リータ・パティス(C)
基本情報
種族 人獣
名前 リータ・パティス
ジョブ アタッカー
召喚コスト 50
<タイプ> 暗技
タイプ アサシン
HP 500
ATK 100
DEF 70
覚醒
超覚醒
アーツ
CV 中村 知子
備考 人獣〔リヴァイ〕との同時登録不可

アビリティ
召喚 なし
覚醒 なし
超覚醒 双影斬
ダッシュアタックに必要な移動距離と移動速度が下がる。
さらに、ダッシュアタックの距離と速度が上がり、敵ユニットに与えるダメージが上がる。
最近修正されたバージョン Ver3.511 [2017.03.07]
+エラッタ前のステータス
閉じる
Ver3.200~Ver3.309
名前 リータ・パティス
種族 人獣
ジョブ アタッカー
召喚コスト 30
<タイプ> 暗技
タイプ アサシン
HP 400
ATK 30
DEF 50
覚醒
超覚醒
アーツ

アビリティ
召喚 なし
覚醒 ハイスマッシュ
敵ユニットにスマッシュアタックを当てたとき、敵ユニットに与えるダメージが上がる。
超覚醒 クイックスマッシュ
スマッシュアタック後の硬直時間が短くなる。

ステータス
状態 HP ATK/DEF
召喚 500 100/70
覚醒 550 120/90
超覚醒 600 200/170

DATA・イラスト・フレーバーテキスト
+Ver3.2
Ver3.2
身長 目撃者なし 私とあの人との契約は、あの時をもって終了した。
あの人が一人で扉の向こうへ行った「あの時」に…
けれど、私はあの人に言っておいた筈だ。
「アサシン」の顔を見た者には二つの道しかないと…。
契約が終了した以上、私の顔を覚えている者を
そのまま放置する訳にはいかない。どこにいようと必ず見つけ出す。
そして…もう一度、あの時と同じ言葉で問おう。
『私を雇うか、私の標的になるか、どちらかを選べ』と……
もう一度雇うと言うのならば…まぁ、少しくらいは割り引きして
あげても良いかもしれない。しかし、標的となる事を選ぶのであれば…
そうだな、私を人間にしてくれた責任を取ってもらおう。
「アサシン」という名も無き道具だった私に、本当の名前を思い出させ、
リータ・パティスという一人の人間に戻してくれた責任を。
だから絶対に見つけ出してみせる。
「アサシン」は、狙った標的は必ず仕留めるのだから。
体重 羽毛より軽し
最高速度 夜風より疾し
前の雇い主 紅蓮の王
現在の標的 紅蓮の王
特技 気配遮断と無音歩行
イラストレーター 麻谷 知世
+Ver3.3
Ver3.3
身長 目撃者なし 男は、膝から崩れ落ち、そのまま動かなくなった。
リータは、男が握っていた剣を見て顔をしかめる。その剣の刀身が鈍くぬめっていたからだ。
それは決して雨水に濡れたからではなかった。――毒…か
男が抜いた時には気付かなかった…湿度に強く、刀身に
余計な照り返しを生まない潜入用…こんな毒を使う者は…。
リータは男を仰向けにして、身体を調べ始めた。
一介の傭兵や物取りにしては、無駄な筋肉がそぎ落とされ、鍛えら
れすぎている。単純な力ではなく、長年技と速さを追及し
た細くしなやかな針金のような鍛え方。
――ギルドか…まさか ここまで追ってくるとは…
ギルド――リータがかつて所属していた暗殺者集団。この男はその構成員で間違いなかった。
そいつがここにいるという事は…リータは周囲を見渡し、目撃者がいない事を
確認すると男の死体を担いだ。カツン――死体から何かがこぼれ落ちた。
――銀の…メダイユ…
それは、リータに過去の忌まわしい記憶を思い出させた。
――相変わらずいい趣味をしている…アイツもこちらに来ているというわけだ。
ならば、追いつかれる前にできるだけこの場所から離れるとしよう…
私は、あの人に会わねばならないのだから。
冷たい雨の中を駆けながら、リータはアイツ――「追跡者」の冷酷な瞳を思い出していた。
体重 羽毛より軽し
最高速度 夜風より疾し
武器 双月剣
かつての所属 ザフー教団暗殺者ギルド
かつて欲した「証」 銀のメダイユ
イラストレーター naked
+SP
VerSP
身長 167.7[metter]
体重 測った者は消え去った
かつての同僚 エラン
導きの師 ミネルバ
興味あるもの ジグラト携帯食糧
携帯食糧の感想 私は7号派…かな
イラストレーター 前屋 進
フレーバーテキスト

special past episode1
◆暗殺者たちの夜 『花の名』◆

「ずるいわ。さっきのは私のなのに……これじゃ今回もまた63号に取られちゃう」
そう口を尖らせる少女をなだめるように、63号と呼ばれた、皆より頭一つ背の高い少年が言った。
「88号がせっかちすぎるんだよ。相手に気付かれてから殺してちゃ暗殺にならないだろ?」
夜闇にまぎれ、町を駆ける四人の少年少女。
彼らの黒い外套に一様に描かれた“天使の羽に包まれた短剣”――それは、この大陸に古くから巣食う闇、暗殺組織ジグラトの紋章だった。
「仕方ないじゃない。63号達と違って私と72号は『イレイカ』だもの……見つかり易いし絶対不利よ。72号もそう思うでしょ?」
「うん……でも、88号はすぐに武器出しちゃうから……もっと相手を引きつけてからじゃないと……」
72号と呼ばれた巻き毛の少女は困ったように笑って答える。
「そうかしら? 72号は待ちすぎだと思うわ。今日だって結局警備の人に抵抗されて、腕を少し斬られちゃったじゃない」
63号は、食い下がる88号から話をそらすように一番背の低い少年に語りかけた。
「でも今回は84号に助けられたな。さすが噂の新人ラ・84号ってわけだ」
訓練生の二つの兵種――遠殺や静殺専門のライヒル、攪乱と近殺専門のイレイカ。少年は今期84人目のライヒル――だから、ラ・84号。
「そうね。あの時の投剣……あんな遠くから当てるなんて」
「あぁ、助かったよ。あの猫には可哀そうなことをしたけどな」
「………」
しかし、84号は二人の言葉に返事をすることなく、じっと前を見つめたままだった。
「何よ、84号。せっかく褒められてるんだから、なにか言ったら?」
「いいさ。きっとあの時殺した猫のことを気にしてるんだよ……84号は優しいからな」
「今日殺したカンリョーは悪い人だって先生が言ってたけど、あの猫は悪くないものね……」
「仕方ないんじゃない? あそこで飛び出されてたら、私たちが隠れてるのばれてたわけだし。それに――悪い猫じゃないならきっと『神様の国』に行けるわよ」
88号が明るく笑う。
そんな3人をよそに、84号は、夜闇の中に隠れたいとでもいうかのように、月明かりにうっすらと反射する紫銀色の髪を外套のフードで覆い隠し、呟いた。
「……でも かわいそうだった。たくさん血が出て…」
石畳に軽く響く、四人の足音だけを残して広がる静寂――。
63号は、84号の頭をポンと叩くと、民家の軒先に積まれた短い薪を一本抜き取って差し出した。
「ほら84号、こないだ教えたろ? やってみな、少しはマシになるから」
84号は下を向いたままコクリとうなずき、そっと薪を懐にしまった。

ジグラトの地下訓練所――居並ぶ数十名の訓練生の前に立つ赤いローブの人物が、優しげな声で皆に語りかける。
「みなさん、今日も良く頑張りましたね。あなた達のおかげで世界はまた一つ理想に近づきました。それでは今回の優秀者を発表します」
訓練生達の顔が緊張に包まれる。
「今回は7組の63号と84号です。おめでとう」
室内に消沈のため息と称賛の声が広がる中、やっぱりか、と顔を下に向けた88号が、ローブの人物の前に進みでる。
「先生、私も結構やれたと思うんですけど……」
「フフ 監視者はしっかり見てましたよ。あなたは焦らず周りをよく見てから行動しなければなりませんね」
「ちぇっ」
88号が口を尖らせる。
そして『先生』は、63号と84号に、うやうやしく取り出した銀色に輝くメダイユを手渡した。
ジグラトの訓練生は、メダイユを5つ集めることで一人前と認められる。84号は初めて受け取るそれを、少し蝋燭の光にあててキラキラとさせてみたが、特にそれ以上の興味は示さずにポケットにしまった。
一方、63号はメダイユを大事そうに両手で握り締めていた。
「……あとひとつだ」
そして、両手の中の輝きをじっと見つめる。
「あとひとつで……そうしたら……」

その夜、4人は部屋の窓の鉄格子から覗く、すでに中天を過ぎた月を眺めながら話しをした。
「あとひとつメダイユを貰ったら、63号は壁の外にいっちゃうのね」
寂しそうにつぶやく88号。
一人前と認められた訓練生は、この壁と乾いた砂漠に囲まれた町を出ることを許され、外の世界で経験を積み、いずれ真のジグラトの戦士となる「最終試験」を受ける権利を得るのだ。
「そうだな。でもすぐに新しい子が来て、また4人に戻るさ」
憧れと寂しさを綯い混ぜた話題に沈黙が落ち、重い空気を晴らそうとするかのように72号が新たな話題を振る。
「みんなは、壁の外に出たら何したい?」
薄暗がりの中で、63号の表情が少しだけ強張った。しかし、すぐに普段の様子に戻り、柔らかな声で答える。
「そうだな……世界中、色んなところを見て回りたいかな」
「あ、じゃぁ私も一緒にいくわ。私もメダイユ集めてすぐにここを出て見せるから、待っててよね」
「はは、88号が一緒だったら賑やかそうだな」
「72号はどうなの?」
「あたしは……たくさんのお花を見てみたい」
「花? 花って、あのたまにちょこちょこ生えてる小さくて白いやつ?」
「うん。ここは渇いた土地だから、花っていうと町で見かけるあれしかないよね。けれど、壁の外にはいろいろな色や香りの花があるんだって。あたしは失敗ばかりだから、いつ出られるか分からないけどね」
「花ねぇ……84号は……さっきから何してるの?」
見ると、84号は月明かりを頼りに、63号から貰った薪で何かを彫っていた。
それは、小さな猫の人形だった。
「わっ! かわいい! それちょうだい?」
「…いやだ」
「なによ ケチ」
むくれる88号を63号がたしなめる。
「88号、それは彼の大事な“心の儀式”なんだ。オレはここ長いからさ、そういうのも必要だって解るんだ。だからそれは彼に、な?」
「……ふーん。いいわ、63号がそういうなら」
その夜は、猫が彫りあがるまで、皆いつもより少しだけ遅くまで話をし、84号は彫り上げた小さな木彫りの猫を抱きしめて眠った。

新たな任務の日が来た。
その日、72号は先日腕に受けた傷が悪化し、高熱を出してしまっていた。
「どうする…? 任務は絶対だし…」
「……3人で……行ってきて」
弱々しい声でそう言う72号の目を見つめ、63号が言った。
「ダメだ。一緒に行こう」
逡巡する72号に、厳しい視線を向ける63号。
「……やっぱり行けない 足手まといになっちゃうもの」
「ねぇ63号、72号ひとりくらい別にいいんじゃない?」
88号の言葉に答えず、72号を見つめ続ける63号。しかし、72号は何かを避けるようにその視線から目をそらし、黙っている84号に言った。
「…そうだ、84号。よかったら……花を摘んできてくれるかな」
その言葉に、84号は何か違和感を感じたが、その正体がはっきりとせず、ただコクリとうなずいた。

その日は、やはり3人だったせいか、他の組に後れをとり、誰も「優秀者」にはなれずに終わった。

3人が部屋に戻ると、そこに、72号の姿は無かった。
「先生、72号はどこに行ったのですか?」
訪ねる88号に『先生』は告げた。
「あの子は神の国に行きましたよ。あの子の右腕は壊疽を起こしてました。あれでは崇高なジグラトの使命はたせませんからね」
呆然とする3人――。
「そっか……花 摘んできたんだけどな。でも神様の国に行けたんだから72号もよかったわよね」
しかし、63号は答えず、72号のベッドを見つめて立ち尽くすのみ――84号は、そんな63号が拳を振るわせて握る、野花の束を見つめていた。
ふと84号が顔を上げ、63号に尋ねた。
「……花は、殺しても血がでないんだね。初めから死んでるのかな?」
「……どうかな。もしかしたら、花は摘まれることがわかってるから、血が出て痛くないように初めからそうなってるのかもな」
そう言って、63号は手に持った花をそっと72号のベッドに置いた。

しばらく後、新人が補充されずにいた7組は、再び3人で新たな任務へと出ることになった。
その途中、63号がふいに立ち止まった。
ただでさえひとり足らず、急がなければ標的を見失うというのに何事かと、残りのふたりがいぶかしげに首をかしげる。
しかし、63号の顔に浮かぶ決意の表情は、今から発せられるであろう言葉の重みをありありと表していた。
「なぁ、二人とも、このまま……壁の外まで行ってみないか?」
突然の言葉に戸惑う二人。88号が気を取り直し、笑いながら答える。
「ダメよ。訓練生は外に出れないの知ってるでしょ?」
しかし、63号の真っ直ぐな眼差しは揺らぐことなく、空気を次第に緊張に染めていく。
「……それに、63号はあとメダイユひとつで外に行けるじゃない」
かすかに震える88号の声を遮るように、短剣の柄に伸びる63号の手――
「もう限界さ……それに次まで生きていられるかなんて……」
そのまま、ゆっくりと後ろに下がる63号。
「行っちゃダメ! 行ったら……殺さなきゃいけなくなる……」
63号は、音もなく短剣を抜く――瞬間、63号の足元へ放たれる84号の投剣。
その動きは、心や理性とはかけ離れ、悲しい程に自動的で――それを見た63号は、困ったような顔で笑った。
「そうだよな……オレ達はそういう風に作られてる。だから、できればメダイユを集めて一人で行きたかった」
「……帰ろう、63号」
悲しげな目で訴える84号――しかし、63号はその視線を断ち切るように短剣を構え直す。
「ジグラトは…おかしい。72号はジグラトに殺された……お前らが来る前にいた奴も、その前の奴らもみんなだ」
「63号……そんな事口にしたら神様の国に……」
「はは……72号がなんで花を摘んできて欲しかったかわかるか? 自分が殺されることがわかってたからだ。自分の死に、花を手向けて欲しかったからだ」
「でも、先生は……72号は神様の国に行ったって……」
「そんなの……行けるわけないだろ」
63号の顔が、悲しみとも笑顔ともつかない奇妙な形にゆがむ。
「……オレたちは 人を殺してるんだ」
言葉が、静寂を呼び込む。
「……仲間が死んだら悲しいだろ? 死ぬって……殺すって、そういうことだろ?」
「でも……!」
63号は哀れむような目を88号に向けた。
「なぁ、88号。なんでお前は人を殺していつも普通に笑っていられるんだ? オレは気付いたんだよ――それはすごくおかしいことなんだぜ?」
88号の瞳が大きく見開かれ、動きが止まる。
同時に、ドゥッと仰向けに倒れる63号。
見ると、その喉には冷たく光る銀の針が――二人が振り返ると、すぐ近くの屋根に、黒い外套に身を包んだ『監視者』が立っていた。

「それの言葉に耳をかすな。それは今、“異端”に堕ちた」
63号は何かを言おうとしたが、ヒューヒューと息が漏れるだけで声にならない。そのまま63号は、84号に目を向け、弱々しく自分の胸に手を当てた。
命を断ってくれ――84号には、彼がそう言っていることが解った。しかし、何度もやってきたその行為が、なぜか手が震えてできなかった。
じわりと広がる赤。63号は諦めたように地面の一点を見つめた。
視線を追う84号。
その視線の先にあったもの――風に揺れる、小さく白い、花――あぁ、どうせなら、痛みを知らない花だったらよかったのに――。
84号は目をつむり、そっと投剣を63号の胸へと下ろした。

訓練所へ帰ると、『先生』が二人にメダイユをくれた。
「なんで……」
「あなた達は、異端に堕ちた友の魂を救い神の国に送りました。これはとても尊い行いです。遥か昔……遠い土地で、私も友に同じように魂を救ってもらいました」
先生は懐かしそうに首をさすりながら言った。

その夜、二人だけになった部屋には、84号が薪を彫る音だけが響いていた。
「なんでかしら……63号が死んだだけなのに、なんだかおかしいの。私、そんなに嫌だったのかしら……?」
抱えた膝に顔を埋める88号。ふと、木を彫る音が止み、84号が何かを差し出した。
「これ…やるよ」
それは、木彫りの猫だった。88号は、ぼうっとそれを見ていたが、そっと人形を受け取ると、両手で抱きしめ、声を搾って泣いた。

その日から、88号は笑わなくなった。感情を表に出すことを憚るように、襟で顔を隠して――。

月日が過ぎ、二人の背があの少年と同じ程になった頃、二人は共に5つ目のメダイユを授かった。
「今期はあなた達が残りましたか……多くの同士が神の御元に旅立った中、あなた達だけが使命を果たす事を許されました。やはり、その紅い瞳は――」
しかし、『先生』の語る言葉を聞く二人の目には、何の感情の色も無く――。
「今日よりあなた達は獣から人へ…<アサシン>となる。掟に従い人の証『名』を授けましょう。それはあなた達の運命とジグラトの畏怖を託すもの。多くの者は強靭な武器や、伝説の魔獣から名を貰います。さぁ、好きなものを言いなさい」
しばらく考えた後、84号が小さな声で呟いた。
「……花がいい」
「――花?」
「私も…」
88号が下を向いたまま続いた。
「花がいいです…」
『先生』は少し首をかしげたものの、特に気にする風もなく儀式を続けた。
「いいでしょう。では――ジグラトの祖霊たる異邦の神・断罪の天使に捧げ名を授ける――
ラ・84号――其の名は、紫の花――アズーラ
イ・88号――其の名は、赤き花――イージア」

その夜、二人は初めてあてがわれたそれぞれ個室から月を見ていた。
一人で眺める月の光は、4人で眺めたあの日の月より、なんだかとても冷たく、悲しい感じがした。

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special past episode2

◆暗殺者たちの夜 『月の記憶』◆

「こんばんは 騎士爵様」
戦勝を祈願しての舞踏会の夜、赤い花を髪に刺した少女が恭しく会釈をする。少女の前に立つ壮年の男は、少し酔いの回った赤ら顔で丁寧に会釈を返した。
「これはこれはご丁寧に。お嬢さん、どうなされましたかな?」
「どうにも気分がすぐれず…申し訳ございませんが、どこか休める部屋に案内して頂けませんでしょうか」
「おや、こんな可憐なお嬢さんから付き添いの申し出とは嬉しいものですな。この不肖の騎士めがお供つかまつりましょう」
人の良さそうな男はにこりと笑うと、少女を連れて広間を出た。
他愛のない話をしながら廊下を歩きつつ、ふと暗がりで立ち止まる男。
男はそのまま倒れ――息絶えていた。
倒れた男の後ろには、袖より針を覗かせた赤い花の少女。その瞳は、先程と同じ人物とは思えないほどに冷たく――。
「終わったわ」
少女の声を合図に、暗がりから紫銀髪の少年が現れる。
「こちらも片づいた」
そしてさらに、栗毛の少年が一人。
「さすが『毒花のイージア』、怖ぇなぁ。そいつ、たぶん最後まで殺られたことに気付いてないぜ?」
「……ガルム、逃げ道は?」
「とーぜん確保済み。じゃ、こいつ運ぼうぜ。そっち持てよアズーラ」
三人は男を部屋に運び込むと、寝台に寝かせた。
少女は、もう何も語らなくなった男の顔をじっと見つめる。
「はは、この顔、ホント寝てるみてぇだな。これから“皇帝”と戦争するってのに、呑気に舞踏会なんぞにうつつを抜かしてるからこういうことに――!?」
突然、軽口を叩く栗毛の少年の顔に緊張が走った。
その目線の先――窓の外に現れた影に三人はかしづき、部屋に迎え入れる。影を覆う外套に刺繍された印は、“天使の羽に包まれた短剣”――暗殺組織ジグラトの紋章――影は、組織の“監視者”だった。
監視者は寝台の男の顔を覗き込み、言った。
「確かに、バローナ騎士爵だ。この者は悪商による財にてウェルトリアの爵位を買い、国を堕落させた。断罪の天使の名を持ってその罪を断ずる――祈りを」
手を合わせ、祈りをささげる三人。ほんの少しだけ、張り詰めた緊張が解けていく。
「……『最終試験』も残り二人……『聖戦』まであと僅かだ。失敗は許されない。屍を晒すことは許されない。もしもの時は全てを――神の御元へ」
三人が頷くのを見届けると、監視者は夜闇の中へと消え去った。
『最終試験』――それは、アサシンが真のジグラトの聖戦士となるための儀式。この試験に合格すれば、組織の精鋭として世界各地での単一任務を任されるようになり、ジグラトの掲げる『栄誉ある聖戦』に参加することが許される。
合格の条件は、「ひと月の間に指定された7人を仕留める」こと。
「あと二人か……すげぇよな、聖典の通り『赤い瞳の救世主』が現れたんだぜ? 俺はぜってぇ聖戦に行く! この糞な世界を俺達がぶっ潰すんだ」
熱く語る栗毛の少年と、その傍らで寝台の男を見つめ続ける少女。
「――どうした?」
紫銀髪の少年が少女に話しかけるが、返事はない。
見ると、少女は震える程に両の手を握り締めていた。
「……大丈夫か?」
少年の問いかけにハッとした少女は、二人に背中を向けて懐から何かを取り出すと、それをそっと握りしめ、背中越しに言った。
「大丈夫よ」
その手が握るものは――。
「……あとふたりね。私たちも、必ず聖戦に」
そう語る少女の目線は、吸い込まれるように、夜の闇へと向けられていた。

* * * *

数日後、三人は新たな『試験』の標的を目の前にしていた。
短剣を構え、寝室で眠る標的に近づく紫銀髪の少年――その動きが不意に止まった。
「……お迎え……かしら?」
標的の女が、目を瞑ったままそう言ったのだ。
気づかれた――廊下を見張る少女と栗毛の少年が驚いて振り向く。
「目を悪くしていて、あなたの姿は見えないのだけれど……ずっと待っていたのよ?」
女はゆっくりと身を起こし、寝台から降りる。
「私は音楽家なの……よければ最後に弾かせてくれるかしら」
栗毛の少年が舌打ちをして短剣を抜くが、紫銀髪の少年がそれを制す。意図を測りかね、紫銀髪を睨みつける栗毛の少年。
女は慣れた様子で家具を伝い椅子に座ると、鍵盤を弾き始めた。
その曲を聴いた紫銀髪の少年の指がピクリと動く。
「私は、自分の道を追い求める為に、色々なものを捨ててきてしまったの……。 だから、いつかきっとこんな日がくると思ってた……やっと、罪をあがなうことができるのね」
演奏を止めた女は、全てを受け入れるという風に両手を広げた。
女の前に立つ紫銀髪の少年――しかし、何故か少年の刃は宙に止まったままだった。
栗毛の少年が苛立ちを見せるが、やはり紫銀髪の少年は短剣を手にしたまま動こうとしない。
その様子をじっと見ていた少女が、おもむろに口を開いた。
「……早く……」
昏い部屋に響く小さな声。
「……駄目なら、私が……!」
「……あら、女の……子?」
栗毛の少年が慌てて少女の口を塞ぎ、急げと促す。それでも少年は逡巡しつづける――が、突然何かを感じたのか、窓の外をちらりと見た少年は、静かに短剣を女の胸へと下した。
少年は、ゆっくり、祈る様な姿で崩れる女を、思いつめた表情で見つめていた。
女が床に倒れる音で我に返った少女は、「ごめんなさい」と、ひとこと残して部屋を出ていく。
「チッ、二人とも今日はどうしちまったんだよ。冗談じゃねぇぞ……聖戦は近いんだ、しっかりしてくれよ」
文句を言う栗毛の少年をよそに、紫銀髪の少年は、もう一度窓の外へ睨むように目を向けた。
その視線の遠く先、夜闇に一際濃いふたつの影が揺れていた。ひとつは監視者、そして、もう一つの赤い影は――。
「……少し脆いが、良い具合だな」
赤い影の言葉に、監視者が跪く。
「『大侵攻』が起こり、『教会』の目論み通り“アレ”も現れた。さて、残るあの子らは……」
小さく笑うと、赤い影は監視者と共に、闇に溶けて消えた。

* * * *

『最終試験』、最後の標的を前にして、三人は緊迫した表情を浮かべていた。
「まいったね……俺は、なんで最後の最後で……」
標的はすぐ目の前にいた。みっともなく涙を流し立ちすくむ、ウェルトリア軍部有力貴族の男――しかし、その両脇には屈強な衛兵が二人、三人に剣を向けて立ちはだかっていた。
全ていつものように、人知れず、何事もなく終わる筈だった。しかし、標的の姿を目の当たりにした栗毛の少年が、急に表情を強張らせ、その前へと飛び出してしまったのだ。
その結果は、苦痛で歪んだ栗毛の少年の顔と、その腹部に滲むように広がる大きな赤色が雄弁に物語っていた。
赤く染まった剣を構える衛兵に守られた貴族の男は、栗毛の少年を見て酷く怯えていた。
「その髪の色……何故お前が……!」
栗毛の少年は短剣を落としつつも、傷口を押さえて立ち上がる。
「……なるほどね、お前らが変になった理由が……なんとなくわかっちまったよ」
物陰から投剣で衛兵を牽制する紫銀髪の少年。少女が声をかける。
「ガルム……!」
「わかってるさ……そうかよ、この試験で俺たちが殺して回ってたのは、てめぇらだったって訳だ……さすがジグラト……感謝するぜ」
栗毛の少年が、ゆっくり標的の方へと近づいていく。
「……失敗は許されない……屍を晒すことは許されない……」
懐に手を入れ、何かを掴む栗毛の少年。
「ちがう…駄目よ……いいえ………でも……」
少女が呟き、物陰からふらりと出ようとする。その表情は、とてもいびつに揺れていて――しかし、少女の肩を紫銀髪の少年が掴み制止する。
「うらやましいな……お前らは聖戦に行けるんだ。でもいっか……こいつを殺せるから――全てを 神の御元へ……」
栗毛の少年は、歪んだ笑みを浮かべ、手に持った黒い筒を捻った。
スンと広がる火薬の臭いが漂い、凄まじい轟音と光が広がる。

数刻後、少女と紫銀髪の少年は、男の屋敷から立ち昇る黒煙を遠目に眺めていた。
「……イージア」
「大丈夫よアズーラ……彼は、神様の国に行ったの。私達は、また二人に戻っただけ……」
遠く揺れる炎が、少女の顔に浮かぶ昏い笑みを薄く照らし出す。

「――その通りだ」
ふいに、闇の底から響くような声がした。
振り向くと、二人の後ろに監視者が立っていた。
「試練は果たされた。お前達二人は真のジグラトの戦士として認められた。時期、聖戦が始まる……次の指示を待て」
影はそれだけ告げると、闇に溶けていった。

* * * *

夜、仮屋で少女は月を眺めてた。あの日のように、あの時から変わらない月――。
「……いいか?」
部屋に現れた紫銀髪の少年が、そっと少女の側に座る。
「最終試験の標的……あれは……」
青白い光と、少しの静寂――。
「えぇ……あの人達は、私達の血縁者だったのね……中にはきっと私の両親も……」
「あぁ……ジグラトは、各地の有力者の子を買い、攫い、育てていたんだな……そしてそいつらに子供らが手ずから“裁き”を下す事で、子供達は世界との繋がりを断つ……あれはそういう儀式だったんだ」
「……そうね。でも、私はそれを確信しても、何も思う事ができないの……あなたはどう?」
「……同じだ。思い知った……やはりオレ達はそういう風に作られたんだってな。皆、ガルムのように心から組織を信じてる……ただ……」
少年もまた、月を見上げた。
「違和感があるんだ……どうしても消えない……きっと、あいつの言葉を聞いてから――63号の……」
少女の体が、気づかぬ程にびくんと跳ねた。
63号――訓練生時代、二人と同じ班にいた少年――ジグラトの狂気から逃げ出そうとし、二人が、命を奪った少年――。
「……オレは任務が終わる度にあいつの言葉を思い出す」

《――なぁ、二人とも、このまま……壁の外まで行ってみないか?》

「…オマエもそうじゃないのか?」

《――行っちゃダメ! 行ったら……殺さなきゃいけなくなる……》

「あの時からオマエは変わった……けどオレには、オマエがオマエじゃないものに壊れていってるように見える……きっとオレ達はあの日から……」
月に顔を向けたまま、黙って少年の話を聞く少女。しかし、その目に何も映っておらず――
「ずっと、考えてた……今回の任務で決心がついた」
空気が強張る――少年は立ち上がり、少女を見つめて言った。
「今度の戦乱にまぎれて――逃げよう」
「……逃げ……る」
目を見開き、一点を凝視する少女。
「私が……ジグラトから……」

《――なんでお前は人を殺していつも普通に笑っていられるんだ? オレは気付いたんだよ。それは――》

鈍重な沈黙がゆっくりと流れ、少女は懐から取り出した何かを握り、見つめる。そして目を閉じ、もう一度、月を見上げて答えた。
「ええ……わかったわ」

* * * *

遂にその日が来た。
『大侵攻』――東方より赤眼の皇帝の軍勢が、西方へと進軍を開始したのだ。
西方カルヴァーニュ地方随一の勇を誇るウェルトリア軍は、全軍を上げ果敢に応戦するも、後方より皇帝に与するジグラトの攪乱に合い、都へと押し込まれていった。
激しい市街戦の中、ジグラトの指示に従い『聖戦』に従事する二人。
次第に戦況は、ウェルトリア軍、皇帝軍、ジグラトが入り乱れる混戦となっていった。
民家の屋上で、都から脱出する機会を窺っていた少年が少女に告げた。
「……頃合いだ、行こう」
少女の方を振り向く少年――その目に、突如巨大なハサミが突き出される。
少女がハサミを蹴り上げ、間髪少年は身を屈めてそれを避ける。瞬時に距離をとる二人。

そこにいたのは、巨大なハサミをもった赤い殺戮者――ジグラトに背いたアサシンを狩るアサシン――『処刑人』だった。
並び立つ無数の鋏刃――いつの間にか、二人は幾人もの処刑人に囲まれていた。
その中心にゆらりと赤い影が浮かぶ。
「二人とも、久しぶりですね。元気でしたか?」
「…先…生?」
驚く二人に向けられた笑顔――その人物は、訓練生だった二人に暗殺の術を教え、「名」を与えた『先生』だった。
「二人とも良い成長を遂げているようですね。二人に話があるのですが……その前に――おい、主人の命令を待てない猟犬になんの価値があると思うんだ?」
冷たく言い放ち、『先生』が赤い半月刀を投げる。
それは美しい弧を描き、当たり前のように、二人を襲った処刑人の首を落とした。
固唾を飲む二人。
「アズーラ、イージア、あなた達は特別な存在です。ジグラトにとっても……私にとっても……だから、一緒に帰りましょう」
先生の合図と共に、一斉に二人に殺到する処刑人。
凶大なハサミが交互に二人に襲い掛かる。
必死に避けるものの、次第に身を削られ、二人は徐々に屋上の縁へと追いつめられていく。

その時、激しい衝撃が地面を突き上げた。
同時に、けたたましい悲鳴を上げた群衆の波が眼下の街道に押し寄せる。
「北東より巨大な化け物が……皇帝軍ごと都を飲みこみつつ近づいて来ます!」
緊迫した監視者の報告に、『先生』は「…もう来たか」と笑い、処刑人達に告げた。
「時間がなくなった。どちらか一人で構わん。バラバラにならん程度に黙らせろ――どうせ、死にはしない」
事態の急変と先生の言葉に身構える二人。
「こっちに来い!」
叫ぶ少年に、決意の表情を浮かべた少女が背中を合わせる。
再び二人に迫りくる処刑人の刃、刃、刃――そして、衝撃。
背中からふいの衝撃を受けた少年は、少女の側から弾き飛ばされ、床に倒れていた。
顔を上げた少年の目に飛び込んできたもの――それは、わざと処刑人の刃を一身に受け、無数の鋏刃に刺し貫かれて膝をつく少女。
少女は、弱々しく首を少年に向けた。
「アズー…ラ……無事……?」
追い打ちをかけようとする処刑人たちを『先生』が手を掲げ制する。
「待て……はは、あの成熟度で、なんとデタラメな……もう少し見てみたい」

「……イージア、なんでだ……」
這いつくばったまま戸惑う少年に、少女はゆっくりと立ち上がり、まるで二人の他には誰もいないかのように語りかける。
「……ごめんね。私は……あなたと違うのよ……」
少年を見つめつつも、何か別の物を見ているような少女の目――。
「私は、ただ怖くて……どうしたらいいのか……どうしているべきなのか迷っていただけ……自分の心がね、見つからないのよ。だから、どこへ逃げても……きっと私は……」 

《――なんでお前は人を殺していつも普通に笑っていられるんだ? オレは気付いたんだよ。それは――》

「63号が言ってた通りなの……」

《――それは すごくおかしいことなんだぜ》

「私は――はじめから壊れちゃってるのよ」

泣きそうな笑顔で語る少女――。
声を出せずにいる少年――。
少女は懐から取り出したものを、愛おしそうに眺めた。
「私も……63号やあなたみたいに、“可哀そう”って思えたら良かったのにね……」
それは、かつて少年が命を奪う悲しみを癒すために少女に渡した――木彫りの猫だった。
「63号や72号が死んで……こんな私が逃げて生き残ったらおかしいでしょ? それに……今度こそちゃんと逃がしてあげたいの」
「オマエは初めから……なんでそんなに自分を縛って……」
少女は木彫りの猫を抱きしめながら、もう片方の手に持った黒い筒を咥えて捻った。
「……ダメだ………ダメだ!!!」
手を伸ばし少年が叫ぶ。

――さよなら、ごめんね。

爆発――吹き飛ぶ処刑人達――爆風に煽られ、階下を流れる群衆の波へと投げ出される少年――。

数刻後――未だ収まらぬ喧騒の中、地面には、積み重なる瓦礫と亡骸を押しのけ、大きな爆発の跡が空虚な口を空けていた。
その中心に横たわる傷だらけの少女――その胸は、わずかに上下しており、そして、瓦礫の上には少女を見下ろす『先生』の姿――。
「……もう再生するか。すごいな……さて、もうすぐ“アレ”が来る。多少劣化してもかまわん。記憶の処理をしておけ」
そう監視者達に命じ、『先生』は、「これで、あの死獣が……」とひとり笑みをこぼした。

凄惨な地上の事など知らぬかの様に、空には満天の星が巡り、運命もまた廻り始める。
その中で月だけが、焼け焦げた木彫りの猫を握り締め、涙を浮かべて横たわる少女を、優しく照らしていた。

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special episode――from “Ver3.5 アルファレネゲイド/エラン”

◆暗殺者たちの夜 『存在の刃』◆

一歩、また一歩。
脚を引きずるようにしながらリータは暗い廃墟の階段を登っていった。
吐く息はまだ荒い。しかし、目に宿る光は強い。
先ほどの戦いで必殺の技を立て続けに放った所為で、すでに足の筋繊維はボロボロになっていた。
しかし、それでも行かねばならなかった。

もうあの兄弟たちの戦いは終わっただろうか…あの弟は、救われただろうか…

先ほどまで、リータは“フクロウの女神”に頼まれ、かつて聖騎士だった男を闇から救い出すために戦っていた。そして、闇の呪縛の源に楔を打ちこむと共に力尽きたリータは、男の兄に安全な場所へと運ばれ、寝かされていた。
今、聖騎士たる兄は一人、凶悪な力を手にした弟の前に立ちはだかっている。
程なく意識を取り戻したリータは、その背中をしばらく見つめ、
「――おまえなら取り戻せるよ」
そう呟くと、そっと立ち上がりその場を後にした。
きっと、もう大丈夫だろう。盾も、鎧も、身を守るものをすべて失い、それでもなお立つ聖騎士――ニールの背中は、未来への希望を雄弁に語っていた。もし、万が一のことがあったとしても、その時はきっとあの人が――今は、それより……。

リータはきつくを口を結び、階段の上を見上げた。やはり、“あの気配”がある――。
戦いの最中、リータはずっと感じていた。
視線――じっとりと舐めまわすようにリータに熱く絡みついていたそれは、彼女のみが気づくように送られ、リータを呼び続けていた。もし、この呼びかけを無視するようなことがあれば、わかっているな?――そんな強い脅迫と共に。そして間違いなく、この先にはその視線の主がいる。
くぅっ、と小さな苦鳴を漏らし足を抑えつつ、階段の上に崩れ落ちた石柱を越えると、天井が開け、眩しく大きな青色が目に入ってきた。
いつの間にか雨が上がり、岩石地帯であるこの地方特有の高く澄み切った青空が広がっている。
眼下の街からはまだ雨で燻った煙が立ち昇っており、この廃墟の屋上だけが、すがすがしい空気の漂う別の世界のようだった。
その世界にひとつ、赤黒いシミのような影があった。
影は、風に乱れて顔にかかった金色の前髪をかきあげると、その顔をよくリータにみせつけるかのようにしながら、青空に良く合うさわやかな笑顔を浮かべた。
「やぁ、久しぶりだね、“アサシン”」
リータはその姿にさして驚いた風もなく、
「おまえだと思ったよ――」
そう言って、無駄ではあろうが極力消耗を悟られないように、痛みを押し殺しながら影に近づいていった。
「――“チェイサー”」
チェイサー――追跡者と呼ばれる、かつてリータが所属していた『ザフー暗殺者ギルド』の始末屋。
“前にいた世界”で紅蓮の王の暗殺に失敗し、ギルドを追われる身となったリータは、多くの刺客を打ち倒してきた。幾人もの、アサシンを殺すためのアサシン――“処刑人”を退け、その頭目である3人のチェイサーを闇へと屠った。しかし、この左頬に傷持つチェイサーだけは倒すことが出来なかった。
幾度戦おうとも、倒すことはおろか、手傷を負わせることができたのすら、初めてまみえた時のあの頬傷ひとつのみ。むしろ剣を交える度、彼女の目に浮かぶ異常なまでの執念は燃え上がり、リータを圧倒していった。
このような異世界にまで自分を追って来るとしたら、もはやこの者を置いて他にはいないだろう。
チェイサーは、心底感慨深げな表情を浮かべてリータに微笑みかけた。
「お前なら、来てくれると思ったよ」
「……おまえにあの兄弟の戦いを邪魔させるわけにはいかないからな。それに、これは私の問題だ」
「本当に、本当に嬉しいよ。最後に逢ってからどれだけの時が経っただろうね……100年、いや、それ以上かな」
「……?」
「ああ、わからないよな……私にも色々あってね…」
リータは双月剣を手に取り、チェイサーの言葉を打ち切った。しかし、チェイサーはその所作すら愛おしそうに眺め、微笑を崩さずに尋ねた。
「それで、思い出してくれたのかな?――『リータ・パティス』」
リータは眉をひそめた。何故彼女がその名を――アサシンに調整される過程でギルドに奪われた、彼女の「本当の名前」を知っているのか。名を思い出したあと、リータはすぐに異世界へと発った。この世界においても、その名は信じられる者にしか明かしてはいない……。
「……その顔、まだ完全に、というわけではないのか?」
困惑した様子のリータを見て、チェイサーはひどく残念そうな顔を浮かべる。
「ひとつ聞かせてくれ」
「……」
「――私は、誰だ?」
「……何のことだ?」
リータの返答に、チェイサーは空を仰ぐと、目を閉じ腰の赤い半月刀を引き抜いた。
「……そうか、なら思い出してもらわなければな」
紅い軌跡が宙を走った。
リータは一歩も動くことなく、双月剣でそれを弾き返す。それを見たチェイサーは、ふんと鼻を鳴らし、ワイヤーで回収した半月刀を再び飛ばす。続けざまの斬撃を、またも動かずに対処するリータ。双月剣とぶつかり合った半月刀から赤い火花が飛び散りリータを包む。
「やはり体は限界のようだね。 ……私はね、全てを完全に“思い出した”お前を殺したいんだ。その為に、長い時間をかけて準備してきたし、多くのしかけを施した。この“赤い刃”もその一つさ――だから、早く思い出してくれよ」
三度チェイサーが半月刀を振りかぶる。
リータは自身の足に意識を向けた。もはやほとんど感覚はないが、あと一度の『双影斬』を放つことなら――その後は立っていることすらできなくなるだろう……機会は一度、逃すことはできない。
リータはチェイサーの動きに注意しながら足に力を込めた――が、それはピクリとも動かすことが出来なかった。
「……!?」
「ああ、ごめんよリータ。“それ”はお前の体の所為じゃない。私のこの『服従の赤い枷』がお前の技を封じているのさ」
チェイサーの言葉にかぶせるように飛来する半月刀。今度は間に合わず、赤い軌跡がリータの両腕を削る。
「…ぐっ!」
その時、リータの頭の中に、何かが入ってきた。血煙のように広がる紅いイメージ――。
「どうだ? 何か思い出したか? …そうだ、お前はアサシンだ。ザフーの恐怖の象徴だ。いつの間にか、アケローンを救った紅蓮の軍団のひとりを気取っていたようだが、お前の手は何色だ? 血の赤が見えるだろう? ほら、もっと思い出せよ…お前の根源を!」
更なる赤い刃がリータを襲う。致命傷を与えることなく軌跡が体を削っていくと共に、リータの脳裏にイメージが流れ込む。
紅い光――それは、かつて奪ってきた命だ……顔……たくさんの顔、顔、顔。
リータはチェイサーを睨み付けた。
「チェイサー…刃に何を仕込んだ…?」
チェイサーはリータの問いかけに、さも愉快そうな笑みを浮かべる。そして攻撃の手を止め、手に持つ赤い半月刀をぶらりと揺らしリータに見せつけた。
「ふふ、この刃の“紅”はね、アルカナ――『紅蓮の力』の紅なのさ。なぁリータ、お前はどうやってその名を思い出した? ふと、自然に思い出したのか? それとも、あの『紅蓮の王』との絆のおかげだとでも? ……それは違うよ。大きな勘違いだ」
「……何を…」
「ギルドの封印術は完璧だよ。あれは“忘却”というよりは“消滅”だ。私もこの世界で見よう見まねで試してみたが、あれ程の完成度には至らなかった。普通なら、あの記憶の封印は、たとえ死んで不死種へと身を変えても蘇ることはないだろう。そんな封印を破り、なぜお前は記憶の一部を取り戻せたのか――」
チェイサーは鈍く真紅に光る刃をつつぅっと指でなぞる。
「それは『紅蓮の力』に触れたからに他ならない。あの『紅蓮の王』の再生の力が、お前の失った記憶をも再生させたのさ」
「……!」
「だから私はこの世界でそれを探し続けた…ジグラトなんて組織を作ってね…そして見つけた。私は“そいつら”の『紅蓮の力』を目覚めさせ、吸い取り、この赤い刃に宿した。この刃に身を削られる度、お前に紅蓮の力が流れ込み、封印が破壊される度、お前の記憶は再生されていく――さぁ、早く思い出せ」
嵐のような攻撃が再開される。
「何故……そこまで私にこだわる……」
「それを思い出せといっている――さぁ、“私は誰だ?”」
リータの四肢を刃が通り過ぎるたび、頭に紅い瞬きがはじける――幼い頃、暗い地下の訓練場――優しく、恐ろしい司祭様の顔――キラキラした銀のメダイユ――そして試験――試験の時、誰かが隣にいた――そう、あの時――。
「……そんな…オマエが…」
身を削る赤い斬撃の嵐の中、リータは目を見開いた。

その時、赤い半月刀が空中で弾かれた。

チェイサーはそれをワイヤーで引き寄せ、
「……相変わらず、背後を取るのが上手いですね。しかし今、私は忙しい、用事なら後になさい――」
そう妙に丁寧な口調で言うと、細めた流し目を背後に送った。
チェイサーの背後に、いつの間にか新たな赤い影が立っていた。
「――イージア」
チェイサーはそう、赤い影の名を呼んだ。
「――探しました、『先生』」
赤い影――イージアは、構えた短剣をピタリとチェイサーの背に当てていた。
同時に、場の空気がざわりと揺れる。
柱、壁の上、岩陰、あらゆるところに乱立するさらなる影、影、影。その手に握られた巨大な鋏――無数の処刑人が、廃墟の屋上を取り囲んでいた。
「――チッ…」
しかし、子飼いの助勢に対し、苦々しい表情を浮かべたのはチェイサーの方だった。
壁上の処刑人達の一角、その十数名がゆらりと体を揺らすと、皆呆けた顔を浮かべ、次々に壁の下へと崩れ落ちていく。
見ると、処刑人達が立っていた場所の空間が歪み、翼も、体も、何もかもが漆黒の巨大な天使の姿が浮かび上がる。
≪クックック……汚らしい…黄金の輝きひとつ感じぬ、知恵のない魂だ。こんな塵は、後で地獄にでも捨ててこようかね≫
笑う堕天使と、その足元に無言で立つ男の姿を見て、チェイサーは眉根を寄せた。
「<サマエル>とは、ずいぶんな使い魔を手なずけたものですね――アズーラ」
イージアとアズーラ、二人の姿を確認したリータは、ふぅ、と息をつき、イージアへと顔を向けた。
「助かりました。マスター・イージア」
「あなたが『レムギアの牙』を離れてひとりになった時、この人はきっと姿を現す――あなたの言った通りだったわね、リータ・パティス。危険な目に遭わせて悪かったわ」
「いいえ、私が言い出したこと…ですから……」
ふいに力が抜けたように倒れ込むリータを、いつの間にか側にいたアズーラが支える。
「なるほど……追われていたのは私の方だったというわけか」
チェイサーは、両手に構えた半月刀を下ろした。
「それでふたりとも、私に何の用ですか? 繰り返しますが、私は今忙しい。お前たちの相手は後にさせてもらいたいのだがね」
チェイサーは背に突き付けられた短剣にまったく動じることなく、ゆっくりとイージアの方を振り向いた。
警戒したアズーラが静かに投剣を手に取る。
イージアもまた、冷静に短剣の切っ先を上げ、チェイサーの喉元へと当てる。
「先生、あなたを探していました――あなたはジグラトを皇帝軍に売り、姿をくらました。私はその理由を知りたかった――先生がリータに語ったこと、それが全ての理由だったのですか?」
「ふぅ、聞いていましたか……そんなことを聞くために、この“聖なる邂逅”の邪魔を? 」
「……答えてください」
チェイサーは目を閉じてもう一度ため息をつくと、すまし顔の仮面をはずし、凶悪な笑みを浮かべた。
「答えを聞かなければ解らないのか? それとも“違う”とでも言って欲しいのか? まったく、いつまでたっても自分で物を考えようとしない木偶だ……まぁ、そのように造ったのだがね」
チェイサーは喉元の短剣を指で挟み押しのけると、イージアの顔を覗き込むように顔を突きだした。
「その、通りだ」
イージアの短剣を持つ手に力がこもる――が、チェイサーはわずか二本の指でそれを抑え込む。
「お前の命を幾度も削り、その度に漏れ出る紅蓮の光をこの『赤い刃』に浴びせ続けた。質…というのかな? それでも足りなかったのでね、直接あの皇帝陛下のアルカナを譲り受けることにした。皇帝にジグラトを売り込むのに、お前の<死獣>はずいぶんと役に立ったよ。おかげでこの通り、“完成”した」
チェイサーがもう一方の手で、半月刀をちらつかせる。
「では、私たちの信じた『聖戦』は……世界を作りかえるジグラトの理想は……」
「……本気で聞いているのか? そんなものは……いや、恥ずかしながら告白すると、初めの内はそれも面白そうだと思ったのは確かだがね。でもね、よくお聞き、イージア。お前も、ジグラトも、今日、この日のために造った道具なのだよ――だから、道具らしく、先生の邪魔はやめなさい」
チェイサーの言葉に、イージアがぎりりと強く歯を噛みしめる。
「あなたは……あなたを信じて死んだガルムや――63号たちにも同じ言葉を投げるのか?」
「63号……何の63号だ? 覚えがないな」
瞬間、イージアから峻烈な怒気が弾け、神速の短剣が舞った。しかしチェイサーは半月刀で難なくそれを受けると、その勢いのまま間合いの外へと飛び退る。
「マスター!」
痛む体を押して立ち上がろうとするリータをアズーラが止める。
「…一人でやらせてやってくれ。これは、あいつにとって必要な戦いなんだ」
じりじりと間合いを測りながらチェイサーと対峙するイージア。しかし、かつての弟子に後れを取るなどとは露程も思っていないのか、その笑みは崩れない。
「私は……私たちは命を賭してあなたに従い続けてきた……」
「当然だろう? 私はお前たちの“創造主”だ」
チェイサーの言葉と同時に、イージアは呼吸を止め、赤い閃光と化し一気に間合いを詰める。
軌道を読ませない、体を捻りながらの短剣左右連突――しかし、それを全て半月刀で受けきられると、膝を突き上げて相手の腕ごと守りの半月刀を跳ね飛ばす。そのまま後方に回転しながら、もう一方の脚で顎へと蹴りを見舞う――が、それも笑みと共に、わずかな動作でかわされてしまう。
しかしイージアはその所作を確認するや否や、軽く足首を倒し、チェイサーの顔面へとつま先から仕込み針を撃ち出す――これは仕留めたか――だが針は、笑うチェイサーの歯にがちりと噛み止められていた。
再び間合いを取るイージア。
チェイサーが、咥えた針を吐き捨て、口を拭う。
「さすが、元『イレイカ』だな。だが、所詮は全て私が仕込んだ技だ。お前では無理だよ」
そして、高々と片手を上げると、沈黙を守っていた処刑人達が立ち上がる。
「さぁ、もういいだろう。“邂逅”の続きをさせてくれ」
勢いよく振り下ろされる腕を合図に、処刑人達が一斉に壁から飛び降りる。
邪魔はさせないとばかりに、アズーラが瞬息の間に無数の投剣を放ち、空中の処刑人たちを次々と撃ち落とす。さらに、サマエルが黒い嵐となってそれらの魂を奪い去る。
しかし、既に人としての心を失っているのか――いや、もう既に人ではないのか――彼らはどのような傷を負おうと、仲間がどれだけ倒れようとも、恐れ、怯むことなくその屍を踏み越えて、止まることない洪水のようにイージアへと襲い掛かっていく。
次々と迫りくる処刑人達に巧みな体術で抵抗するも、数には勝てず、次第に押しこまれてチェイサーと引き離されていくイージア。
チェイサーはその様子を満足げに眺めると、リータの元へと歩きだす。
「リータ……やっとお前に逢えたんだ。全てを思い出したお前を……お前の中の、穢れる前の私の――“ぼく”の記憶を殺させてくれ。そうしてやっと、ぼくは何者でもなくなるんだ……そうでなくては……それを、誰にも邪魔させるものかよ」
その時、イージアに向かって行った処刑人達の流れが止まった――次いで、紅い衝撃が廃墟を揺らし、大量の処刑人達が吹き飛ばされる。
一同の視線がその中心へと向かう。
見ると、そこに立ち、ゆっくりチェイサーの元へと歩くイージアの左目は、爛々と紅い輝きを放っていた。
「…まずいな…」
アズーラは、動けないでいるリータを抱えると、サマエルを一瞥する。
≪チッ、あの“冥府馬鹿”か… 助けがいるなら口に出して言えと言ってるだろう、アズーラ≫
そうごちると、サマエルは急ぎリータごとアズーラをひっつかみ、空中へと飛翔する。
気炎を纏い、ゆっくりと歩き来るイージアの赤い瞳を見て身構えるチェイサー。
「……あの状態でも“呼べる”のか。以前なら……少し、油断が過ぎたかな……」
おもむろにイージアが立ち止まり、すぅっと息を吸った――

「プルートーーーー!」
バウンと空気が爆発した。
処刑人達を跳ね飛ばして出現する巨大な蒼い光。その光が象徴するものは地上に現れし冥府――蒼き、死獣。
「ゴアアアアアアアアアアアア!!!」
死獣が吠え、その体から全ての命、全ての現世を腐らせる蒼い瘴気が放たれる。
倒れた処刑人達の体が腐り落ち、廃墟の壁、床、石柱までもが、死獣を中心にドロドロに溶けはじめる。広がる崩壊は廃墟全体に広がり、轟音と粉塵を巻き上げて崩れ落ちていく――。

* * * *

溶け落ちた瓦礫の山と化し、静寂に包まれた廃墟の中で立ちすくむ死獣は、奪う魂がほぼなくなったことを確認すると、つまらなそうに鼻をならし、蒼い燐光を残して消え去った。
廃墟に残った影はひとつ――その側に、サマエルに掴まれたアズーラとリータが降り立つ。
「無事か……イージア」
「……えぇ」
イージアは地面を見下ろしていた。
その視線の先にあったのは、半身に瘴気の光を浴び、動けずに横たわるチェイサーの姿――。
チェイサーもまたイージアを見上げ、無様なかっこに似合わぬ笑みを浮かべる。
「ふん……成長…したな……イージア。それで、お前は私に何を望む? 私を…どうしたい…?」
「私は……知りたい。私の……ジグラトに育てられた私たちの、意味を」
「……意味、だと……?」
チェイサーは首を傾け、少し遠くに立つリータをしばらく見つめたあと、目を閉じた。
そして――
「――何の意味があるものか!!」
――叫んだ。
その声は、崩れた廃墟に響きわたり、その凄烈さは、瞬時、その場にいる者たちの心臓を掴み、締め上げた。
「私たちに何の意味がある!! ギルドも、ジグラトも関係あるものか! 何の統一性も無く、所詮は生まれ育った環境で、心も、記憶も、何もかもが書き換わってしまうような不安定な生物だ! そんな者たちの意志にも、正義にも、倫理にも、理性にも、まったく意味などない!!」
チェイサーの叫びが木霊し、遅れてやってきた静寂の中に、彼女の大きな呼吸だけが音を残す。そしてチェイサーは、胸を上下させながら穏やかに言った。
「いいかイージア……人の意味なんてものは、全て“そうだといい”という、あいまいな希望から生まれるものなのだよ。全ては“存在を許されたい”だけの言い訳だ……だから皆居場所を求める。ただ誰かに“存在していい”と言われたいが為だけに、自分の置かれた環境に従った生を尽くす……惨めだが仕方がない……それが我々の本質だ」
イージアは、熱に浮かされるように語り続けるチェイサーをじっと見つめる。
「……だがね、私はギルドに造られ、皆が全てを忘れていく中、記憶を持たされた。はなから誰とも同じになれず、同じになれなかった者を消すためだけに存在し続けた。唯一同じであるはずのチェイサーたちも、お互いがお互いを殺すための存在だった……私は、誰とも違う“壊れもの”さ……孤独だったよ。そうして、ギルドにすら裏切られて、自ら死ぬこともできぬ体を与えられたまま異界に流され……100年……100年だ……この100年の孤独がお前らに理解できるか? こんな孤独に……意味などあると思うか?」
遠く立つ、リータの拳がぐっと握られる。
「私は、ただ私を知る誰かに存在を許して欲しかった……しかしそれは叶わなかった……そのうち、私自身すら“壊れもの”である自分を許せなくなった……自分が“壊れもの”だという記憶を消さなければ、私は私を否定し続けるしかない……そうじゃなくては生きて……いられない……」
イージアは膝をつき――
「それが、“あなた”なの……?」
「……そう……“ぼく”だ……」
――そっと目を伏せて短剣を握った。
「……そう……あなたは私と同じ――なら、私が……」
そして、ゆっくりとそれを振りかぶる。
その様子をアズーラがじっと見つめ、リータが一歩、足を踏み出す。
イージアの視線はチェイサーから動かない。短剣に力が籠められる――

しかし、その手は振り下ろされることなく、イージアはそっと短剣を下ろした。
「……いいえ、違ったわね。私は――もう誰かに存在を許されているもの」
そう言って立ち上がると、「先に行くわ」とすれ違いざまにアズーラに目をやり、廃墟の外へと歩き出す。
その姿を見てホッと安堵の息をつき、アズーラに頷きかけるリータ。
アズーラもまた、リータに頷き返すと、チェイサーの前へと立ち、
「先生、オレたちは行きます。この戦いの終わりは近い。オレは、あなたにさえ会わなければ……ずっとそう思っていました。でも、あなたに出会ったから、あいつの心を救うことができた……何故か、そうも思えます」
そう告げて、イージアの後を追うように去った。

残されたリータは横たわるチェイサーを見つめ、無言で立っていた。
チェイサーもまた、何も語らず、空を見上げ続けた。
しばらくして、リータはチェイサーの側に立つと、双月剣の片方を、そっとその傍らに置いた。
「おまえも私も、アサシンとして多くの命を奪った。その罪は決して消えない。だからいつか、例えおまえの手でなかったとしても、私はこの命でその罪を償わなければいけならないのだろうな――ただ、それはもう少し先であって欲しいと思う。私は、“あの人”を救いださなければならないんだ。それまでは――」
そう言って、リータもまたチェイサーに背を向け歩きはじめる。
「………」
全てを吐き出したチェイサーは気力を失ったように、ただぼうっと双月剣に映る、痛む足を引きずり歩くリータの後ろ姿を眺める。
ふと、その姿がピタリと止まった。
「追ってこい――エラン。私が生きている間は、お前の存在は私が覚えているよ」
そして、双月剣の中のリータは姿を消した。

薄い煙を上げ、チェイサーの傷が再生していく。
しかし、もう彼女は立ち上がろうとはせず、ぼろぼろの両手で顔を覆うだけだった。
「ふぅ……ふぐぅうっ……」

そうしてひとつの戦いが終わり、星が瞬き始めた空には、ただ存在を取り戻した追跡者の嗚咽だけが響いていた。

――fin

考察
元々は30コスト荒らしユニットだったのだが、排出停止となったリヴァイの代用として50コストアタッカーにエラッタ。
ステータスはリヴァイと全く同じ100/70(超覚醒200/170)に変更され、アビリティの「双影斬」も名前自体は違うが内容はリヴァイの「人類最強の兵士」と完全な同効果。
その為、リヴァイとは同時登録不能となっている。称号やゲストBGMの有無、好みで使い分けよう。

運用法においてはリヴァイの項を参照。

Ver3.511 [2017.03.07]にて、「双影斬」の追加ダメージ値が、固定25から固定30へと上方修正された。

キャラクター説明
かつてアケローン大陸に存在するザフー教団暗殺ギルドに所属していたアサシンの一人。
薬物で記憶を消されたため自分の名前すら忘れてしまうが、やがて自分の真の名前を思い出す。
名前を思い出すきっかけとなった前作の主人公を探し、レムギア大陸に移った。

何とはいわないが非常に豊かで、よく 揺れる ことでLoVプレイヤーにはお馴染みの使い魔。
今作でもそれは健在である。

Re:2ではアサシンとして登場せず、武装を魔改造した【魔装】アサシンとして参戦。
3ではこの魔装を脱いでいるが、元々ファミ通のオリジナルカードを作る企画で生まれたものであり、
カードのDATAやフレーバーテキストの厨二くさい語りは彼女ではなく「リプ斉トン」氏によるものだったらしい。

関連カード


+編集用コメント *編集が苦手な方はこちらへ情報提供お願いします
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