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ん・・・朝か。時間は7時

幸一「そろそろ母さんが来る頃かな」


よく考えてみたら母さんは朝早く出るようになったんだっけ

幸一「着替えるかな~」

テーブルにあるトーストをくわえるとカバンを持って家をでた

最近天気の良い日が続くな~今日は風も弱い。絶好のフライト日和だ

移動 学校 教室

教室に着くと既に霧島さんは席に座っていた

何人かの男子が声をかけている様だが、まるで誰もいないかのようにうつむいたままである

遂に男子達も諦めて散っていく。オレが席に座ろうとした時、トッシーが駆け寄って来た

峯岸「おーい!桜井、ちっと付き合えよ~」

幸一「ちょっとカバン位置かせてくれよ」

峯岸「いいから来いって」

幸一「何すんだよ~」

オレを無理やり引っ張ると教室の外まで連れて行かれた

移動 廊下

峯岸「なぁ桜井、霧ちゃんには手を出さない方が良いぜ」

幸一「何かまずいの?」

峯岸「まずくは…イヤまずいな」

幸一「どっちだよ」

峯岸「霧ちゃんて転校してきてからずっとあんな調子だろ?クラスの奴らも段々見切りをつけてるからさ」

幸一「仲間はずれって事?」

峯岸「遠からずって所だな」

幸一「でも転向してきたばかりで気持の整理が未だついていないんじゃない?」

そう言った瞬間あの時の霧島さんの言葉が頭に浮かぶ

  (やっぱり…君も怖がるんだね)

未だその言葉の意味を理解できていないけど頭からは離れる事が無かった

峯岸「男子はともかく女子とは仲良くしないとな、今の所男子同様話しかけて来た女子にも同じ状態らしいんだ」

幸一「そうなんだ…確かにあんまりよくないね」

この日も霧島さんはまったく口を利いてくれなかった

ただ変わってきたのはクラスの反応だ。周囲から冷たい視線を送っているようにもとれる

完全に孤立してるな

フェードアウト

放課後 教室

幸一「霧島さん、良かったら今日乗る?」

帰り仕度をしている霧島さんに話しかけてはみたけど、やはり全くの無反応

(あの時はあんなに話してくれたのに…やっぱり未だ怒ってるのかな)

いつの間にか教室にはオレと霧島さんだけしか残っていなかった

転校初日から放課後はすぐ居なくなっていた霧島さんが以外にも今日は席に座ったままだ

皆が帰る中じっと座っている霧島さんを見ていられなかったのもあるけど話すチャンスは今しかない

これで駄目なら仕方が無い。席を立ち廊下に向かって歩き出す霧島さんにもう一度声をかけた

幸一「あの時はごめん!正直自分でも何がなんだか分からなくて…でも」

オレが必死に話す時も霧島さんは全く聞く耳を持たずに教室を出ようとしてる

幸一「もう1度見たいんだ!飛んでる所が」

その言葉に霧島さんの足が止まった

幸一「お願いだよ、もう一度飛んでみてくれないかな?」

しばらくして霧島さんは再び無言で歩き出し廊下に消えていった

幸一「駄目か…流石にもう1回頑張ろうって気は起きないな~」

それからオレはぼんやりと窓から雲を眺めていた

フェードアウト

移動 裏山

空が茜色に染まり見事なコントラストを演出している

幸一「ふぅ、帰る前に機体の整備だけでもしていくかな」

移動 ガレージ

入り口の前まで来た所で驚いた

ガレージの横にあるベンチにレンの姿があったからだ

幸一「き、霧島さん!どうして?」

レン「随分遅かったね、用事でもあったの?」

幸一「え?ううん無いよ。と言うか霧島さん来てくれたんだ」

全く頭に無い事態だが何とか話しを繋がないと

レン「もう一度乗って欲しいって言うから来たのに君は何時まで経っても来ないから、今日は来ないのかと思ってた」

幸一「ごめん!…だって何も言わないからてっきり駄目なんだとばかり」

レン「NOとも言ってないけどね」

そう言う彼女の顔は少し笑っているようにも見えた

幸一「今日はもう遅いし明日でも良いかな?」

レン「そう…いいよ、明日ね」

幸一「あのさ!良かったら少し話していかない?」

レン「何を?」

歩き出そうとした足を止めてオレの方へ向いた時、丁度太陽が霧島さんの影に入り金髪がキラキラと輝いている様に見えた

(うわ…綺麗だ)

やっぱり霧島さんて綺麗だな~

レン「聞いてるの?何もないなら帰るよ」

幸一「ちょっとまってよ、聞きたいことが一杯あるんだから」

レン「あまり長くは居れないよ」

ドアの鍵を開けると部屋の灯りをつける

幸一「適当な所に座ってよ、今飲み物持ってくるから」

彼女は近くにあるソファーに座りミラーを眺めていた

幸一「ねぇねぇオレンジジュースとココアどっちがいい?」

レン「…ココア」

幸一「何で霧島さんは教室では話してくれないのかな?」

レン「…」

霧島さんは全く顔を合わせようとしないでミラーの方を見ていた

幸一「ごめん、人それぞれだよね。じゃもう1つ良い?」

レン「…何?」

明らかに今の一言で機嫌が悪くなったなぁ、何とか質問を変えないと

幸一「霧島さんの飛行技術は一体何処で習ったの?あんなフライトはTVとかでしか見たこと無いよ」

レン「…」

やっぱり答えようとはしない

幸一「仕方ないよね、未だ会って数日だもんね。アハハ…あ、ココアどうぞ」

幸一「このミラーはね、父さんの形見なんだ…だから凄く大事に乗ってる」

レン「君もお父さん…居ないんだ」

その言葉に驚いた、君‘も‘と言う事は彼女の父親も居ないという事になる

レン「私に乗り方を教えてくれたのはパパなの…」

幸一「…やっぱり霧島幸一なの?」

レン「そうだよ…」

ボソッと言い放つと又ミラーの方へ顔を向ける

霧島幸一の子供ならあれだけの技術も納得がいく

幸一「伝説のフライター霧島幸一」

レン「…伝説かどうか知らないけど」

パイロットを目指す者なら必ず聞く名前 霧島幸一

幸一「オレの幸一の名前だって父さんが霧島幸一みたいにって付けてくれたんだもん」

レン「そんなパイロットでも事故で死んでしまう…」

幸一「うん…ニュースで見たよ。あの時はショックだった」

憧れのパイロットなだけにその日から1週間は何もやる気が起きなかったのを覚えてる

でも霧島さんはそんなものじゃないはずだよな

幸一「でも何でその事を話さないの?きっとクラスの人気者になれるのに…」

レン「霧島幸一の娘だから…伝説のパイロットの子供だから…霧島、霧島、霧島、どいつもこいつも」

今まで見た事の無いような険しい表情で吐き捨てるように言い放つ

レン「結局はパパの名前だけ、もう嫌なの!」

初めて怒りを見せた霧島さんに正直驚きを隠せなかったが、同時に彼女の気持も理解がでた

幸一「ごめんね霧島さん、確かに本当の霧島さんを誰も見てないもんね」

レン「勘違いしないで、別にパパが嫌いなわけじゃないの。パパは大好きだよ」

幸一「う、うん」

レン「嫌なのは霧島の名前だけ」

幸一「霧島さん、本当にごめん!」

思わず大声を出してしまった

レン「…」

レン「君…変わってるね」

そう言うとオレの顔を見つめ少し笑って見せた

幸一「え…そうかな~アハハ」

意外な反応にどうして良いか分からずオレも苦笑い

レン「今日はもう帰るね、又放課後に」

ココアを飲み干すとゆっくりと立ち上がり部屋から出て行く

幸一「あ、待って途中まで送って行くよ」

レン「覗きの次はストーカー?勘弁してよね」

クスッと笑いレンは裏山を降りていった

幸一「霧島さん…やっぱり可愛いなぁ…」

まだまだ聞きたいことは山ほどあったがいずれ話してくれるだろう

とにかく霧島幸一が父親なんて凄すぎる。この日本でフライトウイングが流行った一番の要因といっても良い

「パイロット霧島」フライトウイングの歴史は浅いがその中で1番とも言われている人間、同じ日本人というだけで誇らしくなる

そんな親から教われば神業も頷けるか…謎が1個解けた

幸一「アレ、今何時だ」

時計を見るともう夜の8時を指していた

早く帰んないと又母さんに怒られる

奥からカバンを取り出すとガレージを閉める

移動 自宅 

幸一「ただいま~」

由紀「おかえり~ご飯要らないんでしょ?」

幸一「何でだよ、要るよ」

由紀「今日はトッキー君とご飯食べてこなかったんだ」

幸一「トッキーじゃなくてトッシーだから、何時も一緒じゃないしさ」

由紀「ふ~ん。じゃ簡単な物で今作るから待ってて」

幸一「主婦業さぼるなよ」

由紀「あら~結構厳しい事言うのね。母さんも時にはサボりたい時もあるのよ~」

幸一「はいはい、そうですか」

父さんが亡くなって母さん一人でオレを育ててくれてるんだ、疲れるのも当然だよな

幸一「自分で作るから母さんはもう休めよ、明日も早いんだろ」

由紀「珍しいわね、何かあったの?」

幸一「何にも無いよ、風呂行ってくる」

由紀「下着とか干してある奴使ってよね、たたむのが楽だから」

幸一「…」
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