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南部格納庫付近の通路。
格納庫内で魔物に群がれかけたものの、数と勢いでどうにか室内を切り抜けた一行。
むしろ、敵側も密集しすぎて思い通りに動けない状態のようでもあった。

「っせええええい!!!」
……密集地帯を抜けたからと言って、戦闘が終わるわけでは無い。
一行は、陸戦系の魔物と敵軍兵士を交えた部隊との小競り合い的な戦闘を繰り返しながら、少しづつ通路を進んでいた。
「外から見る限りでも広いとは思っておったが、まさかここまで入り組んでおるとはのぉ……」
そんな中で、ふとエミリアがそんな一言を漏らす。
確かに、いままで進んで来た通路だけでも何度も分かれ道と出くわし、ふと見つけた扉を開けてみれば兵士の待機部屋だったり倉庫だったりと、部屋の並びにも一貫性が無い。
――まぁ、たまたま見つけた倉庫に治療薬などの物資が少し混じっていたので、カネモリの確認の元に失敬したりもしたのだが。
「侵入者を惑わせるために、迷路のような作りにしているのでしょう」
やや考え込みかけるエミリアに、カネモリがそう声をかける。
しかし、答えが返ってきたのはまた別の方角……しんがりのグループの一人、ジュリアからだった。
「あ、迷路だったら左手を壁に当てて歩けばゴールにいくって聞いた事あるよ」
「……いや、そんな単純なものでも無いようじゃぞ? ちょっと止まるのじゃ」
エミリアはそう言って全員の動きを制すと、荷物からその手に収まる程度の石の塊を取り出して、目の前の床に向かって投げつけた。
……石が床に当たってコン、となった直後、突然床のその部分が下に向かって開き、直ぐに閉じていった。
「落とし穴……なるほど、立体迷路か。 上下にまで動かされるんじゃ左手の法則は使えねーな」
「慎重に進めって事だな。 はぐれたりしたら二度と合流できない可能性の方が高い」
その光景を受けて、レオンとディンが軽く唸りながらそう口にする。
とりあえず、この通路は通れないと言う事で方向転換する一同だった。








『――エナジーアロー!!』
「―<ruby>呪文省略<rt>ショートカット</ruby>! フローズンピラー!!」
そのまま別の道を突き進み、ある曲がり角に差し掛かった瞬間だった。
聞き慣れない女性の声と共に、紫色の光矢が襲いかかり……とっさにエミリアが氷の壁を造りあげ、二種の魔法が衝突した瞬間、矢と氷壁はともに相殺して消え去っていた。
「魔術師もいたのか!?」
「そりゃいるでしょ……こんな広いんだし」
「……しかし、なにやら今までのとは格がようですが?」
視界の先にいたのは、特大のジルコンの塊を手にした妖艶な女性の姿。
それはカネモリの言葉通り、今まで目にしてきたいかにもな末端の兵士や、それらと比べると少しは格上に見えるかもしれない部隊兵長と比べると、幹部クラスと言っても過言ではなさそうな様相だった。
「あら、なかなか鋭い人もいるようね。 私はカリフ、この船の参謀と言えば分かりやすいかしら」
挑発するかのような目つきで髪をかき上げ、そう口にするカリフ。
その言葉に、エミリアが真っ先に反応し、杖を相手につきつけるように持ち、一歩前に出て口を開いた。
「参謀……なるほど、外に張っていた3種の結界を構築したのはお主じゃな? 魔術に秀でたものしか思いつかぬ構築式じゃったしのぉ」
「ええそうよ。 いかにも田舎育ちみたいな貴方にも、そのくらいわかる頭はあるみたいね」
「……逐一ムカツク言い回しをするのぉ、この年増」
「…………ふぅん、そう言う貴方もいい勝負じゃないかしら?」
―……恐い……―
女の戦いとは、基本的に限度がないと言われ、場合によっては行くところまで行ってしまうと言われている。
その場にいたエミリアとカリフ以外の全員が、その一瞬のやり取りに言い知れぬ恐怖感を抱いていたのは、決して気のせいでは無いだろう。
「まぁいいわ。 不意打ちが通じなかった以上、この場は退散させて貰おうかしら」
だが、その空気は不意に打ち壊され、妖しく笑ったカリフは踵を返して通路を走り出す。
その直後、ずらっと数名の兵士が追撃を防ぐように道を塞ごうとしたが……
「くそっ!!」
「逃がさないよ!!」
その一団はディンとジュリアをはじめとした前衛達に蹴散らされ、その道は通ってしまう。
「お前らまて! 罠だ!!」
しかし、約束稽古のように嫌にあっさりと倒されてしまった敵の様相から、瞬時に判断したレオンがそう叫ぶ。
……が、時すでに遅しとはこのことだろうか。
叫んだレオンの声に気付き、カリフの後を追うべく飛び出した一同が振り返ったその瞬間だった。
「なっ!!?」
ズン!! と言う音と共に、飛び出したグループと立ち止まっていたグループの間に壁がせり上がり、瞬時に二つに分断されてしまった。
―幹部自らが最前線に赴くと言う露骨な挑発。
それにひっかかった者と、ひっかからなかった者……数にして、12名づつと丁度半分に引き裂かれていた。



―――――――――――――――――――――

「くそっ、やられた……」
せり上がった壁を叩き、怒ったように声を荒げるレオン。
「落ちついてください、こうなってしまった以上仕方ありませんわ」
「……ああ、そうだったな……」
……とにかく、今は状況を確認するしかない。
とりあえず壁の向こうに対して呼びかけてみるが、壁が分厚いのかそもそも防音効果が施されているのかわからないが、向こうから返事が帰って来る様子がない。
事実上、向こうとの言葉による連携も絶たれたと見てまちがいないだろう。
「で、こっちにいるのは誰だ?」
メンバーによって、隊列の組み方も変わってくるもの。それを踏まえた上で、次の確認に移る。
……今この場にいるのはレオン本人とクリス、アルトのいつものチーム。 そしてセオ、イル、クローディアの三人と、従騎士団兵が6名の、計12名。
「……不慣れな組み合わせじゃないのが唯一の救いだな」
例えば、アルトでなくエミリアだったら、戦闘のリズムを掴みきれずいつものチームワークは出せないだろう。
そう言う意味では、不幸中の幸いと言えるかもしれない。
「だな。 ……ジッとしてても仕方ない、別の道を探して、なんとか合流しよう」
そしてレオンのその言葉を受け、セオがそう口にする。
ここは敵陣。 あまりジッとしているのは好ましくい行動とは言えない。

『―その前に、して欲しい事があるよ』

「……今のは……?」
「……この声は……あのネコのものですわね。」
突如聞こえてきた声に戸惑う一行と、その中で冷静に判断するクローディア。
レオン一行とセオ、イルの5人は、先ほどこのネコが現れた時には、その場にいなかったゆえの反応の差だろう。
『憶えていてくれたかい?』
「まあ……貴方のようなネコ、忘れようにも忘れられませんわ」
「なんだ、知り合いなのか?」
きょとんとした顔でレオンはそう尋ねるが、クローディアはなんと答えていいかわからない、といった感じの表情で、とりあえず曖昧な返事を返しておくことにした。
敵とは感じられず、かといって味方としても信じがたい。目の前に顔だけ浮き上がったネコは、そういう存在なのだ。
『それより、この艦にはひとりの女の子がいてね、大事な大事なウサギを人質に取られて無理矢理戦わされてるんだ』
「――なんですって?」
『キミたちがウサギを取り返してくれたら、その子はキミたちの味方になるだろう。 戦力は多い方がよくないかい?』
「……ちょっと待て、なんでそんな事を俺達に言う? それにお前が敵の差し金で無いという証拠も無いぞ」
「レオンさん、抑えてくださいまし。 状況が分からない以上、黙って従うのも一つの方法ですわ」
「確かにな……罠だったらそれまでだが、他に情報も無いのは確かだ。 何もしないより、動いたほうがいい」
少し探りを入れるように声を返したレオンだったが、クローディアとセオがその行動を差しとめる。
……その点については、レオン自信も自覚はしていたらしく、それ以上は何も言わずに、気は進まないようだったが、ひとつ頷いていた。
『じゃ、案内しよう。 オイラは戦う力は無いから、助けに行けなくて困ってたんだ』
宙に浮くネコの頭はにやついたような顔でさらに笑うと、そう言ってふわふわと通路を飛び始めた。