国の真優ろば  ◆Wv2FAxNIf.



 夢を見る。
 紅蓮の炎を。
 どこまでも駆けてゆくただ一人の王の夢……。



 四道は赤の王・朱理の従兄弟であり、彼の右腕だった。
 普段は街づくりに熱心な優男で、逆に戦となれば女子供が相手でも容赦をせず、敵の仏の山を築きあげる。
 そうした両極端な性質から『仏の四道』と呼ばれ、赤の王を誰よりも理解し支えた。
 しかし赤の王に反逆したタタラを討伐するべく戦地に向かい、そこで命を落とすこととなった。
 それが、四道という男の生涯である。

 首を矢で射抜かれ、血を失い、鎧が重くなっていく感覚を覚えている。
 「死」というものを理解し、ただ愛しい人を想って生を終えた。
 そのはずが、今の四道は見知らぬ街にいる。
 生き返ったというわけではなく、〈竜〉によれば死人(しびと)というものになったのだという。
 既に死んだ身であれ、〈竜〉の力を継ぐ儀式の参加者として認められたらしい。

 死人、そして幻光虫について説明を受けて理解もした。
 疑う気はない。
 今はここに意志を持って立っているという、それだけが重要だった。
 生前に残した未練を果たせるのなら、そしてその上で朱理を日本の王にしてやれるのなら、自分が何者であろうと関係ない。

「タタラを殺す。今度こそ」

 四道は殺せたはずの敵を、それも朱理にとって最大の障害となるであろう相手を殺せなかった。
 初めて宿敵・タタラの顔を間近で見て、それが更紗だと――朱理の想い人である少女だと気づき、躊躇してしまったのだ。

 タタラは、更紗だ。
 朱里は気づいていない。
 赤の王は、朱理だ。
 更紗は気づいていない。

 タタラと赤の王は敵同士でありながら、そうとは知らずに更紗と朱理という男女として愛し合ってしまっていた。
 四道はそのことに誰よりも早く気づきながら、朱理に伝えられないまま死んだ。
 短い生涯の中で、それが最大の悔いとなった。

 この場でタタラを殺し、そして朱理に〈竜〉を討たせる。
 そうすれば朱理は西日本のみといわず、全国を統治する真の王として君臨することになるだろう。
 美しき至上の都――国の真優ろばを実現する。
 それこそが四道の願いだ。
 四道は〈竜殺し〉ではなかったが、朱理は〈竜殺し〉だという確信がある。
 〈竜〉の器に、王にふさわしいのは朱理だけだ。
 〈竜〉を殺すのは朱理をおいて他にいない。
 他の世界のことなど関係なく、〈竜〉の力を継ぐのは朱理でなければならないのだ。

 故に。
 四道が最初に発見した参加者を排除しようとしたのは、ごく自然な行動だったといえる。

 四道がこれまでに見たどんな街よりも大きいこの街には、人が溢れていた。
 朱理と四道が時間をかけて発展させた蘇芳の街でさえ、ここと比べれば霞んでしまう。
 そんな見知らぬ土地を彷徨う中、四道は人の流れに逆らうように立つ背中を見た。

 それは四道と同じぐらいの、人混みの中にあっても頭一つ分ほど上背がある男だった。
 翠色の髪に、白と青の二色で色分けされたロングコートと、四道からは少々奇抜な格好に見えた。
 だが四道がその男を見つけられた理由は格好よりもなお単純なもので、淡い光を纏っていたからだ。
 この男も二十人の参加者のうちの一人なのだと、そう判断してからの四道の行動は速かった。
 無防備な背を観察し、早々に腰に提げた剣に手をかけたのだった。

 四道は武人ではあるが、不意打ちを卑怯とは思わない。
 民間人を巻き込むとしても、ここにいるのは赤の王の臣民ではない。
 『仏の四道』が止まる理由はどこにもなかった。

 四道が動き始めると、通行人たちは四道の邪魔にならないよう自然と避けていった。
 思えば四道が棒立ちになっている間も、これだけの人の流れがありながらぶつかってくる者は一人もいなかった。
 人々の動きは不自然ではある。
 だが今は、標的を殺しやすくなったという感想に留めておく。
 余計な考えを排除して、標的への接近に集中する。

 翠色の髪の男は右手を耳に当てた姿勢のまま、移動する気配を見せない。
 何をしているにせよ、隙だらけの姿は好都合だった。
 抜刀して高く掲げ、両腕で構えた剣を一息に振り下ろす。


 自分が〈竜殺し〉ではないと告げられて、ジェレミア・ゴットバルトはただ納得した。
 〈竜殺し〉――次の時代を担う器に足る者。
 自分がそれにふさわしくないことを、誰よりも承知していた。

 ずっと、若いつもりでいた。
 ひたすら前へ前へと、先頭を駆けているつもりだった。
 だがいつの間にか少年たちに追い抜かれていた。
 追いつけない彼らの背を見て初めて、自分が古い時代に置き去りにされたことに気づいたのだ。

 だからただ、彼らの背を押してやれればいいと思った。

「……はい、そのようです」

 携帯電話を片手に、ジェレミアは市街の雑踏の中にいた。
 目を覚ましたのは屋内だったが、通話の相手からの指示で外の様子を偵察しにきたのだ。
 通話口の向こうにいるのはルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 神聖ブリタニア帝国第九十九代皇帝にして、ジェレミアが仕える主君でもある。

 ジェレミアが目を覚まして真っ先に行ったのが、ルルーシュの安否の確認だった。
 自分がどこにいるのかも分からないまま携帯電話に手を伸ばし、呼吸を乱すほどに狼狽しながら呼び出し音を聞き続けていた。
 無事に主の声が聞こえた時には、安堵の余り膝から崩れ落ちるほどであった。
 ジェレミアにとって、ルルーシュの存在はそれだけ重いのだ。

 市街地に出てから道路標識などで確認したところ、ここは環状線の内側、目黒らしい。
 土地や人々の様子を観察して不審な点を報告し、ルルーシュなりの考察と今後の指示を聞く。
 そうして用件を済ませ、ルルーシュが会話を切り上げようとした時、ジェレミアは一つ問いかけた。

「〈竜〉を、如何されるおつもりですか」

 聞かずとも分かっている。
 現にルルーシュの返答は、ジェレミアが想像した通りのものだった。
 愚問だな、と。
 民衆に語りかけるのと同じように威厳に満ちた声で、ルルーシュは言う。
 『明日』にそんなものは必要ないと告げる年若い主に、ジェレミアは深く頷いたのだった。

 今度こそ電話が切れる。
 その間際に一言、ルルーシュは付け加えた。
 『全てはゼロ・レクイエムのために』。
 通話が終わってからしばらくの間、ジェレミアは身じろぎせずにその場に立ち尽くしていた。

 ルルーシュが〈竜〉を必要としないことは分かっていた。
 彼が求めるのは人の意志によって進んでいく『明日』であって、超常の存在が介入する余地などない。
 むしろ憎悪すら覚えて、他人の手に渡る前に消滅させようとするだろう。

 数分の時間をおいて、ジェレミアは次の相手に電話をかける。
 ゼロ・レクイエムの共犯者、ルルーシュの親友でもある枢木スザク。
 ジェレミアは彼と特別親しくはなかったが、合流にあたって確認を取っておく必要があった。

 一度目は、ルルーシュとの通話が続いているようで話し中だった。
 また少しおいて二度目には電話が繋がり、まずは互いの無事を確かめ合う。
 ジェレミアが襲撃されたのは、その最中のことだった。

▽ 

 間違いなく殺せたと思った、完全に不意をついたはずだった。
 だが四道の手に伝わったのは肉を裂く感覚ではなく、金属にぶつかった反動。
 甲高い金属音とともに、四道の一撃は防がれていた。
 翠色の髪の男は振り返ることなく、左腕に仕込んだ手甲剣を抜いて頭上からの剣戟を止めたのだ。

 四道は怯まずに一歩下がり、今度は右から左へと横薙ぎに剣を振る。
 しかしそれも、振り返った男の剣でやすやすと受け止められた。
 顔の左半分を金の仮面で覆った風貌もさることながら、それ以上に男の力に驚かされる。
 男は右手を耳に当てたまま、左腕の力だけで四道の両手持ちの剣を防いでいるのだ。
 四道が更に力を込めても、僅かも動かない。

「……ああ、君が心配するような問題は起きていない」

 仮面の男の、低く落ち着いた声。
 仮面に隠されていない方の視線はあらぬ方を向いており、どうやら四道に向けた言葉ではないらしい。
 奇襲が通用しなかったことに加えて独り言の気味悪さもあり、四道は一度男から距離を取った。
 舌打ちを一つもらす。
 奇襲の失敗に対してというのもあるが、この男が持つ装備にはいい思い出がないのだ。
 朱理と四道の師も手甲剣を愛用しており、二人で束になっても勝てた試しがなかった。

「うむ、それでは。
 ……そうだな」

 男は耳に当てていた箱を畳み、懐にしまった。
 そして視線を落とし、深く溜息をつく。

「全てはゼロ・レクイエムのために、か。
 そうだろうとも、君たちならば……!」

 仮面の男が声を荒げ、服の両袖から手甲剣を突き出した。
 ここで初めて互いの視線が交錯し、四道は咄嗟に剣を構え直す。
 四道が取っていた距離は仮面の男のたったの一歩で侵略され、二本の剣が四道の身に襲いかかる。

「なるほど、貴公は正しく訓練を受けているようだ。
 初めから私を殺すつもりで仕掛けてきた点を見るに、覚悟もできているらしい」
「覚悟はある……わたしの王を、真の王にするために!」

 分析しながら喋る仮面の男に対し、四道には余裕がない。
 苦し紛れに叫び返すものの、仮面の男の二本の剣のそれぞれが、片腕の力で振るわれているとは思えないほどに重かった。
 四道が防御に専念していても防ぎ切れず、服に何ヶ所も血を滲ませながら致命傷だけは避けていく。

「貴公も主を持つ者か。
 奇遇……いや、そういう者だからこそ、巻き込まれたと考えるべきだろうな」

 四道は付近にいた通行人を盾にしながら、仮面の男の死角であろう左側に回り込む。
 そして僅かな反応の遅れに乗じて剣を真っ直ぐに突き出した。
 狙うのは左腕。
 片腕だけでも潰せれば、戦いを五分以上に持ち込める。
 しかしその一撃も男を傷つけるには至らず、剣で防がれた時と同じ金属音が響き渡った。
 男は服の下に鉄板を仕込んでいるらしく、反動で四道の腕に痺れが走る。

「貴公の実力は確かなものだが、まずは相手を選ぶべきであった」

 仮面の男が、四道との間にいた通行人を斬り伏せる。
 そして四道が突き出していた剣の腹に叩きつけるような一閃を浴びせた。
 四道の痺れた手ではそれを受け切れず、剣を手放してしまう。
 剣が地面を転がり、仮面の男は四道の首に剣を突きつけた。

「そして、訂正が必要だ。
 真の王にふさわしいのは貴公の王ではない」

 鏡を見ている気分だった。
 狂気といってもいいほどの忠誠。
 王のために命すら投げ捨てるだけの覚悟。

「故に……」

 だがその鏡は――仮面の男は、口の端を吊り上げた。
 不自然なまでの笑みを浮かべ、宣言する。



「〈竜〉を討つのは、この私だ」




 この場では不要だったかと、ジェレミアは作り笑いをやめて無表情に戻った。
 ジェレミアはゼロ・レクイエムに向けて極力「悪」であろうと、人々から恨まれる騎士であろうと振る舞ってきた。
 それはルルーシュの行動に倣ったものであったが、ゼロ・レクイエムと無関係のこの地では意味がない。

 ゼロ・レクイエムはルルーシュとスザクが発案した計画であり、世界を変える一石を投じるためにある。
 世界を支配した悪の皇帝を、仮面の英雄『ゼロ』が討つ。
 人々の憎悪は全て皇帝に集められ、諸悪の根源たる皇帝の死後は人々が協力し合いながら前へ進むようになる。
 今よりも少しだけ「優しい世界」に近づく――それが、ルルーシュたちが描いたシナリオだ。

 悪の皇帝とは、ルルーシュであり。
 仮面の英雄とは、スザクであり。
 つまりルルーシュは全世界から憎まれながら死ぬ。
 スザクは『ゼロ』となって親友を殺し、枢木スザクという個を殺し、仮面を外すことなく一生を過ごす。

 二人の少年が自分たちの人生をなげうって、世界を変える計画。
 同時に、彼らがこれまでに犯した罪に対する罰を受ける計画。
 ジェレミアもその計画に、協力している。

 心の奥底から賛同していたわけではない。
 だが古い時代を生きたジェレミアには、二人の決意を曲げさせることはできなかった。
 今の世界を作った「大人」のうちの一人に過ぎないジェレミアに、彼らを止める資格はなかった。
 それをルルーシュが望むのならばと、納得する他になかった。
 だから、ただ背中を押してやれればいいと思ったのだ。

 〈竜〉を知るまでは。

 〈竜〉を殺すことで、世界を変えられるというのなら。

 もしも世界が今よりも、ほんの少しでも「優しい世界」であったなら。
 ルルーシュたちがゼロ・レクイエムを目指す必要のない、元より人が人を思いやれる世界であったなら。
 ゼロ・レクイエムを実行する意味を奪ってしまえたなら。


 ルルーシュの死という未来をも変えられるのではないかと、希望を見い出してしまった。


 これはルルーシュの意志に反することだと分かっている。
 だがジェレミアが欲しいのは、優しい世界ではない。
 ルルーシュとその妹・ナナリーが二人で笑って生きられる世界なのだ。
 希望を見てしまった後では、夢見てしまった後では、もう戻れない。
 〈竜〉を討つ為に他者を蹴落とすことも、ルルーシュに背くことも厭わない。
 優しい世界の為に他人を殺すという矛盾も、飲み干せる。

「……さて、知っていることを話してもらおう。
 話す気がないならそれも構わんが」

 相手の首筋に切っ先を当てたまま、ジェレミアは襲ってきた黒眼鏡の男を見下ろす。
 返答を期待していたわけではない。
 形式上問いかけることになっただけで、主を持つ立場にある者が素直に答えるとは思っていなかった。
 それに生き残れる人数が決まっている以上、元より生かしておくつもりなどない。

 だが男は自らの主の名前こそ口にしなかったものの、意外なほど従順に質問に答えていった。
 真偽までは判別できない。
 ただこの男には死ねない理由があるのだと、この応答の間にも逃走の隙を探している様子からも見て取れた。

 名前、出身、国の特徴。
 とりわけ元エリア11とは別の『日本』の存在は興味深いものだった。
 それぞれに情報収集をしているルルーシュとスザクに合流して照らし合わせれば、より有益なものとなるだろう。
 しかしこの四道という男は〈喰らい姫〉や〈竜〉について知っているわけではなかった。
 それ以上の時間は無駄と判断し、ジェレミアは質問を切り上げた。

 まずは一人と、ジェレミアは切っ先に殺意を籠める。
 そして――視界の端に、噴煙を見た。

 思わず四道から目を離し、そちらを注視する。
 ルルーシュが拠点にしているという、九段下の方角だったからだ。
 火事かと訝しんだが、遠い爆発音とともに噴煙の数が増えていく。
 心に焦りが生まれ、鼓動が徐々に早くなっていくのを感じる。

 嫌な予感とともに携帯電話を手にして、ルルーシュの番号を呼び出す。
 そして――繋がらない。
 呼び出し音すら鳴らなかった。
 電源が切られているのか、電波の届かない場所にいるのか、或いは携帯電話が破損したのか。
 心中で幾つかの可能性を挙げながら、ジェレミアは四道を放置して走り出した。


 四道は仮面の男の進路とは逆の方角に向かって逃走していた。
 あの男との接触で、この儀式はただの殺し合いではないと悟った。
 人間離れした身体能力。
 参加者誰もがあの男のような者ばかりなのだとしたら、〈竜〉を討つ以前に生き残ることすら難しい。
 切り抜けられたのは幸運という他にないだろう。
 朱理が同じような目に遭う前に、一刻も早く合流しなければならない。

 そう、幸運だった。
 しかし危機は終わっていなかったのだ。

 仮面の男から逃れて十分もした頃。
 四道は今度は近づいてくる爆発音から遠ざかろうとしていた。
 四道の知識ではどこかから砲撃されているとしか思えない状況であり、逃げる以外の選択肢はなかった。
 だが限界を感じて振り返った時、四道は砲撃以上の最悪の事態を悟った。

 道路を埋め尽くす人波。
 瞳孔が開いたままの目は濁り、腹や胸に穴を空けたまま蠢くそれらは、認めたくはないが動く死体と呼ぶ他にない。
 そんなものが群を成して、建造物を破壊しながら進軍している。

 〈竜〉を討つどころか、参加者を排除するどころか、己の身を守ることすら困難だった。
 この会場は魔窟なのだと、四道はようやく理解したのだ。

「だが……死ぬわけには……!!」

 タタラを殺すために。
 朱理を王にするために。
 そして、最愛の妻のもとへ帰るために。
 既に一度死んだ身であれ、野垂れ死ぬわけにはいかなかった。

 『英雄にならなくていい』と、彼女は言った。
 名誉の死よりも夫の生を望んでいた。
 そんな彼女が訃報を聞いた時、何を思っただろうか。
 死人(しびと)として帰った夫を見た時、何を思うだろうか。

「千手姫……私は帰ります、今度こそ……!」

 もう一度声を聞きたい。
 もう一度声を聞かせたい。
 帰らなければならない。
 〈竜〉を討ち取った赤の王の右腕として、彼女にもう一度会うために。


【一日目昼/目黒】

【四道@BASARA】
[所持品]剣
[状態]死人、軽傷
[その他]
  • 〈竜殺し〉ではない。


 街灯や窓の縁を足場にしてビル屋上まで駆け上がり、ジェレミアは煙が上がった方角――九段下方面へ目を凝らす。
 普段は仮面で隠している左の義眼は、常人には及ばない遙か遠くまで見渡すことができた。
 そして、事態を把握することとなる。

 死体そのものは見慣れている。
 だがこの地に広がっているものは、それ以上の悪夢だった。
 ルルーシュすら予期していなかった異常事態が起きていることを確認し、ジェレミアはすぐに踵を返した。
 ただし向かうのは九段下方面ではない。

 ビルから飛び降りて、車道を走っていた車の屋根に着地する。
 機械の体の重量と落下の衝撃によってひしゃげたそれを無視し、歩道の人混みを避けるために別の車の屋根に飛ぶ。
 そうして車の上を走りながら再度ルルーシュに電話をかけたが、やはり繋がらなかった。
 やむなくルルーシュとの通話を諦め、次いでスザクに連絡を入れる。
 用件のみの短い会話となったが、詳細を伝えようにもジェレミア自身の理解が追いついていないのではどうしようもなかった。

 そうして数分かけて到着したのは、航空機の格納庫だった。
 目黒の街に出る前、ジェレミアが最初に目を覚ました場所である。
 薄暗く鉄の臭いの立ちこめるその場所には、セスナやヘリが幾つも並べられていた。
 ただしそれらの機体のうちの一機だけは、翼のない特殊な形状のものだ。

 KMFとは全く別の設計思想に基づいて開発されたKGF(ナイトギガフォートレス)、サザーランド・ジーク。
 要塞の名にふさわしい巨体を持つそれは、ジェレミアの専用機である。
 非人型の丸みを帯びた本体は明るいオレンジ色であり、KMFの数倍のサイズもあって戦場では大いに目立つ。
 それはこの格納庫においても例外ではなく、ただそこに置かれているだけで異様な存在感を放っていた。

 機体に問題がないことは、初めに発見した際に済ませてある。
 いつでも出発できる状態だ。
 ジェレミアがコックピットに乗り込んで胸の前で両腕を交差させると、コートの背面が左右に開いた。
 露出した背中は機械化されており、脊髄と機体をドッキングさせるための接続端子が埋め込まれている。
 これでサザーランド・ジークに直接繋がることにより、ジェレミアは操縦桿を握ることなく意のままに機体を操ることが可能となる。

 ダモクレス戦役で大破したはずの機体が何故ここにあるのか、疑問は尽きない。
 だが一刻も早くルルーシュと合流するために、忠義を果たすために、今はこれが必要なのだ。

「我が忠義のために、今一度……!」

 大型スラッシュハーケンで格納庫の屋根を破壊し、機体を浮上させる。

 向かうのは混沌の中心、九段下。


【一日目昼/目黒】

【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス】
[所持品]サザーランド・ジーク、携帯電話、手甲剣
[状態]健康
[その他]
  • 〈竜殺し〉ではない。
  • 四道から情報を得る。



GAME START 四道 012:光芒
ジェレミア・ゴットバルト 013:竜殺しを探して