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SS1 ヴァイ


 ギルド、Little Leggendより出る影。
 足取りは少々荒々しい。
 その装備は軽装。しかし、腰にはロングソードの柄の覗かせる剣。

 ……ヴァイである。

 彼は考え事をしていた。
(・・・本当にコレで良いのか・・・?)
 それは、自分の役割と言うものである。
 専らLittle Leggendのメンバーでパーティを組み戦闘を行うのであれば、役割は、
 リスティが回復。エミリアが魔法攻撃。
 その二人を守るのがディン。
 そして、速さに秀でている自分とティールは切り込みを行う。
 まさに理想と言える。
(・・・・だが)
 彼の考え事とは、『リスティと二人の場合』である。
 もちろん、メンバー全員が全員で向かえるなら良い。だが、大抵はそんな事は無い。
 ディンはエミリアと依頼を行う。ヴァイはリスティと依頼を行う。
 ティールは相変わらず一人のようだが、時々どちらかの依頼へ参加したりもする。
 ・・・話を戻そう。彼の反省点は、昨日の依頼での事であった。
 街道に出て旅人を襲う手配モンスターの討伐。
 そのモンスターはアッサリ姿を現した。
 まずは速さを持ってヴァイは切り込んだ。
 もちろん、ブレイブマスターの戦闘性能上、速さから初撃を狙い、その技で敵の攻撃を避ける。
 だが、これはあくまで『一対一』での話しだ。
 横沸きのモンスターに対応するには慣れない弱点も持ち合わせる。
 もちろん、弱点をそのままにするかといえば否。ヴァイもある程度はその二・三手を読む修練を行っていた。
 だが、相手の手配モンスターも速さを特化させたらしい。横沸きに対応するのに難があった。

『フェアーディフェンド!』

 ・・・後方からの、リスティの声。
 剣撃を止められた横の魔物に一太刀。囲まれるのはきついが、一対一となれば分があるのはヴァイの方だ。
 手配モンスターはアッサリ片付き、この依頼は終わった。

(・・・もしも、ディンだったなら・・・)

 彼は、『防御』を特化した形・・・即ち、エミリアの盾であった。
 それは、当時『レンジャーナイト』を目指していた自分と投影してしまう時もある。
 彼ならば、攻と守を両立する。もちろん、守をメインとする戦いだが
 速さを特化させた自分は、万一でも敵にダメージを受けた際。その速さを特化させる為の軽装が裏目に出る。
 守る為に手に入れた速さだが、それは同時に『リスティにより守られなければ行けない脆さ』も両立する。
 ・・・正直、ヴァイにはそれが苦痛だった。

(・・・未だにオレは守られなければ行けないというのか・・・)

 どうしても、その事が引け目に感じる時がある。
 そりゃあもちろん、ディンとてヴァイやティールのような速さがあれば、戦闘の幅が広がると考える時もあるだろうし、
 エミリアとて、リスティのような回復能力を持てれば、ディンを楽に出来るだろう。とは思うだろう。
 ・・・もちろん、言ってもキリの無い話なのだが。
 だが、ヴァイは自分の被ダメージの大きさに悔やむ。

『なぁ・・・リスティ。正直、オレがディンのように守る事を修練してレンジャーナイトになってたなら、少しは楽だったかも。とか思う事は無いか?』

 前に、リスティにこんな話をした事があった。
 イフの話は好きじゃない。もちろん、自分で出した話題では有るが、好きな話題では無い。
 だが、それでもどこか不安な気持ちがあったのだろう。
 ・・・正直、自分でもディンにリスティを任せる事は安心できるのだ。
 だが、そのヴァイの問いにリスティは笑って返すのだった。

『ヴァイさんは、速さに特化したブレイブマスターです。迷っているのかも知れませんケド、その事に自信を持てる時って言うのが必ずあります。
 私だって、エミィさんみたいな攻撃魔法覚えられれば、もっと効率よくヴァイさんを助けられるな。って思う時があります。
 でも、私はカーディアルト。人を癒す役目があります。その人を癒す役目に自信を持てる時ってあるんですよ』

 正直、その時の迷いの無いリスティの目は直視できなかった。
 ・・・今でも、過去を引きずっているのか。速さを手にしたが、良い事など何かあっただろうか?
 せいぜい、手紙の伝達が他の支援士より早いって事ぐらいか? ・・・あまりに、情け無い話である。
 その時にティールは横目でヴァイ達の方を見ていた。何か言いたい事があったのかも知れないが、彼女は何も言わず新聞に目を落としていた。
 確かに速い。攻撃はカウンターも含めてギルドメンバーの誰よりも多く与えている。
 だが、速さと体勢を整えるため、重みは出せない。避けられなければ瀕死だ。

(自信。ね・・・)

 ふと思いついたのはケルトとエルナだ。
 あの二人は、教会の仕事をしている。もちろん少なくはあるが、教会の汚点も見てきている。
 だが、それでもあの二人は教会の仕事に誇りを持っていると言えるだろう。
 ・・・自分はどうか? ブレイブマスターという職業である事に喜んだ事は一度としてあっただろうか?

「はぁ・・・」

 思わず歩く速度を落としてため息をついた。
 直後・・・

「うあああ!!」
「た、助けてくれ!」

 リエステール中央道から、声が聞こえる。
 慌てて駆けつければ、馬車の馬が暴れて直進しているのだ。
 皆がザザッと馬に慌てて道を空け、無事に居る。
 だが、

「あ!!」

 少女が一人、道端で転ぶ。
 だが、必死の人々はそれに気付かず・・・いや、気付いた者も居ただろうが、誰もそれを見てみぬ振り
 馬は、少女を踏み潰さんと直進していく。
 ・・・もしも馬の下敷きになったなら、その小さな身体に穴が開くか。内臓破裂は免れない。
 しかし、少女とヴァイの距離はゆうに家五件は離れている。
 いや、フィールドならばこの程度の距離を間に合わせる事が出来る。
 だが、この脇に寄った人ごみで少女を助けるなどほぼ不可能と言えるだろう。

「ちっ・・!!」

 ・・・しかし、ヴァイとて一年前のままではない。
 守ることには慣れた。もちろん、葛藤が無いワケではないが、


『・・・だけど、わたしはあの時、助かりたかった。少しでもいいから、可能性に縋りつきたかった。
 ヴァイさんに見捨てられたら・・・100%。死んでました・・・。
 だけど、ヴァイさんが助けに来てくれたから、生き残る可能性を得ることが出来たんです』


 可能性があるなら、全力を持ってかけるしか無い。
 前方には人。直線状に居るのは約13人というところか、
 まずは二人、この間には微妙な隙間がある。
 その先の三人目、そこには下・・・足元に間が。

(・・・? なぜ、見える?)

 ふと、不思議に思った。
 なんてことは無い。ただ、相手の隙と動きを読んでの行動だ。
 それが、直線としている。
 四人目は一人でに離れる足向き。五人目はとにかく直線状に居て邪魔だからフェルブレイズの柄で足を掛け転ばせ上を跨ぐ!
 六人目と七人目はその剣の柄を刺し込み半回転で直線状から退ける!
 八人目は左に回避し、九・十・十一と隙間を抜ける!
 面倒なので、十二人目と十三人目を剣の柄で首元を叩いて転ばせ、
 間一髪のトコロで少女を抱き転がり、
 馬の直線状から抜ける!

「・・・ふぅ・・・」

 きょとんとした少女はヴァイを見上げ、自分が助かった事を理解すると、怖かったのだろう。声を上げて泣き出した。
 ・・・そして、もちろんヴァイの通ってきたトコロから声が上がる。

「痛っ・・・ってぇ!! 誰だこのヤロ!! オレを転ばせやがって!!」

 だが、周りの人々はそんな声など聞いては居なかった。

「お、オイ・・・・嘘だろ?」

 一人が気付き、横の人へ教え、周りへと広がっていく。

「な、何て速さだ・・・」
「ゆうに家五件・・・! この、人ごみを抜けて・・・?」

 そう。ヴァイの通ってきたトコには、人ごみが真っ二つに割れており
 まさに彼の走り抜けた道が覗いていたのだ。

「オイ小僧! やるじゃねぇか!!」
「随分速さに特化したブレイブマスターだなオイ!」

 周りがはやし立て盛り上がり、
 だが、ヴァイもこの時が正直悪くないと感じていた。
 相変わらず少女は泣き止まない。

(・・・・そうか、リスティ。お前の言ってた事が判った気がする)

 もしもこの場に遭遇したのがヴァイではなくディンなら彼女を助けられただろうか? エミリアなら出来ただろうか?
 ヴァイは、ブレイブマスターだ。だからこそ、この速さと技を持って、この子を助ける事が出来た。
 ディンは、盾として守る事については、ギルド内では誰よりも秀でている。
 エミリアは、後衛より魔術で一掃出きる。ギルドきっての攻撃役である。
 リスティは忙しくてあまり居ないシアを除いて、ギルド唯一の回復役である。仲間もサポートできる。
 ・・・自分には、自分の役割と自分にしか出来無い事がある。
 例えば、この子を助けられたように、ディンが追い付かない守備をサポート出来る。もちろん、その逆もまた然りだ。

「・・・オレには、オレの出来る事がある。ってか」

 手を伸ばし、グッと握りこぶしを作る。
 ・・・やがて、少女の母親が見つかり、少女は最後までヴァイに手を振っていた。
 ヴァイは手をそっと振り返し、ふっとため息を付いた。

「んで、いつからそこに居たんだ?」
「事件が終わってからかな」

 いつの間にか横に立っていたティールに、ヴァイはそう声を掛ける。
 ティールは少女の去っていった方を見つめながら、ヴァイに言った。

「・・・気が晴れたみたいだね」
「ああ。みたいだな」

 言葉は少ない。だが、それでも言いたい事は伝わった。
 だから、同じく言葉少なく返した。

「じゃあ、帰ろうか。正直、夕飯の荷物が重くってね」
「てめっ・・オレに荷物持ちさせる気かよ」
「期待してるよ。今日の夕飯」
「・・・ったく」

 ティールから紙袋を奪い、ギルドの方へと帰っていく。
 今日は、冒険者が求めるような“フィズ”や“宝”のような収穫は何にも無かった。
 だが、ヴァイは確かに今日。手に入れたのだ。

 自分が速さを求めた、その意味は――――――






あとがき~

ってなワケで、ヴァイもギルメンとしているLittle Leggendのメンバーを持って(といえるのか?)、それぞれの役割を書かせていただきました。
もちろん、これはLittle Leggendのメンバーだけにいえる事ではありません。
もしもカネモリがジュリア無しに風の元素を探していれば、鉱山の中でお陀仏だった可能性もあります。カネモリにはジュリアとエリンケという仲間が居たからこそ、モレク鉱山での窮地を脱出しました。
もしも、セオに相方のイルが居なかったら?
前衛にマグノリア。後衛にリリー。いい組み合わせですね。片方が欠けていたらきっと戦闘は苦しいでしょう。
空也の振るう剣を作るホタル。逆にホタルは空也の剣を作る事も一つの目標として(言い方悪いかも)持っている為に剣を打ちます。
トートも、きっと斬鬼という仲間が居なければ、孤独な旅の辛さに途中で十六夜に帰っていたかも知れません。逆に、斬鬼はそんなトートを頼りに武器から開放される術を探しています。

このエリワーのコンセプトは人の数だけ物語がある。と『お互いが弱点を持つために補い合う』というのも含まれて居ます。
まあ、この作品はまさにソレを伝えようとしたって感じでしょうかね。
ちょっと短時間で書いたので、作風がそっけない感じになっているかもしれません。

んであ。これにて~