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人の縁とは奇妙なもので、なんということのない出会いから、時に思わぬ関係性に発展することも珍しくはない。
自分も人の中で生きる支援士の一人であるからには、そういった事も無かったわけではないのだが……
多少は予想外なこともあるだろうと考えていた今回の出会いで、ここまで自分の事を考えさせられることになるとは思わなかった。



「ベティお嬢様、お帰りなさいませ」
見慣れた自宅の門を潜ると、必ず聞こえてくるメイド達の声。
これは、自分――“ベティ・ベルレフォート”にとってはなんということのない日常の一つだ。
「ただいま。フォルツェは何処に?」
しかし、“もうひとり”であるティールは、きっと知らない世界だろう。
貴族として産まれなかった自分……そんなifの存在。
しかしifであるということは、自分とは既に違う存在であるということでもある。
しかし、哀しくも揺るぎ無い強さを秘めた彼女のその姿は……
自分とは、どうしても重ねきれない部分は確かにあった。
「フォルツェ様でしたら、先程届いた書状を見て、シルバリィホーンを緊急招集すると言って出ていきましたが」
「となると隊長の所に行ったか……大事そうだね」
シルバリィホーン騎士団フォルツェ・エスレキア中隊長。
ベティの槍術の師であり、ベルレフォートの分家であるエスレキアの当主で、未だに組手でも一本も取れない相手の一人だ。
「お急ぎの用事でしょうか?」
「いや……久しぶりに稽古をつけてもらいたくなってね」
そう思った理由は、考えるまでもなく分かっている。
自分の初心というものがなんなのか、それを思い出したくなったからだ。
そもそも、自分が戦いの中で槍に込めている意思のようなものは、彼の言葉が元になっている。

―騎士の刃は、ただ敵を倒すものではない
自らの力を他者に分け与える事を惜しんではならない―

その言葉の意味は、実のところちゃんと理解しているかどうかと言えば怪しい。
……が、その中に込められた意味こそが、自分にとって重要な何かになる。
そんな気がするのだ。
「…………」
なんとなく、別れ際のティールとの会話を思い出した。





「ベティ……あなたが少し羨ましい」
それは、Little Legendのギルドの前で、ベティが帰ることを告げた直後の一言だった。
「……え?」
ティールの口から、自分に対して発せられるとは思ってもいなかった一言。
自分より力もあり、仲間に恵まれ、知名度も高い。
こちらから羨むことこそあれ、一体なにをそちらから羨ましがる必要があるというのだろうか。
「力を持つことが、“力”になるとは限らないから」
そんな疑問を感じた事を見透かしたかのように、わずかに笑みを浮かべて語り出すティール。
相変わらず、どこか焦点をぼかしたような語り口調ではあるのだが……
「私の強さは、脆さの裏返し。ベティのように真っ直ぐな強さは、今の私には眩しいよ」
今回ばかりは、そのもやがかかったような言葉の向こう側に、何か彼女の本心のようなものが見え隠れしているのが感じられた。







―――たとえ脆さや哀しみから生まれた強さでも、それは強さに変わりはない気もする。
逆に自分には、脆さを強さに変えたティールの方が眩しく思えた。
「……次に会うときには、少しは意味を見つけてみせるよ」
誰に言うわけでもなく、そう呟きながら屋敷の奥へとベティは足を進める。


異界の住人である、ティールとアリス。
彼女達との出会いが、ベティという一人の少女にどんなものを残したのか―――
それは、彼女自信にもよくわからない些細なもの。
しかし、きっとそれは大きな意味をもつ、先の道へ導く鍵なのだろう。

想いは遥か先――見据えた夢の彼方へと……




END