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暁天の民

『俺はこの剣に誓う。せめてこの腕の中の存在だけは守りぬくことを。』


L:暁天の民 = {
 t:名称 = 暁天の民(人)
 t:要点 = 世界への怒り,憤怒,力
 t:周辺環境 = この世の終わり
 t:評価 = 体格4,筋力4,耐久力7,外見3,敏捷2,器用3,感覚3,知識2,幸運1
 t:特殊 = {
  *暁天の民の人カテゴリ = 汚染人アイドレスとして扱う。
  *暁天の民は一般行為判定を伴うイベントに出るたびに食料2万tを消費する。
  *暁天の民は白兵戦に関して+6修正を得る。
 }
 t:→次のアイドレス = 天使(職業),強戦士(職業),スローライフ(職業),熟練工員(職業)


 いつからこの街はこんなに夜景が綺麗になったのだろう。

かつて、暁の人々は日の出とともに起き、日の入りとともに休む暮らしをしており、
少なくとも私たちが子供の頃はこんなに夜が明るいことはなかった。

複層建築の中に灯される光や、火子の灯す街道沿いの松明が幻想的な風景を創り出す。
夜景が綺麗ということはつまり、”灯りをつける余裕”ができたということでもあった。

「グラント、どうしたの?」

 鈴を転がすような声が暁都の夜景に思いを馳せる私を呼んだ。そのままゆっくりと横に並ぶ。
私の視線の先にあるものに彼女も気づいたようだ。

「いい景色ね。」

 私もその言葉に静かに肯く。
その懐かしさを含んだ視線は私と同じように昔の暁の姿を思い出しているのだろう。
電気ではなく炎の揺らぎのある灯りは優しく暁の夜を照らしていた。


日常に根付いた暁の魂

 どれだけ戦が上手かろうと、どれだけ歌が上手かろうと、如何に人を救おうとも、如何に人を守ろうとも変わらないものがある。

 人は子を産み、守り、育てる。

 そうして社会が、歴史が築き上げられてきた。かつてもそうだったし、もちろんこれからもそうだろう。
それが日常というものの積み重ねが生み出す結果だ。

 では日常というものには全く争いがないのであろうか。その答えは否だ。もちろん日常だからといって
全く争いがないのはやはり日常とは言えない。競いあうのも人の性質であるからには内包して然るべきだろう。
積み上げ時に崩しその時々にあわせて千変万化する。壊すばかりでは何も積み上がらない。

 そう、確固たる日常があってこそ、非日常の浸食に耐え歴史を作ることができる。日常はその一瞬一瞬は平凡な物かもしれない。
しかし、その平凡さを含めて、その瞬間は気づかないものだけども輝かしい足跡なのだろう。

 そして、裏も表も含めて人である。泣いても笑ってもそれは変わらない。正義心の発露も、慈悲の心も。
全て日常に根ざして初めて輝くのである。正義心は安定した土台を持たなければ単なる独善に過ぎない。
慈悲の心も安定した土台がなければ空虚である。だからこそ暁に住まう人々は日常を愛するのだ。
それがどれだけ大切なことかを知っているのだから。


日常という箍

「日常を強く愛しており、家族を大切にすること。」

これは非日常に対する最大の武器であるが、時に弱点になりかねない。なぜならば日常や家族を必ず守り抜かなければならないからである。
肉体的な強さのみを追い求める時代が去ったからこそ、守らなければならないものが多くなったとも言える。

だがそれを悔やむことはない。

それこそが暁に住まう人々を次のステージへと導いてくれたことをだれもが無自覚ながらも感じ取っている。
そこにいるからこそ手が届く高みがある。孤独な強さの辿り着く先は寂しい。
だが、この家族を守り、日常を大切にするこの強さの先にあるのはきっと輝かしい未来に違いない。


青達の影響

 青がこの国に来てその生き方に影響を受ける者達もいた。
先程までも述べたが日常を守る大前提にあたって、家族を大事にし過ぎることは矛盾をしないどころか
強く日常を結び付けられるためにも有効なファクターとなっていたからだ。
暁の建国以来、かなりの時をこの地で過ごしてきた遠坂圭吾や田辺真紀に関しても同様で、
その生き方は暁の国民達に深く影響を与えているだろう。

青の厚志が舞を何よりも大事にし、舞もまた青を大事にするように。
田辺真紀が弟達を、遠坂を大事にするように。また、遠坂も田辺を愛するように。

それは、淡く輝く未来への希望。やわらかくてもろいけど、何よりも強いもの。
皆、弱点を抱えながらもそれ自身が力の源になっていく。誰よりも、何よりも守りたいものがある者は強い。
そうして、また一歩ずつ未来へ進むことができるのである。


暁天の頃に

 暁天に未だ月は残り、森の端よりの光が世界を染め始める頃。まだ眠りについているグラントの隣で私は目を覚ます。
こんな時間ではあるけど既に街は動き始めている。
かつてはこの時間には皆起きて暖を取るために日差しで体を温めた。摩擦と太陽熱で冷え切った体を温めるために。
たぶん、今からじゃ想像も付かないでしょうけどもそういう時代があった。
今ではそんなことはない建築構造そのものからして大きな改良が施されているのだ。昔の暁の建築ではどうしても熱が逃げてしまい、
新聞を使って壁に敷き詰め断熱を行っていた。それが今では断熱性の高い素材と工法で冬でも暖かい家ができるようになってる。
だから暖かい寝起きができるようになったのだ。

大きく伸びを一つうつと、私は洗面所へ向かった。鏡の嵌った洗面台の前に立つと組み上げた水で顔を洗う。
冷たい水に意識が覚醒する。そしてハッキリした頭で台所へと向かった。

調理器具。これも小さなころと比べると大きく変わったものの一つだ。昔の暁の円卓の料理は、よく言って野趣あふれた料理法が
大きな部分を占めていた。細かいことを気にしない国民性もあったし、たしかにそういう空気があった。
でも、強くなるために食事が重要だとそういう啓発が行われた後には様々な方法が取り入れられる様になっていた。
そして映画が隆盛するようになったころからはもっと多くの種類の料理が見られるようになっていったのである。

ぱっぱっと鍋に火をかけ、煮干から出汁をとりはじめる。出汁が取れるまでの間に材料を保存庫より取り出すと手早くまとめて切り始める。
出汁が取れたら葱を刻み投入。次に豆腐を投入。更に海藻を加えて火から降ろす。この間に火は弱めておくのがポイントかな。
おたまに煮汁を少量入れておき、その中に味噌を溶いて鍋の中に均等に混ざるようにしたら、弱火でひと煮立ちさせるのだ。

「ん……おはよう。クレア。いい匂いだね。」

寝ぼけ眼でグラントが顔をだす。もうすぐご飯も炊けそうだ。

「おはよ。グラント。まずは顔洗ってきなさいね」

後ろ手でエプロンの腰紐をほどき、首から抜いて素早く折り畳む。あとは装うだけだ。
今日も一日頑張るための朝御飯をいただきましょう。


暁天の者

 ”暁天の者”とは暁の民でも白眉の才能を持つ者のことを言い、これが転じて力ある暁の民のことを暁天の民という。
”龍~”が人の持つ職業や属性、物に対して使われるのに対して、人自体に用いる場合は”暁天の者”という言い回しをするのだ。

あくまで同じ暁の民には違いないし、種族の違いも何も無い。あるのは才能の違いである。
この才能。時に危ういとも思えるが、日常を守るため、家族を守るためには重要な資質でもあった。
つまりは同じ剣士であっても暁天の者と普通の暁の民では立てる境地が違うということだ。
より才能のある使い手はより多くの者を守れる。それは道理であった。

ただ、同時にそういった才能を持つものは日常や家族を守るという意識がより強くなるのが常であった。
なぜなら強い力を持つということは非日常に引き寄せられる可能性が高いからだ。
だからこそ今ある日常を、そして日常に引き戻してくれる家族を非常に大切にしているのである。

その意識がさらに強くなると、もはや意識すらせずに危うそうな箇所を事前にチェックするようになる。
もはや無意識的に危機の目を摘んでいるのだ。もちろん人である以上完璧ではありえないし、
ミスもあれば見落としもするだろう。 だが、そういう状況が引き起こされなければ日常を揺るがされることが少ないとなれば、
危険を察知することで受ける恩恵も大きい。
別に感覚が鋭いわけでも、賢いわけでもない。なんとなく放っておくと嫌な予感がしたからと深く考えずに行動するだけである。
何もなかった。それでもいいのだ。その積み重ねが、きっと明日に繋がっているのだから。


暁天を拓く旭光

『俺はこの剣に誓う。せめてこの腕の中の存在だけは守りぬくことを。』

 これはかつてあったお話。

「うるぁぁー!!」

 男は叫び声と共に下からカチ上げる剣閃で天から降りそ注ぐようなその一撃を迎え撃った。
がぎんっと嫌な音を発して硬い物同士がぶつるかる。音と手元に残るしびれる感じから、押し切られると直感し一転。
その場から女を抱えて飛び退く。尚もまっすぐと降り注いだそれは大地に孔を穿った。
タイミングを間違えればああなっていたと考えるとそれはぞっとしない想像だった。

「ったく、休ませてもくれないのか」

 思わず愚痴るほど飛び退いた先にも奴らは殺到する。幸いにもここには素早いものはおらず、
一撃一撃見極めて対処することができていた。

「大丈夫、なの?」

 不安そうにしがみつく女に男は頷く。その熱が何よりも愛おしい。守らなければならないものがそこにあった。
それは根源から湧き出す力になる。そこに居てくれる、ただそれだけのことが男に大いに力を与えていた。

「大丈夫さ」

 その目の輝きは必ずのこの場を切り抜け明日へ繋げる意志にあふれていた。

/*/

 汝の愛す者を愛し、汝の愛す者を守れ。
 正義はその心のあり方の中に、慈悲はその眼差しの中にある。
 その意思は霊峰の如く不動。その心は澄湖の如く不濁。
 想いは剣と盾の力をなし、暁天を拓く旭光とならん。

/*/

 暁天の者たる少女もまた愛する者のため戦う。慕う背中を追いかけてやってきたはいいものの一面が敵、敵、敵。
殺到する敵を引きつけ壁を蹴り上がってひらりと躱すと、手にした刀で一太刀浴びせる。

「あ、見つけた!」

 飛んできた攻撃を通り抜けるように軸をずらすと、逸る気持ちを押さえて追いかけた。
 青年も追いかけてきた少女を一瞥して半分安堵、半分呆れた表情をする。

「ったく、こんなトコロまで来て……」
「しょうがないじゃない、置いていくんだもん」

 『危ないから置いていったんだ』という言葉を飲み込むも、青年も内心は嬉しかった。
こんな状況下でもこの少女だけは自分の手で守れるのだ。

「じゃあ、いっちょ蹴散らしますかね」

 一瞬だけ視線を交わして二人はニヤリと笑うと、少女は突然身を低くした。その上を青年が全周から二人に向けて殺到する敵に向けて斬撃を繰り出す。一瞬にして円形の空白が戦場に出現した。切り漏らした敵は少女の剣が疾風のように繰り出され一体、また一体と倒れる。
周りの敵を殲滅すると二人は建物の影に身を隠した。

「ちょっと……数が多すぎるね。」
「そうだな。」

 少女はんー、と考え込む振り。青年もそれに気づかないふり。なんだかいつも以上にお互いを意識しているような気がする。
ぴったりと寄り添うもお互い別の方向を見たまま。周りを確認してまだ脅威が来るまで時間があることを確認したあと一言を放った。

「……ねえ、私と契約……して?」

/*/

歌が聞こえる。天使の歌声が。
愛する者を守るために戦う者の歌が。悲しみを断ち切り、勇壮な決意を持って戦う歌が。

歌が聞こえる。ひだまりの歌声が。
日常を祝い、共にある喜びを歌う歌が。世界に安らぎを、親子に笑顔を与える歌が。

歌姫は一心に歌う。どんなに苦しくても自分の為に戦ってくれる愛すべき人を思って。
その拠り所になれたら、何よりも嬉しいだろう。
それは力となり前に歩む一歩となる。

暁天の空は次第に旭光にて切り開かれていく。
いつか、その光になれたら、いいと思う。


スタッフ

イラスト:まさきち
設定文:風杜神奈
その他:白石裕