Top > キャンペーン > 長刀 > 20020216【 ←前回 / 次回→ 】 タグ:
この会のログは、マスターが修正したバージョンが後ほど公開される予定です。
以下は公式ログではありませんのでご注意ください。
また、若干脚色を加えてあります。
【第一部】
# 私………………………(プレイヤー:BiSHOP)
# オルガチュチューヤ…(NPC)
二つ横に並んだ、半月形の隙間から見える景色は、青い空、流れる白い雲、緑の木々、青い湖面、だった。それは、もう一つの意識が認識している情報だという事に気付く自分。自分は何者だろうか?
視界の隅に白い足が近づいてくるのが見える。視界が上昇し、クリーム色の簡単なドレスを着た女性の姿が目に入ってくる。
「あなたは誰?」…もう一つの意識がその問いを発する。もう一つの意識?
「・・・・・・」…女性が何かを答えた。うまく聞き取れなかったが、もう一つの意識の心の中に沸いた『思い』の中でその言葉を理解した。
(オルガチュチューヤ?)
あらためて周囲を見まわしてみる。ここは島のようだ。そして、巨大な木が聳え立っている。しかし、完全に自分の思い通りには身体を動かせないようだ。周囲の穏やかな自然とは対照的に、もう一つの意識の中に自分が捕らえられているような気さえする。
視界が隙間しかないというのが気になる。それ以外は暗闇だ…。
「あなたは何?」私の思索をさえぎるように、オルガチュチューヤが問いかけてきた。
何?誰ではなく?しかしどちらにせよ私は答えを持っていない。
「わからない…。」自分のことがわからない私は答える。いや、私ではないもう一つの意識が答えたのか?
「あなたは初めて見るモノだわ。なんだか、私と似ているみたい。」彼女は淡々と、しかし明確な好奇心を持ってお互いの外見を観察している。
「私のことは何に見えると?」…体は…動くようだ。確認するように手足を動かしてみる。ぎこちないが動くし、自分の手足を見ることもできる。
「私の知っているどの動物でもないみたい。でも…」不意に不安げに言いよどむ彼女を見上げると、自分の感情の揺らめきに戸惑っているのか言葉が続かないようだ。
「でも、なに?」私ではない自分が答える。自分…?
「やっぱり私に似ているみたい。」彼女は落ち着きを取り戻す。安堵?私と出会うことを期待していた、のか…?
「私は何故ここにいるのだ?」素直な言葉。自問。しかし答えは帰ってこない。
水辺へと移動する。そこに移る姿を見て、自分は『人間』の『男性』であることを再認識する。再…?自分…?はだか…?
水の中の姿は『精悍な男性』以外の何者でもない。これが自分(私)?
「私は誰だ?」何度目かの自分(私)の問いが口から漏れる。
「あなたが何かは、自分で決めれば良いと思うわ。」彼女は答える。『誰』では無く『何か』だと?いったい…。
「では、ここはどこだ?」
「ここは、私の庭。私に があって、 くれるわ。」?言葉の一部が聞き取れなかった…。彼女は何を口にした?
「私も君に、その…『何か』をあげるのか?」
「そうね。何かしら?何がわからないの?」
「何がわからないか分からない…。」
「自分で決めれば良いのでは?」
「何がしたいかわからない…。」
「そう…。おなかはすかない?」
「そういえば…。」
彼女はゆっくりと木の裏側にある丘に上る。すると、彼女のそばに鳥や鹿などの動物が集まり、口にくわえた木の実や果実を次々に渡す。
彼女が持ってきたそれらを彼女と共に食べる。それはたしかに『食事』だった。が…。しかしその違和感は言葉にはならなない…。
---
「家は無いの?」
「家が要るの?」
「危険じゃないか。」
「そうかしら?」
眠気を感じる。疲れ?
「眠い…。」
「そう。おやすみなさい。」
横になると意識が薄れて行く…。夜には成らないのか?頭の片隅に浮かんだ疑問がやがて眠りの中へ消えていった…。
---
目覚める。青い空。白い雲。緑の木々。鳥のさざめき。
運動をしてみる。
軽かいに身体は動く。
ここは変わらない。穏やかな空気がある。
変わる…?
「オルガチュチューヤ!!」言い得ぬ不安が彼女を呼ぶ言葉となる。
彼女がやってきた。どこから…?
彼女を顔を見て。安心をする。
散策を始める。
「この湖の向こうには何がある?」
「そこは私の庭ではないわ。」
「他の場所へ行ったことは?」
「行く?」…「他?」
水につかる。そう。この先は『世界の終わり』。
私は再び陸上にあがる。
彼女は黙って自分を見ている…。その瞳には何の感情も見えない。
湧き上がる名状しがたい感情。不安?恐れ?躊躇い?
「君はなぜここにいるの?」
「私はずっとここにいたわ。」
「ここに来たのは私が初めて?」
「あなたは私の知らないモノだわ。」
「では、あなたが知っているものは?」
彼女は歌い始めた。それはとても長い歌だった。
それは彼女が知っているモノ全ての『歌』だった。
私は彼女の全てを知り、うちひしがれた。
私は彼女の純粋を信じ、おそらく自分が最初の男性であることを信じた。
それとともに、自分の中にそれまで沸き起こっていた感情の一部が消えた。
---
何かが変わり始めていた。
しかし自分の口をついて出た言葉は、これまでに何度か発したことのある言葉だった。
「自分は誰だかわからない。」
「『誰』とは何?」
彼女を見つめた。彼女は先ほど、自分の知っていることを歌にした。
私は言葉を発することができなかった。
彼女は『楽しいこと』の歌を歌いはじめた。
そこには彼女の小さいが、あふれんばかりの光に満ちた『幸せ』があった。
私は彼女を包み込む『幸せ』に嫉妬した。嫉妬?
---
「食事をしたい。」
ふたたび動物達から食事を受け取る彼女。
「この動物達は友達?なぜ食事を運んでくるの?」これは疑問の言葉?それとも…。
「どうして?」単純な疑問。そこには醜さの欠片も無い。
「この食べ物はどこから運ばれてくるの?」私は何を求めている?何から逃げようとしている?
私は気づき始めていた。
---
「君をほしくなった。いいだろうか。」単純で純粋な望み。心の底からそれを願った。
「なぜ?」
「なぜ?理由なんてない。ただ君をほしい。」
「私は何をもらうの?」
「君には…、私をあげよう。」
何かが始まり。何かが終わった。
---
# 二人の場合、蛇は『言葉』だった。そして、林檎もまた『言葉』だった。
# いやそれとも、私が蛇だったのか?
【第ニ部】
# エネドリ………………ロウドリル信徒。ギミック好きの鍛治屋。(プレイヤー:竜)
# ヒューリーク…………ロンロン司祭。狩人兼鍛治屋。(プレイヤー:むらー)
# ディ……………………ロンロン司祭。巨漢の戦士。(プレイヤー:りんぞう)
# ネシア…………………地底に眠っていた長刀に宿る精霊。(プレイヤー:azatoth)
# オルガチュチューヤ…島に住んでいる女性。(NPC)
# ヒューアマイ…………島に住んでいる男性。(NPC)
# ファイヤーリール……ヒューリークの持つロンロンの鍛えた槍の意思。(NPC)
地底湖を付きぬけ、なんとか島へ上陸した一行は、巨木とその隣の丘に建つ家を発見する。家の中では、女性が編物をしている。その女性を見たエネドリは、彼女が『炉辺の神マホーメイ』であると直感する。(77のファンブル)
家に向かい挨拶をした一行は彼女に家の中へと招かれる。一行に椅子をすすめると、彼女は自分が「オルガチュチューヤ」であると言う。そして続けて、自分の体験してきた事全てを語った。それがこの地における自己紹介というものであるらしかった。順番に名乗りをあげる一行。ヒューリークの持つ槍であるファイヤーリールすら自分の武勲を交えて自己紹介をおこなう。しかしネシアは頑なに言葉を発しない。まるで『その場に居ない』かのように…。
そんなお互いの自己紹介をしながら、エネドリはオルガチュチューヤの表情が少しずつ人間らしいものになっていくことに気付く。
しばらくすると森から男性が帰ってくる。彼は自分が「ヒューアマイ」であると語ると、「闇が来る。家に帰らねば。」と一行を再び家へと誘導する。
ヒューリークがとってきた鳥を使って食事の支度をするオルガチュチューヤ。お互いに自己紹介をおこなう。
---
しばらくするとあたりを闇がつつむ。その闇は家の中の一行に恐怖をもたらす。
「あかりを付けねば。」
不意に炉辺に火が入った様子が無いことに気付いたエネドリが問いかける。
「なぜあなたの炉辺には火が無いのですか?」
不思議そうな顔でエネドリを見つめるオルガチュチューヤ。
「あかりというのは火のことではないのですか?」ディが言う。
「われわれは客人に火をもらうことになっている」ヒューアマイが答える。
その言葉を受け、エネドリは《発火》の呪文を唱えた…しかし実際には自分が火口を取り出して火を起している自分を発見した。
しばらく後、炉辺に火がともった。そしてそのあかりで周囲が温かい光で照らされた。
家のまわりの闇をさえぎるため、オルガチュチューヤは戸板を下ろした。
ヒューリークが問いかける。
「客がこなかったら火はどうしたのか?」
オルガチュチューヤとヒューリークは、不安げにお互いに視線を交わしている。
家のまわりでは強い風が吹いている。
# その瞬間、ネシアは周囲の空間が薄くなるのを感じる。
# ネシアはこの場からの脱出を願い、槍の縁を通じてヨールを呼ぶ。
# しかし、その思いは通じない。
---
オルガチュチューヤは言う。「私逹はもう外に出られないわ。」
エネドリが問う。「なぜ?」
「外は嵐ですもの…。」
ヒューリークは答える。「嵐ならいつかは止むでしょう。」
オルガチュチューヤはかすかに表情をゆらめかせる。
「嵐はいつか止むのでしょうか?」
「そうでしょう。」ヒューリークは力強く頷く。
オルガチュチューヤの表情は明らかに明るくなる。
「そうなのですか!」
エネドリが重ねて答える。「あけない夜もないですしね。」
エネドリを見つめるオルガチュチューヤの表情を見ながら、エネドリの頭の中にかつて自分を導いてくれた司祭の言葉『…緑の時代の再演には手を出しては行けない…』が、一瞬浮かんで、消えた。
(これがその『再演』なのか?)
暗転。
【第三部】
# ヨール…………………狩人。遭難中に長刀と出会う。(プレイヤー:BiSHOP)
# エネドリ………………ロウドリル信徒。ギミック好きの鍛治屋。(プレイヤー:竜)
# ヒューリーク…………ロンロン司祭。狩人兼鍛治屋。(プレイヤー:むらー)
# ディ……………………ロンロン司祭。巨漢の戦士。(プレイヤー:りんぞう)
# ネシア…………………地底に眠っていた長刀に宿る精霊。(プレイヤー:azatoth)
# オルガチュチューヤ…島に住んでいる女性。(NPC)
# ヒューアマイ…………島に住んでいる男性。(NPC)
# ファイヤーリール……ヒューリークの持つロンロンの鍛えた槍の意思。(NPC)
切れ目の向こうに闇が見える。その闇に向かって叫び声を上げている。誰かの声。それはもう一つの意識?
叫び声をあげているヒューアマイに気付き、次々に目を覚ます一行。
「あかりを!助けてくれ!!」叫ぶヒューアマイを、心配そうにみつめるオルガチュチューヤ。抑えつけようとするヒューリーク。エネドリは灯りを燈そうと努力をはじめるが、ランタンには火がつかない。エネドリは闇の中を炉辺に向かう。
ヨールとの精神結合を確保したネシアは、ヨールの魂に呼びかける。
”私を手に取って道を切り開け!”
ヒューアマイは、長刀を持ったディに飛び掛る。あばれまわるヒューアマイを抑えつけるのは難しいと判断したヒューリークは、手にした槍「ファイヤーリール」の石突で、ヒューアマイの後頭部を強打する。
すると、ヒューアマイの頭部が二つに割れ、エネドリが生の鉄を使って作った「仮面付きの鉄兜」が地面に落ちた。
オルガチュチューヤの悲鳴。
その瞬間、家が嵐に吹き飛ばされる。
暗転。
---
再び意識を取り戻した一行は、そこが闇の中であることに気付く。お互いに声をかけあいながら起きあがろうとしている時、不意に闇の中に光がともる。それは長刀の先に燈された光だった。
そして、長刀を持つディににじりよっていたヨールが、その場にいることを発見する。
彼らが意識を取り戻したのは、かれた巨木の下だった。足元には湖の水。ここは、オルガチュチューヤがいた島?
しかし空は無く、地中にある島であるように思われた。
「あれは夢だったのか?」誰にともなくつぶやいた言葉に、巨木の上方から答えが帰ってくる。
「過去の記憶だよ。」声の主は、木の枝の上にいる壮年の男だった。
しかしその物言いには聞き覚えがある。
「昔、昔、あるいはずっと先、のね。」
ヒューリークは割れた鉄兜の一方を拾い上げる。
「次は誰かな?」その笑いを含んだ言葉に怒りをぶつけるヒューリークは、手にした鉄兜の一方を木の上に投げつけた。
「君逹と楽しい時をすごしたいんだが…」木の上で『彼』は笛を吹き始めた。すると、巨木の根元からブルー達が湧き出していた。
お疲れ様でした。
とくにヨール君。がんばりました(笑)。
aza氏がさっそくログを送ってくれましたので、ただいま検証中。
そのうち小説版で出るかもしれません。
第十話:仮面
オルガチュチューヤの庭にて語られし物語。■ 19 名前: azatoth :2002/05/15 00:31:23
第十話:仮面(azatoth版)この会のログは、マスターが修正したバージョンが後ほど公開される予定です。
以下は公式ログではありませんのでご注意ください。
また、若干脚色を加えてあります。
【第一部】
# 私………………………(プレイヤー:BiSHOP)
# オルガチュチューヤ…(NPC)
二つ横に並んだ、半月形の隙間から見える景色は、青い空、流れる白い雲、緑の木々、青い湖面、だった。それは、もう一つの意識が認識している情報だという事に気付く自分。自分は何者だろうか?
視界の隅に白い足が近づいてくるのが見える。視界が上昇し、クリーム色の簡単なドレスを着た女性の姿が目に入ってくる。
「あなたは誰?」…もう一つの意識がその問いを発する。もう一つの意識?
「・・・・・・」…女性が何かを答えた。うまく聞き取れなかったが、もう一つの意識の心の中に沸いた『思い』の中でその言葉を理解した。
(オルガチュチューヤ?)
あらためて周囲を見まわしてみる。ここは島のようだ。そして、巨大な木が聳え立っている。しかし、完全に自分の思い通りには身体を動かせないようだ。周囲の穏やかな自然とは対照的に、もう一つの意識の中に自分が捕らえられているような気さえする。
視界が隙間しかないというのが気になる。それ以外は暗闇だ…。
「あなたは何?」私の思索をさえぎるように、オルガチュチューヤが問いかけてきた。
何?誰ではなく?しかしどちらにせよ私は答えを持っていない。
「わからない…。」自分のことがわからない私は答える。いや、私ではないもう一つの意識が答えたのか?
「あなたは初めて見るモノだわ。なんだか、私と似ているみたい。」彼女は淡々と、しかし明確な好奇心を持ってお互いの外見を観察している。
「私のことは何に見えると?」…体は…動くようだ。確認するように手足を動かしてみる。ぎこちないが動くし、自分の手足を見ることもできる。
「私の知っているどの動物でもないみたい。でも…」不意に不安げに言いよどむ彼女を見上げると、自分の感情の揺らめきに戸惑っているのか言葉が続かないようだ。
「でも、なに?」私ではない自分が答える。自分…?
「やっぱり私に似ているみたい。」彼女は落ち着きを取り戻す。安堵?私と出会うことを期待していた、のか…?
「私は何故ここにいるのだ?」素直な言葉。自問。しかし答えは帰ってこない。
水辺へと移動する。そこに移る姿を見て、自分は『人間』の『男性』であることを再認識する。再…?自分…?はだか…?
水の中の姿は『精悍な男性』以外の何者でもない。これが自分(私)?
「私は誰だ?」何度目かの自分(私)の問いが口から漏れる。
「あなたが何かは、自分で決めれば良いと思うわ。」彼女は答える。『誰』では無く『何か』だと?いったい…。
「では、ここはどこだ?」
「ここは、私の庭。私に があって、 くれるわ。」?言葉の一部が聞き取れなかった…。彼女は何を口にした?
「私も君に、その…『何か』をあげるのか?」
「そうね。何かしら?何がわからないの?」
「何がわからないか分からない…。」
「自分で決めれば良いのでは?」
「何がしたいかわからない…。」
「そう…。おなかはすかない?」
「そういえば…。」
彼女はゆっくりと木の裏側にある丘に上る。すると、彼女のそばに鳥や鹿などの動物が集まり、口にくわえた木の実や果実を次々に渡す。
彼女が持ってきたそれらを彼女と共に食べる。それはたしかに『食事』だった。が…。しかしその違和感は言葉にはならなない…。
---
「家は無いの?」
「家が要るの?」
「危険じゃないか。」
「そうかしら?」
眠気を感じる。疲れ?
「眠い…。」
「そう。おやすみなさい。」
横になると意識が薄れて行く…。夜には成らないのか?頭の片隅に浮かんだ疑問がやがて眠りの中へ消えていった…。
---
目覚める。青い空。白い雲。緑の木々。鳥のさざめき。
運動をしてみる。
軽かいに身体は動く。
ここは変わらない。穏やかな空気がある。
変わる…?
「オルガチュチューヤ!!」言い得ぬ不安が彼女を呼ぶ言葉となる。
彼女がやってきた。どこから…?
彼女を顔を見て。安心をする。
散策を始める。
「この湖の向こうには何がある?」
「そこは私の庭ではないわ。」
「他の場所へ行ったことは?」
「行く?」…「他?」
水につかる。そう。この先は『世界の終わり』。
私は再び陸上にあがる。
彼女は黙って自分を見ている…。その瞳には何の感情も見えない。
湧き上がる名状しがたい感情。不安?恐れ?躊躇い?
「君はなぜここにいるの?」
「私はずっとここにいたわ。」
「ここに来たのは私が初めて?」
「あなたは私の知らないモノだわ。」
「では、あなたが知っているものは?」
彼女は歌い始めた。それはとても長い歌だった。
それは彼女が知っているモノ全ての『歌』だった。
私は彼女の全てを知り、うちひしがれた。
私は彼女の純粋を信じ、おそらく自分が最初の男性であることを信じた。
それとともに、自分の中にそれまで沸き起こっていた感情の一部が消えた。
---
何かが変わり始めていた。
しかし自分の口をついて出た言葉は、これまでに何度か発したことのある言葉だった。
「自分は誰だかわからない。」
「『誰』とは何?」
彼女を見つめた。彼女は先ほど、自分の知っていることを歌にした。
私は言葉を発することができなかった。
彼女は『楽しいこと』の歌を歌いはじめた。
そこには彼女の小さいが、あふれんばかりの光に満ちた『幸せ』があった。
私は彼女を包み込む『幸せ』に嫉妬した。嫉妬?
---
「食事をしたい。」
ふたたび動物達から食事を受け取る彼女。
「この動物達は友達?なぜ食事を運んでくるの?」これは疑問の言葉?それとも…。
「どうして?」単純な疑問。そこには醜さの欠片も無い。
「この食べ物はどこから運ばれてくるの?」私は何を求めている?何から逃げようとしている?
私は気づき始めていた。
---
「君をほしくなった。いいだろうか。」単純で純粋な望み。心の底からそれを願った。
「なぜ?」
「なぜ?理由なんてない。ただ君をほしい。」
「私は何をもらうの?」
「君には…、私をあげよう。」
何かが始まり。何かが終わった。
---
# 二人の場合、蛇は『言葉』だった。そして、林檎もまた『言葉』だった。
# いやそれとも、私が蛇だったのか?
【第ニ部】
# エネドリ………………ロウドリル信徒。ギミック好きの鍛治屋。(プレイヤー:竜)
# ヒューリーク…………ロンロン司祭。狩人兼鍛治屋。(プレイヤー:むらー)
# ディ……………………ロンロン司祭。巨漢の戦士。(プレイヤー:りんぞう)
# ネシア…………………地底に眠っていた長刀に宿る精霊。(プレイヤー:azatoth)
# オルガチュチューヤ…島に住んでいる女性。(NPC)
# ヒューアマイ…………島に住んでいる男性。(NPC)
# ファイヤーリール……ヒューリークの持つロンロンの鍛えた槍の意思。(NPC)
地底湖を付きぬけ、なんとか島へ上陸した一行は、巨木とその隣の丘に建つ家を発見する。家の中では、女性が編物をしている。その女性を見たエネドリは、彼女が『炉辺の神マホーメイ』であると直感する。(77のファンブル)
家に向かい挨拶をした一行は彼女に家の中へと招かれる。一行に椅子をすすめると、彼女は自分が「オルガチュチューヤ」であると言う。そして続けて、自分の体験してきた事全てを語った。それがこの地における自己紹介というものであるらしかった。順番に名乗りをあげる一行。ヒューリークの持つ槍であるファイヤーリールすら自分の武勲を交えて自己紹介をおこなう。しかしネシアは頑なに言葉を発しない。まるで『その場に居ない』かのように…。
そんなお互いの自己紹介をしながら、エネドリはオルガチュチューヤの表情が少しずつ人間らしいものになっていくことに気付く。
しばらくすると森から男性が帰ってくる。彼は自分が「ヒューアマイ」であると語ると、「闇が来る。家に帰らねば。」と一行を再び家へと誘導する。
ヒューリークがとってきた鳥を使って食事の支度をするオルガチュチューヤ。お互いに自己紹介をおこなう。
---
しばらくするとあたりを闇がつつむ。その闇は家の中の一行に恐怖をもたらす。
「あかりを付けねば。」
不意に炉辺に火が入った様子が無いことに気付いたエネドリが問いかける。
「なぜあなたの炉辺には火が無いのですか?」
不思議そうな顔でエネドリを見つめるオルガチュチューヤ。
「あかりというのは火のことではないのですか?」ディが言う。
「われわれは客人に火をもらうことになっている」ヒューアマイが答える。
その言葉を受け、エネドリは《発火》の呪文を唱えた…しかし実際には自分が火口を取り出して火を起している自分を発見した。
しばらく後、炉辺に火がともった。そしてそのあかりで周囲が温かい光で照らされた。
家のまわりの闇をさえぎるため、オルガチュチューヤは戸板を下ろした。
ヒューリークが問いかける。
「客がこなかったら火はどうしたのか?」
オルガチュチューヤとヒューリークは、不安げにお互いに視線を交わしている。
家のまわりでは強い風が吹いている。
# その瞬間、ネシアは周囲の空間が薄くなるのを感じる。
# ネシアはこの場からの脱出を願い、槍の縁を通じてヨールを呼ぶ。
# しかし、その思いは通じない。
---
オルガチュチューヤは言う。「私逹はもう外に出られないわ。」
エネドリが問う。「なぜ?」
「外は嵐ですもの…。」
ヒューリークは答える。「嵐ならいつかは止むでしょう。」
オルガチュチューヤはかすかに表情をゆらめかせる。
「嵐はいつか止むのでしょうか?」
「そうでしょう。」ヒューリークは力強く頷く。
オルガチュチューヤの表情は明らかに明るくなる。
「そうなのですか!」
エネドリが重ねて答える。「あけない夜もないですしね。」
エネドリを見つめるオルガチュチューヤの表情を見ながら、エネドリの頭の中にかつて自分を導いてくれた司祭の言葉『…緑の時代の再演には手を出しては行けない…』が、一瞬浮かんで、消えた。
(これがその『再演』なのか?)
暗転。
【第三部】
# ヨール…………………狩人。遭難中に長刀と出会う。(プレイヤー:BiSHOP)
# エネドリ………………ロウドリル信徒。ギミック好きの鍛治屋。(プレイヤー:竜)
# ヒューリーク…………ロンロン司祭。狩人兼鍛治屋。(プレイヤー:むらー)
# ディ……………………ロンロン司祭。巨漢の戦士。(プレイヤー:りんぞう)
# ネシア…………………地底に眠っていた長刀に宿る精霊。(プレイヤー:azatoth)
# オルガチュチューヤ…島に住んでいる女性。(NPC)
# ヒューアマイ…………島に住んでいる男性。(NPC)
# ファイヤーリール……ヒューリークの持つロンロンの鍛えた槍の意思。(NPC)
切れ目の向こうに闇が見える。その闇に向かって叫び声を上げている。誰かの声。それはもう一つの意識?
叫び声をあげているヒューアマイに気付き、次々に目を覚ます一行。
「あかりを!助けてくれ!!」叫ぶヒューアマイを、心配そうにみつめるオルガチュチューヤ。抑えつけようとするヒューリーク。エネドリは灯りを燈そうと努力をはじめるが、ランタンには火がつかない。エネドリは闇の中を炉辺に向かう。
ヨールとの精神結合を確保したネシアは、ヨールの魂に呼びかける。
”私を手に取って道を切り開け!”
ヒューアマイは、長刀を持ったディに飛び掛る。あばれまわるヒューアマイを抑えつけるのは難しいと判断したヒューリークは、手にした槍「ファイヤーリール」の石突で、ヒューアマイの後頭部を強打する。
すると、ヒューアマイの頭部が二つに割れ、エネドリが生の鉄を使って作った「仮面付きの鉄兜」が地面に落ちた。
オルガチュチューヤの悲鳴。
その瞬間、家が嵐に吹き飛ばされる。
暗転。
---
再び意識を取り戻した一行は、そこが闇の中であることに気付く。お互いに声をかけあいながら起きあがろうとしている時、不意に闇の中に光がともる。それは長刀の先に燈された光だった。
そして、長刀を持つディににじりよっていたヨールが、その場にいることを発見する。
彼らが意識を取り戻したのは、かれた巨木の下だった。足元には湖の水。ここは、オルガチュチューヤがいた島?
しかし空は無く、地中にある島であるように思われた。
「あれは夢だったのか?」誰にともなくつぶやいた言葉に、巨木の上方から答えが帰ってくる。
「過去の記憶だよ。」声の主は、木の枝の上にいる壮年の男だった。
しかしその物言いには聞き覚えがある。
「昔、昔、あるいはずっと先、のね。」
ヒューリークは割れた鉄兜の一方を拾い上げる。
「次は誰かな?」その笑いを含んだ言葉に怒りをぶつけるヒューリークは、手にした鉄兜の一方を木の上に投げつけた。
「君逹と楽しい時をすごしたいんだが…」木の上で『彼』は笛を吹き始めた。すると、巨木の根元からブルー達が湧き出していた。
■ 24 名前: なゆた :2002/02/17 22:34:40
第十話:ガラスの仮面お疲れ様でした。
とくにヨール君。がんばりました(笑)。
aza氏がさっそくログを送ってくれましたので、ただいま検証中。
そのうち小説版で出るかもしれません。