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 風をもとめて —リエステール—


 〈カタン…キィ……〉
ここは大陸南部に開けた大きく平和な都・リエステール。
生活用品、武器防具、魔法道具、宝飾品、薬。
ありとあらゆる道具の店が大通りに面して並ぶ、人呼んで「道具屋通り」の一角にある店に、
ひとりの女性が入ってゆく。
その玄関に掲げられた白木の看板には、黒い墨でこう筆書きされていた。
『各種くすり調合いたします 錬金術師カネモリの工房』

 〈コポコポコポ……〉
奥の方から聞こえる湯の沸くような音がかえって静けさを際立たせる店内を、女性は
周囲を見回しながら無人のカウンターに向かって歩く。
「…………。」
短めに刈り揃えられた栗色の髪と、深い緑の瞳。
化粧ッ気はないが整った顔立ち。勢いのある目元。
腰に一振りの剣を差しているが、肌に密着した薄手の衣服の上から部分的にプロテクターを
着けているだけで、鎧や盾で守りを固めた戦士たちとは違った印象を与える。
 〈チリン! チリリン…〉
『御用の方はチャイムを鳴らしてお待ち下さい』
との注意書き通り、彼女はカウンターに置かれたハンドチャイムを軽く振ってしばらく待つ。
すると、
「…こんにちは。ご用件は何でしょうか?」
カウンター向こうの通用口から、ひとりの男が姿を現した。
リエステールの住民にはあまり見られない、漆黒の髪と瞳。
顔立ちから察するに、齢(よわい)は40少し前。
生地をたっぷり使って仕立てられた前合わせの衣服を布の帯で整えた出で立ちも、
一般的なリエステール住民とは異なる雰囲気だ。
「えっと…、
キミが…錬金術師(アルケミスト)のカネモリさん?」
「はい、わたくしがカネモリですが…。」
すると、女剣士は無邪気な少年のように屈託ない笑顔を浮かべて、
「はじめまして!
ボクは支援士(ヘルパー)のジュリア。
酒場のマスターから依頼を受けて、挨拶に来ました!」
それに対し、錬金術師の男は驚きと喜び、それから戸惑いの入り交じった表情(かお) で、
「…まさか……。
あの『依頼』、引き受けて下さるのですか!?」
「そうだよ。
こんな依頼なんて前代未聞だけど、もう引き受けるッて決めちゃった。
だから、よろしくねっ!」