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「なんとか……全部片づけたけど、どうするの?」
52枚のカードが詰め込まれたトランプケースを手にし、それをジッとみつめるアリスにティールはそう呼びかけた。
今までは戦っている最中でもカードの再生は行われていたが、”まとめて全部”修復するには相当の時間がかかるらしく、もはや戦う手段は残されていないだろう。
「……一枚ずつ直すのは出来るけど……一枚づつ出していっても、意味ないよね」
トランプ兵一体と、こちらの前衛一人ではこちらのほうが戦闘力は上。
エミリアが抜けた今、最後の纏めて潰すような事は出来ないが、追いつめようと思えば最低でも20枚近くは同時に出さなければならず、完成した一枚を順に出していったところで結果は目に見えていた。
「アリス様……まだ、私がいます」
「でもアレは……できれば使いたくない……」
しかし、アルが突然動き出し、アリスに耳打ちするように言葉を発し、それを受けたアリスは、少し悲しそうな表情を見せてそう答える。
ティール達にまでは聞こえていないものの、急なその行動に、全員多少の警戒をするように武器を構えなおしていた。
「しかしこのホールも、どこかで監視されている。 シャマルもアリス様の力は承知しています。 戦う力が残っているのに放棄しては……ラビが……」
「……うん……わかってる……でも」
「アリス様、一人で背負わないでください。 ラビを……家族を守りたいのは、私も同じなのですから」
「…………」
アルが神妙な面持ちでそこまで口にしたところで、アリスはトランプケースから一枚のカードを取り出す。
その絵柄はティール達には見えてはいないが、裏面を見るだけでも『修復中』のものではなく、まだ傷もついていない一枚だということは理解できた。
「……わかった。 アル、お願い」
「仰せのままに」
最後にそう返事をすると、アルはアリスの下を離れ、一同の方へと進み、一礼。
「……みなさん、アリス様の尖兵をよくぞ撃破しました」
そして、そう口にすると同時に、彼女が纏う空気は今までの穏やかなものから一転、熟練の戦士の放つ、強者独特の鋭く重い物へと変貌を遂げる
……それだけではない、背後でアリスが手にしている一枚のカードが、白く強い光を放ち始め、そのまま宙を舞うようにしてアルの下へと飛んでいた。
「……ちょっと待って、トランプって確か、”53”枚あったよね……?」
それを目にしたジュリアが、ふとそんな事を口にする。
―あそこには”1人で53人の兵士の力をもつ”人間がいる―
そういえば、潜入前に表れた猫もそう言っていた。

『―契約の下アリスが命ず、我が力を糧に汝の真の姿を示せ―』

……そう、トランプを構成するカードは、それぞれのマークが13枚づつの52枚。
そして、一般的にババ抜きと呼ばれているゲームではハズレのカードだが、また別のゲームでは”最強”のカードとしても扱われる、53枚目のカード……


『――アルカナジョーカー!!』



アリスが高らかにその名を宣言した瞬間、アルの手元に移されていた最後の一枚――『JOKER』のカードが大きく輝き、その身体を包みこんだ。
「くっ……全員構えろ!!」
言われなくとも、という言葉を体現するかのように、ディンの声のとおりに再び戦闘体制へと移行する一同。
彼らの視界に映るのは、光に包まれるアルの姿。
だが、その先にいるのは先ほどまでのメイドではなく、黒色の鎧に身を包み、その刀身にスペード、ハート、クローバー、ダイヤの4つのシンボルが刻みこまれた大剣を手にしている。
……その姿こそ、アルカナ53騎士の頂点に立つ最後の一人である悪魔の騎士、『JOKER』のもの。
「ブレイドフォース!!」
包みこんでいた光が収まるやいなや、その剣から閃光を帯びた衝撃波が解き放たれた。
射線上にいたティールは横に跳びなんとか回避したが、その後ろに立ち、一瞬反応の遅れたレンジャーナイトが直撃を受け、爆散した衝撃波の威力で壁際まで吹っ飛ばされ、そのまま気を失ってしまう。
「こいつ……今までのと違う……!?」
「他の騎士は私の力の一部でしかない、同じと考えてもらっては困ります」
そう言っている間に走り出し、大剣を構えたままティール達との距離を一気に詰める。
そしてその勢いのまま剣を振りかざし、攻撃を放つ。
「このっ…!」
だが、一瞬早くディンが正面に出て、迫り来る剣に自らの剣をぶつけ、その軌道をずらすことでなんとか回避する。
……しかし、自身の剣も勢いに押されて体勢を崩し、一歩早く立ち直ったアルの一撃が、鎧の上からディンの身体に叩きこまれた。
「がっ!!?」
刃そのものは鎧が食い止めたものの、身体を貫通するような衝撃が走り、一瞬呼吸が止まるような感覚に襲われ、気を失うまではいかなくとも、そのままその場に倒れ込んでしまう。
「アル、後ろ!!」
「!」
その直後、アリスの声が響き、同時に剣がぶつかり合う金属音がホールに鳴り響いた。
ディンに一撃を加えているその間に回りこみ、攻撃を加えようとしたジュリアの剣とティールの槍は、紙一重のタイミングで受け止め、弾き飛ばされた。
「……大剣を、そんなスピードで振り回せるわけが……」
「自分の想像の範疇だけで世界が動いていると思わない事……言い忘れましたが、私は『悪魔』です。 確かにある程度の制約はありますが、人間以上の力を持っていても、なにも不可思議はないでしょう」
そう口にしつつ、不敵な笑みを浮かべるアル。
……だが、後方に立つアリスと共に、その顔には深い申し訳なさと、行き場の無い後悔と怒りが満ちているかのようだった。
元々、この戦いを二人は望んではいなかった。
この力は、出来ることならば本来立ち向かうべき『敵』に向けたかった。



「……ぐっ……皆、倒す気でやれ!! こいつ、レベルが違い過ぎる!!!」
……一瞬遅れて、なんとか立ち直ったディンが、渾身の力を込めてそう叫んでいた。