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―その後、ルインの治癒術と薬品で一通り回復した一同は、それぞれ自分達が行ってきた全ての情報を交換し、互いにおかれていた状況を確認する。
薬の効果が大きかったのか、エミリアは途中からではあるがその会話の中に参加はできていた。
もっとも、急激な消費と急な回復を連続させたために、体力や身体の傷とは別の疲れのようなものが多少見えているようだったが……
「魔物と異人の兵に加えて、機械兵と敵の幹部クラスが数名か。 ……あのカリフとかいう女を見るに、相当の実力者と考えておいた方がよさそうじゃな」
頭の回転は現状でも十分健在らしく、レオン達の持ち込んだ情報も難なく理解しているようだった。
「……信用してくれたようで何よりだわ」
その横で、自らが知る限りのこの艦の情報を引渡したルインは、一仕事終えたように少し肩の力を抜く。
……仮にも、敵に属していた身。最大の問題は、相手に信用されるかどうかという点だった。
それでも、気になる事が残っていないわけではないが……
「とにかく、ここで合流できたのは運がよかったな。 狭い通路を大勢で動くのも大変だが……ここから先は、固まって行こう」
今自分に出来る事は、持ち得る力とこの船の知識の限りを尽くして、目の前の戦士達を先に導く事。
レオンのその言葉に全員が頷いたのを確認して、ルインはひとまずそれらの心配事は横に置いておくことにする。
「……ティール、どうしたの」
しかしそんな中に、一人だけこれといった反応も見せず、ぼーっと自分の手の平を眺めているティールの姿があった。
……彼女の身体には、特にダメージが残っている様子も無いし、メンタルも先程の薬でほぼ回復しているだろう。
そんな状態で、何を理由にそんな顔を見せているのだろうか。
「ん? ……いや、なんだか妙に身体が楽な感じで……さっきの薬の効果かな」
「そう、ならいいけれど……」
実際にどのような内容のものだったのかはルインも理解していない。
ただ、手渡された以上かならずプラスの効果ではあるはず。
ティールの表情も、不安と言うよりは期待のようなものが強く現れているので、そこは信用してもいいだろう。
「ティール、ルイン、なにしてんだ。 そろそろ行くぞ」
「あ、うん」
「わかりました」
ここから先は、さらに厳しい戦いになるだろう。
細かい事で戸惑っていては、命に関わることもある……
二人はひとまず思考をそこで纏めて、二人は武器を手にして立ち上がった。





「――ルイン。 やはり動いたみたいね」
そして、最初に顔を会わせた時のように、まだ半分ほど眠っているような状態だが、なんとか目を覚ましたらしいアリスも加え、このチェスボード・ホールから出て行こうとした時……
一人の女性の声が、全員の耳に飛びこんできた。
「――カリフ!!」
数体の機械兵士を引き連れた黒艦軍の女性参謀、カリフ。
彼女は妖しい笑顔を浮かべながら、集団の中に混ざるルインの姿を見据えていた。
「それは”彼”の指示かしら? それとも貴女の独断?」
その瞳には、すでに全てを見透かしたような余裕に満ち溢れている。
「……あの人は関係ないわ。 私が、アリスを放っておけなかっただけ」
「あらそう。 でもどちらにしたって、部下の管理も出来ない男には、相応の処罰が下される事になるわね」
「…………」
こうなることは、彼自身もすでにわかっているはず。
ここで自分が挑発に乗り、感情に任せて行動すれば相手の思う壺になる。
カリフは冷淡にして残忍な策略家、何を言われようと、聞き流しておくのが最良の手段だ。
「関係ないって顔してるわね。 ……まぁいいわ、裏切り者と侵入者には、ここで消えて貰うのだから」
そう言って、パチンっと指を弾くカリフ。
すると、周囲の壁がぐるりとひっくり返り、その向こう側から無数の機械兵士と魔物の群れが現れる。
「……こいつは、さすがに多いな」
その数を目にし、溜息混じりにそう口にするエンリケ。
しかし、それで気概を削がれたわけではないらしく、バトルハンマーを握るその腕は、すでに臨戦体勢に入っているのが見てとれていた。
なにより、いくら敵の数が多くとも、今はこちらも三十人近いメンバーで構成されている。
並んでいる魔物も機械兵も、ここまでの道中で一度は戦った相手がほとんどで、総合力では決して負けてはいない。
――そう、思っていた。
「ふふ。 この程度の数でどうにかなるあなた達とは思っていないわ。 ……出なさい、エメトゼロ!」
「――エメトゼロ!!? そんな、アレは奥の通路に配置されているはず……」
「言ったでしょ、雑魚兵だけでどうにかなる相手とは思っていないと」
最後の一言を口にする瞬間、カリフの顔から一切の表情が消え去っていた。
思いの外こちらがねばり続けている事に、怒りを感じ始めているのかも知れない。
――そうこうしている間に、床の一角が開き、その下から巨大な身体をしたゴーレムのような物体がせり上がって来るのが目に映る。
「……ん?」
……が、そんな中でエミリアは、せりあがるその巨体を眺めながら、すこし顔をしかめて首をかしげるようにそんな声を出していた。
「……なるほど、『エメトゼロ』とはよく言ったものだな」
続けて、少し厳しい表情を見せ、エメトゼロに向けて剣を構えるディン。
「でも、あんな色のエメトは私も知らない。 ……よくできた模造品なんだろうけど、油断はしないで」
そして、槍を構えて一歩前へと歩み出るティール。
……かつて、モレク鉱山の奥地で出会った白い身体をもった『エメト・ルミナス』と呼ばれるゴーレム。
そう、彼女達は、少なくとも同系統の魔物と一度は戦ったことがある。
当然、すべて以前と同じようにいくとは思わないが……
「みんな、あのでっかいのは私達にやらせて」
「あの時は痛い目にあわされたからの……この手で、今度こそ倒してくれる」
少なくとも、相手の事を何も知らない者よりは上手く戦えるはず。
そういった思いから、三人は真っ直ぐに正面へと向かっていた。
「あなた達……そんな甘い相手じゃないわよ?」
「……わかってる。 だから、ヤバイと思ったら手を貸してくれ」
「でも、それまでは周りの細かいのをお願い」
「すこし、あのタイプのゴーレムには因縁があるからの……」
真剣な瞳。
少なくとも、相手を下げて見ている様子も無く、油断しているようなそぶりも無い。
エミリアが口にした因縁、という部分が気にはなるものの、それは当事者では無い自分達には理解できない領域。
「……ルイン、とりあえずまかせてみよう。 ごちゃごちゃもめるより、敵の数を減らすんだ」
「……わかったわ」
確かに、今議論している時間は無い。
レオンに呼びかけられ、そう割り切る事で、ルインはひとまず引き下がる事にした。


「相談は終わったかしら? ……さあ、消えなさい!!」