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―7―






盗賊のねぐらは、モレクの町から見て鉱山の裏側の、天然洞窟を利用して作られていた。
天然洞窟と言っても鉱山や『巣窟』とはつながっておらず、完全に独立した、ただの空洞である。
が、広さだけならそれなりのもので、数十人の集団戦闘も充分に行える広さだった。
ねぐらにたどり着いて、盗賊への投降指示を出す間もなく戦闘が開始する。
盗賊団の頭は数十人の部下に守られるように奥にある岩に腰かけて、その戦闘を余裕の表情で眺めているようだった。
―なんだかんだといって自警団が長期にわたって苦戦してきた相手である、末端の兵士でもそれなりに力を持っているのだろう。
「アルはそのまま後方援護! クーは左へ!!」
「レオン、私は?」
「ティールは俺と中央だ!!」
ティールと共にいたチームのリーダー、セイクリッドのレオンは、戦場全体の様子と状況を見極め、時々自分のチームメンバーであるアルト、クリスの二人と、ティールに指示を飛ばしている。
自警団派遣のナイトと教会のビショップとジャッジメントは、そちらのほうで独自に指揮をとっているらしく、ビショップの聖術治療はティール達四人へも行われているものの、こちらの四人と連携をとれているとは言いがたい。
それゆえに、レオンの3人への指示はそれらのフォローをする形で組み立てられているようだった。
「ちっ、どっちが寄せ集めかわかりゃしねぇな」
レオンのその呟きに、口にこそ出さないが、もっともだ、とティールも思っていた。
自警団は自警団で統率は取れているのかもしれないが、共同戦線を張っているこちらの事をもう少し視界に入れるべきだろう、と。
むしろこっちが向こうに合わせているのでは、向こうの指揮は本当に統率がとれているとは言えないのかもしれない。
「それにしても数が多いね…一人一人は大した事無いけど……」
そう言うのは、左方を攻める部隊騎士(レンジャーナイト)のクリス。
後方から闇遣い(ネクロマンサ)のアルトと、ジャッジメントの魔法の援護は飛んできているが、このままでは頭の元へたどり着くにはまだまだ時間がかかるだろう。
「……ん?」
が、一瞬、ティールの視界に、盗賊の陣取りの一部の、隙ができている場所が入りこんでいた。
ぱっと見人で埋まっているように見えるが、その一部だけ人数が少ない。
思いっきり突っ込めば、頭の所へ一気に攻め入る事も可能かもしれない。
……だが、口に出して仲間にその”弱所”の位置を知らせれば向こうもその場所に気付いてしまう。
「―レオン、できるだけ雑魚を抑えておいて」
「何?」
ただそれだけを言い放ち、自分は一歩後ろへと下がるティール。
だが、それは逃げるための後退ではなく……勢いをつけるための、助走距離を作るための後退。
『―滾るは心――燃えるは魂――我が力、内なる灯火と共に――』
自らの魂に呼びかける、精神集中の言葉。
そして、次の瞬間に行われるのは、自らの力の発現―魂の炎の解放。
「――ブレイブハート!!」
その叫びと共に、黒い瞳が青く変化し、そしてその全身を包みこむように青白い炎のようなオーラが立ち昇る。
―周囲にいた者は、見慣れぬ能力に、その炎が発する威圧感に、一瞬その動きを止めてしまっていた。
「ブレイブ……チャリオット!!!」
その一瞬の隙を突き、全身を戦車の如き炎の塊と化し、狙い澄ました場所へと突っ込むティール。
案の定その部分の『壁』は薄く、一瞬抵抗されたものの、それらはすべて弾き飛ばし、そのまま炎を纏い続け、頭の懐へと飛び込んでいく。
「―っ!?」
―が、しかし、即座に反応した頭は、巨大な戦斧を盾代わりに、ティールの突撃を正面から受け止めていた。
「―っ! 全員ティールを守れ!! 雑魚を行かせるな!!」
一瞬、自分達が張っていた壁をぶち抜かれた盗賊団の隊列が崩れ、その隙を突いてティールと頭を背にする位置に滑り込むレオン。
今まで頭の元へと行かせ無いように陣取っていた盗賊達が、今度は頭の元へ助けに行かなければならない状態に急変する。
「降参して。 1対1なら、私は負けないから!」
背後の追撃が気にならないわけでは無い、追撃を防いでくれる仲間が心配を感じないわけでもない。
―それでも、この状況で今目の前の相手に挑めるのは自分だけ。
そして、こういう集団はトップを倒せば統率も冷静さも失い、あとは楽に片づけられる。
「言うな小娘……だが、俺を舐めるな!!」
恐らく狂戦士(ベルセルク)であろう盗賊の頭は、戦斧を豪快に振り回し始める。
―狂乱の円月―
いきなり放ってくるにしては豪快な大技だが、巨大な斧を振り回しまくるその攻撃は、対峙する者に近付く隙すらも与えない。
もし近付けば、間合いに入った瞬間ミンチのような状態に切り裂かれるだろう。
しかも、武器があのサイズではリーチで勝るハルバードも途中で弾かれ、通らない。
「……だったら、間合いの外から討てばいいだけだよね」
技を放ちながら、徐々に近付いてくる頭を前に、少し間合いを広げ、構えるティール。
その瞬間から、全身を包む炎が手元の槍に向けて集束を始める。
「ははははは、死ね! 小娘!!」
―そして、頭が一気に間合いを詰めようと走り出そうとした瞬間だった。
「ブレイブソード!!」
魂の炎を受け、燃え盛るハルバードを左から右へ、横一線に空を薙ぎ払った。
「がはっ!?」
その瞬間、ハルバードに宿っていた炎が解放され、その軌跡から三日月のような形状を取って飛翔。
そのまま振り回している戦斧もろとも、頭の身体へと直撃する。
その一撃に狼狽する周囲の盗賊達を尻目に、ティールは斧を持つ右手に向けて、さらに一撃を放つ。
「―――っ!」
「ぐああああああっ!!!?」
……右手首から先を斬り落とすという、祈るような無言の叫びを込めての一撃。
例え相手が悪人でも、その身体の一部を斬りおとすなど、ティール自身にとっても気持ちのいいものでは無い。
「―これで、終わり……」
―すぐに適切な処置を行わなければ、出血過多という理由で死に至るかもしれないが、武器を持つ手を落とし、その動きを封じてしまえば、命までは奪わず、決着はつけられる。
ティールは倒れた頭の胸に足を乗せ、喉笛の部分に槍を突きつける事で、”少しでも動けば死を招く”という意思を叩きつけた。
同時に、案の定盗賊一味全体に動揺が広がり、間もなく盗賊討伐の戦闘は収束を見せていた。

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