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「この奥に、目的の物はある……化け物と、いっしょにね」
その一言は、聞く側に立つ二人には、『どうする?』という問いであるかのように聞こえていた。
いっしょにある、という事は間違いなく戦闘は避けられないということ。
それも熟練のベルセルクですら手負いを受けて引き返さざるを得なかった相手と。
「……そう言うからには、根拠はあるんじゃな?」
「まぁ……不確かだけど、多分ね」
その口調は、自信は無さそうにも聞こえるものではあったが、その表情は『否』という言葉を言っているようにはとても思えるものではなかった。
「……ではティール、おぬしはどうしたいのじゃ?」
その態度に少し考えるも、改めて問いただすエミリア。
「私は二人に従うよ。 ついてきているだけだし……別に恐い事は無いから」
「そうか。 ……なら、ディンはどうじゃ」
「帰りたいんなら帰るし、進むならそれも構わない……だが、ヤバイと思ったら無理にでも連れて逃げるぞ?」
「ふむ……」
相手がどれ程のものかは分からないが、先程のベルセルクと違い、自分達には数の利がある。
なにより、目の前に目的のものがあるかもしれないという状況で、引き返したいという気分にはあまりなれなかった。
……向こうにいるというモンスターの強さがどの程度か判っていれば、これほど迷う事はなかったかもしれないが……
「なら、行くとしよう。 じゃが、ディンの言う通り敵がヤバイ相手なら、戦わずに逃げる」
「ま、どんなヤツがいるかくらい、後のためにも一度見ておいた方がいいだろうし……妥当だろう。 ティールもそれでいいな?」
「うん。 ただ、そんな気楽にかかれる相手かどうかは分からないから、気をつけて」
そこまで言うと、3人は一度頷き合い、先程倒れていたベルセルクが向かっていたであろう奥へと歩を進める。
常に武器に手をかけ、どんな状況でも、戦いに移る体勢をとったままに。






「ふぅ…さっきのベルセルクに感謝じゃな」
アレからそのまま奥へと突き進み、時折現れるモンスターとも多少の戦闘を交えたが、大体の雑魚は先のベルセルクが片づけていったのか、小競り合い程度の戦闘を繰り返すのみだった。
しかし、目に入るモンスターはどちらかといえばすでに死体である方が多い。
コレだけの相手を、負傷した状態で、一人でするというのは生半可な実力では不可能だろう。
……もっとも、戦いが楽になったと言う点に、さらに加えて言うならば、奥に進むに連れ、通路全体が徐々に明るくなっていき、薄暗かったはずの視界が聞くようになったという事もあった。
「おい、あそこ……」
そして、その明るい道を追って行くように進むと、通路のある一点から急激に明るくなっている場所があった。
狭い視界から見る限りでも、相当ひろい場所へとつながっているであろう事がよく分かる。
そして、向かって辿りついた場所は―
「………ここは……」
目に映るのは、とても洞窟の中とは思えない面積を誇る、巨大なホールのようなフロア
上空には、ぽっかりと巨大な穴の空いた天井と、青空、そして太陽。
「……『青空の大空洞』……」
ぽつり、とエミリアの口からそんな一言が漏れ出す。
「『入り口から少し行ったあたりに、空の見える大部屋がある』……だったな、確か」
その言葉は、先程の通路でエミリアが言いかけた一言。
徐々に明るくなり始めた洞窟内も、この場所から入り込んだ光が、僅かに内側まで入り込んでいたからだろう。
ディンは、その空を眺めながら、少し息を大きく吐き出した。
「…この明るさなら、中のモンスターも出て来ないだろう」
それは、鉱山の中にいるモンスターが、総じて日光に弱い、という点から言える言葉。
ここを訪れた事のある冒険者なら、一度は耳にした事のある『常識』でもあった。
「そうじゃな。 少し休んでおくか」
手近な岩に体重をあずけるようにして座るエミリア。
ディンはやれやれ、といった顔でその横へと移動し、自分も少し岩に身体を預け剣を握る。
……それは万一、という考えの元の臨戦体勢だが……
「…二人とも、一応ダンジョンの中なんだから、気は抜かない方が……っ!」
少し呆れたような声で呼びかけたティールが、二人の向こうに『何か』が目に入ったのか、驚いたように目を見開き、その直後、慌てて槍を構え、そして、そのまま二人に向かって槍を向け、走り出すティール。
「! エミィ!」
「痛っ! ディ、ディン!?」
その様子に、さすがに只事では無いと感じたディンは岩から背を離し、同時にエミリアの腕を握って、その場から走り出す。
しかし、その行動に反応しきれず、足を動かすのが今一歩間に合わなかったエミリアは、その勢いについていけず、その場でバランスを崩し、地面に倒れこんでしまった。
その時、突如何か大きなものが動くような音が聞こえ、それに反応するかのように顔を上げた二人の目に、驚くべき光景が映し出される。
……今まで自分達が背中を預けていた大岩が、徐々に白い光を帯び始め、まるで人が立ち上がるかのような形で、立ち上がり始めていた。
「こ、こいつ……!?」
化け物の姿は、白っぽい岩か何かが集まったようなモンスター……酒場のマスターは、確かにそう言っていた。
そして、馬鹿でかいとまで言われていたその姿は、ゆうに5メートルは超えている。
それは、こんな空洞でもなければ、洞窟の中におさまるはずのない、『白いゴーレム』だった。
「クロスブレイク!!」
一歩先にティールが飛び上がり、ゴーレムの胸元に向けて槍の一撃を放つ
――が、その直後。
「ォォォォオオオオオオオオ!!!」
雄叫びと共に、振り上げていたその腕がティールの身体を捉え、宙に浮いていた彼女を、一撃の元に大きく吹き飛ばしていった。
「ぅっ!!?」
そのまま入り口上部の岩壁に激突し、気を失ったのだろうか、そのまま地面へと受身もとれずに落下していった。
…そして、激突した岩壁がその身体を埋めるかのように、大量の岩となり、彼女の上へと崩れ落ちていく。
「なっ……ティ、ティール!!?」
「ディン! 早く構えるのじゃ!! 構ってる暇は無いぞ!!」
一瞬、岩に埋まりきって見えなくなったその姿に目をとられていたが、エミリアの叫びで我にかえる。
…今の崩落で出口は消えた。探せば別の穴はあるかも知れないし、また時間をかけて掘り返せばなんとかなるかもしれないが、目の前の存在はそれを許してはくれないだろう。
「くそっ……エミィ、いくぞ!!」
ならば、戦うしかない。
岩に埋められたティールも、掘り返せる時まで生きていると信じて……ディンは、剣を強く握った。

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