「病機論」(2008/07/16 (水) 22:42:17) の最新版変更点
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病機論
この章では病機についてみていきます。まず復習ですが、中医学においては、健康であるということは、陰陽や各臓器、気血津液のバランスが取れていることでした。これを裏返すと、病んだ状態というのは何らかのバランスが崩れている状況と位置づけることができます。
バランスが崩れるとき、つまり病機の初期においては
① 外邪の侵襲による邪正相争・・・外からの邪を排除しようとして体の中で正と邪の激しい戦いが繰り広げられること。
② 臓腑の陰陽失調・・・体内で気、血、津液の不足や過多により自らのバランスを崩すこと。
が起きます。
どのような病態であれ、邪正相争と陰陽失調は起きていますので、まずはこれを覚えておいてください。
以下、もう少し詳しく見ていきます。
<1> 邪正相争
ここでも復習から入りましょう。病因ですでに述べてあることですが、今一度邪と正について定義します。すなわち、
邪気・・・人体を侵襲して、障害を与えるものの総称。(病邪)
⇒外邪、内生五邪、病理産物、食積etc・・・
正気・・・病邪に対する人体の抵抗力。
⇒気、血、津液、臓腑がバランスをとろうとする機能。
邪気が人体を侵襲すれば正気が応対して防御のために戦いが起こります。このことを邪正相争といいます。邪正相争の結果は正が勝つか邪が勝つかの二通りしかありませんから、以下の二つに集約できます。
①正勝邪退・・・病邪の作用が消失して病理変化がもとにもどること。
②邪盛正衰・・・病邪の勢いが盛ん、もしくは正気が弱く正気が消耗してしまって悪化すること。
正勝邪退の時、邪正相争があまりに激しかった場合、病邪が駆逐されても陰陽のバランスが崩れて(気虚などが生じます)しまうことがあり、これを邪退正虚といいます。
<2>陰陽失調
まず、陰と陽について復習します。中医学では人体はもとより、自然界はいろいろな部分で陰と陽の2つの側面からバランスを保っていると考えます。で、人体では陰液(血、津液、精)と陽気(気)がバランスをとっています。基礎理論の焼き直しになりますが、陰陽の関係は
①陰陽互根・・・陰液と陽気は不可分で互いに依存していること。
②陰陽制約・・・陰陽は臓腑の機能を通じて互いに制御し合っていること。
③陰陽消長・・・陰陽が一定の範囲内で動的な平衡を保っていること。
④陰陽失調・・・陰陽消長の範囲以上の変化により回復困難な状態。
となっています。この章のメインは④の陰陽失調です。
陰陽失調は
(Ⅰ)陰陽の偏衰
⇒陰液か陽気が不足した状態(虚証)
(Ⅱ)陰陽の偏勝
⇒病邪が侵入して邪の特性を発揮した状態(実証)
に分けられます。
(Ⅰ)の場合、機能が滞り物質が足りなくなるので血お、痰飲などが生じます。(Ⅱ)の場合では、次第に陰陽偏衰が生じます。
ここまで読んでみて、陰陽失調と邪正相争は分けられるのか?という疑問を持つ方もおられると思います。実は、人体が病気になるときは必ず陰陽失調により崩れたバランスと邪の合わせ技によるものなのです。ですから、上の(Ⅰ)と(Ⅱ)は常に虚実挟雑という形で同時に存在しますし、そのときに邪正相争も起きます。ただ、メインが虚にあるのか実にあるのか、外からの邪による外感病的な要素が強いのか内部のバランス異常の内傷雑病的な要素が強いのかは弁証をする上で非常に重要です。ということで一応分類した体系は覚えておいてください。
<3>外感病の病機
基本的な病機、病因についてはすでに見ましたのでここでは外部の邪がいかに病気を引き起こすのかを説明します。
外感病の場合、病気の原因となるものは六淫(風、寒、暑、湿、燥、火)だったことは覚えていると思います。六淫は六気(五気に暑を足したもので正常な季節の変化で現れるものです)の異常によって生じます。もしくは、人体の側の防衛能力の低下などでほかの人にはなんでもないことが六淫となって襲い掛かってくることもあります。(気虚による衛気不足などです)
六淫の侵入経路は主に皮膚、粘膜、毛穴などの体表、呼吸器などです。体表や呼吸器は肺が司るので、肺の異常は外感病の引き金になりやすいといえます。
外部から来た邪はまず第一防衛線である衛気を突破します。ついで皮下に入り、各臓器の機能障害を起し、津液の障害、血の障害と続きます。これを、衛気営血弁証ではそれぞれ衛分証、気分証、営分証、血分証といいます。詳しくは弁証の分野で学んでください。
外感病では邪がいったいどの部分にいるのかが処方の上で非常に重要になります。
<4>内傷雑病の病機
この場合は内生五邪が原因になります。病因論で詳しく述べてありますが、内風、内寒、内湿、内燥、内熱が原因となり病態を引き起こします。これらが生じるのは気血津液の過不足によるもので、たとえば脾気虚により水分代謝が上手くいかなくなって内湿を生じたりします。
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