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 砂上墓所・地下4階。
〈コツ コツ コツ…ザッ……〉
いよいよこの階に、ソフィアの言う「開かずの石扉」がある。
しかし、その一方で…
「…この階には、魔物の気配ほとんどないね?」
「そうですね。不死魔の放つ死臭もあまり感じられません…。」
地下3階で彼らにプレッシャーを掛け与えた、カラクリトラップの気配も感じられない。
こうしてカネモリとジュリアは、いともあっさりと問題の場所に到達した。
『……………………。』
回廊沿いに造られた小部屋の多くは扉がないか、もしくは既に扉が何者かによって破られて
いるのに対して、その一室だけは重そうな石扉で塞がれ、しかも鍵が掛けられている。
「古いもののようですが、かなり精巧な鍵ですね…。」
その作りに感嘆しながらも、錬金術師はピッキング工具を素早く準備する。
………………………………………………。
……………………………。
………………。
〈カチリ〉
 「…開いた?」
「えぇ。」
鍵が解かれたことを確認したふたりが、力一杯扉を押し開くと…
『……………………。』
…そこには、薬やその素材を収納する箪笥や製薬・実験器具が整然と置かれた部屋があった。
そして、寝台には皮膚が青紫色に変色した白髪の男の遺体が横たわり、布が掛けられていた。
ふたりはその死者に対して哀悼の意を表そうとするが…
〈カッッ!〉
なんと! その死者は突然両目を大きく見開き、ガバッと起き上がってきたではないか!?
「…我は薬師。
神聖王に仕え、王に永遠(とわ)の生命を捧ぐ為、不老不死の研究に勤しみし者なりき。」
「薬師」というには不似合いの筋骨隆々な不朽の肉体を誇示するかのように、上半身を
脱ぎ払った姿で立ち上がり、侵入者たちを追い出すようにしっかりとした足取りで
歩き出す。
「…我、長年の研究の末、ついに不死の薬を完成させたり。」
『!?』
「…されど、其の薬で実験した我の肉体(からだ)は、斯くの如くおぞましき不死魔となれり。
王への目通りも許されず、全ての研究成果とともに…、我はこの石室に幽閉されたり!
許すまじ王、許すまじ王の臣、許すまじ王の民、…許すまじ全ての人間!!」
封印された実験室を遮るように、不死の薬師はカネモリとジュリアの前に立ち塞がっていた。

 「…カネモリ、ここはボクが!」
錬金術師を一歩退かせてジュリアが定石通り、不死の薬師の右肩関節に剣を突き立てる!
「!?」
しかし、その感触はこれまでの不死魔とは全く異なり、鍛え抜かれた普通の人間と同様に
しっかりとしたものだった。
「……フッ。」
不死の薬師は剣に突かれた痛みすら感じていないのか、顔色一つ変えず…
〈ズッ… ブンッ!!〉
左手で刺さったコリシュマルドを抜き取り、柄を握るジュリアごと石壁に投げ付けた!
〈ドカッッ!!! ズドサッ……〉
石壁に全身を叩き付けられたブレイブマスターは、苦悶の声を上げる間もなくその場に
崩れ落ちた…。
「ジュリアっっ!!!」
護衛役の安否が気になるものの、カネモリとて敵に背を向けるわけにはゆかない。
「…その方、薬師か?」
無言で頷く十六夜の民に対し、不死の薬師は…
「我は不死の身体を良きことに、あらゆる薬を使いて肉体を強化せり。
我の生きたる人間への怨念をかき立てし者には、一切容赦などせぬ。
…己が命惜しくば、おとなしくこの場を去るがよい。」
「否(いな)!
わたくしはこの場に秘められたものを求めて来たのだ。
…その上そなたは、わたくしを護衛してくれる大切な方を…。
そなたが妨げとなるならば、わたくしはそなたを…倒す。」