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―2―





出会い頭にこちらの持っているモノを渡してくれと言い、断ったら断ったで即座に実力行使に移る。
それはまっとうな人間ならば決してとることのない手段で、躊躇無くそれを行えるというその態度は、世間一般的に言う『悪』の精神に近いものをもっているということになる。
自分自身の考えが正義とは言わないが、気にいらないタイプの相手であることは確かだった。
「シャアア!!」
取り囲んでいたクレセントのうちの一人が、奇声をあげて飛びかかる。
ティールは鋭く狙い済まして振り回される敵のカタールを横に一歩跳ねて回避、そのまま適当な間合いを取り、その手のハルバードで一撃を叩きこむ。
「…っと、危ない」
一人が軽く吹き飛んで行った直後、また別の方向から時間差で飛びかかってくる残る四人。
一人一人の実力はティールとほぼ同レベルのようだが、このままでは数と連携の差で押されてしまうだろう。
「――インフェナリィハグ!!」
「―!」
しかし、この状況で最も危惧すべきはその数ではなく、後方で呪文を行使する男の存在。
地面から湧き出るように表れた黒い触手を跳び上がる事で回避し、そのまま敵を纏めて吹き飛ばす勢いで、空中からハルバードを振り回した。
だが、相手の反応が一瞬早く、わずかにその衣装をかすめるものの、直撃とまではいかなかった。
しかし、着地点となる足元から敵を払えただけでもティールにとっては充分なもの。
そのまま地を蹴り、散開したクレセントの合間を縫って一気にネクロマンサの男との間合いを詰める。
「なっ……」
「足には自信があるからね。 ……悪いけど、あなたは信用できない」
今自分のカバンの中にあるたまごは、とにかく貴重品であることは理解できる。
それが意味するところがなんなのかまではわからないが、こうも胡散臭い相手に預けると、後になってろくでもない事がおこるだろうという予測はつけていた。
「――ブレイブハート――」
そのままハルバードを振りかざし、ティールは魂の炎を解放すると同時に一撃を見舞おうとした。
その攻撃は、それなりに打たれ強い前衛でもなければ、それだけで気絶するレベルの威力を持つ。
……が、一瞬早く一人のクレセントがティールと男の下へと接近し、その身体に刃を突き立てようと武器を振り上げた。
「……くっ!」
さすがにこのまま男を狙っていては自分が危ないと踏んだのか、とっさに攻撃対象を飛びかかってきたクレセントに切り替える。
カタールとハルバードというリーチの差で、きわどくも一瞬早くティールの一撃がその身体に突き刺さり、クレセントは血を流しつつ大きく吹き飛んでいった。
……そのまま気を失ったのか、そのクレセントは倒れたまま動こうともしない。
―……アレはもう相手しなくてよさそうだね―
などと思いながらその様子に目を向けていると、間髪入れず別のクレセント達が攻撃を加えようと接近していた。
その動きにとまどいなどはなく、吹き飛んでいった一人の事など全く意識の中にいれていない。
「……やっぱり、ロクな相手じゃないか」
本当に”仲間”ならば、倒されれば多少の動揺は広がるものである。
それを全く関係ないかのように振舞うのは、やはり好きになれそうな相手には感じられない。
「ぼんやりしていていいのか? ―我が手に宿りし青の精霊よ 全てを貫く槍となれ― アイスニードル!!」
「シャアア!!」
男が数本の氷の槍を放つのと同時に、二人のクレセントがティールに跳びかかる。
「くっ……」
ティールはかろうじて魔法を回避し、直後に至近距離まで迫っていた二人のうちの一人に一撃を加える。
だが、残った一人の攻撃を中断させる余裕は無く、やや無理な体勢ながら回避行動に出る。
……しかし、その行動が大きな失態を引き起こした。
「――あっ!?」
敵の刃が首から下げていたバッグのひもに当たり、バッグはそのまま放り出されるかのように空中に舞う。
そして、ギリギリまで張り詰めていたバッグの蓋を留めるボタンが、限界が来たのか弾け飛び、その勢いでたまごが外へとこぼれ落ちていった。
「そのまま奪いとれ!!」
耳に飛び込んでくるのは、叫ぶような男の声。
だが、ティールもそうはさせまいと瞬時に体勢を立て直し、地面に向かって落ちて行こうとするたまごに向かって飛び込んでいく。
跳びかかるスピードは全員ほぼ互角。しかし数の上では四対一……奪い合いになれば、確実に勝利は来ないだろう。
―くっ……だめなの…!?―
こちらの体勢が崩れていた分かだろうか、わずかに敵の反応の方が早かったのか、ティールより先に敵の一人の手がたまごに触れようとしていた。
……そして、負けという思考が脳裏をよぎったその時……
「――なっ……!?」
突如としてたまごが強く輝きだし、ピシリ、とその頂点から大きく亀裂が走る。
予想だにしなかった展開に、焦る男。
クレセント達も、突然の発光と亀裂に動揺したのか、たまごが指先に触れるものの、そのまま掴みとることは出来ず、転げ落ちていった。
そして、一歩遅れて飛び込んだティールの腕に、亀裂の入ったたまごは収められる。
……その直後だった。
「きゃっ!!?」

たまごの発光が最大限まで膨れあがり、大きな魔力の奔流と共に、その場は強い光に包みこまれていた。

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