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暗き部屋に男は一人、
(フッ…思った以上に早かったな、救出から合流、進行に到るまでな)
などというようなことを考えながら一人、監視室で未だ監視を続けているものが一人。
アイン―――彼は『中立』の立場であった。
しかし、それは少し前までの話し。

彼は元より黒船の進行だけでなく、アリス達の戦線投入にも反対していた。
そして、そこから幹部から目をつけられていたのだろう。
だから監視員という比較的動けない立場に置かれた。
彼もまた枷をつけられていた。但し、その枷は比較的簡単に外せるが。
しかし、アリス達の行動の枷となっていたクロックラビが救出され、
彼女達が向こうの仲間になった以上網ここに居座る必要性は皆無。

(さて、向こうの方は上手く行く筈だ。さて、こちらも…)
椅子から立ち上がったまさにその時、

「待て、何をする気だ?」
と、扉の向こう側から声が聞こえてきた。
「ふ…ん、何を考えているのか分かっているから来たのだろう。なぁ、カムシン」
扉を開けてカムシンは入ってくるなりアインの胸倉を掴みかかった。
「テメェ、何を勘違いしているんだ? 俺達の仲間だろ?」
激昂したカムシンを
「フ…お前こそ何を勘違いしているんだ、誰が仲間だって?」
「何…?」
「考えてみろ、俺がお前たちに直接協力したことなんて無かった筈だ」


その言葉を聞いてカムシンはハッと思い出した。
βシリーズの設計に関わっていたとは言え、実践には不向きの物が殆ど。
そしてカメラの設計、設置の時に彼が言っていた言葉、それは、
『機械は趣味の領域なんでな。ついでに設置するだけだ』


「ク…だが、あいつ等がいる以上手出しは…」
「残念だったな、彼女達の救出は既に成功している」
「なにぃ!」

と聞いた後、カムシンはアインが指差す画面を覘き、驚愕の表情になった。

「な…なんだと…高性能アイズとアリスを退けたというのか…
しかも…ルインが既に向こうについているんじゃねぇか!」

そこまで言ってカムシンは気付いた。

「まさかテメェ、最初から」
「まだこの情報は届いてない筈だ、自分で伝えに言ったらどうだ?」

カムシンはチッと舌を鳴らして、
「テメェを止めないといけないのは事実なんでな、大人しくこちら側についていやがれ」
と、その手に直接装着した武器、パタをアインの首元に突きつけてきた。

それ目にしてアインはため息をついた後、やれやれと言った感じでオーバーなリアクションをとり、
「やれやれ…無駄な争いは今のところは避けたいのだが…そちらが引く、と言う選択肢は無いのか?」
「な…何を言っているんだテメェは?」
「言っても無駄、か」
と言った直後、

「グハッ…」
アインは目にも止まらぬ速度で正拳突き、疾風を繰り出した。
カムシンはこの一撃で一瞬怯んだ。
その一瞬の怯みの内にカムシンと距離を取り、彼の武器であるブレードナックルを装着した。
「この技をあいつに教えたのは俺だ、油断したな」
そして、懐から液体が入っている複数の試験管を中の数本を取り出した。

「ま…まさか使う気か!」
カムシンが顔を青くして叫んだ。

「しょ、正気か!? 使えばお前諸共…!」
「俺はこの程度の爆発では死なん」
と、あっさりとその言葉を斬り返した。

「クッ、冗談じゃねぇ! こんな所で…!」
「10秒待ってやる。その間にどうしたいか決めろ」
「クッ…生きていられると思うなよ!」

その言葉を言い放った直後、アインの横を通り過ぎた。

「フ…賢明な判断だ」
と、一人呟いたあと、
(俺も甘いな)と自嘲気味に思った。


アインは監視室から出てからある程度の距離をおき、先ほど見せた試験管の中の数本を監視室に投げ込んだ。

投げ込んだのは『爆砕液』
元々空気に触れると爆発するという危険な気体を、
黒船が得た技術を生かしてさらに強力な爆発力を持つ液体状に変えた物。
それ故、彼もコートにつけているその部分には爆発力を大幅に軽減する材質を使っている。
こんな時にこの船にいて少しは良かったのか、と思うこともあるのだが今となってはどうでもいい。

大量の試験管が割れ、一瞬の閃光の後、連鎖反応のように爆破し、監視室と近くの通路を爆破した。
爆破の光景を何も感じない、と言った感じで見た後、彼は思考を整理した。

(今向こう側と合流するか…)

と、ふと思いついたのを遮り、
(いや、向こうの戦力はルイン、アリス達を加えてさらに上がっている。
例えエメトゼロや『奴ら』が出たといえ問題はあるまい、ならば―――)
元、監視室の近くの壁にポケットから取り出した紙を虫ピンでつけてから思考を続けた。

(―――新たに来た者達の案内でもしてやるか…案内役は苦手だがな、それに―――)
彼はそこで思考を一時中断し、いつも以上に早い自分の鼓動を感じ取った。
(―――『竜の力の反応があった者』と会う楽しみは後にとっておきたいしな、では…!)

彼の背中から一瞬のラグの後―――翼が現れた。
「さて、出陣だ」

と、自分に言い、その翼を広げた。

だが、彼は一抹の不安を感じていた。
あまりにも上手く行き過ぎる、と。

(奴らは既に俺やルイン達、新たな物達の情報を掴んでいる筈。
ならば、此方の行く道にも追手、若しくは待ち伏せがあるのは確実、か。
しかも、かなりの強敵がな)

その不安が現実にならないことを祈りながら、
最も早くもう一つの隊の方へ合流できる昇降機の方向へ向かった。