~久遠の眠り姫~(SR)
基本情報
名前 久遠の眠り姫(くおんのねむりひめ)
真名 ターリア
種族 降魔
ジョブ マジシャン
初期カルマ 1
カルマ取得速度 FAST
<タイプ> <調律者>
タイプ テイルズ
HP 600
ATK 300
DEF 300
ハイアーツ
CV ???

カルマアビリティ
カルマ1個 百年茨の呪い
攻撃力と防御力が下がる。
カルマ2個 百年茨の悪夢
ファイタースタイル時にバトルスタイルの変更と、スマッシュアタックができなくなる。
カルマ3個 百年茨の棘
移動速度が上がる。さらに、攻撃間隔と攻撃後の硬直時間が短くなる。
ハイアーツ 目覚めの口づけ
自身の持つアビリティ「百年茨の呪い」と「百年茨の悪夢」の効果を一定時間封印する。
このハイアーツは、カルマを3つ所持していないと使用することができない。
効果時間 60秒

ステータス
  • 魔神状態中
カルマ所持数 融合体数 HP ATK/DEF
カルマ1個 0体 600 ???/???
7体 900 ???/???
  • 魔神状態解除後
カルマ所持数 HP ATK/DEF
カルマ1個 600 210/210
60/200〔シュータースタイル時〕
カルマ2個 600 210/210
カルマ3個 600 210/210
300/300〔ハイアーツ使用時〕
150/300〔ハイアーツ使用時+シュータースタイル時〕


DATA・イラスト・フレーバーテキスト
+ Ver3.5
Ver3.5
身長 1.44[meter]
体重 39[kg]
生息地 『黒い森』の茨の城
趣味 睡眠
連続睡眠時間 300年以降は記録消失
真名 ターリア
イラストレーター 匡吉
フレーバーテキスト
<いままでのあらすじ>

シェヘラザードより、“混沌”が、悪い魔女を封じた『夢の結晶』をねらっていると聞かされたアリスたちは、急ぎその破片である『夢の欠片』を集めました。

最後のひとかけらを集める前に、いったん『夢の欠片』をつなぎ合わせたアリスたちでしたが、できた『夢の結晶』は、突然黒い茨に包まれたかと思うと、真っ赤に染まってどこかへ飛んで行ってしまったのです。

『夢の結晶』の異常から、魔女の復活が近いことをさとったアリスたちは、なんとしても最後のひとかけらを手に入れて封印の夢を完成させ、再びしっかりと魔女を封印しようと決意します。

しかし、最後の『夢の欠片』を持っていた<赤の女王>は、なんとそれを食べてしまっていたのでした。しかも<帽子屋>がいうには、このまま『夢の結晶』が破れて魔女が復活してしまえば、<赤の女王>のお腹には、夢に封印された魔女の一片である“呪い”だけが残り、<赤の女王>はその“呪い”に食われてしまうというのです。

そこでアリスたちは、『夢の欠片』を飲み込んだ<赤の女王>ごと『夢の結晶』の中に入り込み、封印の夢を完成させ、そこで魔女の呪いだけを破壊するという作戦を思いつきます。

<夢の管理人>アリス、<悪夢の女王>ダークアリス、<赤の女王>レッドクィーンの3人は、今までのわだかまりを捨て、ラプンツェルと共に飛び去った『夢の結晶』を追い、夢の持ち主である“あの子”が眠る『黒い森』へと向かうのでした。


* * * *


アリスたちは、飛び去ってしまった夢の結晶を追いかけ、ついに「夢の世界」の外にある『黒い森』へと跳んできました。

「ふむ、ここが『黒い森』か……なんとも鬱蒼とした森だな。その“あの子”というやつは、本当にこんな場所で眠っておるのか?」
「えぇ、間違いないわ<赤の女王>。この森の奥に古いお城があるんだけど、そのお城の一番高い塔で眠っているはずよ。だから夢の結晶もこの近くにきているはずなんだけど……」
「ねぇアリス、あの赤いお月さまが、飛んでいった夢の結晶…なんてことはないわよね?」

ラプンツェルの言葉に、全員が空に目を向けます。

見ると夜空には、赤い月が毒々しいほどの輝きを放ちながら輝き、ゆっくりと森の奥の方へと移動していました。

「間違いないわ、あれが夢の結晶よラプンツェル!」
「でも、あれの“呪い”、前に見たときよりも強くなってない? <悪夢の女王>のわたしでさえ、寒気がするくらい……」
「というよりもだな、あの夢の結晶は欠けておらんではないか! まんまるだぞ!」

<赤の女王>が不満そうに言いました。そうなのです、一部が欠けていたはずの夢の結晶は、しばらく見ない間に、いつの間にか欠けているところがなくなり、きれいなまるい結晶となっていたのです。

「でも最後のカケラは<赤の女王>さんが持っているのでしょう? なのにどうして……」
「もしかしたら、なにか別の『夢』で補ってしまったのかもしれないわね…」
「あら、そんなことして意味があるの?」
「ハッ、あるにきまっておろう。まるいケーキが少し欠けていたところで、ほとんどがケーキなら満足であろう? 隙間には何か焼き菓子でもつめて、クリームをぬっておけばそれもまた甘くてまるいケーキであろうが」
「…だとしたら、急がなきゃ! 夢の結晶があの子の元へたどり着いてしまったら、最後のカケラがなくても、夢が破れて『魔女』が復活してしまうかもしれないわ!」

アリスの言葉に、4人は顔を見合わせ、急いで森の奥へと走り出しました。


* * * *


暗い森を駆け抜け、4人は古いお城へとたどりつきました。しかし、庭園からお城の入り口まで続く道を、黒い茨がふさいでしまっています。

「あの茨、夢の結晶から出てきたのと似てるわね…もしかしてあの茨も“呪い”のひとつなのかしら?」
「そうかもしれないわね…でも大丈夫よ、ラプンツェル。この茨からは、さっきの“赤い月”ほど恐ろしい感じはしないわ。…でも、どの塔がそれなのかしら。みんな背が高いわね…」
「あれじゃない? もう一人のわたし」

ダークアリスが指差した先には、たくさんの黒い茨が絡みついた塔がありました。

「うむ、あの茨の量、間違いないな。しかし、急がねば茨に覆いつくされてしまうかもしれん……となれば、強行突破と行こうではないか!」

<赤の女王>がバットに力を込めて振り降ろすと、道をふさいでいた茨がみんな真っ赤に染まり、ガシャンと音をたてて砕けてしまいました。

すると、どこからともなく茨が伸びて、また道を塞ぎはじめてしまいます。

「また塞がれる前に走って! あの塔まで急ぎましょう!」

黒い茨を押しのけて、4人は庭を駆け抜け、ようやくお城の中に入ることができました。お城の中にはまだ茨が入ってきていないようでしたが、それもおそらく時間の問題です。

4人は休む間もなく、お城の中を走りぬけ、ついに塔のてっぺんにある“あの子”の部屋にたどり着きました。

部屋の中には大きなベッドがひとつ。そこに、茨に囲まれ、静かに眠り続ける“あの子”の姿がありました。

「なんとか、間に合ったみたいね」
「わ~ この子があの結晶の夢を見ている“あの子”なのね! なんて可愛らしい!」
「ふむ、さしずめ『茨の森の眠り姫』といったところか? 中々絵になるではないか」
「…ねぇ、でもこの感じ…この子ってもしかして……」

その時、窓から赤い光が差し込んできました。窓を見ると、赤い月がもう目の前まで迫ってきているではありませんか。
「いけない、時間がないわ! いい? わたしともう一人のわたし、<赤の女王>の3人は、あの夢の結晶に入って“この子の夢”を完成させる。ラプンツェルはその間、あの赤い月がこれ以上“この子”に近づかないよう抑えておいてほしいのだけど……お願いできる?」
「わたしの長い髪が役に立つのね! この髪飾りにかけて頑張っちゃうわ!
「しかし<夢の管理人>よ、さきほども言ったが、あの夢の結晶はもはや欠けておらん。そんな状態でカケラをもった我らが入れるのか?」
「…わからないわ、とにかくやってみましょ!」
「それじゃみんな、頑張ってね!」
「えぇ、ラプンツェル、あなたも気をつけてね!」

アリスたちがバットを重ねると、3人は赤い光を放ちながら、夢の結晶へと飛んでいきました。

しかし――ボイ~ン!!

「きゃ!」
「きゃぁ!」
「うわ!」

アリスたちは夢の結晶にはじかれてしまったのです。

「……みんな、おかえりなさい」
「え~い! だから言ったではないか!」

<赤の女王>はバットを振り回して怒ります。

「だめだったわね…もう一人のわたし」
「そのようね…もう一人のわたし」
「ぐぬぬぅ…バカにしおって! 欠けてないのがダメであるのなら、欠けさせるまで! こうならば妾がもう一度この夢をバラバラに砕いてくれる!」

そう言うやいなや、<赤の女王>はバットを振りかぶり、赤い光を輝かせ始めます。

「ちょっと<赤の女王>、何を…!」
「癇癪おこしちゃだめ!」

ふたりのアリスの制止にも耳をかさず、<赤の女王>がバットを投げつけようとしたその時です。

突然、夢の結晶がぶるるんと震えたかと思うと、まんまるだった結晶の隅にぽっかりと穴が空き、太い三日月のようになったのです。

「あら? “欠けた”わよアリス!」
「そうみたいね…なぜかしら?」
「ふふん、決まっておろう。妾の怒りに恐れをなした以外あるものか」

<赤の女王>は得意げに輝くバットを掲げます。

「とにかくチャンスじゃない? アリス」
「そうね、それじゃふたりとも、もう一度いくわよ!」
「……みんな無事に帰ってきてね?」
「約束するわラプンツェル、帰ってきたら美味しいお茶をのみましょ!」

そういうと、アリスたちはもう一度バットを重ね、赤い光を放ちながら、夢の結晶へスポンと入って行ったのでした。


* * * *


アリスたちは、夢の結晶に空いた穴の縁から中をのぞき込みました。その中は、赤黒く気味の悪い空間が広がっており、まるで何か大きな生き物のお腹の中にいるかのようです。

「なによこれ、私が<赤の女王>に閉じ込められていたときとずいぶん雰囲気が違うわね」
「夢の封印が弱まって、呪いが活性化しているせいなのかもしれないわね…何がでてくるかわからないから、注意しないと」
「ふふん、何が来ようが、夢を壊すのは妾の得意分野よ。任せておくが良い」

<赤の女王>はそう言うと、ピョンとひとり結晶に中に飛び降りました。

「あ、待って!」
「んもう、言うこと聞かない子ね」

ふたりのアリスも続きます。

「ハハ、どうだ。妾が一番乗り――」

――ベチャン!

「なぁっ!?」
「ぐへぇっ!!」

<赤の女王>が夢の結晶の中に降りた瞬間、何か白く四角い塊が、赤の女王に体当たりしてきました。見ると、他にもキノコや犬やネズミ、魚の帽子をかぶった子どもなど、奇妙な生き物がわらわらといるではありませんか。

「な、なななななんだこの者らは!? 妾のまっ赤なドレスが、ベチャベチャの白まみれになってしまったではないか!!」

<赤の女王>がわなわなと震えて怒りだします。

「本当ね、このおちびさんたち何かしら? もう一人のわたし」
「さぁ、わからないわ。妙なかっこうの子ばかりだし、魔女の呪いの一部かもしれないわね、もう一人のわたし」

その時です。赤黒い壁から、無数の「黒い腕」が伸び、少女たちに襲い掛かかってきました。

「う~ん、やっぱり“呪い”のようね」
「あら、たいへん。だいじょうぶ? もうひとりのわたし」
「当然でしょ、もうひとりのわたし。あなたは聞かなくても平気よね」
「ふん! 妾を誰と心得る! 妾はあらゆるゲームの支配者であるぞ?」

言うや否や、3人の少女は、手にしたバットで無数の腕たちを一瞬で消し飛ばしてしまいます。

奇妙な生き物たちはその様子を、驚いたように目を丸くして見つめるばかり。

「ふぅ、やっぱりこの中は少し危ないわね、2人とも気をつけて行きましょ」
「そうね、そうしましょ」
「ふん、貴様に指図されずとも分かっておるわ…だが、少し待て」

<赤の女王>は不機嫌そうにそう言うと、地面に転がる白い四角をむんずとつまみあげ、奇妙な生き物たちの方に苛立たし気に近づいていきました。生き物たちは、怯えたように固まり、じっとしています。

「え~い気色の悪い魔女の呪いどもめ、よくも妾のドレスを汚してくれたな! 妾がルールである! お前たちは、退場だ!!」

そう言い捨てると、<赤の女王>は空中にまっ赤な『穴』をつくり、生き物たちを次々とバットではたき込んでいきました。

「ふん、すっきりしたわ。これでしばらく邪魔は入らんだろう」

<赤の女王>は満足げにパンパンと手をはたきます。

「ごくろうさま。それじゃアリス、のんびりもしてられないし、さっさと済ませちゃいましょ」
「そうね、それじゃ手順の確認をするわよ」

アリスが指を立てて、2人に改めて作戦を説明し始めました。

「まずわたし、<夢の管理人>の力で、<赤の女王>の中の「夢の欠片」とこの夢を繋いで“あの子の夢”を完成させる。夢が完成したら呪いも完成しちゃうから、<赤の女王>がお腹に残った呪いに飲まれてしまう前に、もう一人のわたしが<赤の女王>を自分の悪夢の中に逃がす。あとは、その場に完成した呪いだけが残るはずだから、最後に<赤の女王>の力で呪いを壊す……なにか質問はある?」
「妾は最後の一手を指すのみだからな。貴様たちがつつがなく盤面を整えておれば、何も問題はない」
「あら、あなたこそ居心地がいいからって、わたしの悪夢で寝過ごさないでね?」

軽口を言い合う2人を見て、アリスは小さく笑みを浮かべました。

「2人とも、大丈夫そうね……それじゃ、始めるわよ!」

アリスは大きく深呼吸をすると、握り締めたバットを<赤の女王>に触れさせます。


「夢よ! あるべき姿に戻りなさい!」


アリスの言葉とともに<赤の女王>が赤く光りはじめました。ダークアリスは夢が完成した瞬間を見逃さないよう、緊張しながらも<赤の女王>をじっと見つめます。

「最後の夢の欠片」が、赤い光のしずくとなって<赤の女王>の体から漏れ出し、夢の結晶の地面に吸い込まれていきます。そして最後のひとしずく、これで“あの子の夢”が完成する、そう思ったその瞬間――ダークアリスの背後から何本もの黒い腕が伸びてきて<赤の女王>にまとわりついたではありませんか!

「な、なんだこの腕は! くっ、離せっ! この、うわああああ!」

<赤の女王>を捕らえた黒い腕は、あっという間に<赤の女王>を夢の奥の方へと連れ去ってしまいました。あまりに突然のことに、アリスたちはまったく動くことができませんでした。

「今の何!?」
「呪いの本体が<赤の女王>の中の呪いに反応したのかもしれないわね」
「そんな、それじゃ急いで追いかけないと!」

2人のアリスは、<赤の女王>を連れ去った黒い腕を追いかけ、夢の奥深くへと走りました。

行く手をふさぐ呪いの腕を退けながら、とうとう2人は<赤の女王>に追いつきます。

たどりついた赤黒い壁で覆われた大きな空間、そのまん中には、まっ黒い泥のような球体――“魔女の呪い”が浮かび、<赤の女王>を飲み込もうとしていました。

「まだ完全には飲まれてないわ! お願い! もう一人のわたし!」
「えぇ! 悪夢より生れし<赤の女王>よ! わたしの悪夢に還りなさい!」

ダークアリスが<悪夢の女王>の力を使うと、<赤の女王>は自身の中にあった“呪いのカケラ”だけを残して、ダークアリスの中へと還っていきます。

あとに残された呪いのカケラは、シュポッと“魔女の呪い”の中へとりこまれてしまいました。

最後のカケラを飲み込んだ“魔女の呪い”は、まるで生き物のように脈動しはじめます。

「呪いが完成しちゃうわ! 急いで!」
「これでチェックメイトよ! 行きなさい! <赤の女王>!」

再び<悪夢の女王>の力を使い、今度はダークアリスから<赤の女王>が飛び出しました。

「ふっふっふ……やってくれたな魔女め! 妾を喰らおうとするなど、無礼にもほどがある! 砕け散るが良い!」

<赤の女王>は飛び出した勢いのまま力の限り“魔女の呪い”めがけて「夢を壊すバット」を振り下ろします。

その瞬間、“魔女の呪い”は泥のような表面を激しく波立たせると、ものすごい魔力を、突風のようにアリスたちに吹き付けました。

「きゃあっ!」「何よこれ!」「な、何事だ!?」

吹き飛ばされてしまう3人――やがて突風が収まると、さきほどまで“呪い”があった場所に、つば広の三角帽を被った、白い髪の少女が立っていました。

少女は無表情のままゆっくりと辺りを見回すと、杖をかかげて大きな魔法陣を描きはじめます。

その様子を見て、アリスはこの少女こそ“あの子の夢”に封印されていた魔女だと気づきました。

「あれが魔女…夢を壊して外に出るつもりよ! もう一度封印しないと!」

アリスは<夢の管理人>の力を使い、魔女をもう一度夢の中へと封印しようとします。

しかし、魔女の魔力はどんどん強くなっていき、やがて夢の世界にヒビが入り始めてしまいました。

「わたしたちも手伝うわよ、<赤の女王>!」
「妾に命令するでない! それに、もうやっておる! しかし…!」

<夢の管理人>、<悪夢の女王>、<赤の女王>。夢の世界でもとても強い力を持つ3人が力を合わせても、魔女の魔法は止まる気配を見せません。魔法陣が完成に近づくにつれ、夢の世界のヒビはどんどん大きくなっていきます。

「――もうだめ… もたない…“あの子の夢”が破れるわ…!」

アリスはバットを強く握りしめました。残りの2人も続いてバットに力を込めます。しかし――ガシャーーーーン!!

強烈な光と共に魔法陣は完成し、そこからあふれでた魔力の稲妻が、夢の世界に大きな穴を空けてしまいました。

そして、魔女は無表情な瞳でその穴を覗き込むと、そこから外へと飛んでいってしまったのです。

「そんな……あの子の夢が……」

魔女がいなくなった後も、夢の世界の崩壊は止まらず、どんどんと崩れていきます。

「このままじゃ、どこかの夢に放り出されてしまうわ! 外の世界に避難しましょう!」
「急げ! こっちだ! もうどれほども持たぬぞ!」

3人は悔しさにくちびるを噛みしめつつ、<赤の女王>が開いた赤い穴へと飛び込み、“夢の結晶”をあとにしました。


* * * *


「みんな! 無事だったのね! 何かがすごい勢いで飛び出してきたと思ったら、急に“夢の結晶”がボロボロに崩れてしまったから、心配してたの」

夢の世界から戻ってきたアリスたちを、ラプツェルは嬉しそうに迎えます。しかし、アリスたちには笑顔を返す余裕すらありませんでした。

アリスがゆっくりと窓の外をのぞきますが、やはり、先ほどまで浮かんでいた大きな赤い月は影も形もありません。アリスは力なく、ラプンツェルに言いました。

「ラプンツェル…頑張って抑えてくれていたのに、ごめんなさい…わたしは、あの子の夢を守りきれなかったの…魔女も、復活してしまったわ…」
「そんなっ……そう…でも、一生懸命頑張ったのでしょう? なら、落ち込まないで。わたしはいつもの明るいアリスのが好きだわ。あきらめないで、次の方法を考えましょう?」

見たこともないほどに落ち込むアリスを、ラプンツェルは思いつくかぎりの言葉で励まします。その言葉は他の2人にもあたたかく響きました。

アリスは、ラプンツェルの言葉に顔をあげました。

「そうね…ありがとうラプンツェル。あの魔女も、この子の夢もこのまま放っておくわけにはいかない。何かやれる事がないか探しましょう」

立ち直ったアリスの表情を見て、心配そうにしていたダークアリスも安心したように息を吐きました。

「なら、まずは状況の整理からね。最初にこの子の夢だけど、<夢の管理人>の力で元に戻すことはできないの?」
「残念だけどできないわ… 夢がいくつかのカケラに砕けただけなら繋ぎなおすこともできたでしょうけど、『完全に破れてしまった夢』はどうすることもできないの…」
「じゃぁこの子は…」
「“覚める夢”がなくなっちゃったから、ずっとこうしたまま、二度と目覚めることができないわ…」
「それは…悪夢よりもたちが悪いわね…」

深刻な表情になる2人のアリス。すると、それまで黙って何かを考えていた<赤の女王>が口を開きました。

「……<夢の管理人>よ。この娘と、あの魔女はどういう関係なのだ。なぜこの娘の夢に封印されていた?」

アリスは、<赤の女王>のいつになく真剣な様子が気になりながらも答えました。。

「わたしもシェヘラザードから聞いただけなんだけど……あの魔女は数百年前に世界を滅ぼしかけたそうよ。当時の人たちが協力して、なんとか止めようとしたんだけど、魔女はとても強くて誰も適わなかったの。このままでは本当に世界が滅んでしまうかもしれないと、みんながあきらめかけた時、当時の<夢の管理人>が魔女を夢の世界に連れていき、その夢ごと封印する方法を考えついたらしいわ。」
「<夢の管理人>が外の世界の事を…か… 確かにまぁ、夢を見る者がいなくなれば、夢も存在していられんからな…」
「でも、魔女はとても強くて、封印する前に抑えこむことさえ出来なかったの。そこで<夢の管理人>は、この子を『降魔』にして、魔女を抑えこみ、そのまま夢へと連れて行って永遠の夢に封印したらしいわ……」
「魔女を封印する為に、自分を……とても勇敢な子なのですね……」

ラプンツェルは眠り続ける少女の髪を優しくなでます。

「でも、その世界を救った<夢の管理人>は、その子を『降魔』にしてしまったことを悔いて、自ら<夢の管理人>を降りたそうよ。それ以降<夢の管理人>は、わたしがなるまでずっと不在だったみたいね」
「そしてそんな魔女を“混沌”が狙っていることがわかった――ただでさえ世界を滅ぼしかねない魔女が“混沌”の手に落ちたら、そんなのわたしの手にも負えない悪夢だわ。なんとしても、もう一度魔女を封印しないと……」

そこまで聞いた<赤の女王>は、バットでドンと床を叩き、ビシッとアリスを指さしました。

「ならば<夢の管理人>よ、妾でその娘の夢をつくるが良い」

<赤の女王>の突然の言葉に、3人は驚きました。

「何を言っているの? わたしの悪夢に戻るのとはわけが違うのよ? そんなことできるわけが――」
「フン、妾の体はあの娘の夢のカケラを取り込んでいたのだ。その夢は妾の隅々まで行き渡っておった。故に、その名残が残っている今ならば、妾でこの娘の夢をつくることも可能であろう? <夢の管理人>、貴様ならばできるはずだ」

ダークアリスの言葉を遮り、<赤の女王>が挑発的な笑みを浮かべます。アリスはしばらく考え込んでいましたが、やがて心配そうに眉をひそめて言いました。

「…たしかに出来るわ。でも…それでいいの?」
「そうよ! わたしたちと決着をつけるんじゃなかったの?」
「ええい、やかましい! 貴様らこそ分かっておるのか? このままではあの魔女とやらに負け続きなのだぞ!? そんなことは我慢ならん! 妾は常に勝者であるべきなのだ! そしてこの娘は一度あの魔女に勝っているのであろう? ならば、その実力は折り紙付きだ。妾が休憩している間に、この娘と貴様らであの魔女をこてんぱんに打ち負かしてくるが良い! そしてその間に、この娘の夢を取り戻す方法を考えよ!!」
「<赤の女王>……」
「勘違いするなよ? 妾たちの決着の前に、貴様らに盤面を掃除してくる役目を与えてやっただけのこと。その間、妾はたっぷり休憩させてもらうとしよう」
「……ありがとう」
「……夢でうつつを抜かして呼んでも帰ってこなかったら不戦敗とみなすからね。ちゃんと帰ってきなさいよ!」
「ふん……ほれ、<夢の管理人>、さっさと始めよ」
「…えぇ、わかったわ。再戦の時を楽しみに待っているわ、<赤の女王>」

アリスがバットで<赤の女王>に触れると、<赤の女王>は赤い輝きを放つ夢の結晶へと変化し、そのまま眠り続ける少女の体へと飛び込み消えていきました。

すると、少女のまぶたがピクリと動き、ゆっくりとその目が開いていきます。
夢を見続けた“あの子”が、何百年の眠りを経て、とうとう目を覚ましたのです。

「にゃむ… ふわぁぁ… あれぇ? どちら様… ですかぁ?」
「おはよう、眠り姫さん。わたしは<夢の管理人>アリス。起きたばっかりで申し訳ないのだけど、あなたに協力してほしいことがあるの」
「協力ぅ…ですかぁ?」
「ちょっと長い話になっちゃうけど、大事な話だから最初から説明するわね。まずはあなたの夢が――」

アリスたちは、眠り姫の夢がバラバラになってしまったことから、魔女が復活し夢が完全に破れてしまったこと、そして<赤の女王>の存在を使って夢を復元したことまで、全ての経緯をゆっくりと時間をかけて話しました。


* * * *


「――という訳でね、もう一度魔女を封印する為にも、あなたの力を貸してほしいの。あなた、魔女がどこに行きそうか知らない?」
「………ぐぅ……」
「って、聞いてる…!?」
「あぁ…はい、寝ながらちゃんと聞いてましたよぉ~ でもぉ、ご協力したいのはやまやまなんですけどぉ… 私、【降魔】なんで… あんまり起きてられなくてぇ…寝てる間は大ジョブなんですけどぉ…起きちゃったから、そろそろ時間が…ふぁ~~~」
「…そうなの!? …でも、どうしよう……あなた以上に魔女に関して詳しい人なんて他に……」

すぐに魔女を探し出す手がかりが見つからず、困ってしまったアリスたちが顔を見合わせたその時です。


―――それなら、私が協力できると思うわ。


ふと、アリスたちの頬をあたたかな春の風がくすぐりました。

窓の方を見ると、そこにいつのまにか、美しい女神が窓辺に腰をかけて微笑んでいました。

「あなた…ブリジット!?」

そこにいたのは、アリスの古い知り合いである、<春の女神>でした。

「お久しぶりね、でもなぜここに…」

そう言って、アリスはハッとした表情を浮かべます。

「ふふ、思い出してくれたようですね、アリス」
「…えぇ、あの時した“約束の時”が来たのね…?」
「約束の時…? いったい何のこと?」

ダークアリスとラプンツェルがわけがわからないといった風に首をひねります。

アリスは2人に、かつてブリジットに招かれた、“春の館でのお茶会”のことを話しました。

<夢の管理人>、<亜人の子>、<冥府の女王>、<人形使い>、<魔女>とその仲間、様々な者たちが集い、いつか訪れる破滅の未来を救う“約束”を交わしたあの時のことを――。


「へぇ、『紅き力と共に歩む13の剣』ねぇ…」
「えぇ、今私は、その候補者たちを探しているのだけれど、その中で、ずっと謎だった候補者がいたの。でもつい最近、大昔に封印された“偉大なる魔女”という悪魔が、その候補者に関係していることがわかったのよ。そして、この情報のおかげで最後の候補者の当てが見つかった――つまり、その人物のところへ行けば、きっと魔女にも会えるはずよ」
「世界を滅ぼしかけた魔女が、世界を救う『剣』の関係者っていうこと? なんだか不思議な話ね」
「あなたたちが魔女の封印を解いてくれたおかげで『剣』の一人が目覚めるかもしれない…私は、あなたたちの行動は決して悪いことばかりではなかったと思うわ」
「そう…そう言ってもらえると、少し楽になるわ……」
「そして、『剣』の候補者にはあなたも入っているのよ――<夢の管理人>アリス」
「わたしが…」

アリスは驚いたように目を開きました。

「えぇ。今、世界はかつてないほどの危機に瀕しているの。夢の世界にまで“混沌”が攻め込んでくるなんて聞いたことがなかったし、かつての“紅蓮の王”までもが“混沌”に囚われてしまった……アリス、どうか世界を救う『剣』のひとりになって頂けないかしら?」

ブリジットの頼みに、アリスはしばし考え込んでしまいました。

アリスは、<夢の管理人>であるにも関わらず“あの子”の夢を壊してしまったことを、やはり気に病んでいたのです。こんな自分が、本当に世界を救う『剣』などという者になって良いのだろうか… また、誰かの夢を壊してしまうことになってしまうのではないだろうか――

ふと、あたたかく、良い香りがアリスを包みました。

「らしくないわよアリス」

見ると、ラプンツェルが、長くやわらかい魔法の髪でアリスを抱きしめていました。

「そうね、あなたがそんなんじゃ、折角“あの子”の夢になった<赤の女王>が、いつになったら夢から出られるんだ、ってキーキー言って暴れ出してしまいそう。<悪夢の女王>としては迷惑な話よね。…あなたはいつものように、笑顔で夢のある話をしているのがお似合いよ」

ダークアリスも、ラプンツェルも、アリスに向かって優しい微笑みを送ります。

「ふたりとも…」

そう言って、アリスは一度目をふせると、バットを持って立ち上がりました。

「わかったわ、ブリジット。“約束”だったものね。わたしは『剣』になるわ。<夢の管理人>であるわたしが、素敵な夢を見ないわけにはいかないもの」

アリスの目は、再びキラキラと輝いていました。

「そうね…わたしとしては<赤の女王>から<悪夢の女王>の力を取り戻して当初の目的は果たしたわけだけど、夢の世界にあなたがいないのは張り合いがないのよね。だからもう少しくらいは手伝ってあげてもいいわよ?」

ダークアリスもまた、そっぽを向いたまま、バットを手に立ち上がります。

「もう、ダークアリスは素直じゃないんだから… わたしも一生懸命手伝うわ! 縛ったり投げ飛ばしたり、この髪で役に立つことがあったら何でも言ってね!」

ラプンツェルがお気に入りの“髪飾り”を魔法の髪に装着して笑顔を見せます。

「わたしも…あんまり起きてられないけど… 出来る限りのご協力は惜しみませんよぉ………しばらくしたらまた呼んでください……では…おやすみなさい…ぐぅ……」

眠れる降魔『久遠の眠り姫』は、そう言ってきらきらと光の粒になって消えました。

「ありがとう、みんな… そうと決まればさっそく魔女を追いかけましょ! そしてすべて終わらせて、<赤の女王>とのゲームを再開しなきゃ! ブリジット、案内をお願いできる?」


――こうして、アリスたちの真紅に輝く『夢の欠片』を巡る冒険は終わり、3人は、春の女神にと共に『黒い森』をあとにしたのでした。


~『スカーレットテイル』その12の⑤~

考察
アビリティには味方のパラメーターを上げるものはなく、単純な単体完結型になっている。
カードのステータスに驚くがカードの裏面を見るとカルマ1でA/Dともに90下がるため実際は210/210である。
ハイアーツ使用後のステータスは圧巻の300/300、これにヘイストがつくため殲滅力は十分にある。
ハイアーツの持続時間は60秒。この降魔はハイアーツを使った時が最高に輝くので、タイミングの見極めが重要。
地味に60秒は降魔アーツの中では現在最長である。

欠点は、カルマ3をためるまで、コスト50のマジシャンにも劣る戦闘力。
カルマ3が貯まれば、十分に働けるので他の単体完結型とは違い早めに出すのがよいと思われる。
問題はカルマスピードもFASTの~傾星の妖狐~がいることであり、ATK300DEF300は非常に強いがそれでもあちらは射程増加と毒ダメージを持っているため一長一短。
降魔の召喚速度を上げる事ができるヘパイストスやヴァジェットをデッキに入れているタイプならこちらでもいいかもしれない。

ちなみに間違ってもインデックスやゼウスのアーツの対象にしないように注意。
短時間だが、相手にハイスペック降魔をプレゼントすることになる。

キャラクター説明
Ver3.5SSで追加されたSR降魔。真名はターリアであり、一般的にはいばら姫や眠れる森の美女として有名か。
(C)SEGAが稼働しているWLWの方で元ネタを同じくするドルミールアナザーと一緒に情報が出た事で小さな話題になった眠り姫。
アンブラソルムの最深部にてある理由から眠り続ける存在であり、彼女が眠り続けることによって世界を滅ぼしかねないとある存在が封印され続けている。
紆余曲折を経てレッドクィーンが彼女の夢の一部となり、ついに眼を覚ます。


+ 編集用コメント *編集が苦手な方はこちらへ情報提供お願いします
  • とりあえず、ページと考察を書いてみました。フレーバーテキストは、長すぎるのでまた今度。。。 -- (通りすがり) 2016-10-02 22:27:14
  • ありがとうございます。崩れは修正しました。 -- 名無しさん (2016-10-02 23:40:42)
  • カルマ1のシューター数値50はおかしくない?
    100でしょ -- 名無しさん (2016-10-07 03:29:11)
  • 300からシュータースタイルにすると150
    そこから-100を喰らうから50であると思われ -- 名無しさん (2016-10-07 09:23:42)
  • なるほど。ありがとうございます -- 名無しさん (2016-10-07 09:33:13)
  • ハイアーツ60秒は最長ではない、妖狐も60秒だし聖帝は70秒持続する -- 名無しさん (2016-10-10 02:21:32)
  • 英王は90秒と記載されてますね、これが一番長そう -- 名無しさん (2016-10-10 02:25:06)
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  • 他の高ステマジシャンと違い、アビでの上昇値はゼロなのでハイアーツ時でもシューターで150しか出ないのはご愛嬌。 -- 名無しさん (2016-10-02 23:52:00)
  • 降魔アーツで最長なのはニドの90秒 -- 名無しさん (2016-10-06 08:44:44)
  • 最長ではないが黄帝も70cと眠り姫より長い
    暴獣も同じく60cだし -- 名無しさん (2016-10-06 11:53:32)
  • これ、カルマスピードをノーマルかスロウにしてハイアーツ効果を永続にした方が良いんじゃないかなぁ。
    さすがに強すぎるかな?でも、妖狐採用率に割り込むにはそれくらいしても良い気が・・・、ダメかな? -- 名無しさん (2016-10-06 21:51:43)
  • それだと流石に強すぎると思うけど、妖狐と張り合おうとするとそれくらい欲しいと思う気持ちもわかる。あれはぶっちゃけ大型△の最適解と言っていい性能を持ってるし。
    眠り姫は先出し可能で且つ単体での爆発力を上げた代わりにサポートとハイアーツ捨てた欲界みたいな性能だけど、FASTとはいえ全力出せるタイミングが盤面に左右されるから転生等を絡めつつ任意でフルパワー出せる欲界よりもデッキ構成がちょっと悩ましい。 -- 名無しさん (2016-10-07 01:10:57)
  • レンジアップ付きの□と組んで各個撃破を狙っていくとヘイストと速度UPが生きてなかなかいい感じだった。
    欲界と違って即出し出来て単騎で最高スペックまで行けるのも、ジョブ補完狙いなら差別化されていい感じ。 -- 名無しさん (2016-10-07 02:58:53)
  • テキストが読み応えあっていいねぇ〜面白い -- 名無しさん (2016-10-07 13:05:29)
  • 意外と速度上昇がバカにならないしヘイストがヤバイなこの子
    D300の耐久値を押しつけて□を狙いつつ、他に用意した□でこの子を狙う○を排除していくとかなり良い感じに部隊を殲滅できる
    なにより九尾と違って操作が全く忙しくないのが個人的に高ポイント -- 名無しさん (2016-10-09 23:41:00)
  • カルマ3時の速度が超覚醒のアタッカーと並走するくらい速い
    ヘイストもジャックの紋章と合わせると超覚醒アビのヘイストくらい速くなる -- 名無しさん (2016-11-06 02:23:01)
  • アテナと組ませると60秒だけDEF300が2体並んで楽しい。 -- 名無しさん (2016-11-25 12:16:40)
  • 【】ママリリも60秒だけ最強状態になって楽しい(強いとは言ってない -- 名無しさん (2016-11-25 15:46:51)
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最終更新:2016年11月25日 15:46