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―ティールサイド―




ドオオオォォォォン……


「一つ、落ちた…?」
遠くの方から何かが爆発するような音が聞こえてくる。
……目の前にいるガーゴイルの首を壊し、海の中へと叩き落とす。
そのまま音が聞こえてきた方向へと目をやると……どうやら、敵艦の内の一隻が撃沈されたらしく、煙を上げて徐々に沈んでいく。
―誰かが爆弾でも投げたか、火薬にでも火がついたのかな?―
…もしくは、両方。 味方が投げた爆弾が敵軍の火薬に引火し、そのまま艦全体をふっとばす大爆発にまではってんしたか、だ。
……単騎で目立たないように近付き、そのまま潜入、破壊、という一連の行動をスムーズに行える人間が一人いれば、どんな頑丈なものでも崩れ落ちる。
こういった小型戦艦などという兵器は、多くの場合内側からの攻撃に弱い。
「……チャンス!」
一瞬、敵船の上に入る者達の顔に動揺が走ったのを、ティールは見逃しはしなかった。
今まで一進一退の攻防を繰り広げていたにもかかわらず、いきなり味方艦の一隻が撃沈される。
そんな光景を目にすれば、誰でも動揺するだろう。
「――ブレイブハート!!」
敵全体が冷静さを取り戻すまでの数分が勝負。
今後の戦闘も考慮し、出力を抑えた形で能力を発動させるティール。
黒き瞳に少し青色が差しこみ、その次の瞬間には、飛来したガーゴイルの背を踏み台にして、一気に船の上へと跳び込んだ。
「なっ……!?」
「落ちろ!」
ダン! と大きく音を立てて目の前に着地し、”まさか”という顔で一瞬ひるんだ異国の民の一人の腹部に、思いきり強烈な蹴りを放つ。
そのまま海の中へと吹き飛ばされていく様を尻目に、手に持っていたハルバードを低い体勢で構え……
「ブレイブループ!!」
その切っ先で円を描くように、全方位に向けて振り回した。
瞬間、石を投げ込まれた水面の波紋のように、ティールを中心に青白い衝撃波が円形に広がっていく。
甲板にいた戦闘員は、その衝撃波に押され、次々と海へと落下していく。
「こいつ……っ!!」
「!!」
だが、一人だけ空中に飛び上がり攻撃を避け、落下する勢いに任せ、剣を振り下ろす男がいた。
「ガッ!!?」
しかし、その刃がティールに触れようかというまさにその瞬間、男の首に向けて一本の矢が突き刺さる。
……ティールと同じ船に同乗していた、<ruby>射手<rt>スナイパー</ruby>の弓だ。
「ゴメン、ありがとう」
ティールは自分の背後で弓を構えている青年に向けてそうひと声かけると、時間が惜しいとばかりに、一掃された敵船の上から別の敵船の方へと目を向けた。
……手前にいる5隻の内1隻は沈没、自分が立っているこの艦も、大きさから考えておそらくこれ以上の人員はいない。 だとすると事実上残っているのは前方に3隻、そして後方の8隻。
となると……
「ブレイブソード!!」
味方の船の上あたりに向けて、衝撃波を放つティール。
その一撃で上空にいた敵が離れ、味方船が一瞬だが自由になった。
「みんな! この艦の大砲は生きてる!! 操縦できる人がいるならそのまま使わせて貰うよ!!」
そして、その一瞬の隙をつき、戦艦に乗りこんでくる味方に向けてそう言い放つ。
「わかった。 船乗りの息子をなめるなよ!!」
一人の剣闘士(ブレイブマスター)が剣を収め操舵桿を握りそう叫ぶように答え、またいち早く大砲へと近付いた戦技使い(フェイタルスキル)が大砲の状態を確認する。
そして先程矢を射ったスナイパーは、聖騎士(パラディンナイト)と、この艦に近付いて来ようとする魔物を次々と叩き落としているようだった。
「よしっ、このまま向こうの艦を落としにいこう!!」
「アイサー!! てめぇらしっかり捕まってろよ!!!」
―馬車だとムチを握れば性格が変わる人がいるって聞くけど……―
なんとなく、そんな事が頭に浮かんだティールだった。






ディン・エミリアサイド―




「おい、あの艦こっちに来るぞ!!」
一方その頃、ディンとエミリアの乗る艦はその8隻のうちの一つからの砲撃の雨を、エミリアが周囲の海面から『氷の柱(フローズンピラー)』を発生させ、それを盾にしつつなんとかかいくぐっていた。
そんな中で、急に方向を変えて自分達のいる方へと進み始める戦艦を目にし、一人がそんな声を上げたのだが……
「……まて、なにかおかしい」
……敵艦のはずなのに、近くの空を飛んでいる魔物が攻撃を加えようと殺到している。
しかも、船の甲板をよく見てみれば、乗っているのは異国の民ではなく、自分たちの大陸の者達……味方の支援士たちだった。
「…………ティール、やっぱり来てたか……」
遠目ではあるがその顔ぶれの中に、全身黒づくめの衣装を身につけた子供を見つけ、安堵したようにそう呟くディン。
「安心しろ! あの艦は味方が奪ったヤツだ!!」
「……ディン!、叫んでる暇があるならオールを漕ぐのじゃ!!」
「お、おうっ!」
剣士としては、直接敵艦に乗り込みでもしなければ出番と言うものはほとんどない。
遠距離攻撃の手段を持つエミリアは、大砲の攻撃の防御に徹するしかなかったが、同乗した闇遣い(ネクロマンサ)の女性が闇魔法を撃ち続け、時に大砲の軌道を逸らし、時に近付こうとする魔物を撃ち落としている。
「よし抜けた!!」
主砲の射程圏を越えるまで接近した事でディン達の船への攻撃は止まるものの……今度は甲板にクロスボウを構えた兵士がずらりと並んでいた。
「アルト、あのへんに一発いけるか?」
「レオン、さすがにアレは遠いよ」
セイクリッドの青年、レオンが兵が並んでいるあたりを指差しながらネクロマンサのアルトに指示を飛ばす。
だが、帰ってきたのはそんな答え……弓で届かない距離に魔法を撃つのはかなり高度な事で、そんな距離に撃ちこめる魔術師はほとんどいない。
「そりゃそうだ」
そのあたりは理解しているのか、レオンはそれだけを言って周囲に眼を向け始める。
エミリアもまた、周囲を見渡して状況を確認するが、他の味方船は魔物や砲撃の相手に手をとられていてそれどころではない。
「……正面突破しかないようじゃの」
「……だな……と言いたいところだが、手はある」
「ほう?」
エミリアとレオンは、アルトも仲間に入れて3人で円陣を組むようにして作戦会議を始める。
「クリス、ディン、今から敵さんの目を隠すから、一気に突き進むぞ。」
そして、エミリアとアルトが納得したようにコクリと頷くと、レオンは自分のオールを手に取り、今度はディンと、隣でオールを持つ部隊騎士(レンジャーナイト)のクリスにそう呼びかけた。
「我が求むは仇なす者の破滅 契約の元に集いしは魔 覆うは闇 今ここに其の力を以って 粉砕せよ!!」
「光を纏い輝くは青の精 大気に舞いしその身を以って 我らを覆い隠せ!!」
魔法職の二人が詠唱をする間に、ディンとクリス、レオンの3人はかるく手の汗を拭き、いつでも船を漕ぎ出せる体制に入る。
―そして。
「シャドウグローブ!!」
「ダイヤモンドダスト!!」
アルトがその杖からシャドウグローブを海面に向けて撃ち出し、その爆発力を持って海の水を大きく巻き上げる。
同時にエミリアのダイヤモンドダストが自分たちの船を覆い、大量の水しぶきと氷の霧によって、敵艦側から船の姿は完全に覆い隠された。
視界に多少の影響が出るのはこちらも同じだが、こちらは敵船が浮かぶ方向も分かっているし、向こうは霧の向こうに隠れ、さらに動き回るような小さな的を狙わなければならない。
接近して乗り込む分には、これだけでも充分に利がある。
「いっけええええええ!!」
ディン達は思いっきりオールを漕ぎ出し、敵艦に向けて進み出した。