藩国紹介


「我らは正義のための騎士だ。正義の名に忠誠を誓い、正義に仕えよ。我らは正義の盾であり剣である。」

建国の際に王が宣誓し、他の国家から失笑を買った一文である。
わんわん帝国的には一般的な理念であるが、言った人間が良くなかった。端的に言えば「お前がそれを言うか」という奴である。

建国王であるしらいし裕はとある国の摂政であった。摂政というからには国の重要機密を握り、藩王に次ぐ権力の持ち主である。
その彼が国を離れて新たな国を起こすということに様々な憶測が飛び交うことは必然であり、黒い噂が立つであろうことは明白であった。
だがしかし、彼は気にすることなく国を起こした。彼の中で何がそうさせたかは余人には知る由もないし、本人に聞こうという人間もまた、いなかった。ただ確実なことは彼が本気で上の宣誓をしたということだけである。大部分の人には伝わらなかったが、伝わった人もいた。それが今の国民である。

この国はただの人間が夜明けを願って作った国である。故にあるのは心意気だけだ。だが、それで十分なのである。他のものは後から付いてくる。
この国にはI=Dはない。近代的な装備もないし、魔術に長けているわけでもない。ただあるのは夜明けを呼ぶという心意気をもったただの人間だけである。このような人達はこの国では騎士と呼ばれ、全国民から尊敬を集める。この騎士と呼ばれる者の中には剣を使うものもいれば、理力を使うものもいる。前線に立つことをせず、文官として国を陰で支えるものもいる。このような千差万別の様相の者達の共通点を挙げるとするならば、夜明けを呼ぶという心意気、ただ一点のみである。逆を言うとこの心意気さえあればこの国では騎士と呼ばれ尊敬の対象となる。その対象は老若男女関係ない。
この国では人が宝である。この国は建国したばかりであり、国土も未開部分が多く、まだまだ発展途上の国だ。そんな国の自慢できる点は人だけであるが、それ故に人を愛し、助け合い、一丸となってモノゴトに挑んでいく様は非常に壮観で、見るものを感動させる。そのような人材を宝と呼ばずしてなんと呼ぶのだろうか。

この国の置かれている立場は非常に厳しい。まだまだ未開の土地、すぐそこまで迫っているアラダと呼ばれる未知の敵達、後発国故の各国との信頼構築の無さ等々…問題点を挙げればキリがない。だがしかし、人がいて、その人に夜明けを望む心さえあればそれは些細な問題になるはずだ。
夜明けが来ることを願い、そのために戦い続ける。それがこの国という在り方である。
(文:しらいし裕)