『沙亜羅…、沙亜羅ッ!! 沙亜羅ァァァッ!!』



 『くそっ!! 殺してやる…。貴様等全員、影も残さず叩ッ斬ってやるっ!! ブチ殺してやるッ!!』



 『すまない…。俺が…、俺が護れなかったばっかりに…。俺が弱かったばっかりに、お前を…、死なせてしまうなんて…。』



 『畜生…、ちく…しょう…。』
















 またこの夢だ…。







 俺は、時々この夢をよく見てしまう…。
あの時の夢を。あのおぞましい夢を…。俺の心に鋭利な刃物の様にグサリと突き刺さる夢を…。






 悲しいなぁ。本当に悲しいなぁ…。



 弱いなぁ。本当に弱いなぁ…。



 強くなりたいなぁ。本当に強くなりたいなぁ…。




 『強くなることは力のみではない。本当に強くなることは、己の心を鍛え上げ、更に慈しみと持ち悲しみを背負う事。』




 今は亡き俺のお師さんが云った言葉だ。




 俺は、力のみを求めて強くなろうとした。しかし、俺のしたことは間違っていた。
俺は、無能だった。無能ゆえにお師さんの云った事を間違って捉えた。
俺は、馬鹿だった。馬鹿ゆえに己の思い人を護れなかった。



 俺は、一人当ても無く旅立った。己の力をもう一度見出すために、己の心を磨くために。









 そして俺は、今の世界から姿を消した。










 何がどう起こったのかも知らず、俺は気付いたら見知らぬ世界に迷い込んでいた。



 何も知らない世界、全てが初めての世界。



 その世界に己の数奇な運命が関わっているのも知らず、俺は、この世界に降り立った。








 -そして、この俺・磐野 烈心はこの見知らぬ世界にて彷徨う事となる-




                                           序章 -終劇-
最終更新:2008年07月14日 20:53