• 「こんばんは、良い夜ね」
    その夜、月読命は自らの元を訪れた若者へ、高岩の上から振り向きもせず告げました。片目に朱の差したその若者の驚いた様子に、月読命はくすくすと笑います。
    「あなたがここに来ることはわかっていたもの」
    紅蓮の双眸を持つ皇と、その謀りを阻まんとする若者のことは、月読命にとって既に知るところでした。ならば、と期待する若者でしたが、ふわりと岩から降りた月読命は目を閉じて首をふりました。
    「ごめんね。世の行く末なんかに興味はないの。だって私は、お月様だから」
    私はそこに、ただ“在る”だけ――月読命は語ります。
    「月光は狂気の引き金。象徴は幻惑と不安定。私が善き世のためにできることは、“何もしない”こと――」
    だから弟で退屈を紛らわすのよ、と月読命は笑います。
    「だからそういうことは姉様か、愚弟にでも頼んでちょうだい」
    そう言った月読命がほんの少しだけ寂しげに見えたので、若者は月読命にある言葉を告げました。
    すると、月読命は驚いた表情で振り返ります。
    「…今のはちょっと嬉しかったから、少しだけ力を貸してあげる。“紅蓮の双眸”ってやつのことも、ちょっとは気になるしね。でも…」
    月読命はそう続けながら、若者の口元にそっと人差し指を添えました。
    「あんまりお姉さんをからかっちゃダメよ。でないと――本気にしちゃうんだから」

    ~『紅蓮古事記』 其の拾壱の②~
    身長
    見下ろす側よ
    体重
    死にたいの?
    最高速度
    月光のごとく
    人の世
    不干渉

    泳がせ中

    最近見かけない -- (名無しさん) 2016-04-19 00:13:26
  • 3.5フレーバーです。
    旅を続けてどれくらい経った頃か、朧雲に三日月の浮かぶ夜、杯を手にひとり物思いに耽る月読命へと、若者は声をかけました。

    貴方と旅を続けてきたが、近頃の貴方は何か深い考え事をしているように見える、自分でよければ話してほしい――と。

    そろそろ潮時かもね――月読命は、そうぽつりと呟くと、若者の方に向き直りました。

    「――それじゃ、教えてあげちゃおっかな」

    月読命は、杯を一気に傾けると、ふぅ… と桃色の吐息を夜空へと吐きました。そして、その“中”に手をのばすと、よいしょ、と何かを引き出しました。

    それは、何度も読み込まれたようにぼろぼろになった、一冊の書でした。

    「これは『紅蓮古事記』――歴史を紡ぐ者によって記された、神々のお話よ」

    月読命が差しだしたそれを受け取ると、若者は時間をかけ、丁寧に目を通しました。

    望まぬ婚儀から逃げ出した神の話や、あやしげな皇に進んで力を貸すことに決めた神の話など、そこには数多の神々にまつわる話が物語のようにつづられていました。

    「これは、物語であり、神々の記録でもあるの――ある人に頼んで私が作らせた、ね」

    なにゆえにそのような――若者の疑問に、にこりと笑って見せた後、月読命はいつになく真剣な面持ちで告げました。

    「――“禍津神”を見つけるためよ」

    月読命は語りました。

    神々の系譜からいずれ生まれるとされ、世に災厄をもたらす“禍津神”についてのことを。そして、禍津神へと変じるのが何者であるかを特定すべく、長い時をかけ、神々を観測し続けたことを。

    「驚いた? 私だって真面目になるときもあるのよ」

    顔に出てしまったかと慌てる若者を見て、再び柔らかな面持ちに戻った月読命は、くすくすと愉快げに笑いました。若者は咳払いをひとつすると、月読命に、それは何者かわかったのか、と尋ねました。

    「そうね…うん、特定したわ。禍津神の生まれる鍵となる物と、その所有者を――」

    月読命は、月を見上げて言いました。

    その鍵とは、「民を苦しみや、災いから守りたい」というある子の願いが込められた剣――それを、憎しみと、悲しみの心で振るう時、禍津神は生まれる。

    月光に照らされてそう語る月読命の横顔は、とても悲しげに見えました。

    その剣の持ち主は――月読命はそう口にし、

    「――秘密かな。私はなんとかしてそれを防ぎたいの。言の葉は、口に出すと本当になっちゃうでしょう? あなたには関係ないこと話しちゃった、ごめんなさいね」

    おどけた様子で片目を瞑って見せたと思うと、するりと宙へと飛び上がりました。


    「そういうわけで、さよならね。私はその人物に会いに行かなやきゃならないの――だから、あなたとの旅も、もうおしまい」

    月を背に、そう飄々と告げて去ろうとする月読命の表情は、月光の影となり、良く見えませんでした。

    その背を、若者は大声で呼び止めました。

    大切な仲間のことに関係の無いことなどない、自分にも何か手伝えることがあるはず――その真剣な物言いに、月読命は足を止め、肩越しに振り返りました。

    「…あなたって、誰にでもそんなにお人よしなの? そういうのって、いつか身を滅ぼすわよ?」

    胡乱げな瞳を浴びせられ苦笑いをする若者に、月読命は大きくため息をつくと

    「…まぁ、そんな言葉で喜んじゃってる私が、言えた話じゃないけれどね」

    そう言って微笑みました。


    ~『紅蓮古事記』 其の拾壱の③~
    身長
    見下ろす側よ
    体重
    お月様は浮いてるからね♡
    最高速度
    月光のごとく
    好むこと
    人の秘密を知ること
    好まないこと
    人に秘密を知られること
    日課
    月見酒
    四々九 -- (名無しさん) 2016-07-11 01:47:03
  • 禍津神の生まれる鍵となる物とは、卑弥呼3.5のフレーバーに書かれた『苦災薙の剣』だと推察できる。
    その場合、所有者はヤマトタケルを指す(黒モードのアビリティ名)。 -- (名無しさん) 2016-07-11 02:03:58
  • VRのフレーバーです。

    あぁ? なんだよ。 なんで外に出ねぇのかだと? 決まってんだろ、月が出てるからだよ。

    『お天道様が見てる』って言葉があんだろ?

    誰も見てねぇようでも、空を見上げりゃいつでもどこでも太陽はちゃんと見てるから、悪いこたぁすんなっつー話だな。

    だからよ、世の悪党どもは、「悪事働くなら太陽の出てない夜のうちに」ってなるわけだ。だがな、実際のところ「お天道様」より「お月様」のが――ヤベェから。

    太陽は悪事が、みんなによ~く見えるように照らすだけ、恥ずかしい真似すんなよ~って咎めるだけだがよ、月はそんな甘ぇもんじゃねぇ。

    夜更けってよ、暗くてちょっと離れるとよく見えねぇだろ? けど、月明かりってのは、自分がなんか手作業する分にはさして問題ねぇっつう、ちょ~~~ど誰にも見られねぇでコソコソ悪さしたくなる、ぜっつみょ~~~な明るさだろ?――あれな、わざとやってんだよ。

    悪さしてるのを空の上でみつけても、なんも言わねぇで、じっとこっそり見てんだよ。そんでもって、後になって、一番いや~~なタイミングで、ネチネチと嫌がらせのようにそれを追及してきやがんだよ。満月みてぇな満面の笑みで。言い逃れなんて出来やしねぇ。なんてったってずぅぅぅぅぅっと見てたんだからな。

    あれは悪事を止めようと夜を照らしてるんじゃなくて、あえて悪事をしたくなるような薄暗さにして、誘ってやがるのさ。クスクス笑いながらよ、なんかいい弱みはねぇもんか、こっそり覗き見するために宙天に居座ってんのさ。

    俺だって、あいつが見てると知ってりゃあんな…あんな……………ぐぉおお!! 思い出しただけで恥ずかしいぃぃぃぃ!! あの陰険姉鬼! いっそ殺してくれぇええええええ――て、はぁ…はぁ………あぁ? 何の話をしてんだだと? 月の話じゃねぇのかって?

    だから、月の話だよ。

    ───『紅蓮古事記』 編纂中に出会ったある男の話
    -- (名無しさん) 2016-09-24 22:46:59
  • これもVRのやつ

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    監視範囲
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    スサノオ
    -- (名無しさん) 2016-09-24 22:47:52

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最終更新:2016年09月24日 22:47