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よく晴れた日の黄昏。
いつもの時間帯に、いつもの公園のベンチに座り、物思いに耽っていた時だ。
誰も居ない公園のどこからか小さく鈴の音が聞こえてきた。

誰だ?
この時間帯は、誰もいないはず。
もっとも自分はその時間帯を狙ってきているのだが…。
周囲を見渡しても、音の発信源は見つからず
依然として、鈴の音は鳴り続けている。

キョロキョロキョロキョロ

人影はどこにも見えない。
風が吹き、ザァっと木々が揺れた。

ピシッ

何かに亀裂が入る音。

メキッ

亀裂が広がる音。

ボキリ。

枝が、折れた。

ドシャリ。リィィィン…。

何かが落ちてきた音と、小さな鈴の音。

後ろ?

ゆっくりと振り返ると、木の上から落ちてきたであろう人物がこちらの視線に気付いた様で、一瞬目が合った。
それからばつの悪そうな顔をして、目をそらす人物。

赤い短髪、黒を基調とした服装で傍らには魔道書と思しき分厚い本が落ちている。
魔法使いか、それとも理使いか?…闇使い?
鎌を持っていたら、完璧死神に間違われるだろう。

怪我は、落ちた際に斬ったと思われる頭からの流血。

意識はあるようで、それほど重傷では無いのだろう。

「…すいた。」

ポツリ、と何かを呟いた。

「?」

なんといったか聞き取れない。

「おなかすいた。」

今度ははっきりと、俺を見て、おなかすいた。そう聞こえた。
落ちてきた人物は、それだけ呟いてぶっ倒れてしまった。

 これは、行き倒れ。というものなのか?それにしても、俺に向かって言ったって言うことは…

食わせろ。ってことか?

 

今日は、何だかついていないような気がした。
奇異の目を向けられ、メインストリートを今歩いている。
痛い、視線が痛いです。

「おなかすいた。」発言をした死神もどきの失っていた意識を、無理やり戻し、肩を貸して歩いて現在に至る。

「いらっしゃいま―。」

固まる、営業スマイル。
身近な、料理店に入ろうとするとこれだ。
わかるよ、その気持ちはわかる。

異常だ。確かに異常だ。

だって、血が頭から経由して顔に現在進行形の形で流れている奴を連れてくるなんて絶対おかしいものな。

「お、お客様。」

引き攣った営業スマイル。
いつまで続くものかと時間を計ってみた。

「お、おぉぉお連れの方を、そ。その、その…。」

ガターンッ

「店長!奴隷26号が倒れました!!」
「何だと?回収しろ回収っ!!」

わずか20秒、いや20秒保てばいいものか。
それより、奴隷…奴隷26号ってなんだよ。

バタバタと、包丁を握って走ってきた店長と思しき人物が
倒れてしまった女の子の頬を何度か叩いている。

「おまえがやったのか!?あぁん?」

「いや、俺じゃない。こいつだ。正確に言えば、こいつの状態が余りにもグロテスクなために倒れた。」


店長の誤解を解き、やっとの事で料理店へ入ることが出来た。


――

「おい…食いすぎじゃぁ。ごめんなさい。」

黙々と、もぐもぐと。
出てきた料理が一瞬で消える。
男なのか女なのかわからない中性的な顔。
判別が出来ずに、どっちなのかと考える。
注文をとる声を聞かなくなったので、ふと本から目をそらしてみると
正面に座っていたあの死神は、伝票を残して跡形も無く消え去っていた。
つまり、食い逃げだ。
伝票を見てみれば、そこには0が5つぐらいついてたりする。
食うだけ食って逃げやがった…。

その死神がとって言った物といえば、魂ではなく…全く別のものだった。

その後、金が払えず自警団に突き出され反省文を原稿用紙100枚に永遠と書かされたのはまた別の話し。