから何から。

まぁいい。
向こうから呼び出しが来るとは思わなかったが、おかげで何の躊躇いもなく始末できる。
展開も早いし作者も楽だ。

そうと決まれば明日は準備だな。
絶対にこのチャンスを逃がすワケにはいかない。
確実に始末だ・・・。

~安岡宅~

明後日だ。
復讐だ。

喪木め・・・絶対に殺してやる。
響子はゴミ収集車に入れられて殺したらしいな・・・。
なら俺はどんな方法でもいい、捕まえて、ゴミ収集車より更に屈辱的な方法で殺してやる。

いざというときのための準備はもう出来ている。

響子に教えてもらったアドレスに送ってみたが・・・。
喪木は時間を30秒止めれるといったな、俺はどんなに止めてもきっちり15秒だ。
半分か・・だが止めれないよりはマシだ。

この能力で喪木は響子を殺した・・・。
なら俺も最大限にこの能力を活かして殺してやる。

あれから2日。
たしかに呼び出されたのは日曜日・・・。
今日だ・・・・。

でも、2日前に来たメールに時間指定はなかった。

約束を破るのは俺の性に合わないし、第一、安岡を始末しないと俺の人生に関わる。
だから行かざるを得ない。
ま、気長に待つか。

そう決めると俺は家を出た。

問題は・・・安岡が時を止めれるのかどうか・・・。
まぁ仮に止めれたとしても川口響子同様、俺には影響は出ないだろう。



20分後、校門前に着く。
俺の高校は国道に面していて、校門前の交通量は田舎にしてはなかなか多い。
学校のすぐ裏では携帯すら通じないのが嘘のようだ。


すでに安岡は来ていた。
「喪木・・・来たって事は響子の一件・・やっぱりお前の仕業なんだな・・・」
普段はほとんど表情を変えない安岡が今にもブチ切れそうな顔をして俺の方を見ている。
見慣れない顔、聞き慣れない声だ。
安岡と会話するのは初めてだが・・・・。

『川口響子って言ったっけ?』
「?」
相変わらずの睨みっぷりだ。
そこらのDQNとは一味違うな、これが川口の復讐をするという気持ちの現れか。
しかし、何故かどれだけ睨まれても不思議と俺の心は全く乱れない。

『あいつお前の何なんだよ?』
「あいつは -・・・」
道をトラックが通り、声はよく聞き取れなかった。
まぁ、あまり興味はないから別にいい。

      • あまり校門前で長い時間対峙していると目撃者が多くなるから
早めに始末しなければ。
だが、俺も鬼ではない。
遺言を言う程度の時間はちゃんとくれてやる。

『時間・・・あんまり無いんだ、話って何?』
「なんで響子を殺した・・。その能力を知られたからか?」

何で・・か。

『たとえば・・・安岡、お前は運命に逆らう事ができるか?』
「・・・・・・。」
『運命によって決まっている事に逆らう。
 そうすればその逆らった結果が運命になる。』
「お前は運命に逆らうことが出来るとでもいいたいのか?」
『いや・・・そういうわけではない。
 俺には俺の運命があり、それに逆らう事はできない。』
「・・・・・・情けない話だな」
『だが、お前もよく知っているこの能力・・・・。
 俺は時を30秒止めることによって他人の運命を少し変える事は出来る』
「・・やっぱり・・呼び出して正解だったよ」

そろそろ時間的にやばい・・・。
俺はポケットの中に手を入れ、時を止め・・・。

俺がメールを送信する前に時が止まる。
「・・・させねぇよ」
『やっぱり安岡も時を止めれたのか・・・・』
「驚いたのはこっちだ。俺が時を止めているのにお前が動けるとは思わなかった・・・。」

川口の時とは違い、体がかなり動きにくい。
いや、言葉を喋る程度しか出来ないと言った方がいいか。
どういう加減か知らないが川口より安岡の方が時を止める能力が強いからか・・・?。

やばいッ!と思い精一杯の力を振り絞りポケットの中でメール送信ボタンを押す。

「・・・・残念だったな、喪木。
お前は動けても携帯の方は俺のチカラの影響を受けているようだ・・・。」
そう言うと安岡はゆっくりと近づいてきて俺の顔を思いっきり殴った。
痛くはない・・・。痛みは時が動き出してから来るのか・・・。
ほとんど動かない俺の体は道路に引きずり出される。

「・・・・喪木・・・。
 まずは死ね。あの世で一生響子に謝るんだな」

体が動かない・・・。後ろには軽自動車が迫っている・・という表現は時が止まっているから不適切だが。
さすがに軽とはいえ、この距離で直撃したらヤバい。
「あと3秒ってとこか・・・・。」

止まっていた時が動き出す。

ギリギリセーフ。
まさに間一髪の差で、今度は俺の能力が発動した。
後ろから走ってきた軽自動車が背中にぴったり付いている。

コンマ1秒遅かったら死んでたな・・・。
安岡が時間を止めている間にメール送信ボタンを押したから
時が動き出した瞬間にまた止まったのだ。

同時に殴られた痛みも一気に来て死にそうなほど顔が痛い。
人に殴られるのは初めてだ・・・。

まぁ、何はともあれ
『安岡、お前の負けだ。ざまぁみろ!
ミイラ取りがミイラになる、とでもいうのかな?この状況』
結局またもや俺の運の勝ち・・いや、これは決まっていた事。
安岡が死に、俺にまた平穏が戻る。
これはチカラを手に入れた時から決まっていた運命だ。

『というわけで負け犬は負け犬らしく勝者の代わりに轢かれておくれ』
今度は俺が安岡を道路に引きずり出す。

安岡の口元がニヤけている。
はんッ!俺を殺せたと思っていたのか。
だとしたら詰めの甘い奴だ。

まだ、安岡の死まで10秒ほど残っている。
      • 安岡が撥ねられる瞬間も見たいが、ここは着地の方を見たい。
きっとK点突破してくれるだろうから祝ってあげないとねw
だいたい車の前方10mほどのところまで行けばいいかな。
そう思い、移動している最中に車が動き出す。

ドンっ!

      • たぶん安岡が撥ねられた音だ。
どうやら時が動き出したようだな。
キキーという急ブレーキの音。
あっという間に俺を追い越して、遥か前方に安岡が転がっていく。
見た感じ10mどころの距離じゃない気がするがまぁいい。

俺は安岡のすぐ近くまで近寄る。
後ろの方で安岡を撥ねた軽の運転手が何やら騒いでいるが気にしない。

『俺が川口を殺した時点でお前の「運命」も変わったんだよ、安岡・・・。』

返事がない。ただの死体のようだ。
と言いたかったが返事があった。まだ生きていたようだ。
「喪木・・・ゲホッ・・・俺の勝ちだ・・・・。」
何言ってんだこいつ?安岡の勝ち?


「俺の・・・ズボンのポケッ・・・を見て・・・みろ」
ポケット?
俺が安岡に触るのは色々とやばいが、状況が状況だ。
怪我の状態を確認しているように見える事を祈ろう。

俺は安岡のズボンに手を入れる。
綺麗に折り畳まれた紙が出てきた・・・こっちじゃないのか?
もう一方に手を入れる。
なにやらヌルッとした気色悪い感覚だ。
『精子?』
「スーパ・・で売ってた有精卵だ・・・割れ・・が・・。」
『有精卵?』
      • ?有精・・卵・・・・鳥・。
鳥・・有精卵・・・割れて・・!
そうか・・!
俺がハッと気付いた瞬間携帯にメールが入る。
もしや・・・ひょっとして!!
急いでメールをチェックする。
【お前は[掟]を破った。掟に従い能力を剥奪する】
短いが十分過ぎるほどの内容。
有精卵・・・孵化する可能性があるということは生きているという事。
つまり、時を止めて割るということは・・・。
『クソ・・・ただじゃやられないってワケか・・・』
返事はない。
気を失ったのか死んだのかはわからないが、おそらく後者だろう。
      • 安岡がニヤけていた理由はこれだったか。

こいつ・・・元々俺の能力を消すためだけに・・・。


時を止める事が出来るという無敵の能力。
たった2週間の最強。
全てがこの数分で消えた。

【完】