マッドハッター

最終更新日時 2019年03月05日 (火) 09時47分06秒

基本情報

名前 マッドハッター
ジョブ ディフェンダー
召喚コスト 50
セフィラ なし
HP 500
ATK 80
DEF 90
PSY 80
武装
血晶武装
アーツ
CV 古島 清孝
対象称号 赤と白の伽人
「赤と白のおとぎばなし」に関係する使い魔を使って50回勝利する。
備考 特定カードとの同時登録不可

アビリティ

状態 ボーナス アビリティ
召喚 なし なし
武装 なし なし
血晶武装 DEF+30 ゆかいな時間殺し
攻撃対象の周囲にいる最も召喚コストの高い敵ユニット1体に、「攻撃力に応じたディフェンダー属性ダメージ」を与える。

エクストラアビリティ

種族 アビリティ
人獣 穴空きのティーカップ
攻撃対象と、攻撃対象の周囲にいる最も召喚コストの高い敵ユニット1体に、
「一定時間、移動速度を下げる効果」を付与する。
このとき、周囲にいる同敵ユニットに与える効果は、攻撃対象よりも上がる。
神族 熱くないホットミルク
攻撃対象と、攻撃対象の周囲にいる最も召喚コストの高い敵ユニット1体に、
「一定時間、攻撃力を下げる効果」を付与する。
このとき、周囲にいる同敵ユニットに与える効果は、攻撃対象よりも上がる。
魔種 立ちっぱなしの椅子
攻撃対象と、攻撃対象の周囲にいる最も召喚コストの高い敵ユニット1体に、
「一定時間、防御力を下げる効果」を付与する。
このとき、周囲にいる同敵ユニットに与える効果は、攻撃対象よりも上がる。
海種 短い長話
攻撃対象と、攻撃対象の周囲にいる最も召喚コストの高い敵ユニット1体に、
「一定時間、攻撃間隔を長くする効果」を付与する。
このとき、周囲にいる同敵ユニットに与える効果は、攻撃対象よりも上がる。
不死 食えない絶品茶菓子
攻撃対象と、攻撃対象の周囲にいる最も召喚コストの高い敵ユニット1体に、
一定の確率で、「攻撃力に応じたクリティカルダメージ」を与える。
このとき、周囲にいる同敵ユニットに与える効果は、攻撃対象よりも上がる。

パラメーター

状態 種族 HP ATK DEF PSY 備考
召喚 500 80 90 80
武装 550 110 120 100
血晶武装 人獣 600 150 190 130
神族
魔種
海種
不死


DATA

+ 創魔 第2弾
創魔 第2弾
創魔 第2弾
No 創魔:2-020
身長 1.8[meter]
体重 56[kg]
出身 ヴュルテンベルク
かつて暮らした国 イギリス
好き 謎かけ
愛した国 『夢の世界』
イラストレーター Tomatika
フレーバーテキスト(LoV4.net)
≪ From“レッドクィーン(ver 4.2)”≫


「さあ! ゲームを始めるぞ! 」

店中の人間たちが宝石のオブジェに変えられ、異様な空間と化した高台のオープンカフェに、勢いよく王錫を掲げたレッドクィーンの声が響き渡った。

今ここに、その声を聴く者は四人と一匹。

レッドクィーンの横に立つ彼女の分身――ダークアリスと、それに対峙する謎の紳士たち――『錬金の紳士同盟』を名乗るカラバ侯爵、ファウスト博士、サンジェルマン伯爵とその“お付き”の動物カーバンクル――。

サンジェルマン伯爵が、質問の権利を主張するようにカカンッとステッキで二回床を突き、訊ねた。

「なるほど、ゲームですか。お嬢さん方の手にするそれを見るにクリケットですかな? 紳士のたしなみ故、それならば我らもお相手できますが……ちと人数が足りませんね」

「またまた無理しちゃってぇ、伯爵クリケットお上手でしたっけ?」

「何を言いますか、カーバンクル。それはお前が知らぬだけ。わたくしのクリケットの腕前は――」

「ふん、クリケットでもビスケットでもゲームであればなんでもよいぞ? ただ一チーム十一人も揃えるのはまだるっこしいからな、二対三で相手してやろう? ただし、ボールは貴様らだ!」

「あはは、なんてロマンティックな横暴だ!」

レッドクィーンの言葉にファウスト博士が手を叩く。

「横暴も何もあるものか! 妾がルールなのだから――なんだ、もう一人の妾よ」

レッドクィーンの肩のパフスリーブをダークアリスがちょんと引っ張り、そっと耳打ちをした。

「……ちょっと、あなたまさか何のゲームをするか考えてなかったんじゃないでしょうね?」

「それがどうした。妾はゲームの支配者であるからして、どのようなゲームでもゲームであれば問題ない!」

そう胸を張るレッドクィーンに、ダークアリスは「この子は……」と額をおさえる。

すると、カラバ侯爵が進み出て、

「わかったわかった。では私が提案してやるよ」

「ほう。しかし見たところ、貴様はひと際胡散臭いからな、どうせつまらん――」

「『犯人当てゲーム』なんてどうかな?」

エンジ色の山高帽の唾をくいと下げ、口元をニヒリと笑みに歪めた。

「お……面白そうではないか。して、ルールは?」

「君らが探している『アリス』という女の子だがね、実は僕らのうちの誰かが“持っている”」

「持っている?」

ダークアリスが怪訝な表情を浮かべる。

「そう、そして『犯人』を一回で当ててもらう。当たれば私たちは大人しく引き下がろう」

「外れたら?」

「そうだねぇ……それじゃ、“『夢の管理人』の証”を貰おうか」

「………?」

ダークアリスは何やら考えるように黙し、代わりに疑問を呈したのはサンジェルマン伯爵だった。

「何です? カラバ侯爵。わたくしは『贄』を見つけて『ワルプルギスの夜』を迎えられさえすれば……」

「これが一番の近道なんだよ、伯爵。管理人の力が手に入れば『贄』なんてどうにでもなるさ」

「ふむ……なるほど」

「僕はロマンティックな夜を過ごせれば何でもいいよ。君らはどうする?」

ファウスト博士の問いかけに、ダークアリスはちらりと横を見やり、ワクワクに肩を上下させているレッドクィーンを見て「聞くまでもないわね」と了承した。

カーバンクルは、

「決まりの様ですね。退屈そうですし、僕はそろそろお休みの時間なので先に寝かせてもらいますよ」

そう言って、サンジェルマン伯爵の肩の宝石にするりと吸い込まれるようにして消え行ってしまう。

そうして残った全員がゲーム参加の意を表明したことに、レッドクィーンは満足そうに頷くと、胸を張って一歩前に出た。

「では、さっそく始めるぞ!」

そして元気よく王錫を振り上げ、

「犯人は貴様―――」

いきなりカラバ侯爵に向かってそれを振り下ろ――そうとしたところで、慌ててダークアリスにその手を掴み止められた。

「ちょっと!? 少しは考えなさいよ!」

「何だダークアリス! こいつがそうだと妾の勘がいっておるのだ!!」

「勘とかそういうので決めちゃだめでしょ!? 『夢の世界』の未来が掛かってるのよ!?」

「だって見るからに怪しいではないか!! あいつは絶対何か嘘をついているぞ!?」

にわかに始まった二人のアリスの口論を、紳士たちは白んだ目で見ていたが、しばらくギャーギャーとやり合う内に気持ちが落ち着いてきたのか、レッドクィーンが改めて目の前の三人を見回して言った。

「『かくれんぼ』のためにアリスが用意した『まちがい帽子』は二つ……つまりやつらの内の一人は確実に“偽者”なのであろう? ならそいつが『犯人』というわけではないか。そもそもお前は、アリスから“正解”を聞いておらぬのか?」

「聞いてないわ。ルールは考えたけど、仕込みはあの子任せだったんだもの」

「むぅ、ではどうせよと……」

そうレッドクィーンが腕を組んだところで、ダークアリスが腰に手を当て「ふふ~ん」と鼻を突き出した。

「なんだ、何か考えがあるのか?」

「人に怖い夢を見せる<悪夢の女王>である私が、何の勝算もなしにこんなゲームに参加すると思う?」

ダークアリスはいたずらっ子そうな笑みを浮かべ、宙をまさぐり何かを掴むとスッと手前に引く。すると何もない空中に引き出しが現れ、その中から銀色のコンパクトのようなものを取り出した。

「何だそれは?」

「『アンハッピーレーダー』よ。グリンダがオズに作らせたコレを持って来てくれて、あの子がいなくなったことが分かったの。コレはね、誰かを不幸せにしようとしているやつに反応するのよ」

「つまり、あのしたたかなアリスが不幸をふりまくやつなどに捕まるわけはない、油断して捕まるとしたら、相手は頭の中が一番“幸せ”な奴――それをそいつで見つけようというわけか」

「そういうこと」

二人の会話を聞いたサンジェルマン伯爵が渋い表情を浮かべた。

「お嬢さん方、そんな機械をつかうのはズルというものでは――」

「あら、準備がいいと言ってくださらない?」

「うむ、ルールにそれはいかんとはない。あっても妾がルールであるからして妾が認めよう」

辟易とした顔の紳士たちを前に、ダークアリスはコンパクトの蓋を開いた。中には羅針盤のような針が浮かんでおり、頼りなげにふるふると震えている。そしてそれを三人それぞれの前にかざすと、内二人の前では大きく針が振れ、一人の前では小刻みに揺れるだけだった。

ダークアリスはその一人にニッコリ微笑みかけると、

「『犯人』はあなたよ!!」

ファウスト博士の帽子をバットで跳ね上げた。

ファウスト博士はされるがまま、呆けた顔で宙を舞う自身の帽子を見上げる。

すると、空中で帽子がぷくぅと膨れたと思うと、地面に落ち――中から、コロンと少女が転がり出した。

金色の髪に白いハットを被り、フラミンゴ柄のクリケットバットをもった少女は、口に手を当てて欠伸をしつつ伸びをする。

「ふわぁ、おはよう……」

「ふん、寝ておったのか。いい気なものだな」

「あらレッドクィーン、外に出てたのね。それにダークアリスまで。それじゃもう『かくれんぼ』の勝者は決まったのかしら?」

「それはまだよ。よく眠れたかしら?――アリス」

彼女こそ、行方をくらませていた元『夢の管理人』アリス――アリスは周囲を見渡すと、立ち上がってスカートをはたき、三人の紳士を眺め見た。

「ふ~ん。私が用意した『まちがい帽子』より数が多いわね。何が起こっているのかしら?」

「『犯人当てゲーム』をしていたの。詳しくは後で説明するわ」

首をかしげるアリスをよそに、ダークアリスは三人の紳士の前に進み出ると、

「私たちの勝ちね! さあ、ご退場願おうかしら?」

とバットを突き出した。

しかし――

「あれまぁ、一発で取られてしまったねぇ」

と、ファウスト博士。

「そんなところに入れておくからですよ。ファウスト君は人生を楽しみ過ぎて、少し用心というものが足りない、そう思いませんか? カラバ侯爵」

と、サンジェルマン伯爵。

「まぁ、いいんじゃないか? どの道“だからといって”という訳だし」

と、カラバ侯爵。

三者は皆一様にニヤニヤ笑みを浮かべている。

「ちょっと、何を笑っているの? あなたたちは負けたのよ? さっさと出ていきなさい!」

三人の態度にムッと眉根を寄せたダークアリスがバットを振って催告するが、やはり笑みは止まらない。

「いやいや、お嬢さん。わたくしどもは負けてなどいませんよ?」

「そうだね、つまりは僕たちの“勝ち”ということだ」

サンジェルマン伯爵とファウスト博士がそう言った。

「ほう……妾を前に、ゲームの結果を侮辱するつもりか?」

その言葉に、レッドクィーンが威嚇するように王錫で肩をトントンと叩きながら睨みつける。しかしカラバ侯爵はお構いなしにその視線を笑い飛ばした。

「はは、わからないかなぁ? つまり、君たちは『犯人』を“当てていない”のさ」

「何を言っているの? アリスを攫った犯人を当てたじゃない!」

「確かにアリスを“持っていた”けどね、残念ながら、僕は“攫って”はいないよ」

ファウスト博士が両手のひらと肩を上げて首を振り、カラバ侯爵が腰に手を当てて三人の少女の前に身を乗り出した。

「いいか? 『犯人』とは、“罪を犯した人”だ。彼女は望んでファウストの帽子に隠れたんだ。故に、彼は『犯人』ではない」

「そんなの詐欺よ! それにそんなわけ……アリス――?」

ダークアリスが振り向きアリスを見ると、

「そうね……ごめんなさい。その人の言う通り、私は自分から彼の帽子に入ったの」

とすまなそうな顔で言った。

「どうして……」

「だって、『かくれんぼ』の最大のヒントは私なんだもの。なら、私も見つからないように隠れた方が安全じゃない? 黙っていなくなったのは悪かったけど……」

「しかしだな、隠れるにしてもなんでこんな奴のところなのだ!? 信用できぬにも程がある! いくらもう一人の妾だとて訳がわからぬぞ!?」

レッドクィーンが詰め寄る。

「それは――」

アリスはファウスト博士をじっと見ると、


「この人が、『初代夢の管理人』だからよ」


そう言った。

ダークアリスとレッドクィーンが目を見開いた。

「……ほう」

それは知らなかったとばかりにサンジェルマン伯爵も目を細める。

「……へ? 僕がかい?」

そして、ファウスト博士までも。

そんなファウスト博士にアリスは、

「そ、“自分で自分を騙すことにした”、今のあなたは覚えていないでしょうけどね」

と困ったような、悲しそうな、複雑な笑顔で微笑みかけた。


一同が驚く中、しかし、カラバ侯爵はまるで気にする風もなく、

「そう言うわけで、我らの勝ちだ。『夢の管理人』の証を渡してもらおうか」

と一歩前に進み出て手を差し出した。

その手に気押されるようにダークアリスが唇を噛んで一歩下がり、レッドクィーンが「ぐぬぬ」と王錫の柄を握り締める――が、

「ちょっと待ってくださる?」

二人の前に、アリスが体を滑り込ませた。

「経緯はよくわからないけど、これって『犯人当てゲーム』なのよね?」

「そうだけど、それがどうかしたか?」

「なら――あの子たちが出した答えは『正解』よ」

そう、きっぱりと言い切った。


アリスの思いがけない言葉に、

「……ふぇ?」

「だってさっきあなた……」

背後の少女たちはキョトンとした表情を浮かべ、

「…………」

カラバ侯爵の目がスッと細まる。

「へぇ、その根拠には興味があるな。話してみろよ」

「でも、その前に『本当の正解』も当てておこうかしら」

アリスは物語の名探偵のように後ろ手を組んで、三人の紳士と二人の少女の間をゆっくり歩き始めた。

「……うん、一応これはフェアなゲームになっているのよね。ちゃあんと答えは用意してあったの。『アリスを持っている』は“引っ掛け”で、“罪を犯した人”が『犯人』――」

そのままファウスト博士の前まで歩いて足を止め、

「あなたは『犯人』ではないと出題者が言ったのだから、一応は候補から外れるわよね」

「それはなにより」

ニコリと笑みを浮かべるファウスト博士を背に、続いてサンジェルマン伯爵の前まで歩く。

「おじ様はきっと人間の尺度では罪人なのでしょうけど、本人に罪の意識が全くなく、裁かれたことも無いのでしょうからその限りではないわね」

「痛み入ります」

「つまり――」

アリスはふわりとスカートをひるがえしてクルリと回ると、

「『本当の正解』――罪人はあなたよ」

カラバ侯爵を指さした。


「一応、理由を聞いておこうか?」

カラバ侯爵が腕を組みつつ、不敵な笑みを浮かべて問いかける。

「あなた、『夢の世界』のことに詳し過ぎるわ。『夢の管理人』になるために『証』が必要だなんて、『夢の世界』の住人でもごく限られた人しか知らないのに」

「それがどうした? 私たちは相当に長い年月を生きている。生きているうちにそんな情報を手に入れることもあるというものさ」

「そうかしら? 一番年長に見えるおヒゲのおじ様はご存知ないように見えたけど」

サンジェルマンは、一度に向けられた皆の視線に少し身を引いたが、「さてね」と言った風に肩をすぼめる。

「それに、あなた――『カラバ侯爵』と言ったわよね? その名前には心当たりがあるわ。『夢の管理人』だけが見られる『住民名簿』、その中に、ずいぶん昔に『人の世界』に降りた“夢の住人”がいたの」

ピクリ、とカラバ侯爵の眉が揺れた。

「『赤ずきん』、『長靴をはいた猫』――その人は名を変え、『人間の世界』で、本当は話してはならない『夢の世界』の住人の物語を書き広めて一財を成したわ。そしてその素性がバレそうになるとまた名前と職を変え、今度は人々を騙して爵位を手に入れるまで上り詰め――裁かれた」

「ふん、元『夢の管理人』か……なかなかの慧眼だね」

ニヤニヤと浮かび続ける笑み――しかしその瞳は笑っていない。アリスはそんなカラバ侯爵をまっすぐ見据えて言った。

「その時、あなたはこう名乗っていたはずよ? 人の世界で罪を犯した稀代の詐欺師――『カリオストロ』」

カラバ侯爵――またの名をカリオストロ――は、山高帽を外すと、

「“正解”、私が『犯人』だ」

と両手を広げた。

「なんだ、やっぱりそいつだったのではないか!」

と、レッドクィーン。

「なんと、君はそんな素性の持ち主だったのですか? カリオストロ伯爵」

「ええ。でも知っての通り、錬金の腕は本物なので、お気になさらず」

カリオストロは何ら悪びれた様子無くサンジェルマン伯爵にそう答え、 

「それで――」

アリスの前に立ち、じろりと上から見下ろした。

「どうしようというんだ? 私の正体はどうあれ、回答のチャンスは一回。君たちはその一回を間違えたわけだから、私たちの勝利は揺るがない。さらに君は私の正体を見破ってその証明までしてくれたわけだ。なのに君はこのファウスト博士が『犯人』だと言う……それに、一体どんな意味が?」

「あら、わからない? そんなはずはないと思うけど。その意味を明らかにするために、あなたの正体を明らかにしたのだから」

「………」

カリオストロの表情が僅かに歪んだが、

「すまないが僕も知りたいな。君も認めた通り、僕はカリオストロくんに言われて君に接触しただけで、何の罪も犯していない」

そうファウスト博士が皆の注意を引いたため、それに気づいた者はいない。

アリスは改めてファウスト博士の方を向いて言った。

「さっきも言ったけれど、私があなたを信用したのは、あなたこそが『初代夢の管理人』だからよ」

「それなんだがね、君の言う通り、僕にそんな記憶はまったくない。“自分で自分の記憶を封じた”というのもさっぱりだ。それはいったい――」

アリスは一瞬悲しそうな顔をしてから、目を閉じ、意を決したようにファウストの言葉に口を挟んだ。

「――あなたはかつて、『夢の世界』で罪を犯したの」

「………?」

「昔、世界を滅ぼそうとした魔女の夢を、ある少女の夢に閉じ込めたのよ。その所為で、その子は永遠の時に閉じ込められ、眠り続けることになった。そしてあなたはその罪の意識から、自ら『夢の管理人』を下りたのよ」

怪訝な顔をするファウスト博士に、

「だからあなたは罪人で、とっても優しい人」

アリスはそう、いたわる様に微笑みかけた。

「あはは、そんなこと――」

ファウスト博士はやはり訳がわからないといった風に苦笑を浮かべていたが、「まいったな」と頭を掻きつつ、その手に違和感を覚えて自身の手を見る。

「……永遠の時に、ね……」

なぜか、その手が震えていた。

同時に、ファウスト博士の脳裏に、過ぎた記憶が蘇る。


――「止まった時」が動き出した! 


目覚めたとき、確かに彼はそう言った。


「そうか……だから僕は……」


そして、その更に、ずっとずっと昔――


――時よ止まれ……君は、美しい。



アリスはその様子を悲し気に見つめる。

「それがあなたの“罪”。だからあなたは『犯人』でもあるの」

そして振り向き、カリオストロを見た。

「そしてだからこそ、そんな彼の記憶を、“あなた”は蘇えらせたかったのではないかしら?」


拍手が鳴り響いた。


「“大正解”だ」


拍手をしているのは――山高帽を深くかぶり直して下を向く、カリオストロ。

いったい、何が起きているのか――。

「なんだ? わけがわからなくなってきたぞ? いったい何がどうなった?? 誰か分かりやすく説明せい!!」

次々と予測の外れる展開に、レッドクィーンが王錫を振り回し地団太を踏む。

「えーと……新しい『夢の管理人』選出ゲームの最中にアリスがいなくなって、それはアリスがわざとやったことで、隠れた先が『初代夢の管理人』の帽子の中で、その人の仲間も“元『夢の世界』の住人”で、当の『初代夢の管理人』にはその記憶がなくて、それでいて、罪人で……?」

「ふむ、わたくし思うに、これは多分に“複雑な大人の話”ですな」

反芻すれども首をひねるダークアリスに、サンジェルマン伯爵がそう言ってまとめる。

そしてカリオストロは、

「まぁ、わからないだろうな。わかる筈がない。君らなんかに――私の気持ちが」

帽子のツバを上げると、呆然と佇むファウストを見た。

「そうさ、私は君に思い出して欲しかった。ファウスト、私が言っても君は信じないだろうが、実際に『夢の管理人』の言葉を聞けば、封じられた記憶も呼び起こせると思ってね。しかも、“ターリア”が目覚めた今ならば――」

「「“ターリア”って、あのターリア(か)!?」」

意外な名前を耳にして、ダークアリスとレッドクィーンが口を大きく開ける。それは、魔女を封印するために降魔『久遠の眠り姫』となった少女の名だった。そして彼女を目覚めさせるため、レッドクィーンは壊れてしまった「少女の夢」の代わりとなり、つい最近、ダークアリスの活躍でその状態から帰還したばかりなのであった。

カリオストロは、なぜか、ファウスト博士に憎々し気な目を向けたまま続ける。

「そう、その彼女さ。なぁ、君は彼女の名前を覚えているかい? “ターリア・グレートヒェン・マルグリート”――」

そしてアリスを睨んだ。

「アリス、さっき君は、そいつを“優しい人”と言ったな? 優しいもんか。君が言った通りなんだぞ? そいつは私のターリアを利用して、魔女を封じる代わりに、彼女を永遠の眠りにつかせたんだ。ただの――人間の癖に」

「そうね……」

「ちょっと待って、『初代夢の管理人』って夢の世界の住人じゃなかったの?」

「そうよ、もう一人の私。私だって元は人間ですもの。そこから生まれたあなただって、そしてあなたから生まれたレッドクィーンだって似たようなものじゃない?」

驚くダークアリスを他所に、カリオストロは再びファウスト博士に目を向け、指をさす。

「そうさ、そいつは純粋な『夢の世界』の住人なんかじゃなかった! 悪魔の力を借りて『夢の世界』にやってきた汚らしい“人間”だ! そんな奴が『夢の管理人』を名乗り、無垢な心に付け込んで私の大事なターリアを奪っていったんだ……ターリアが眠りについた後、そんな君はどうしたと思う? なんと、卑怯な君は罪の意識に耐えかねて『人の世界』に逃げ戻った。だから私も君を追いかけた。君を探し続けた――そうだ、私も推理ショーをやってやろう」

そしてテレビショーのチェアマンが観客を煽るように両手を広げ、

「君はよく言っていたな、『カラスと書き物机が似ているのは何故か?』と。それが君の記憶の『鍵』なんだろう? 私が答えてやるよ!」

どことはなしに宙を見つめ、黙してただカリオストロの言葉を受け入れるファウスト博士に顔を近づける。

「『カラス』とは人の言葉を真似話して不吉を運ぶ智慧の象徴、『王』や『神』の使いだ。つまり、智慧を持って世界を自由にいじくり、生み出す『神』なのさ。“彼ら”は生み出す、何でもね。なぁ、それってまるで机にかじりついて物語を生み出す“我々”童話作家のようじゃないか? 君は享楽を求めて長く生き過ぎた“人ならざる人”だ――初めは偉大なる数学者にして天才錬金術師、そして物語を紡ぐ者……一時はチャールズ・ドジソンなんて名乗ってもいたよなぁ?」

僅かに、ファウスト博士の指先が揺れたか。

「その後、『夢の管理人』がいなくなった所為で『夢の世界』に混乱をきたしたことを知った君は、人の世界から連れてきたその“アリス”を『管理人』に仕立てあげた。そして自分は“白い帽子”に嫌な記憶を封じ込め、全てを忘れ去ったんだ! さあ、自分の罪を思い出せ! 忘れさせなんかしないぞ!? そのためだったら、『混沌』の手だって借りてやるさ! 君を追い詰め、絶望させ、私が『夢の管理人』になり、君の目の前で君の愛した『夢の世界』をめちゃくちゃにしてやる! そして彼女との失った時を取り戻すんだ!」

一気にまくしたてるカリオストロであったが、呆けたように口を開けたままのファウスト博士に、果たして彼の言葉は届いているのか――しかし、不意にその目つきが、変わった。

「……やれやれ、なんてやかましい」

ファウスト博士は、正気を取り戻したようにそう言うと、

「あの日、魔女がこの世の春を謳歌した『ワルプルギスの夜』みたいなやかましさだ」

突然トコトコと歩きだしてアリスに近づき、ひょいと無表情にその白いハットを取り上げた。気のせいか、その口調と声が、先程とは幾分変わって聞こえる。

「カリオストロ君、なんだろうなぁ、君の話は実につまらない。どうにもこうにも夢がない。ロマンティックとは程遠い、なんともお茶会には向かない談話だよ。そんなものを思い出してどうしろと? 僕はとうにおかしくなっているんだ。心も、声も変わっちまう程に――それでも君が僕の存在を認めてくれるのなら、僕も君の存在を認めるとしようか」

そして両手でハットを挟み、二回、三回、くるりと回してみせると、「そう、認めよう。確かに僕は君の言う“そいつ”なのかもしれないが、そんなこと、僕にはどうでもいいことだ」

「……何だと……」

「そりゃあそうさ。僕は永遠に飲めないお茶を愛する帽子嫌いの帽子屋で、それ以上ではあるがそれ以下でもある。だからみな――」

白いハットを目深にかぶり、宙よりギラリと光る巨大なバターナイフを取り出した。

ナイフに映ったその不敵な顔は、青い瞳が赤色に、顔つきまでもが別人のように変わって見える。


「僕のことを、『マッドハッター』と呼ぶのさ」

セリフ一覧

+ 通常版
通常版
召喚 お待たせしたねぇ 最低なお茶会を最高に楽しもう
武装 そうだ なぞなぞはいかがかな?
血晶武装 カラスと書き物机が似ている理由を僕が知っていると思うかい?
通常攻撃
タワー制圧
ストーン破壊
死滅
+ EXボイス
EXボイス
召喚
武装
血晶武装
通常攻撃
タワー制圧
ストーン破壊
死滅

考察


共通アビリティ「ゆかいな時間殺し」による、もう1体へのダメージは自身のATKの130%相当のディフェンダーダメージ。
ATK150でATK195相当 主AでATK160ならATK208相当になる。
各種族総じて、「攻撃対象の周囲にいるもう1体へのダメージ・追加効果」の方が大きくなっており、
マッドハッターが殴っている相手と真の攻撃目標は別という、トリッキーな動きをする使い魔である。
その特性上、並んでいる○○や○□には強いが、1対1では本領を発揮できない弱点がある。

  • 人獣
  • 神族 攻撃対象のATK-20、もう1体にATK-40。2つの効果を重ねることでATK-60することが可能。
  • 魔種 攻撃対象のDEF-20、もう1体にDEF-40。2つの効果を重ねることでDEF-60することが可能。
  • 海種 
  • 不死 40%前後の確率で発動 攻撃対象にATK80%相当 もう1体にATK100%相当のクリティカルダメージ追撃。

キャラクター説明

童話「アリスと不思議の国」に登場する不思議の国の住民。邦訳は「気の狂った帽子屋」「イカれた帽子屋」。
その名の通り支離滅裂な事を言う狂人で、意味のわからない発言を繰り返してアリスを困惑させる。
下手な替え歌を女王に披露した為に「時間殺し罪」の罪人とされ、永遠に時間が午後3時から進みも戻りもしない罰を背負わされている。
狂人仲間の「3月ウサギ」と「眠りネズミ」と共に、城前で終わらないお茶会を楽しんでいる。

LoVでは2から参戦していた不死所属の使い魔。ハンサムなルックスと原典通りのハイテンションでイカれた言動から人気が高かった。
夢の国アンブラルソルムにて気ままに振る舞い、誰にも与する事なく奇行三昧を楽しんでいたが、その正体はなんと「元・夢の国の管理者」。アリスの先輩にあたる。
ある事情から管理者を降りていたらしく、彼女に夢の国を任せていたのも何やら考えがあったかららしい。
彼が夢の国から消えた後、マッドハッターと同様のモーションかつ姿も似た一人の魔術紳士が現れたのだが……?

紹介動画

+ 第2弾
第2弾


+ 編集用コメント *編集が苦手な方はこちらへ情報提供お願いします
  • もう一体へのダメージは大体1.24倍、魔種時の低下値は対象-20もう一体-40 -- 名無しさん (2019-02-02 13:03:07)
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最終更新:2019年03月05日 09:47