笑顔になれる国の為に


暁の円卓藩国は、騎士の国である。

騎士のアイドレスを取っているわけではないが、騎士の国であると名乗っている。
今や男爵領にまでなってしまったが、騎士の国であると名乗っている。

それは、誰も否定しえない事実。
もともとは騎士団であった。白石藩王が藩国を起こしたときから、この国の歴史は大きく変わった。大幅な若返り、そして、白兵最強という、称号。
そのどれも今の暁の円卓を構成している事実だ。

そして、その歴史に新たな歴史が刻まれる。

新たな民を受け入れるというのだ。

それは共和国で起こった事件から始まった。その結果、3000万もの民が難民として生まれたのだ。誰もが目を覆う、ひどい事態。皇帝による侵攻は防がれ、多正面で戦闘が進行する可能性こそ減ったものの、共和国各地で発生した難民の大移動が比較的安定している帝國に向かうのは当然ともいえた。

「ということで、神奈。難民地帯へ治安維持行く前で悪いが、対応を頼む」
「……裕王。働いてください。……やりますけど。」

部屋に戻った神奈はベッドに腰かける。
まず、神奈はこう考えた。

…難民を受け入れるには、国民と差があってはダメ。
…でも、国民も大事にしないといけない。

ぽふっと青い布団カバーのベッドに横たわる。伸びをする。だめだ、考えがまとまらない。治安維持へ出かけるまでにあまりに時間がなさすぎた。

「神奈ー、飲み物」
「はーい、ありがと、トラナ」

トラナの声で上体を起こす。扉をあけるとお盆に2人分の梅ジュースを乗せたトラナがいた。満面の笑み。そう、この笑顔を守りたかったんだ。

神奈はトラナからジュースを受けとり、一緒にテラスに出ると手すりから街を見下ろした。夜の風が気持ちいい。梅の爽やかな味とともに暑さを凌ぐにはちょうどいい感じだ。
この前の遠征の後の国民の歓待の声を思い出す。
お忍びで散歩に行ったときに出会った人たちの顔を思い出す。

「……そっか。簡単なことなんだ」
誰もが笑顔になれる、そんな国になればいい。

神奈はその日、法律の草案を書き始める。難民の受け入れに関する法律、後に難民支援法として知られることになるそれであった。

(作:風杜神奈)