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[[《BACK》>—砂上墓所8—]]  「開かずの石扉」の封印は解いた。 その向こう側に潜んでいた脅威はひとまず去った。 激しい戦いで負った傷もとりあえず手当てした。 「…さぁ、ようやくこの部屋の中を調べることができます。」 「そうだね…。長い道のりだったよね。」 毒を受けた右手に解毒薬を塗り、包帯で覆ったカネモリと、 打撲した数ヶ所に応急処置をし、包帯を巻いたジュリアは、 愚王配下の薬師の研究成果を封印した石室へと再び入っていった。  「どぉ、何か役に立つコト書いてるー?」 古代の文字の読めないジュリアは、ひたすら仕舞い込まれていた古文書を取り出して カネモリに読んでもらっていた…。 「う〜ん……、 この国では、科学や錬金術はそれほど進んではいなかったようですね。 硫黄や水銀は発見されていましたが、使い方が間違っています。 …このような使い方では、どちらも毒になるだけですよ…。」 ………………………………………………。 ……………………………。 ………………。 〈パタン〉 「もう良いでしょう。ここで新たに得られるものは…… !?」 「ん、どーしたの?」 「『元素(エレメント)』の気配がします!」 半ば投げやりだった錬金術師の表情が一変! 「えっ!? 何の元素?」 「『火』と『土』、それから…『風』。」 「えーッ!!?」 カネモリがツカツカと箪笥に向かい、ひとつの引き出しを開くと、 〈……………………〉 赤い光を放つ小石大の「火の元素」が、 それより下の段にある少し大きめの引き出しを開くと、 〈……………………〉 黄色い光を放つ4インチ大の「土の元素」が、それぞれ姿を見せた。 「ほえぇーっっ……。」 「大きさや純度も申し分ありません。これらは立派な『元素』です! …あの不死の薬師は、錬金術の心得があったのですね…。」 「元素」は、その本質を理解した者以外には価値がない。 カネモリは感嘆の声を上げながら、それらを袖口に仕舞ってゆく。 「ところで…『風』は?」 「それが…、気配があまりに微弱で、しかも…」 振り返り、石壁を指差す。 「向こうの方から…、感じられるのです。」 「あの向こうは隣の部屋だよ。行ってみよ!」  「開かずの石扉」の部屋の隣は、やはり扉に鍵が掛けられた、不自然なほど小さな 小部屋だった。 ………………………………………………。 ……………………………。 ………………。 〈カチリ〉 鍵を解き、戸を開くと… 〈……………………〉 『…風!?』 人ひとりがようやく入れる程度の小部屋に、風が満ちていた。 覗き込んでみると、石がちょうど上り階段のように組まれている。 「ねぇっ、コレ登ったら、外に出られるンじゃない?」 「…工事用の通路でしょうか?」 カネモリはあまりに都合良すぎる「出口」に懐疑的であったが… 「……………………。」 これまで通ってきた道のりの険しさを考えると、つい「近道」の誘惑に負けそうになる。 「…わかりました、ここから外に出てみましょう。」  数々の冒険をこなして疲れていたふたりにとって、石段は若干急に感じられたが、 活力薬で体力を補いながら歩き進んでゆくうちに… 『……………………』 彼らの目前に、涼しい夜風と満天の星が広がっていた! 「やったー! 脱出成功だよー☆」  隠し通路の出口に腰掛け、しばらく夜風の爽やかさを感じるカネモリとジュリア。 「…ねぇ、結局『風の元素』だけは見つからなかったね?」 「…そうですね…。 これで、大陸南部での元素探しは行き詰まってしまいました。」 「だったら、大陸北部に行くしかないね。 …どう、いったんリエステールに帰って体勢を立て直すッてのは?」 「そうですね。仕事も溜まっていますし…。」 「ナニそれ!? 『仕事』ッて?」 「わたくしには『医者の代行人』としての仕事もあるのです。 何人もの病人が、わたくしの往診を待っているのですから。 …エリクシールが出来上がるまで、わたくしの往診は続きます…。」 「…ふーん、たいへんだね。 でも、一日くらいは休み取るんだよ!」 「わかりました。 …それでは、そろそろリエステールに向かいましょうか。」 「うん!」  こうして、カネモリとジュリアは砂上墓所を後にした。 …ふたりが探し求めるものは、はたしてこの世のどこに存在するのだろうか? まだ見ぬ大地に吹く風だけが、それを知っている。                                 [[《次回に続く》>—フローナ〜ルナータ1—]] ---- [[あとがき>—砂上墓所 あとがき—]]
[[《BACK》>—砂上墓所8—]]  「開かずの石扉」の封印は解いた。 その向こう側に潜んでいた脅威はひとまず去った。 激しい戦いで負った傷もとりあえず手当てした。 「…さぁ、ようやくこの部屋の中を調べることができます。」 「そうだね…。長い道のりだったよね。」 毒を受けた右手に解毒薬を塗り、包帯で覆ったカネモリと、 打撲した数ヶ所に応急処置をし、包帯を巻いたジュリアは、 愚王配下の薬師の研究成果を封印した石室へと再び入っていった。  「どぉ、何か役に立つコト書いてるー?」 古代の文字の読めないジュリアは、ひたすら仕舞い込まれていた古文書を取り出して カネモリに読んでもらっていた。 「う〜ん……、 この国では、科学や錬金術はそれほど進んではいなかったようですね。 硫黄や水銀は発見されていましたが、使い方が間違っています。 …このような使い方では、どちらも毒になるだけですよ…。」 ………………………………………………。 ……………………………。 ………………。 〈パタン〉 「もう良いでしょう。ここで新たに得られるものは…… !?」 「ん、どーしたの?」 「『元素(エレメント)』の気配がします!」 半ば投げやりだった錬金術師の表情が一変! 「えっ!? 何の元素?」 「『火』と『土』、それから…、『風』。」 「えーッ!!?」 カネモリがツカツカと箪笥に向かい、ひとつの引き出しを開くと、 〈……………………〉 赤い光を放つ小石大の「火の元素」が、 それより下の段にある少し大きめの引き出しを開くと、 〈……………………〉 黄色い光を放つ4インチ大の「土の元素」が、それぞれ姿を見せた。 「ほえぇーっっ……。」 「大きさや純度も申し分ありません。これらは立派な『元素』です! …あの不死の薬師は、錬金術の心得があったのですね…。」 「元素」は、その本質を理解した者以外には価値がない。 カネモリは感嘆の声を上げながら、それらを袖口に仕舞ってゆく。 「ところで…『風』は?」 「それが…、気配があまりに微弱で、しかも…」 振り返り、石壁を指差す。 「向こうの方から…、感じられるのです。」 「あの向こうは隣の部屋だよ。行ってみよ!」  「開かずの石扉」の部屋の隣は、やはり扉に鍵が掛けられた、不自然なほど小さな 小部屋だった。 ………………………………………………。 ……………………………。 ………………。 〈カチリ〉 鍵を解き、戸を開くと… 〈……………………〉 『…風!?』 人ひとりがようやく入れる程度の小部屋に、風が満ちていた。 覗き込んでみると、石がちょうど上り階段のように組まれている。 「ねぇっ、コレ登ったら、外に出られるンじゃない?」 「工事用の通路でしょうか?」 カネモリはあまりに都合良すぎる「出口」に懐疑的であったが… 「……………………。」 これまで通ってきた道のりの険しさを考えると、つい「近道」の誘惑に負けそうになる。 「…わかりました、ここから外に出てみましょう。」  数々の冒険をこなして疲れていたふたりにとって、石段は若干急に感じられたが、 活力薬で体力を補いながら歩き進んでゆくうちに… 『……………………』 彼らの目前に、涼しい夜風と満天の星が広がっていた! 「やったー! 脱出成功だよー☆」  隠し通路の出口に腰掛け、しばらく夜風の爽やかさを感じるカネモリとジュリア。 「…ねぇ、結局『風の元素』だけは見つからなかったね?」 「そうですね…。 これで、大陸南部での元素探しは行き詰まってしまいました。」 「だったら、大陸北部に行くしかないね。 …どう、いったんリエステールに帰って体勢を立て直すッてのは?」 「そうですね。仕事も溜まっていますし…。」 「ナニそれ!? 『仕事』ッて?」 「わたくしには『医者の代行人』としての仕事もあるのです。 何人もの病人が、わたくしの往診を待っているのですから。 …エリクシールが出来上がるまで、わたくしの往診は続きます…。」 「…ふーん、たいへんだね。 でも、一日くらいは休み取るんだよ!」 「わかりました。 …それでは、そろそろリエステールに向かいましょうか。」 「うん!」  こうして、カネモリとジュリアは砂上墓所を後にした。 ふたりが探し求めるものは、はたしてこの世のどこに存在するのだろうか? まだ見ぬ大地に吹く風だけが、それを知っている。                                 [[《次回に続く》>—フローナ〜ルナータ1—]] ---- [[あとがき>—砂上墓所 あとがき—]]

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