【前編】
『よう、里紗』
私の部屋のドアが開いて、あいつが声をかけて来る。
んー。もう朝なのかな。
まだ寝てたいよー。
『たく。何やってんだよお前。メシ出来たぜ』
メシ……か。
とりあえず私は、自分の食欲と睡眠欲、どっちが大事か考えてみる。
……。
ぐぅ。
『ほら、さっさと起きやがれって』
あっ。
あいつが私を約束された安眠の地から追い出そうとする。
やめろー。迫害だー。
うー、寒いよー。
ま、仕方ないかな。
精一杯あいつに文句の一つでも付けてやることにするか……。

「……」
起き上がると、そこはいつも通りの私の私による私だけの部屋だった。
私の貴重な布団を剥がそうとする不埒な輩なんてこれっぽっちも見当たらない。
ふう……。
(また、見ちゃったな……)
あいつの、リトの夢。
それにしてもまあ、なんでこんなに微妙な夢なんだろ。
なんつーか、キスする所くらい思い浮かべてもいいのにねえ。
なんで、こんなに普通な……。
……。
(普通、か……)
フッ、と口元から笑みがこぼれてしまう。
普通なんて……なんか、すっごいあいつらしいじゃない。
別にムチャクチャ色男でもなくて。
気が効くワケでもなくて。
ただ、ちょっと優しいだけ。
ほんの、ちょっとだけ……

『お前、まさか本気で……』

……。
ダメだ、私。
あの時から、何かあったらあの時のキスのことばっかり思い出すようになっちゃった。
クスッ。
思わず笑いが出てしまった。
(この、私がねぇ……)
あんな、結城リトごときに、やられちゃうなんてねぇ……。
くすくすっ……。
私の体が勝手に笑い出しちゃった。
どうしてだろ、私。
どうしてこんなに、ウキウキしちゃってんだろ……。
(ま、仕方ないかな……)
私は、私をこんなにしちゃった張本人に、責任を取ってもらうことにした。
携帯の短縮ダイヤルを押して、受話器を頬に当てる。
トゥルルルル……。トゥルルルル……。トゥルル……

『なんだよ』
コール10回と半分。ようやくあいつの声が聞けた。
「あーら、恋人をこんなに待たせるなんて。どういうつもり? ダーリン」
『だ、だからその呼び方は止めろ! ていうか、誰が恋人だ!』
はーん? 相変わらず、こいつと来たら……。
「あれー? 私のファーストキスを奪ったのは、どこの誰でしたっけー?」
『うっ……。あ、あれは、その、は、はずみで……』
ククク……相変わらず甘いねぇ……。
「ひ、ひどい……。私の一生に一度の大切な思い出を、はずみでだなんて……」
『えっ……』
「あんた、私なんて遊び程度の女だと思ってたのね……」
『そ、そんなことは……』
「いいよ。あんたがそんな事言うんだったら、エンコーでもしよっかな」
『はぁっ!?』
「だって、私ってその程度だって思ってるんでしょ?」
『な、何考えてんだ!? 止めろ、バカっ!』
おー。必死になっちゃってまあ。
「だって、あんたのせいじゃない……うっ……」
ちょっと泣き真似なんかしちゃったりして。
『おいっ! お、オレが、悪かったから! 早まるなっ!』
うふふ……。相変わらず、女の涙には弱いねえ。
「ぐすっ……。じゃ、今日映画に連れて行ってくれる?」
『う……わ、分かったよ……』
ふっ。チョロいもんよ。
「さーっすがダーリン! 話が分かるーっ♪」
『へ? お、お前……』
「じゃ、今日2時に駅前のファーストフードで。またね、ダーリン♪」
『お、おいっ!』
プチ。ま、首尾は上々だね。うふふ……
さて、ここからは恋する乙女の時間かな。
(あいつ、どんな色が好みなのかな……)
私は今日一番の大仕事をこなすために、クローゼットに向かってうーんとうなり出した。

で、映画を無事見終わったんだけど……
「ふあああぁ……」
あいつが私の横で大あくびしてる。
せっかく、ムードたっぷりの恋愛映画だったのにねえ。
途中からグッスリ寝てるんだもん。こいつ。
まあお約束だし、一応聞いてみようか。
「映画、どうだった?」
あいつ、私にぜんっぜん気も使わずに、
「ダメ、オレあーゆーの。もっとバンバンバーン! ってのがいーな」
だって。ま、そんな事だろうと思ったけど。
「まったく。あんたもガキねぇ……」
呆れた声でそうつぶやいたら、あいつが、
「うるせーな。趣味じゃねーって言ってんだよ」
そんなフザけた事言って来た。
その時、私の心に何かが引っ掛かった。
(あれ?)
以前、どっかでこんなことが無かったっけ?
……。
あ、思い出した。
私がこの前してたモーソーと似てるんだ。
(また、よりにもよってこんなしょーもない……)
クスッ。
なんだか、可笑しくなっちゃって、
「あっ!?」
私なんとなく、あいつと腕を組んでみた。
「お、おいっ!?」
「うふふ。ダーリン♪」
頭を肩にすり寄せちゃったりしてー。
「うっ!?」
お。あいつの顔、ちょっと赤くなった。
これは、脈アリ、ってかー?

で、しばらく歩いてから、ちょっと提案してみた。
「ね。カラオケでも行かない?」
「カラオケねえ。オレ、そんなに歌知らねーぞ」
「いーからいーから。私、面白いカラオケ屋知ってるんだ」
「面白いカラオケ屋?」
「とにかく着いて来なって」
そう言って、あいつと腕を組んだまま『面白いカラオケ屋』まで歩いて行った。

「はい。到着」
「こ、ここって……」
やたらと派手でキラビやかな外装に、大きな文字で書かれた『ご休憩4800円』の看板。
まあ、見るからにって感じよねえ。
「ラ、ラブホじゃねーか!!」
お、さすがのこいつでも知ってたか。
「ここ、知り合いがやってるから安くしてもらえるんだ。ちゃんと中にカラオケもあるんだよ」
「こ、高校生がこんなとこ……」
「固いこと言わないで。さ、入った入った」
「お、おいっ!?」
なんだかんだで、私に押されるままにラブホに入っちゃうあいつ。
うふふ……。そういう押しの弱いとこ、好きよ。ダーリン♪

「はーい、おばちゃん」
受付に座ってるおばちゃんに声をかける。
「なんだい、里紗ちゃんかい」
「へへへー。一部屋使わせてもらっていいかな」
鍵を受け取って奥を見ると、誘導灯が点灯した。
「へー……」
あいつ、なんだか感心してるみたい。
私達は二人でエレベータに乗って、降りてから鍵に書いてある番号の部屋まで歩いて行く。
ドアを開けて中に入ると、そこは雰囲気たっぷりの広くてゆったりしたベッドがある部屋。
すりガラスに仕切られたバスルームには広いお風呂があって、なんかエッチな椅子とかが
置いてあったりする。
「うわー……」
あいつが感嘆のため息を漏らしてる。
「あんた、こーゆーとこ、初めて?」
「うん……」
ま、そーだろーな。
ララちぃはなんとなくイメージに合わないし、唯なんかは絶対に
『私達、高校生でしょっ!!』
とか言って断るだろうし。
「さ、始めましょうか」
ま、カラオケがあるってのは別にウソじゃないし。
とりあえず、最初はここからかな……。うふふ……。

「おおーっ!!」
パチパチパチパチ!
ベッドに座ってるあいつが、私の歌を聞いて拍手する。
私が歌ったのは、最近流行ってる女の子の恋愛の歌。
もう大人になっちゃったOLっぽい女が、昔自分が女子高生だったころ、
好きな男の子と一緒に坂道を上って帰ったのを思い出すっていう、
ごくありふれた恋愛を描いた歌なんだけど。
最近私、なぜかこの曲が妙にツボにはまるんだ。
なんでだろ……。
ふとそんな事を考えてたら、あいつが私の歌をベタ誉めして来た。
「上手いなー、籾岡」
私はちょっと得意になりながら、ベッドに腰掛けてあいつにマイクを渡した。
「へへへっ。ま、未央と一緒にカラオケしまくってるからね。じゃ、あんたの番よ」
「うー。わ、笑うなよ」
「それはあんたの出来次第ねー」
クスッと笑いを浮かべる。
で、あいつが歌ったのは、お約束のアニソン。
おー、乗って来て、拳を握りしめて熱唱し出したよ、こいつ。
お、歌い終わったかな。
「おー、なかなかやるじゃん。良かったよ」
「そ、そうか」
あいつ、私のお世辞で気を良くしたみたい。
早速本をめくって、次の曲を探し始めた。
ま、これからかな……。

で、二人でカラオケを何曲か、交代々々で立って歌ってるうちに、
だんだんとベッドの上で私達が座ってる位置が近くなってきた。
で、あいつが本を取ろうとする時を見計らって……
スッ。
「あっ」
二人の手が、グ・ウ・ゼ・ン触れ合っちゃった。
「す、すまん……」
あいつ、顔を赤くして手を引っ込める。
私、そこで……
「いいよ。あんたなら」
「え……」
引っ込めたあいつの手を追っかけてキュッと手を握りしめる。
「籾岡……」
あいつが私の方を見つめてくる。
「リト……」
じっと見つめ合う私とあいつ。
お、私ってば。
ちょっと胸がドキドキしちゃってるよ。
(よし。ここかな……)
私、もっと腰をあいつの方に近付けた。
バサッ。
音を立てて、ベッドの端に置いてある本が床に落ちる。
私の顔は、もう赤くなったあいつの顔のすぐ近くにある。
「ここが何をする場所か、知ってるでしょ?」
「も、籾岡……」
私、あいつにのしかかって、あいつの両肩を手で押さえて……
「うわっ!?」
あいつをベッドの上に押し倒しちゃった。

(この体勢……フフ、あの時と一緒ね……)
ベッドの上に私に押し倒されたあいつが寝転んでて、その上に私の体が覆い被さってる。
『あの時』はただのシャレだったんだけど、今は……。
「リト……」
「ああっ!?」
私、あいつの足の間に自分の太ももを差し込んだ。
うふふ。このために、今日は太ももがほとんど露出しちゃうミニスカにしたんだよね。
で、太ももをあいつの股間に当てて、
「あ、あっ!」
あいつのアレを、ズボンの上から太ももでこすっちゃう。
「も、籾岡っ!?」
ピクンッとあいつの体が反応する。
「リトぉ……」
甘ぁい声を出して、あいつの頬を手で押さえながら私の胸をあいつの胸に押し付ける。
「んっ……」
むー、微妙な反応。ちっ、ブラジャー越しじゃこの程度か。
ならば。
上に着てたブラウスのボタンを外して、ブラのフロントホックも外して、
「見て……」
ペロッ。
「!?」
うふふ……本邦初公開の大サービス! ……って言いたいとこだけど、
実は前に見られちゃってるんだけどね。お静ちゃんが暴れた時に。ちぇっ。
「私のここ、すごく、ドキドキしてるでしょ……」
そんなこと言っちゃったりして。
ま、別にウソじゃないんだけどね……
「これ、あんたのせいで……」
「よ、よせっ!」
あいつが慌てて私から顔を背けた。
「そう同じ手に何度も引っ掛かるか!」
まあ、そう来るよね。それじゃ……
「じゃ、確かめてみる?」
私はあいつの右手を取って、
ピトッ。
「な!?」
私の左胸に押し当ててみた。
「あっ……」
ピクンと私の体が反応して、甘ぁい声を上げちゃってみる。うふふ……
「ほら……ほんとでしょ……」
トクン、トクン、トクン……
あいつの暖かい手の感触に、私の胸の鼓動が速まって行く。
(リト……)
お、私ってば、マジになりかけてるな。
だんだんと息が深くなってきた……。
「籾岡……」
「イヤ……」
ちょっと首を振ってみる。
胸もちょっとだけぷるん、と震えたかな。
「里紗、って呼んで……」
じっとあいつの瞳を見つめて、必殺の殺し文句をキメちゃう。
ゴクリ。
あいつがツバを飲み込んだ音が聞こえてくる。
ちょっと腰に体重をかけて、股間をあいつの太ももに押し付けてみる。
「んっ……」
むきだしになったおっぱいを、あいつの胸に押し付けてみる。
「あっ……」
あいつの頭の後ろに手を回して、もっとあいつに密着してみる。
「リト……」
はぁ…… はぁ……
少し熱くなった顔をあいつの顔に近付けて、じっとあいつの瞳を見つめる。
で、私のとっておきの必殺技を放っちゃおう。
「私、本気だよ……」

ドクン! ドクン! ドクン!
トクン、トクン、トクン……
あいつの力強い鼓動と、私のささやかな胸の高鳴りが共鳴して、
二人でドラムの稽古でもしてるみたい。
「……」
あいつはじっと私の顔を見つめたまま、硬直しちゃった。
んー、このままじゃラチがあかないな。
「お願い……」
私、あいつの頭の後ろに回した手をスッと引き寄せて、顔をあいつの顔にもっと近付けてみる。
もう、私の鼻とあいつの鼻が触れ合う距離。
はぁ…… はぁ……
そこで一度止まって、あいつの反応を確かめる。
顔は赤くなってるけど、前みたいにイヤがって目を背けたりはしてない。
(イケる、かな……)
もう少し手に力を込めて、最後の……
「すまん」
私がフィニッシュブローを決める直前、あいつがいきなりスーパーガードを決めて来た。
私は動きを止められて、ちょっと下がってからもう一度あいつの顔を見た。
(え……)
さっきまでのドギマギしてる様子がなくなって、なんだか落ち着いた顔しちゃってる。
あ……これ、ヤバいな。
この展開は……
「どういう意味?」
あいつが、私の前で初めてってくらいクソ真面目な顔をして、キッパリと言った。
「今は、出来ない」

トクン…… トクン……
さっきまであんなに元気だった私の胸、可哀想にがっかりして弱々しくなっちゃってる。
「どういうことよ……」
あいつの顔を睨みつけて問い正す。
「あんた、私のことキライなの?」
「いや……」
あいつが首を振る。
「じゃ、いいじゃない」
「ダメだ」
あいつの意思は、どうやら固いみたい。
私、思わずカッとなって言っちゃった。
「私にキスまでしたくせに、今さらダメだって言うの?」
それでもあいつは首を振る。
「今は、ダメだ」
そして、私の目をじっと見て……
「オレ今、古手川と付き合ってるんだ」
「!!」
私が今、一番聞きたくない名前を私に向かって言いやがった。
ギリ……
私の口の中で、歯を噛み締める音がした。
「それで……」
「冗談だから」
「えっ?」
あいつが何か言おうとしたのを無視してそう言うと、
私はあいつの体の上からスッと体を戻して吐き捨てるようにもう一度告げた。
「さっき言ったこと、全部冗談だから。さっさと忘れて」
で、服装をさっさと整える。
「お、おい、ちょっと待て!」
あいつの声をさらに無視して、ツカツカと歩いてドアから出て行く。
で、エレベータのボタンを押して、
「待てってば!」
あいつが私の肩に手を掛けて来たんで、私、振り返って告げた。
「バッグ」
「は?」
「忘れたから、取ってきて」
ビッとドアの方を指差す。
「わ、分かったよ……」
あいつが部屋に戻って私の『バッグ』を探しに行った。
で、その間にエレベータがやって来て、中に乗り込んでボタンを押した時……
「おいっ! お前、バッグなんて持ってなかったじゃねーか!」
今頃気付いたあいつがエレベータまで駆けて来た。
けど、もう遅い。
ガタン、とあいつの目の前でドアが閉まって、エレベータが下に降りて行く。
体に抜けるような例の感触を受けながら、私ウツムいてちょっと考えてた。
(結局、ああいうタイプに持ってかれちゃうんだ……)
フッ。
私、目をつぶりながら首を振って、可哀想な自分を鼻で笑っちゃった。
ガクン。
エレベータが1階に着いて、ドアが開くと、
「ぜぇ……ぜぇ……」
そこには肩で息してるあいつの姿があった。
どうやらエレベータよりも速く階段で駆け下りてきたらしい。
まったく、ご苦労な事で。
「ぜぇ……は、話を聞けって!」
まだそんな事言って来る。
私は受付のおばちゃんの方をビッと指差して、
「支払い、任せたから」
「へ?」
さっさとあいつの横を通り過ぎて外に出る。後ろから声がする。
「4800円だよ」
「えーっ! 負けてくれるんじゃ……」
おー。いつも未央とカラオケで遊ぶ時は負けてくれるんだけどな。
空気を読んでくれたか。おばちゃん、ナイス。
クスッと笑いながら外に出ると、そこに今一番見たくない顔があった。
「も、籾岡さんっ!?」
猫柄の乙女チックなバッグ抱えてる、あいつの一番の想い人が。

しかし、考えてみれば絶妙のタイミングよね。これって。
私はニヤッと笑って、唯に話し掛ける。
「あーら、唯じゃない。こんにちは……」
唯ってば、なんかドギマギしちゃって……
「も、も、籾岡さん! こ、高校生が、こんなとこに来ちゃダメじゃないっ!!」
予想通りの言葉を口にする。私はニヤッと笑いながら唯に言った。
「あーら、ごめんなさいね。私のダーリンがどうしてもって言うから……」
「な……!?」
お、唯、ビビってるね。うふふ……。
そこにまた、絶妙なタイミングで……
「籾岡っ!」
支払いを済ませたあいつが私の所に駆けて来た。
私、あいつの方に振り返って、
「あら、ダーリン♪ 待ってたんだから、もぅ……」
あいつの腕にしがみついて、胸に顔をスリスリしてやる。
「お、おいっ!?」
で、チラッと唯の顔を窺うと……あらら。もう真っ青になっちゃってる。可哀想にねえ。
「ゆ……結城……くん……」
「えっ」
お、これは。
修羅場突入ー、の図。お、唯の肩がブルブル震え出した。
そこで、あいつが……
「こ、古手川! ご、誤解だ! オレ達、別にそんなこと……」
うふふ。言い訳は禁止よん。ダーリン♪
「あーら、さっき私のこと、あんなに上手って誉めてくれたのに……」
私の、カラオケをね。うふふ……
唯、もう真っ赤な顔して肩を震わせて……あらら、泣かせちゃったか。
「お、おいっ!?」
あいつが唯を慰めに行こうとしたんだけど……
バシッ!!
「うっ!?」
うわ。決まっちゃったよ。唯の必殺ビンタ。
「結城君の……結城君の……バカっ……」
唯、振り向いてタッと駆け出した。
「待てっ! 古手川っ!!」
タタタ……。
あいつも唯を追いかけて走って行った。

私、ラブホの前でまた一人になっちゃった。
「……」
何気なく空を見上げると、もう大分暗くなってきてる。
(帰るか……)
ま、ここから家も近いしね。
ふぅ……。
私は一つため息を吐き出して、ウツムキ加減で家まで歩き出した。

私は今、自分の家の前に立ってる。
暗くって、誰もいなくって、ただいまを言っても誰も答えてくれない家。
「……」
私はなんとなくそのドアノブに触るのがイヤになって、
もう一度振り返って街に向かって歩き出した。

歓楽街はもう大分活発になって来てる時間。
色とりどりの悪趣味な光をまき散らしてる看板が目につく。
「へいらっしゃい、らっしゃい! いい娘いますよー!」
呼び込みの声が響き渡る。
オジサンの話によれば、この業界も大変らしいからね。
「いーじゃんか。行こうよ、な?」
「えー?」
どっかのスケベ男が女を必死に口説いてる。
まったく。世の男はみんなこうだってのに、あいつと来たら……。
でも。
だから、かもしれないんだけどさ。
今まで、私に言い寄って来た男達。
どいつもこいつもただエロい事したいって奴ばっかりで、
私の心なんかちっとも考えちゃくれなかった。
私が、どんな思いしてるかなんて、ちっとも……。
その時。
ガッ。
私の肩にどっかの変なオッサンが手を当ててきた。
「へへ……姉ちゃん。寂しそうにしてんじゃん。ちょっと遊ばない?」
振り返ると、いかにも酔っぱらいって感じの、ネクタイ外してヨレヨレの背広を着た
不細工なオッサン。
(サイアク……)
私はパシッとその手を振り払ってさっさと歩き出す。
「おいおい、つれねーじゃん。ちょっとお話しようよー」
まだ声をかけて来る。
あー、こーゆー手合いはちょっとでも相手するとしつこいからねー。無視無視。
「おいってば!」
ガッ。
また肩に手を掛けて来た。
(チッ……)
声でも上げようか?
そしたら周りから人が寄って来て、それもメンドクサイな。
今私、あんまり人と話したい気分じゃないし。
そんなことを考えてた時、
「おい、おっさん。イヤがられてるのがワカンネーのか」
急にオッサンの腕が体格の良い兄ちゃんにガシッと掴まれた。
「イテッ」
(ん?)
振り向いて兄ちゃんの顔を見てみる。
(へえ……)
結構イケてるじゃん。
それに、どことなくあいつに似てるし……。

「さっきはどうも有り難う御座いました」
私はさっきの兄ちゃんと喫茶店に入ってコーヒー飲んでるとこ。
「気を付けろよ。夜はあんなのが多いからな」
「はーい」
おお、いつになく素直な私。ま、相手はイケメンだしね。うふふ……
「お前、高校生?」
いきなりお前呼ばわりか。ま、悪い気はしないけど。
「はい。彩南高校の2年です」
「へー! じゃ、オレの妹と同じじゃん」
「妹……さんですか?」
「古手川唯っていうんだけど。知ってるか?」
「!」
私の顔が強張る。
「はい。同じクラスですけど……」
じゃ、こいつって……
(唯の……兄貴?)
私のしかめっ面見て、兄貴がフッと笑いを浮かべる。
「あー、あいつまた、フーキフーキとか言ってんだろ? クラスから浮いてたりするだろ」
おお、なかなか鋭いじゃん、兄貴。
「あれがなきゃ、なかなかいい女だと思うんだけどなあ」
(いい女、ね……)
ま、そーだね。顔はともかく、スタイルじゃ私も負けちゃってるしね。
それに、あいつだって……。
「じゃ、そろそろオレも行くとこがあるから。気を付けろよ」
兄貴が席を立って伝票を取る。そこで私は、
「あの……」
「ん?」
唯の兄貴に聞いてみた。
「唯さんが……一人になりたい時に行きそうな場所とか、知ってます?」

「あ、本当に来てるな……」
私、あまり事情は説明しなかったんだけど、唯の兄貴は私を黙ってここまで連れて来てくれた。
街からちょっと離れた所に流れてる小さな川。その岸辺に唯、足を抱えて座り込んでる。
「じゃ、後は任せていいか?」
「はい。どうも有り難う御座いました」
私がお礼をすると、兄貴はケータイを取り出して喋り出した。
「あ、秋穂さん? え!? ちょ、ちょっと用事が……え!? 見てた? どこで?
えーっ!? ちょ、ちょっと待って! うわーっ! ま、待って下さいっ!」
なんだか女の名前を言いながら、ダッシュで駆けて行った。
ウフフ……イケメンも楽じゃないねえ。
そして私は唯の方に向き直る。
(さて……)

「どうしたの、唯。こんなとこで」
ビクッ。
私の声を聞いて唯が反応する。で、私の方に振り返って、
「籾岡さん……!」
私の顔見て怯えたみたいな顔して、立ち上がって逃げ出そうとする。
「待ちなさいよ」
珍しく真剣な顔して私、唯に声を掛けた。
「ちょっとおしゃべりでもして行かない?」

私と唯は河原に並んで腰掛けてる。
唯はさっきから一言も口を聞かないんだけどね。
「あれから、どうしたの?」
唯、一瞬黙り込んだ後、震える声で、
「あ、あなたには関係ないじゃないっ!」
すっかり私のことカタキ扱いしてる。
あーあ。あいつ、言い訳下手だからなあ。
じゃ、ここはお姉さんが一肌脱いであげるとしますか……。
「そ、ね。私には関係ないな」
「えっ?」
「私、別にリトの事なんてなんとも思ってないし」
「え……」
ニヤッと笑って、私は続ける。
「さっきのアレはさ、私が無理矢理あそこにリトを連れてってカラオケで遊んでただけ。
リトだってそう言ってたでしょ?」
「あ……」
「あんた達の焦ってる顔が見たくて、からかってただけ」
「な、なにを……」
「だーって、あんたもリトも、すっげー面白いんだもん。からかった時の顔。
あー、思い出しただけで……ぷ、あーっはっはっは!」
「な……」
唯、カッとなっちゃって私に怒鳴り付けて来る。
「ふ、ふざけないでっ!! 私がどれだけ……」
「はいはい。悪かった悪かった」
私はケータイを取り出して、例の短縮ダイヤルを押した。
「あ、ダーリン? 私だけど。あんたのお姫様、返すからさあ。受け取りに来てくんない?
いやー、本当にワガママで扱いに困ってるのよ」
また唯が私に怒鳴って来る。
「だ、誰がワガママですって!」
「そ、河原のそばの……分かる? じゃ、すぐに来てね。
あー、5分以内に来なかったら、唯、あんたと一生口聞いてくれないんだってさ」
「だ、誰もそんなこと言ってないでしょ!」
「んじゃね。バイバイ、ダーリン♪」
プチ。通話を切って私はすっくと立ち上がって、ニヤッと唯に笑いかける。
「じゃねー、唯。お幸せに♪」
「そ、そんな、いきなり……」
私、唯の耳元に口を寄せてそっと囁きかける。
「じゃ、明日、今晩どうだったか教えてよねー。よっ、この色女っ」
「なっ……」
おー。唯ってば、もう耳まで真っ赤になっちゃって。
「そ、そんなハレンチなことするわけないでしょっ!!」
「えー? ま、いっけどさ。じゃねー」
私は軽く唯に手を振ってスタスタとその場を立ち去った。

「ふう……」
唯と話してる時に作ってた笑顔。
でもダメだね。作り物ってのは長持ちしない。
一歩歩くごとに、だんだんと顔が下がって来て、ウツムイちゃうのが自分でも分かる。
(私って、いい奴じゃん……)
ほんっとにねえ。
恋敵相手にこんなに気を使ってあげるなんてねえ。
あはは……。
あんまり自分が良い奴過ぎて、笑いが出ちゃうよ。まったく。
その時、
「古手川っ!!」
遠くからあいつの声が響いて来て、一瞬足を止めてしまう。
「……」
立ち止まって、目を閉じてみる。
ヒュウゥ……
風が通り過ぎる音が聞こえた。
「……」
(帰るか……)
もう一度、目を開けてみた。
あ……。
目の前がニジんで、見えなくなってる。
なんでだろ。
急に目が悪くなっちゃったのかな。
ほんっとに、なんでだろ……。





【後編】

『んじゃね。バイバイ、ダーリン♪』

愛しのダーリンへの、最後の言葉。
明日からは、『ダーリン』から『結城リト』に逆戻り。
なんていうかまあ、短い夢だったよね。
あはは……。
暗い部屋のベッドの上で私、そんなつまんない事を考えてた。

シン……

静かだな。ほんっとに。
静か過ぎて、色んな音が聞こえてきちゃう。

トクン…… トクン……

淡々とした、鼓動の音。

ブン……

台所から微かになり響く、冷蔵庫の唸り声。

チッ…… チッ……

腕時計の秒針が、時を刻む音。
うるさいな、分かってるって。
私が、一人だってことくらい。

ガバッ。

頭から布団を被ってみる。
でも、どんなに頑張ってみても、静けさは消えない。

シン……

はは……。
やっぱり、ダメだね。
こんなの、好きになれない。
私、フツーの女の子なんだもん。
フツーにおしゃべりとかが好きなだけの。
それだけ、なのに……

今朝、見た夢では。
この布団を奪って私をここから連れ出す、お節介な王子様がいたんだっけ。
フフ……。
なんてウブだったんだろ、私。
キスされたくらいで、イイ気になっちゃってさ。
私なんて、選んでもらえるワケないじゃん。
ウソをいっぱいついた悪い少年は、オオカミにも村人にもシカトされちゃって、
一人寂しく人生を過ごしました。おしまい。
はは……は……



「うっ……」
私の喉が、勝手に声を上げた。
私の瞳から、勝手に涙が溢れて来る。
「うっ……えっ……」
私の胸が勝手に震えて、私は身を丸くして縮こまる。
おかしいな。
このくらいの寂しさ、もう慣れっこのはずなのに。
どうして、今日は……
なんてね。ま、分かるけどね。
「リト……」
あーあ。
「リト……リト……うっ……」
こんなになるんなら、わざわざ譲ってあげなきゃいいのにねぇ。
こら! 情けないぞ、私! 泣くんじゃない!
「うっ……うっ……」
自分で決めたことなんだから、さ。もう、泣くのは止めようよ。
「……」
そうそう。
『籾岡里紗』はイジメられっ子じゃなくて、イジメっ子なんだから。
このくらいで泣いてたらカッコ悪いぞ。
ぐいっ。手で涙を拭う。
ふぅ……。
でも、ちょっと泣いてすっきりしたし。
これで、なんとか眠れるかな……

ピンポーン。

「!!」



トクン、トクン、トクン……

私の心臓が早鐘を打ち出した。

(今の……何?)
焦って時計を見てみる。
ママが帰って来る時間にはまだ全然早い。
一体、誰が?
(まさか……あいつ!?)
一瞬そう期待して、すぐに冷静になってその可能性を打ち消す。
(いや、あいつ今頃、唯と一緒にいるはずだよね……)
なにしろ、自分がそう仕向けたんだから。
(大方、新聞の勧誘か何かか……)
でも……

ピンポーン。

また新聞屋がチャイムを鳴らした。そして、
「おーい。いるんだろ! 返事しろよ!」
「!」
(あいつの、声……)

トクン、トクン、トクン……

心臓の鼓動が、どんどん速まって行く。

(でも、なんで……)
ここにいるって事は、私の計らいを無視して唯を置いて来たってこと?
それとも、可哀想な私を慰めに来てくれたってこと?
(チッ……)
なんだか私、腹が立ってきた。
無視しよ、無視。
そしたら……

カチャ。

あっ……。あいつ、勝手にドア開けて玄関に入って来やがった。
そういえば……鍵、掛けなかったんだっけ。
で、玄関の靴でも見てんのかな。
「ほら、やっぱり帰ってるじゃねーか。上がるぜ」
な、何勝手なこと言ってんの。このドロボー!

スタ、スタ、スタ……

あいつが階段を上がって来る音がする。

トクン、トクン、トクン……

(な、何勘違いしてんの、私……)
あいつ、私が好きで来てくれたワケじゃないのに。
なのに……なんで、胸のドキドキが収まらないんだろ……。

カチャ。

私の部屋のドアを開ける音。

パチッ。

私の部屋の電気が点く音。
そして……
「お前、何やってんだ?」
私の一番大好きなダーリンの声……。

「何の用よ」
私、ミノ虫になったまま、布団の中から声を掛けた。
あいつが、ミノ虫の私に声をかける。
「とりあえず、そこから出て来いよ」
でも、私は……
「いやっ」
布団をギュッと掴んで引きこもる。
あっ! あいつも布団を掴んできた!
ギューッ、と引っ張られて……。
バッ。
私の布団、はぎ取られちゃった。
あ、これって……
(今朝の夢と、おんなじ……)
トクン、トクン、トクン……。
私のドキドキ、もう止まらなくなって来ちゃった……。

あいつがグショグショになった私の顔を見て目を丸くしてる。
「お前……泣いてたのか?」
「別に。ただ、急に私を無理矢理起こすバカがいたせいよ」
全然効かない強がりを言ってみる。
そしたらあいつ、フッと呆れるようなため息をつきやがった。
ムッ。ちょっとムカついてきた。
「だから、何しに来たのかって聞いてるのよ」
「ん? お前が誘ったんだぜ」
「なっ……」
(私が……誘った?)
まさか……!?
『リト……』
さっきの自分の声が頭をよぎる。
聞こえてた!? そんなはずは……。
私は頭を振って、キッとあいつを睨みつけた。
「さっきのは、冗談って言ったでしょ」
「いや、もっと前」
はあ!? 何言ってんだこいつ。
「ふざけないで。誰もあんたなんか誘ってないわよ」
「いや、確かに誘われたぜ」
「いつ!」
自分でそう言って見て、ハッと気が付いた。
(まさか……!)
あいつが、ポケットに手を差し込んでケータイを取り出した。
「あ……」
その画面に書かれてる文字。それは……

『ダーリンへ 勇気が出たらいつでもおいで -リサ-』

私がシャレで送ったメール。そんなのを……
「まだ、持ってたんだ……」
あいつが少し赤くなって、照れたように頭をポリポリと掻いた。
「オレ……さ。あの時、本当はちょっとだけ、やってみたいかな、なんて思ってたんだ」
「は……」
私は可笑しくなって、ククク……と笑い出した。

「なーんだ。あんたも一応、男だったんだ」
「だから、さ。やらせてくれよ! お願い!」
あいつが手を合わせて私にお願いするフリをして来る。
まったく。私に気を使おうなんて、100年早いんだよ。
ま、でも。ちょっとだけ、乗ってやろうかな。
「いいけど、一つ条件があるよ」
「なんだ?」
「私のこと、好きって言ってくれる?」
「え……」
(さて、どう来るかな……)
私はじっとあいつの顔を見つめた。
もし、あいつがウソついて、軽ーく『好きだよ』なんて言って来たら。
さっさと突き飛ばして、出て行かせよう。
「……」
あいつ、ちょっと黙り込んじゃった。そして……
「オレ、お前のこと良く分からなかったんだ」
そんなこと言い出した。
「いっつも冗談ばっかりでさ。何が本気か全然分からねー」
ま、そうかもね。あんたみたいな単純バカには難しいかな。
「でも、さ。オレやっと分かったんだ」
あいつが私をキッと見つめ返して来る。
「お前って、寂しがり屋だったんだな」
「な……」
あいつに言われて、また私の胸が……

トクン、トクン、トクン……

止まらなくなっちゃった……。
「オレ、お前のそんなとこ、好きだぜ」

ドキンっ!!

(あ……あ……あ……)
やられた……。
この私が……。
もう顔が真っ赤になって、あいつの事しか目に入らない……。
あ……。
あいつが、私の頬に手を触れてきた……。
で、ニッコリ笑って……

「好きだ、里紗」



ダメ……

私、トンじゃったみたい……

気が付くと私、あいつとキスしながら、あいつの体を両手で必死に抱きしめてた……



そんでぇ、どうなったかって言うとぉ、ベッドの上で甘々タイムに突入~、ってか?
うふふふふっ♪
「里紗」
生まれたままの姿のあいつが、生まれたままの姿の私の上から声をかけてくる。
「ダーリン♪」
ちゅっ。
あいつの頭を引き寄せて、アツアツのキス。
(うわぁ……)
私の頭、ポッと熱くなっちゃった。
あいつ、私を見てニッコリ笑って、
「好きだぜ、里紗」
あ……
キューン!
あ、あ、あ……や、ヤバいよ、これ……
胸がもう、ドキドキしまくって、幸せで幸せで、体がぷるぷる震えて、ああもうっ!
がばっ、てあいつを抱き締めて、きゅーっ、と熱ーいホーヨー。で、
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
ほっぺたに、首筋に、唇に、何度もキスの雨あられを降らせちゃう。
で、ちょっと顔を離して、またまた愛のコクハク。
「うふふっ。大好きだよ、ダーリン♪」
ちゅっ。
アツアツのキッスをもう一度。
あいつ、なんか呆れたみたいな顔して私に、
「おい、お前こんなキャラだったか?」
そんなアホな事聞いて来た。私、ニンマリして、
「ほんっとあんた、女心がちっとも分かってないねえ」
あいつのお尻に手を回してギュッとつねっちゃう。
「いてっ!? な、なにすんだ」
「バーカ」
まったく。あんたが私をあんなに焦らすから、こんなになっちゃったんだっての!
もしかして、こいつのテク?
……な、わけないよね。天然でやっちゃうから怖いんだ、こいつは。
このこのこの~、オシオキしちゃうぞ~。
ちゅっ。ちゅーっ。
「わ、わっ!」
あいつの首筋に跡が残るくらいのキッツーイキス。
これで明日、唯と会った時が楽しみだねえ。
うふふふふ……。

で、ひっくり返って私が上になってあいつのアレの上に顔を持って来てぇ、
アレをつんつん突つきながら言ってみる。
「うふふっ。じゃ、これ舐めてあげよっか。ダーリン♪」
「えっ!?」
ちらっと見上げてみると、あいつちょっと期待してるみたいで顔を赤くしてドキドキしてる。
あ、アレがちょっとおっきくなってきた。
んふふ、かーわいいっ♪
で、ニコッと笑ってぇ、
「ぺろっ」
「うっ!」
あいつの体がビクッと敏感に反応して、おっ、またアレが少し大きくなった。
ほんっと、なんてかわいいんだ、こいつぅ!
じゃ、もう一回サービスしちゃう♪
「ぺろんっ」
「うはっ!」
おお、2回舐めただけなのに、ビクンビクン言ってもうすっかり大きくなっちゃってるよ。
しかし、これだけでかくなるんだ。さっすが男の子だねぇ。
で、上目遣いのチョーハツ的な眼差しであいつに言ってみちゃう。
「ほら、嬉しいでしょ? こんな美少女女子高生にフェラしてもらえるなんて、幸せだよねえ」
「あ、う……」
あいつ、ちょっと赤くなってるけど否定しない。おっ、それって……
「あ。あんたもしかして、私のこと美少女って思ってくれてるんだ」
「な、何言ってやがる……」
お、逆らうフリをしてるな。んじゃ、ちょっとつまみ上げて、
「ぺろっ」
「はうっ!」
また体が仰け反った。うふふ……体は正直だねぇ、ダーリン♪
じゃ、特別大サービスして上げようかな。
「ね、ダーリン。ケータイ貸してね」
そう言って、あいつのズボンのポケットからケータイを取り出してぇ、
自分に向けてカメラのレンズをセット。んで、
「私、籾岡里紗はぁ、ダーリンに永遠の愛を誓いますっ」
んなこと言ってニーッコリ笑って、
「ちゅっ」
パシャッ。
あいつのアレにキスしてる、私の愛の証を写真に収めた。
で、出来映えは……おお、これはなかなか。
ちょっと恥ずかしげに頬を赤らめた女子高生の私が、
キツリツしたあいつのぶっといアレの先っぽに、唇を押し付けて舌を絡めて熱ーいキス。
んー、その手の店に持って行けば高く売れそうだねぇ。うふふ……。
んで、あいつに見せびらかしてやる。
「ほら、ダーリンにプレゼント。明日から、これで抜いてもいいからね」
「ば、バカ、そんなの……」
で、ケータイを元のポケットに戻してご奉仕再開。
「ダーリン。好・き♪」
ちゅっ。
「はうっ!」
またアレに熱いキッス。んで、お腹の辺りに舌を這わせて、おっぱいをアレに当てて、
「ん……んあっ」
乳首をペロンと舐めて、クリクリと指で弄ってみちゃったり。
「ん、んっ」
おお、女になった時に調教した甲斐があったかな。随分感度が良くなっちゃってるよ。
うふふ、かわいいっ♪
そのまま乳首をクリクリペロペロして、お腹を前後にズラしてアレをスリスリして、
「ん、んん……んあっ」
手をアレに当ててお腹ではさんで、柔らかくモミモミシコシコしちゃったり。
「う……ううっ……あっ……り、里紗っ……」
おーおー、女の子みたいに気持ち良さそうによがっちゃってまあ。
ほんっと、可愛いね。このダーリンは。
じゃ、私も楽しんじゃおうかなっ♪
「ね、ダーリン。一緒にしよっ」
そー言って、シックス・ナインの体勢に移行。
おお、あいつのアレが目の前に。それを口に含もうとしたら……
「はぁ……」
「んあっ!?」
あいつが私のあそこに熱ーい息を吹きかけて来て、私の体がビクンと震えちゃう。
で、私の太ももを手で抱え込んで、チロチロと舌先でクリトリスをイジって来る。
「あ……あぁ……んっ……」
うう……この、舌先でくすぐられるみたいな微妙な感触が、なんとも……
「んっ……あっ……」
うくく……こいつ、なかなかやるじゃない……。よーし、
パクッ。
「うっ!」
あいつのアレを唇にくわえてやった。んで、
じゅる……じゅる……
顔を前後させて、あいつのアレを唇の輪で締め付けながらしごいてみる。
「うっ……んあっ……」
へへん。どーだ、たまんないだろー。んんん!?
ピトッ。
「あっ……」
あいつ、私のあそこにピッタリ舌を押し当てて、
グッ……グッ……
顔を小さく回しながらグイグイあそこに押し付けて、
ザラザラの舌でクリトリスを舐め転がしながらあそこを刺激してくる……。
「んっ……あはっ……」
こ、これは、なかなか……ううっ……。
しかも、だんだんあそこがあいつの口で暖められて気持ち良くなって来て、ああっ……
「あっ……あんっ……」
うわっ。私、AVみたいな声出しちゃってるよ。くそー、それじゃ、必殺技!
モミ、モミ……
「はわっ!?」
お、あいつの動きが一瞬止まった。
さすがに、私みたいな美少女にフェラされながら、しなやかな指で玉を優しーくモミモミってのは
堪えるわよねえ? うふふ……
あっ!?
モミ、モミ……
「んっ……んあっ……」
こ、こいつ……私のお尻をモミモミして来やがった……。
し、しかも、
ス……
「あ……あ……あ……」
せ、背筋に沿って、指先をスーッてなぞって……ううっ、この微妙な感触……あっ、だめっ……
「ん……あん……ダーリン……んっ……」
うわあ、もうこりゃまんまAVだわ。じゃ、私もAV女優になり切っちゃおうかな。
ぱくっ。じゅるじゅる……。
「んっ……んあっ……り、里紗……」
おお、ダーリンの腰もちょっとぷるぷる震えて来た。
じゃ、いよいよ行きますかぁ。
ちょっとだけ、ドキドキしちゃったりして……。

私、生まれたまんまの姿でベッドに横になって、ちょっと顔を赤らめちゃったりして、
「来て、ダーリン♪」
手を伸ばして、誘ってみちゃったりなんかして。
あいつも喜び勇んで、もうヌレヌレになっちゃった私のあそこにピトッとアレを当てて来た。
「じゃ、行くぜ」
そう言ってクッと腰を押し出して来る。私の中にググっとアレが入って来て、
「んっ……」
ズキッとちょっとだけ痛みが走ったけど、意外にあっさり奥まで届いちゃった。
「痛いか?」
あいつが私に聞いて来る。
ん、まあ確かに、痛いって言えば痛いんだけど……
「ううん。大丈夫」
なんとなく、そう答えてみた。
ま、実際こんな痛みなんて全然大したことないよね。
さっきまでの可哀想な私が感じてた、アレに比べればさ……。
「ふふっ……」
なんだか軽い笑いと一緒に、一滴だけ涙が零れ落ちた。
あいつ、それを指で拭い取って、
「やっぱり痛いのか?」
そんな事聞いて来た。私、クスッと一笑いして、
「バーカ」
って言いながらあいつにアッカンベーしてやった。
そしたらあいつ、またなんかヤレヤレって顔して、
「じゃ、行くぜ」
そう言って腰を振り出した。
「んっ……あっ……」
ふふ……。
まだ、痛いってだけかな。
でも、まあいいや。その分だけ、幸せがいっぱい伝わって来るから。
パン、パン、パン。
AVみたいな音がして、だんだんあいつの腰の動きが速くなる。
「うっ……くっ……!」
おお、あいつってば必死になっちゃって。
私のあそこって、気持ちいいのかな。
でも、こいつの気持ち良さそうな顔見てると、それだけでちょっと幸せな気分になるな。
あ、私もなんだか、胸の真ん中と腰の辺りがジンワリ暖かくなってきた……。
「あっ……リト……リト……」
「うっ……里紗……里紗っ……!」
お、あいつの腰がブルブル震え出した。
ズボッ。
あいつがアレを私から引き抜いた。
「いいよ。今日は、大丈夫な日だから」
「そ、そうなのか?」
「うん」
そう答えてやるとあいつ、もう一度私のあそこにアレを入れてまたパンパンし始めて、
「うっ……あっ……くっ……で、出るっ……うっ!」
ビュッ! ビュッ!
目を一瞬閉じて腰をブルっと震わせて、私の中にいっぱい精液を出して来た。

「ふー……」
出し終わったあいつが、私の上で大きなため息を一つ吐いた。
で、私に尋ねて来る。
「どうだった?」
私はニヤッと笑って、答えて上げる。
「うふふっ。ダーリンの、ス・ケ・ベ♪」
ちゅっ。
またまた、ダーリンのお口にご褒美のキッス。
そしたらあいつちょっと苦笑いして、
「お前って、本当にキャラ変わったよなあ」
そんな事言って、私の横に体を下ろす。
私、ゴロンと転がってあいつの上に乗っかって、おっぱいをスリスリあいつに擦り付けながら
喉をゴロゴロ鳴らして甘えてみる。
「うふふっ。にゃーん♪ だってぇ、私ダーリンが大好きなんだもーん」
で、ニコッと微笑んで、ちょっと困った顔してるダーリンの唇にちゅ……て優しく愛のこもったキス。
ほんっとにねぇ。自分でも、ちょっと意外だな。
私、愛に目覚めちゃったのかなぁ。
なんか、ダーリンに尽くしてる、って思うだけで体がゾクゾクしちゃって、
嬉しくってたまんなくなっちゃうんだよね。
そっかぁ。私、尽くしちゃう系の女だったんだ。
それなら、私は私の望みを叶えるべく行動せねばなるまい! うふふふ……
「ね、ダーリン。コスプレとか好き?」
「え?」
私、あいつのアレをコスコスしながら言ってみた。
「私、裸エプロン付けて料理作るから、ダーリンが後ろから私に抱き着いて犯すとかぁ」
「え……」
お、あいつってば、ちょっと想像してアレが少し大きくなってきたみたい。うふふ♪
「それとも、制服着てフェラしてあげよっか。あ、どうせなら、今度学校のトイレでやろうか!」
「お、おいっ! そんなことしたら、古手川が……」
あー!?
なんでここでまた、唯の名前が出て来るかなあ。ダーリンのいけずぅ。
ぎゅっ。
「いっ!?」
アレをつねられて、あいつがちょっと痛そうな声を上げる。
んで、さっきから気になってたことをちょっと尋ねてみる。
「でもさ。良かったの? あんた、唯と付き合ってたんじゃないの?」
「あ、その事だけど、実はな……」

「へー! ララちぃがそんなことをねぇ」
話を聞いて、ちょっと感心しちゃった。
一夫多妻かぁ。さっすがララちぃ、進んでるぅ。
「お前、どう思う?」
「ん、いいんじゃない?」
あっさり答えてみる。
好きな人みんなと付き合う、かぁ。
正直言うと、ほんのちょっと妬けちゃう気もするけど。
ま、いっか。私、ララちぃも春菜も好きだしね。こいつも好きっつーのなら、それでもいいかな。
あれ? でも……
「唯はこの事どう言ってた?」
「え!? えっと、あの……ララと、春菜ちゃんのことは一応許可取ったんだけどさ……
お前のことは、その……ちょ、ちょっとだけ、言い出しにくかったっつーか……」
はーん? ってことは……
「じゃ、私とあんた、不倫ってこと?」
「え!?」
お、あいつがドキッとした顔してる。
うーん、不倫かぁ。
ま、それもまた、なんだかイケナイ響きがあってドキドキして来るじゃない?
ニンマリと笑みを浮かべて、あいつのアレをコスコスしてみる。
「あっ……」
「ね、ダーリン。不倫の続きしよっか?」
「あ、う……」
言ってる間に、アレがどんどん大きくなって来る。
んー、さっすが血気盛んな男の子だねぇ。
せっかくだから、このまま私達のアツアツラブラブなとこ、ママに見せつけちゃおうかな。
一体、どんな顔するかな。うふふ……

そんで、次の日の朝。
私は意気揚々と学校にやってきた。
教室に入ったら、お! あいつと唯が、顔を赤くして見つめ合っちゃってる。
朝からアッツアツだねぇ、うふふ……
「はーい♪ お2人さん! 今日も仲が良いねぇ」
ビクッ!
見つめ合ってる2人が、私の方に振り向く。
「も、籾岡……」「籾岡さん……」
で私、あいつに近付きながら、ポケットに忍ばせてあるケータイのメール送信ボタンを押してみる。
ピロピロリン♪
あいつのポケットから着信音が鳴り出した。
「あ、ダーリン、メール来てるよ」
って言いながらあいつのポケットに手を突っ込んで、
「お、おいっ!?」
あいつに文句を言うヒマも与えずに、片手でパパパッとケータイを操作して唯に渡す。
「えっ!?」
おー。唯の顔、また真っ青になっちゃってる。
「ゆ、ゆ、結城君っ!? こ、これ、どういうことっ!?」
で、あいつもケータイを覗き込んで……
「え……あ!?」
目をまん丸にして驚いてる。
ま、そりゃそうだよね。
今、あいつのケータイに映ってるのは、私が昨日こっそり自分のケータイに転送して、
たった今メールで送りつけた、あいつの浮気現場の写真なんだもん。うふふ……
「お、お前……」
あいつがガンメンソーハクになって私の方を振り向く。
で、私はニッコリ笑ってぇ、
「うふっ。昨日は気持ち良かったでしょ? ダーリン♪」
そう言ってダーリンの顔を引き寄せて、唇にちゅっとキスして上げる。
「あーっ!!」
そんなアッツアツの私達2人の前で、唯が肩をブルブル震わせながらボーゼンとしてる。
「結城君……あなたって人は……あなたって人は……!!」
お、これは。唯火山、爆発3秒前です! 避難勧告が発令されました!
すぐに避難しなくちゃね。ダーリン♪
グイッとあいつの腕を引っ張って、そそくさと逃げ出してみる。
「こらーっ!! 待ちなさい、2人とも!!」
追いかけて来る唯の罵声をさらっと聞き流しながら、あいつの顔を覗いてみたら、
「ったく……お前なぁ……」
はぁ……とため息を吐きながら、呆れ顔で私の方を見てる。
ふふふっ。
私ほどの美少女と他の女に二股掛けようってんだから、覚悟は出来てるよね? ダーリン♪
「こらーっ! そこの2人、止まりなさいっ!!」
嫉妬に狂った婦人警官の叫び声を聞きながら私、
「うふふっ。愛してるよ、ダーリン♪」
ちゅっ! とダーリンのほっぺたに熱ーいラブリーキッスをしてあげちゃった♪
(終)

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最終更新:2010年05月24日 00:57