ガドーの日記
ガドーの日記夢の中、過去の記憶を思い出す。
あれはそう、確か今の群れに拾われた時の話だ。
湧き上がる激しい怒り。カーグの顕現たる激怒を宿した俺は、吹き飛ばした混沌を追って、雪の中を滑り降りる。下に中くらいの1と、ちびが3見える。中くらいのに向けて棍を振り下ろす。
「################」
何かを思い出した気がした。何かを叫んだ。しかしなんだったが、思い出せない。カーグの怒りが俺を満たしていた。
ちびが盾を差し出して邪魔をした。どうでもいい。まだ中くらいの混沌は動く。棍を振り下ろし、噛みつく。別のちびが噛みつきから中くらいを逃がす。ちびの腕を噛みちぎった。中くらいはまだ動く。ちびに足を傷つけられた。だが闇の大いなる盾が俺を守っている。まだ俺は動く。
この混沌どもをすべて平らげ、偉大なる母へと捧げよう。それこそがカーグたる俺の役目。
中くらいは腹を叩くと怯んだ。そこに後ろから槍を突き入れてくるものがいた。ああ、後ろにもいたか。
棍をふるい、左足を折る、別の右手を潰す。
ちびの槍が腹を傷つけた。どうでもいい。次はあれを叩くか。
べつのちびが足を傷つける。どうでもいい。カーグの怒りが俺を動かす。しかし、怒りとは別に、体からは力が抜けた。倒れる。すべてを捧げることは叶わぬか。偉大なる母の御元へゆくのだろう。
目が覚めると、そこは地上のようだった。光があり、人間のちび3人と角付一人がこちらを見ている。どうやら助けられたらしい。人間に助けられるとは、意外なこともあるものだ。しかし助けられたのは事実。命の借りは命で返さねばなるまい。
名前を聞かれたが、はて、思い出せぬ。ガドーという音が記憶にあるが、これが名前だろうか?ガドーと答えておいた。
そうして、目が覚めた。
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別のある日。
群れの女祭と戦の長の仲が良くないようだ。
戦の長が相談してきた。人間のことはよくわからん。トロウルの流儀について話した。
「メスに従え。群れのことは女祭が決める。」
女祭と思しきちびちゃんと、他にちびのメスがいる。戦の長はみんなに相談している。あくまで食客のような立場である俺としては特に言うことがなかったが、どうも群れを分けるという話になったようだ。
俺の命を助けたのは女祭らしいので、女祭についていくと主張しておいた。
あくる日。
女祭の機嫌が治ったようだと、戦の長が話していた。どうやら群れを分ける話はなくなったようだ。良きかな。