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―11―





「オオオオオオオオオオオオオオ!!」
ディンとエミリアが臨戦体勢に入った事を認識したのか、地面まで震えさせるような雄叫びを上げるゴーレム。
そのプレッシャーだけでも、二人は地についた足が浮き上がり、そのまま吹き飛ばされてしまうのでは無いかというほどの感覚に見舞われていた。
「エミィ、行くぞ!!」
「……我が命に従い現れ出でよ冬の精……」
それでも、そのプレッシャーをも振り払い、160cmもの刀身を誇る大剣『バルムンク』を振るい、敵の懐にむけて駆けだすディン。
そしてエミリア、はディンの言葉を待たずに、すでに呪文詠唱を開始していた。
「……汝が司りしは大いなる四季の欠片……」
詠唱が先に進むにつれ、エミリアを中心に空気の温度が徐々に低下していく。
「ディヴァインスレイ!!」
前衛で戦うディンは、振り下ろされたゴーレムの豪腕に剣を叩きつけて強引に軌道を変え、そのまま強引に足へと剣の軌道を変え、その付け根に一撃を加えた。
……相手の行動速度自体は遅く、攻撃を当てること自体はそれほど難しくは無い。
「くっそ…やっぱ硬い……」
僅かにぱらぱらと表面が崩れ落ちた気がしなくもないが、仮にも岩の塊。
そう簡単に叩き壊せるものではなかった。
「……其の力を以って 我等に害なす愚者に裁きを!!」
「!」
呪文詠唱のその部分が聞こえると同時に、ディンはゴーレムの股下をくぐり、背後に回りこむ。
相手はその行動を追いかけるかのように向きを180度転換させ、再びその腕を振り上げた―
「ダイアモンド・スコール!!」
しかし、同時にエミリアの呪文も完成し、発動の鍵となる名を宣言すると同時に、彼女の背後から、一つで50cmはあろうかという無数の氷塊が、嵐のようにゴーレムに向かって降り注ぐ。
それらは全て彼女に背中を見せていたその身体に当たり、無意味なほどの安定感を感じさせていたその巨体が、一瞬バランスを崩す。
その向こう側にいたディンは、敵の巨体を盾にするかのように陣取り、氷塊の嵐(ダイヤモンド・スコール)の影響は全く受けていない。
「もう…いっぱぁぁぁつ!!」
相手が体勢を崩し、自分の方へとバランスをくずしているその瞬間、再びその股下をくぐるように動き、その際に、今度は水平に薙ぐような一撃をその足に加えた。
「オオオ……オオ…」
それがとどめとなったのか、ゴーレムは完全に体勢を崩し、その場に崩れ落ちる。
「あああああああ!!」
ディンはギリギリその転倒から脱出し、倒れ込んだその巨体の上に乗り、剣の刃を、渾身の力を込めてその背中に突き立てた。
「グォッ……ォォ……」
ビシッと音を立てて、剣を中心にしたヒビが広がる。
それと共に、常に低く唸るように聞こえていたゴーレムの声が、小さくなっていった。
「………ふぅー……こいつ、図体だけだったか…?」
剣を引き抜き、地面へと着地。
そのままエミリアの元へと、歩いていく。
「……無事じゃ困るのじゃ……あのサイズのダイアモンド・スコールは疲れる……」
普段同じ呪文を使うときでも、どちらかといえば手の平大の大きさの氷を高速で撃ち込む魔法に過ぎない。
上級呪文である事に間違いは無いが、ここまでの使い肩をした事は、今までに無い事だった。
「まぁいい。 それより、早くティールのやつを掘り返してやらないと…」
「そうじゃな  …………いや、待つのじゃ!」
「!?」
「……ォォォォォオオオオオオオオ!!!」
一瞬、背中を見せたその時、倒れ込んだゴーレムの身体が、再び動き出した。
ゆっくりと立ち上がり、背中に突き刺さった氷塊を払い落とすと、再び二人にむかって雄叫びを放つ。
「くそっ! やっぱそう簡単にはくたばってくれないか!」
再び振り返り、剣を構えつつ走り出すディン。
エミリアも、少し乱れた呼吸を整え、詠唱に入ろうとした。
……しかし……
「なっ…」
―速い。
移動する速度自体はそれほど変わっていない。
しかし、倒された怒りで完全に目が覚めたとでも言うのだろうか。
攻撃に転じるまでの反応速度が、倒れる前より少しではあるが上がっている。
「ぐはっ!?」
だが、元々スピードに劣るパラディンナイト相手には、それだけの上昇でも十分な効果があった。
さっきはどうにか紙一重で弾くことの出来た攻撃も、『さっきと同じテンポだと思って』出した剣では間に合わず、その一撃を受け、ディンの身体は大きく吹き飛ばされる。
「ぐっ……足…が……っ」
力を溜め込むより、攻撃までの速度を重視したのか、最初にティールを吹き飛ばした程のパワーは無かった。
それでも、地面に倒れ込んだ瞬間に足を強打したらしく、瞬時に立ち上がることは難しく……上半身の鎧の下まで響いた痛みも無理矢理押さえつけ、立ち上がるまでの間に随分と間を作る事になってしまった。
…だが、そんな隙を見せているにもかかわらず、ゴーレムはその場所から動こうとしない。
そのかわり、いままでも淡く光っていた全身の白い輝きが、徐々に強くなっていくかのようだった。
「……これはっ!! ディン! 何をしておるか、早く立て!!」
「くそっ…わかってる!」
自分の身体に気休め程度に聖術を使いつつ、何とか両足で身体を支え、立ち上がった。
しかし、その瞬間だった……ゴーレムの、人で言えば口に当たる部分が、ゆっくりと開いていく姿が目に入ってくる。
「グ…ゴ………ガァァァァアアアアア!!」
そして、今までに無く強烈な雄叫びと共に、その内に溜め込まれていた光が口内に集束し、まるで大砲を思わせる勢いで、真っ直ぐにディンの身体に向けて放たれた。
「フローズンピラー!!!」
「!?」
同時に、詠唱破棄(ショートカット)された呪文と共に、地面に杖を突き立てるエミリア。
その瞬間、ディンとゴーレムの直線状に数本の氷の柱が、まるで壁を形成するかのように地面から突き出し、『光の魔砲』を塞き止める。
……その時だった。
「ディン!!」
突き立てた杖を放置し、全身を使ってディンの身体を突きとばすエミリア。
立ち上がっていたものの、思いのほか一撃のダメージが大きかったディンの体勢は不完全で、彼女の全体重を乗せた体当たりだけでも、横に弾き飛ばすには充分だった。
「なっ……!?」
一瞬、弟の無事を見て、ただただ安心した姉のような微笑みが見えた。
しかしその光景は、塞き止めていた氷壁を突き破り、そのまま今までディンが立っていた場所を突きぬけた魔砲によって終わりを告げる。
「……え、エミィ……?」
……目の前を通り過ぎる光の奔流。
今まで目の前にいたはずの仲間の姿は、光が向かった先に吹き飛ばされていた。
「エミィ!!」
その吹き飛ばされていった先へ、駆け出そうとするディン。
「オオオオオオオオオオ!!」
しかし、負傷した足では、僅かにゴーレムの方が動きが速い
彼女の元へ向かう事を防ぐかのように、再び動き出したゴーレムは、ディンにさらなる一撃を加えようと真っ直ぐに駆け出し、その腕を振り上げていた。

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